キミと空とネコと

キミと空とネコと82

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響夜の運転する車の後部座席に静かに海人とユウが乗っている。

「カイくん、晩ごはんどうする?」

「ん・・・。別に食べたくない。」

「ダメだよ。ちゃんと食べないと身体壊しちゃうよ。」

「でもあまり食べたくない。」

「それでも何か食べないと元気がでないよ。武蔵もみんなも心配してるよ。」

「いらない・・・。」

そう言ったっきり海人は口をつぐんでしまう。

困り果てたユウが響夜を見る。

「お粥はどうだ?海人、雪夜の卵粥好きだったろ。作ってもらうか?」

「卵粥なら少しなら食べれそうな気がする。」

海人の小さな呟きを聞き、早速ユウは雪夜に電話をする。

「雪夜さん?ごめんなさい。今、電話しても大丈夫ですか?」

「ああ、まだ聖夜の会社にいるから大丈夫だよ。」

「そうですか。お願いがあるんですけど。」

「ユウくんからお願い?ボクに出来る事かな?」

「むしろ雪夜さんにしか頼めない事です。海人くん、ご飯食べようとしてくれなくて、雪夜さんの卵粥なら少しは食べれるかもって言ってるんです。忙しいとは思うんですけど、お願いできませんか?」

「そういう事なら、喜んで卵粥を作らせてもらうよ。出来たら海人くんのマンションに持って行けばいいのかな?」

「はい。無理を言ってごめんなさい。よろしくお願いします。」

「ちっとも無理なんかじゃないよ。ボクのお粥を食べてくれるんならこんなに嬉しいことはないよ。じゃ、出来たら持って行くね。」

「はい。」

海人は車の窓からぼーーーっと走る車のテールランプを見るとはなしに見ていた。

「カイくん、雪夜さんが卵粥作って持ってきてくれるって。良かったね。」

ユウの言葉にもあいまいに頷くだけで・・・。

「響夜さんの運転は上手だね。眠くなってきた。」

海人の言葉に(オレの運転が上手いんじゃないよ。海人の身体が疲れてるから、車の揺れが眠りを誘ったんだ)と響夜は思いながらも

「いいよ。寝とけよ。着いたら起こしてやるから。」

「そうだよ。カイくん眠ったら?」

その言葉を聞くか聞かないかの間に海人は眠りに落ちていた。

ユウの肩にコトンと頭が傾いてもたれる。

「カイくん、安心して眠ってる。」

「そうか。もう危険なところには返さない。」

「でも、なんでカイくんは響夜さんの事だけ忘れちゃったのかな?」

「オレ、嫌われてるのかもしれないな。」

「ううん。それは絶対ないよ。カイくんがどう思ってるのかはカイくんに聞いてね。でも、絶対に響夜さんを嫌ってはいないよ。それは自信を持って言える。」

「そうか。良かったよ、嫌われてるんじゃないなら。それを聞いただけでも救われた。実はオレかなりショックだった。忘れられてる事。オレは海人に「好きだ。好きだ。」って言うだけで行動しなかった。海人に真剣にちゃんと言ってれば良かった。小田切についても、聖夜に気をつけろって言われてたのに・・・。海人を小田切から守れずに傷つけた。だからオレの事を忘れてしまっても仕方ないと思ってたんだ。」

「響夜さんはほんとにカイくんの事が好きなんだね。」

「ああ。今までこんなに大事にしたいと思える相手なんていなかった。海人はオレが初めて愛した人なんだ。」

「そっか。じゃ、響夜さんがちゃんとカイくんを守らないとね。大事にしたいんでしょ。」

「ああ。例え海人がオレのことを忘れたとしても、今からオレの事を知ってもらってちゃんと「愛してる」って言いたい。前のオレを覚えてなくてもいい。今のオレを見てくれれば。そのためにもオレは海人の傍にいるつもりだ。だからユウよろしくな。」

「うん。カイくんが響夜さんの事を好きになってくれたらいいね。ボク響夜さんを応援するから、ボクで出来る事があれば何でも言ってね。」

「ユウが応援してくれたら心強いよ。」

海人はユウにもたれて静かにスースーと寝息を立てている。

その寝息を聞きながら車は静かにマンションに到着した。

車をとめても海人は起きない。響夜は海人を横抱きに抱えマンションの中に入っていく。その後をユウが追いかけ、海人の部屋の鍵を開ける。玄関では武蔵がちょこんと座り、何か言いたげな顔で見上げている。

「武蔵、カイくんが戻ってきたよ。もう、武蔵の傍から離れることはないんだ。ここで一緒に前みたいに暮らすんだよ。」

ユウの言葉がわかったのか嬉しそうに「にゃん」と鳴くと響夜の後を付いて来る。

響夜は海人をベッドに優しく横たわらせ掛け布団をかける。武蔵はもそもそと布団の中に潜り込み海人の横でひっつくように眠る。

響夜とユウは静かに寝室のドアを閉め、リビングに移動する。雪夜が卵粥を持って来るまで待つことにした。それまで海人は眠ればいい。

ユウは勝手知ったキッチンで響夜にハーブティを入れる。

二人に会話はなかった。鎮痛な面持ちでハーブティを飲んでいる。二人とも変わり果てた海人の姿がショックだったのだ。お互いに自分が悪いと自分を責めていた。響夜はちゃんと自分が海人に気持ちを伝え、守っていればこんなことにはならなかったのではないかと。ユウはユウでちゃんと電話したり、会ったりしていればこんな事になる前にわかったのではないかと・・・。

今更言ったところで仕方のない事だと思ってはみても後悔ばかりが先に立つ。

ハーブティが冷め切ったころにインターホンが来客を告げる。

「あっ。ユウくん?雪夜だけど卵粥を持ってきたよ。」

「雪夜さんありがとうございます。今、開けます。」

玄関を開けると大きな土鍋を持った雪夜が立っていた。

「こんばんはって言うのも変だね。さっきまで一緒にいたもんね。」

そう言いながら雪夜はリビングに入ってくる。

「海人くんは?」

「車のなかで眠っちゃって・・・。響夜さんがベッドまで運んでくれたんです。今カイくんは武蔵と一緒に寝てます。」

「そっか。起こすのも可哀想だね。きっと睡眠不足だろうから・・・。」

痛いたしい海人の腕や首に残る赤い跡を思い出してしまう3人。

闇の呪縛から解いてやりたいと心から思う3人だった。

「海人・・・。」

響夜の呟きが悲しく部屋に染み込む。

「ダメだよ。みんなして落ち込んでちゃ。海人くんを助けるんだろ?ボク達で。響夜オマエは諦めないと言っただろう。そんな顔しててどうすんのさ。ユウくん、キミは自分を責めているようだけど、そんなことより海人くんを助けるほうが先なんじゃないのかな?」

雪夜の叱責に二人は顔を上げる。

そう、まずはカイトを、カイくんを助けないと・・・。二人は強く思う。

「雪夜、ありがとう。そうだな、オレが今度こそ海人を助けるんだ。落ち込んでる場合じゃないよな。」

「雪夜さん。ありがとう。ボクもカイくんを助けたい。」

「ボクも同じように海人くんが元に戻るように祈ってる。それは聖夜も麗華さんも彰人くんも同じだと思う。みんなで海人くんを助けよう。」

3人は顔を見合わせて頷く。

海人は今、自分達の傍にいる。もうコウキの所へ返すつもりはない。これからはオレ達が海人を守るのだ。隣の部屋で静かに眠る海人に誓う。もう誰も海人を苦しめやしないと・・・。



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(。◠‿◠。)♡【✾こんばんは✾】♡(。◠‿◠。)いつも拙くてふがいない私のお話を訪問してくださる皆様。本当にありがとうございます。すっごく感謝しています。マジでっ!!

なのに最近は不定期更新になっちゃって・・・。m(。≧Д≦。)mスマーン!!ごめんなさい。どうも調子が悪くていけません。愛のないRを書いたせいなのか・・・。薬が合っていないのか・・・。明日からはちゃんと定期更新出来るように頑張りますのでヨロシクお願いします。



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