キミと空とネコと

キミと空とネコと60

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身体中が痛くて目が醒める。両手のバスローブの紐はとかれ身体はキレイに拭かれて傷も処置してあった。バスローブの代わりに、コウキのパジャマが着せられている。

時計を見ると20時を回っていた。

「武蔵のご飯・・・。」

部屋の中はシンと静まり返り誰もいる気配はない。

オレは携帯を探そうとベッドから降りようとして身体ごと落ちる。

身体中が痛くて上手く動かせない。

それでもなんとかクローゼットまで這って行き、スーツのポケットから携帯を取り出すとユウに電話する。メールを打つのは無理そうだったし、コウキが帰ってきたら困る。早く出てくれと祈るようにコールを鳴らすとすぐにユウが出てくれた。

「カイくんどうしたの?何かみんながカイくんを探してるよ。」

「ん。あのさ、ユウ悪いんだけど今日と明日の夕方まで武蔵を見てくれないかな?水とご飯だけでも上げて欲しいんだ。出来たらトイレもして欲しい。今は何も聞かないで。お願いだから。」

「大丈夫なの?カイくん声が何だか変だよ。何があったの?」

「ごめんユウ。お願い。」

「武蔵のことはわかったよ。でも納得出来ない。ちゃんと理由を話して。」

足音が聞こえてドアの前で止まる。コウキかもしれない・・・。

「ごめんユウ頼んだ。」それだけ言うとあわてて携帯を戻し、痛む身体を引きずってベッドに潜り込む。

同時にドアが開いて入ってきたのはやっぱりコウキだった。

コウキはベッドの端に座ると布団の上からオレを触る。

オレは怖くてビクンと震え、何かされるのかとビクビクしてしまう。

コウキは大きな溜め息をつくと静かに頭を下げ謝ってきた。

「カイ。ごめん。オレ、カイに酷いことして。怖がられるのは当然だ。でもな、カイ。オレがカイを必要なのはホントなんだ。あんなことしといて言えたもんじゃないことはわかってる。でもやっとカイと逢えたと思ったら止まらなかった。カイが欲しくて欲しくてたまらなかった。オレだけの物にしておきたい。ホントに愛してるんだ。」

以前なら欲しくて欲しくてたまらなかった言葉。でも、今は何とも思わない。悲しいだけ。なら別れなきゃよかったじゃないか。オレは響夜の事を愛してしまった。命が助かったばかりに助けてくれた響夜に恋をした。

死のうとしたときにコウキとは終わっていたんだ。

オレはコウキに「愛せない」と言うつもりだった。響夜とどうにかなりたくてじゃない。

「カイ。キョウヤって誰?」

コウキの言葉に言うつもりだったセリフは出ず言葉に詰まる。

「カイが今好きな奴なのか?キョウヤって言えば今日、このホテルで出版パーティをしてるのは『杉野 狂夜』だよな。『狂夜』が『キョウヤ』なんだろ。」

ごまかそうとしたがその通りなので言葉が出てこない。

「カイ。キョウヤは有名人だ。オレがキョウヤとカイのことを業界にバラしたらあいつの作家生命は終わるかもな。」

「コウキ、それはオレを脅してるのか?」

「そうだ。そうしてでも、オレのことをカイが憎んでもいい。傍にいて欲しいんだカイ。」

脅してるはずのコウキの顔は泣きそうで、例えオレがコウキの傍を離れてもそんなこと言うつもりはないと思う。
さっきのコウキは怖かった。変だった。でも今のコウキは昔のコウキみたいだ。

「身体拭いてくれたんだな。傷の処置も・・・。」

「ごめんな。カイ。オレ、カイがいなくなってから何一つ上手くいかなくなった。仕事でもミスばっかりで、女は我儘でオレを振り回すし、心が落ち着かなくなるだけだった。カイがいないとオレはダメなんだ。オレがオレでいられたのはカイがいたからなんだってわかった。」

勝手なことばかり言うコウキだけど、オレにフリをしなくてもいいと初めて受け入れてくれた人。家族のような人。家族のような愛だったかもしれない。でも幸せをくれた人。

響夜は未来がある。オレじゃなくても幸せになれる。

でも、コウキはオレがいないとダメだと帰って来た。

「コウキ、オレはコウキとのことは死のうとした時に終わったと思ってる。コウキの事が嫌いなわけじゃないけど、家族みたいにしか思えないかもしれない。好きな人が出来たから。だからってその人とどうなろうとか考えてるわけじゃないけど。」

「それでもいい、オレのそばにいてくれ。ずっと傍にいれば愛情ももう一度生まれる。」

そうとは思えないけど、こんなコウキを放り出す事は出来ない。

コウキがオレと響夜の事を言うとは思えないけど、響夜の近くにオレがいたらいつかは響夜の邪魔になるかもしれない。

「オレはコウキのことを又愛せるかどうかわからない。まだ、彼が好きだから。」

「そいつの事を忘れさせるくらいにオレが愛してやる。」

コウキはベッドに入るとオレを抱きしめる。

「ホントにごめんな。もう二度とあんな事はしないから。」

ほんとのことを言うとまだ少しコウキが怖い。でも今は優しくオレを抱きしめ「ごめん」を繰り返すコウキ。

コウキを捨てられない。愛からじゃないけど、家族みたいな思いだけど幸せをくれた人。響夜のことは愛してるけど、響夜にとってオレは足枷にしかならない。響夜のそばにいないほうがいいと思う。

コウキが立ち直れるまでは一緒にいるほうがいい。その後は・・・。

もう何も考えられない。流れに任せて生きて行けばいい。

コウキの部屋で何もせずにただコウキに抱きしめられて眠る。

「響夜、好きだ。でもさようなら・・・。」心の中で別れを言うと一筋の涙がこぼれ枕を濡らす。コウキにわからないように枕カバーでなみだを拭いてそのまま眠った。



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嬉しいことにまたまたリンクしてくださいました(。◕‿-) ありがとう ✿ずうすうしい私のお願いを受け入れてくださってd(ŐдŐ๑)☆スペシャルサンクス☆(๑ŐдŐ)b『猫と天秤』の『大橋 京様』です。とても心情に溢れた可愛くて優しくて癒されるお話です。癒されに行って見てくださいね。あと『KiriのBL小説置き場のkiri様のお話もキュン死できます。痛いシーンもありますが愛ゆえの行為なので『ひぃ~~~~』ということはございません。「受け」さん強いです(笑)タイトルをクリックしていただければそのページに飛べます☆節度をもって伺って下さいませ( ๑*╹౪╹)(╹౪╹*๑)ネー

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~ Comment ~

はやく辛い時期が過ぎますように。 

Rinさま、こんばんは。

あいたたたたた‥なんてことは言えません。
私も痛いこと時々書きますから。
勝手にキャラが動くこともありますが概ね自分が動かしていますから。

私は今、自分が痛いですけども(笑)

気持が落ちないようにしてくださいね、
それだけを心配しております。

彼は‥自分がどれだけ酷いことをしているのか、
身勝手なのか‥いつか気がつくこともあるでしょうか。
自分の心のままに動いて相手を慮れない子かもしれないので仕方ないですね。
また同じことを繰り返して泣かすのは目に見えていますから、続きようはないですが。
心にどうしようもなく深い傷を負わせてしまわないと
気がつかないのは悲しいですね‥。
悲しい‥悲しいクセというのでしょうか。

終わりよければすべてよし、といいますから
海人くんも今は我慢して‥なんてことは言えないかな‥
本音を申せば‥
一旦拾われて‥また捨てられる子猫のようで辛いです。
‥可哀想過ぎて‥泣けますが‥
私が泣いても彼の痛みは消えません、
だから幸せだけを祈っております。
それから‥
Rinさまの心も少しだけでもいいから
アップしますように‥(*^_^*)

Re: はやく辛い時期が過ぎますように。 

ハル様こんばんは☆


何度打ち込んでも不正で送れず・・・。きっと書いてる内容でひっかかってるのだろうと思うのですが・・・。今回は送れるかしら・・・。

海人とコウキは痛いことになちゃいましたが、お互いがちゃんと別れるために出逢わせました。海人もコウキもちゃんとさよならしてないから。海人はコウキとさよならするために、コウキは自分がしてきたことを気付かせるために・・・。コウキも元々は言い奴なんですから。海人が心開いた最初の人ですもの・・・。

私の心配もしてくれてありがとです。昨日夜中にやっちゃいましてここで書くことではありませんね。でも、元気です。遠くの友達が気にしてくれて、メールではげましてくれるので・・・。

『人ってそう簡単には死なねぇ』って。☆をみて月をみて泣いちゃったのでした。きれいすぎて・・・。
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