キミと空とネコと

キミと空とネコと58

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「先生、お時間です。遊んでないで会場に向かってください。」

温かかった温もりを消すような冷たい小田切の声に麗華さんは眉間に皺を寄せる。

オレはと言うと心臓が冷たく感じ、響夜の手から逃れるように離れた。

響夜は・・・。

「もう、そんな時間か。カイト、この部屋は何時使ってもいいからパーティーで疲れたらここで休みな。カイトは人疲れしやすいからな。」とカードキーを手渡してくれる。予備を借りてるからいいのだとオレに持たせる。

響夜がオレから離れたのを確認した小田切は満足そうに響夜に微笑む。オレには牽制するように一瞥をくれる。「何でオマエは来たんだ。大人しくしとけよ。」とでも言うように・・・。

この小田切と言う編集者は作間書房きっての敏腕編集者で、小田切が編集につくとベストセラー作家になる事間違いなしとさえ言われている有能な編集者らしい。ただ、その冷酷さたるや並ではないらしく、作家にとって悪と思えるものは全て排除してしまうらしい。仕事のみに情熱をそそぎ、人を好きになるなんて馬鹿げているとさえ言っているそうだ。小田切にとってオレは排除すべき人間なんだろうとその冷たい瞳を見て思う。

「先生、こんなステキなレディがいらっしゃるのですから、先生がエスコートしないとダメです。」
小田切は無理やり響夜と麗華さんをカップルに見たて腕を組ませる。二人はこうすることが話題を呼び、ファンサービスになるんだとオレに説明してくれる。気を使ってくれてるのだと思うとそれだけで心苦しい。

オレは彼らの5歩後をとぼとぼとついて行く。傍にいたら小田切が睨むので響夜との間に間隔を置いた。響夜の邪魔にはなりたくない。

会場に入ると響夜と麗華さんにライトが当たり一斉に拍手が起こる。その中を二人は進み壇上に登ると、麗華さんは響夜から腕を外し響夜に向かってにこやかに拍手を送り、響夜は会場を見渡しながら笑顔で会釈をする。

壇上の二人はとてもお似合いで、お互いに恋人ではないけれど、響夜にはやはり女の人の方が似合うと思ってしまう。その後も司会の進行によりパーティは進み、響夜の挨拶や出版社の社長の挨拶、後援会の挨拶など続き、挨拶の後は立食パーティとなり、思い思いのグラスを取りあちらこちらで談笑が始まる。

響夜は主役なだけに色々な人達に取り囲まれ姿を見る事さえ出来ない。オレは会場の端にある椅子に座りこみ、ボーイさんがくれたシャンパンを飲んでいた。お酒はあまり好きではなかったけどソフトドリンクがどこにあるのかわからず、探す気にもなれずにいた。

麗華さんが一度オレの所に来てくれたが、麗華さんも社長としての付き合いがあるわけで「座ってるから大丈夫です」と笑顔で送り出した。

本音を言えば今すぐ帰りたい。

今の響夜とオレとの距離は、響夜とオレとの関係の距離のように思えた。

「響夜って有名人なんだな。オレとは違う。」

今は響夜の周りには有名な作家や政治家が囲んでいる。その後には有名な女優が連なっている。

全く知らない人の中は息が苦しい。

周りの声はうわんうわんと耳の中で響き、少ししか飲んでないはずのシャンパンが不快に感じ、トイレに駆け込む。

トイレは誰もおらずホッと一息つくと洗面所で顔を洗い、鏡を見ると血色の悪い情ない顔が映っている。

泣きたい気分になって、一人になりたくて響夜の部屋に戻りベッドに横になると本気で涙があふれ止まらなくなって嗚咽が漏れる。

オレは響夜にふさわしくない。オレのことを好きだと響夜は言ってくれるけど世間からしたら認められない関係で、これは響夜の仕事にも差し障るだろう。いくら力のある作家でも何で蹴落とされるかわからない世界だもの。

「響夜好き・・・。」涙にくれながら響夜に言う事のない言葉を一人繰り返す。

ドアが開いて小田切が入ってきたのはその時だった。

「やはりここにいましたか。先生は貴方のことを好きだと言ってるようですが、今日の彼を見て貴方でもわかったでしょう。彼と見分不相応な自分に。いくらスーツが立派でも彼と貴方では釣りあわない。彼はもっと有名になっていきます。私がそうしてみせます。私なら彼を押し上げる事が出来ると確信してますから。それに男が男を好きになることが信じられません。先生は女の人でも愛せる方ですが、貴方は違うのでしょう?汚らわしい人を彼の傍に置きたくないのですよ。私は。作品にもいい影響が出るとは思えませんしね。わかるでしょう?」

小田切の言葉は正論で、響夜のためにはオレはふさわしくないと今一番思ってたことだから何も言えない。そんなオレに満足したのか小田切は出て行こうとし、ふとドアの前で振り返ると、とどめをさすように冷たい眼でオレを見る。

「彼に貴方は必要のない人間です。彼が貴方の傍に行かないように私はしますが、それでも彼が貴方に逢いに来ても相手にしないようにして下さい。彼の邪魔をしないで。貴方は貴方に見合う相手をお探しなさい。全く汚らわしい。」

そう言い残すと部屋を出て行った。

オレは一言も発する事もないままただ泣き続けるしか出来なくて・・・。

やっぱりオレは一人なんだなと実感する。こんな話をユウやアキくん、歩たちにすれば響夜に何とかしろと言うだろう。響夜に迷惑がかかる。麗華さんにも・・・。そう思うと誰にも言えない。

無性に温もりが欲しくなって武蔵に逢いたくなる。

こんなとこ一秒も居たくない。

オレはカードキーをテーブルに置くと走って部屋を飛び出す。

急に部屋から出たので前を見ておらず、誰かに思いきりぶつかりこけそうになる。オレがぶつかった人物が手を掴んでくれてこけずにすんだ。

「大丈夫ですか?」

後からかけられた声に身体が固まる。

この声・・・。

間違えるわけない。

この声は・・・。

顔を見なくてもわかる。

だって大好きだった人だから・・・。

捨てられても忘れる事の出来なかった人・・・。

最後の恋人だと、彼がいないのならもう何もいらないと命を捨てようとまでした人だから・・・。

「コウキ?」

ゆっくりと振りむいたオレの目のに飛び込んできた顔は間違いなく愛しかったコウキだった。





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今日は話しの区切りでいつもより短めです。失意のどん底のところであらわれてしまいました。元恋人のコウキ。弱ってる心の海人に追い討ちをかけるようにあらわれたコウキに海人はどうするのでしょうか。小田切の暴挙を知らない響夜。聖夜に気をつけろと言われてたのに、響夜はそういう細かいことに疎いのです。だから海人に逃げられたのに・・・。ちょっと修羅場ってきました。人間関係が複雑かもしれない。登場人物が多すぎて・・・。話の中ではそれだけ必要なのですが・・・。表が要りますかね?読んで下さってありがとでした。


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~ Comment ~

ヽ(´Д`;)ノアゥ... 

ここにきて元カレとはっ! せっかく響夜くんと向き合えてきたのに嫌味な編集長だけでも窮地なのに。
カイくんにとって今が究極の分岐点かもしれないですね;どーなるんかなぁ。なんせ元カレは死を選ぶほど愛した人だし、それをずっと引きずってきたわけですし。
こうなってくると今最高な気分になってる響夜くんのハイテンションも気になるし。

Re: ヽ(´Д`;)ノアゥ... 

音夜様こんばんは☆

コウキでちゃいましたねぇ。てか、最初の段階からコウキとのことは海人が逃げで解決させているので昇華しきれてないからちゃんと、ケリを付けるために出会う設定でした。海人はコウキに何も言ってないんです。別れを言われて何も言わずに受け入れ、自分を殺そうとした。これが最高の愛なわけないじゃん(。・ˇ_ˇ・。)ムゥ…なので。コウキの登場です。

響夜もカイトと再会したことで浮かれすぎて何も見えてないので、響夜にも覚悟してもらわないと・・・。

遊びに来てくれてありがとうでした。またねぇ(・ω・)ノ▽"フリフリ
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