キミと空とネコと

キミと空とネコと62

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月曜日、オレはコウキの車で出勤する。毎日気を失うまで行われる行為にオレは憔悴していた。コウキとの会話もないまま「行ってきます」とドアを開け、振り返りもせずに従業員入り口から入る。

「おはようございます。長い間勝手して申し訳ありませんでした。」そこにいた店長に頭を下げる。

「海人くん、きみ大丈夫なのかい?」

オレの顔を見るなり心配そうに店長が言い、社長室に連れて行かれる。

オレの顔を見た麗華さんは何も言えず驚いたようだった。

「彰人、悪いけど海人くんと二人にしてくれる?先にコーヒー2つ入れて。」

どう話したらいいのか?頭の中で考える。コウキとよりを戻したことにすればいい。どうせ送り迎えも毎日コウキがするのだからまんざら嘘ではない。そこに愛がなくても。コウキの一方的な愛はあるのだから・・・。

「で、どうしたのか私が納得するようににちゃんと説明して頂戴。」

彰人さんがコーヒーを置いて出て行くと麗華さんは社長の顔でオレに聞いてくる。オレはパーティでシャンパンを飲んで気分が悪くなりトイレに行ったが収まらず、響夜の部屋で横になっていたと答える。

「それは小田切とか言う編集者も言ってたわ。海人くんは気分がすぐれないようで部屋にいるって。響夜は部屋に行こうとしたけど小田切がそっとしといてあげたほうがいい。気を使わせるからって言うから響夜と私はパーティが一区切りついてから部屋に行ったのにアナタはいなかった。連絡もしてこなかったから本当に心配したのよ。」

麗華さんの言葉が胸に痛い。響夜も心配してくれたんだ。小田切が響夜を止めなかったらコウキに逢う事はなかったのかもしれない。でも今更だ・・・。

「ごめんなさい。部屋で休んでたんですけど、落ち着かなくて家に帰りたくなって部屋を出たら人にぶつかっちゃって、その人が・・・・。」

「海人くん?」

コウキのこと言わないといけない。愛してないのに恋人なんだと。これからはユウ以外の人の前では「フリ」をしなくちゃいけないんだ。元に戻るだけ・・・。だけど前以上に辛いんだろうな。大好きなみんなに「フリ」を突き通すんだから・・・。そう思うとなかなか言えずにいて麗華さんの顔が不審に歪む。

「あ・・・。ごめんなさい。その時の事思い出しちゃって・・・。実はその人がオレの前の恋人で、彼は別れた後、オレを探してくれていたらしくて。気分が悪いオレを介抱してくれたんです。次の日も熱が引かなくて麗華さんに電話した時は彼の家からで、もう一度ちゃんと付き合いたいって言ってくれて、今は一緒に住んでるんです。」

オレうまく言えてるよな。「フリ」出来てるよな。ドキドキしながら麗華さんの反応を見る。

「そうなの?でも彼は海人くんを振ったのよね。彼の言葉は信じられるの?」

「オレも信じられないって最初は思いました。けど、もう離さないってずっと一緒にいたがる彼を見ていると信じられるようになりました。前はオレがいてもいなくても平気だったのに今はオレがいないとすぐに電話してくるほどですから・・・。」

これはホントの事でコンビニに行っただけでも「いまどこ?」と電話がかかってくる。さすがにGPSまでつけられているとは言えないけど・・・。

「ふ~~ん。で、海人くんは今幸せなわけ?」

「幸せですよ。最後の人だと思った人がオレのことを愛してるって言葉に何度もしてくれるんですから。」

思いっきりの笑顔で答える。

「そのわりに憔悴しきってるのは何故?」

「えっと・・・。これは・・・。恥ずかしいんですけど。彼が夜寝かせてくれなくて・・・。」

ほんとの事だけどこんな事を麗華さんに言うなんて羞恥で顔が真っ赤になる。

「・・・。はぁ。何とも言えないわね。響夜のことはいいの?」

言われると思った。麗華さんは気持ちを読むのにたけてるからオレの気持ちにも気がついていたかもしれない。

「響夜はオレが珍しかっただけです。響夜はこれからもいろんな人に巡り会える。でもオレは彼しかいないから。」

「小田切に何か言われたんじゃないの?」

「いいえ。小田切さんは関係ないです。オレが彼とやり直そうと決めたんです。確かに響夜のこと好きかなって思ってたけど、実際に彼に愛してると言われた時に彼を愛してるんだってわかったから・・・。」

「それで海人くんはいいのね。幸せなのね?」

「はい。送り向かえもしてくれるんですよ。今日も送ってもらいました。」

「じゃ、住所変更しないとね。前のマンションはどうするの?」

「あそこはそのまま置いておきます。武蔵の家なので。」

「武蔵くんは連れて行ってないの?」

「彼が動物嫌いなので今はオレの部屋にユウが住んで、オレも時間が空くと戻ってます。」

「私がどうこういう権利はないけど、武蔵くんが可愛そうに思えるわ。」

「そうですね。オレも無責任だと思っています。」

武蔵の事を言われるとホントに辛い。寂しいに決まってる。いつも一緒だったんだから。オレの半身のような武蔵なんだから。いつでも武蔵の温もりが欲しい。考えると胸が詰まってくる。胃がキリキリと痛んできた。

麗華さんはオレの話を聞いても納得出来てないだろう。顔が物語っている。でも「フリ」を通すしかない。響夜に迷惑をかけないためにも。コウキを立ち直らせるためにも。

「海人くん、しばらく事務の仕事を手伝ってくれるかしら?パソコン使えるし、何より字が綺麗だから。急に事務の人が辞めちゃって困ってたの。そんな顔のアナタを売り場にも出せないし。」

「はい。どんな仕事でもいいです。迷惑をかけた分を取り戻せるように頑張ります。」

「じゃ、事務室に案内するわ。仕事は事務主任から聞いてね。」

その日から事務室での仕事となる。本に触れないのは寂しいけど、身体的には事務の方が楽だ。

お昼休憩はどこでとってもいいのでオレは携帯の電源を切りマンションに帰る。

自転車は止めたままにしてあるのでそれに乗って武蔵に逢いに行く。武蔵もオレを待っててくれてドアを開けると入り口で迎えて「にゃーん」と鳴いてくれる。

武蔵を抱きながら野菜ジュースとエネルギーゼリーとサプリで昼食を済ます。また食欲が落ちてきている。そんな時間よりも武蔵を抱き締め温もりを感じていたい。今のオレの生活の中でただのオレでいられるわずかな時間だった。

ユウは武蔵を大事にしてくれていていつでもトイレはキレイだし、武蔵の毛並みもきれいだ。ユウに感謝する。俺でいられる時間はわずかで昼休みなんてすぐに終わる。武蔵をぎゅっと抱き締め「またな」と声をかけ仕事に戻る。

帰りはもちろんコウキが来るので定時に挨拶をした後、公園のベンチで待つ。携帯のコールでコウキが来た事を知り車に乗り込み一緒に帰る。夕飯の買い物をすることもあれば、食べて帰ることもある。余り食べれないオレは外で食べるのは嫌で外食は殆どしないけど・・・。

夕飯を作る時は先にコウキが風呂に入るのでその時にたくさん味見をしたからお腹が一杯なんだと少し口にするだけ。
コウキがおいしそうに食べてるのを見てるのが好きなんだと言うと嬉しそうにするコウキを見てホッとする。

コウキは自分を取り戻しつつあるようで、仕事も順調なんだと大きなプロジェクトの一員になったと話してくれる。オレはそんなコウキの言葉を聞いているだけ。いつもそうだった。オレの友達の事は話さない。前はコウキさえ居ればよかったからだったけど、今はオレの友達のことを全て把握しようとしてるようで怖かったから。あの日のコウキを思い出すと友達にも何かしそうで怖かった。そんな時、ユウから電話がかかってくる。

「カイ。電話鳴ってる。出ないのか?」

「あ。出るよ。電話取ってくれる?」

渡された電話でると懐かしいユウの声にオレは自然と笑顔になる。

「カイくんお久し振り。元気?あのね、アキくんの店で歩くんと集まるんだけどカイくんもどうかなって思って。明日なんだ。急なんだけど・・・。」

「明日?」

コウキに友達から夕食の誘いだと言う。オレは断るつもりだったけどコウキは「行って来ればいい」と言うので断るのも変かと思い行く事にする。

「わかった。明日仕事が終わったら店に行くよ。誘ってくれてありがとう。じゃ、明日な。」

電話を切った後、コウキがどう思ったのか気になる。

「コウキいいの?」

「いいさ。たまにはカイも遊ばないとダメだぞ。オレに遠慮するな。ただしアルコールはダメ。帰りはオレが迎えに行く事が条件だからな。」

「わかった。だけど一人で帰れるよ。コウキ仕事の後なのにしんどいだろ。」

「オレがそうしたいんだからいいんだ。」

「わかったよ。じゃ、帰りは連絡する。明日の夕食は作っておこうか?」

「気にするな。適当に食べて帰るから。それより食事の片付けはオレがしとくからカイは風呂に入って来いよ。」

「うん・・・。」

コウキは早くオレを抱きたいと言わんばかりに風呂をせかす。

好きでもない行為だけど、コウキはオレを求めてくる。印を付けておかないといけないとでも思っているように。オレの中の響夜を消すように・・・。そんな行為をしたところで響夜が消えるわけはないのだけど・・・。

風呂から上がってくるとさっそくベッドに引きずり込まれる。

「コウキ。オレ会社で社長に体調管理が出来てないって注意され続けてるんだ。たまにはゆっくり寝かせて欲しい。」

「ごめん。わかってるんだ。カイにすごい負担をかけてる事。でもカイに触れると止められない。カイの身体がいやらしくオレを狂わせるんだ。でも気をつけるよ。次からは・・・。」

そう言うと今日もオレの記憶が飛ぶまでオレを離さないコウキだった。

オレの心は悲鳴をあげているように、少しずつ血が滴って底が赤く染まってきているような気がする。響夜、オレは壊れちゃうのかな?








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