キミと空とネコと
キミと空とネコと83
「ヤメテーーー。もう嫌だっ!!」
3人がリビングで話をしていると寝室から海人の叫び声がした。
「海人っ!!」
響夜は一番先に寝室に飛び込む。
海人は眠ったままで夢を見ているのか
「ヤメテ・・・。もう許して・・・。」
小さな声で繰り返している。頬は涙に塗れ、手はそこから逃れようとするかのように上に伸ばされている。武蔵が心配そうに海人の顔を舐めている。
「海人っ。大丈夫だ。もう大丈夫。」
響夜は海人を抱き起こし背中をさする。
それでもしばらく海人はもがいていたが、響夜が耳元で「大丈夫だ。オレが傍にいるから。」と繰り返して言いながら背中を優しくさすることで次第に落ち着きを取り戻し、響夜の腕の中で静かに安心したように寝息を立て始める。
「今日はお粥を食べるどころではなさそうだね。」
「だな。」
「コウキさんとの夢を見てるのかな。カイくん泣いてる。よっぽど辛かったんだね。」
抱き起こした海人の身体を静かに横にする。涙を拭いて、響夜がそこから離れようとした時、服を海人が掴んでいるのに気が付く。
「オレ、海人の傍にいてもいいかな?」
「カイくんの無意識が響夜さんを求めているのかな?」
「ほんとの海人くんが出ているのかもしれないな。ここは海人くんのマンションだから。」
「卵粥せっかく作ったのにな。」
「雪夜さんごめんなさい。」
「あっ。ごめんね。ユウくんが悪いわけじゃないから。海人くんがちゃんと眠れるならそれの方が大事だし、卵粥は又明日作るよ。」
「3人で食べようぜ。オレの分はここに持ってきてくれればいいから。」
「そうだな。お腹も空いてきたしそうしようか。」
「はい。ボクも雪夜さんのお粥食べてみたいです。」
武蔵もお腹が空いたとばかりにリビングにやってくる。ユウは武蔵のご飯をし、雪夜はキッチンで土鍋を温める。武蔵と雪夜とユウはリビングで、響夜は寝室でそれを食べる。
「うわっ。すごくおいしいです。雪夜さん。」
「ありがとう。たくさん食べてね。おかわりあるから。」
「はい。いただきます。」
暗い顔をしていた3人だが温かいお粥に顔をほころばせる。
すると匂いにつられたのか海人が目を覚ます。
「いい匂いがする。」
「食べるか?雪夜の卵粥、上手いぞ。」
「うん。」
寝ぼけているのか響夜だとわかっていない海人は頷く。
リビングの2人は海人が起きた事などわかるはずもなく、寝室の2人の様子には気が付かない。
器を持とうと差し出された海人の両手を見て響夜は言う。
「食べさせてやる。」
「一人で食べれるよ。」
「病人はいう事を聞きなさい。」
「はい。」
響夜がスプーンを口元に持っていくと素直に食べる海人。
そういえば、海人がインフルエンザにかかった時もこうやってお粥を食べさせたなと響夜が思っていると
「何だか前にもこうやって食べさせてくれた人がいた気がする・・・。」
海人の呟きに心で喜ぶ。海人はオレの事をすっかり忘れたわけではない。
「それはオレだよ。」と言いそうになるがそこをぐっと押さえる。ここでそれはオレだと言っても海人は信じないだろう。少しでもオレの事を覚えてくれてたのなら良しとしよう。
「はい。もう一口食べろ。冷めたらおいしくないぞ。」
そう言って口元にスプーンを運ぶと素直に口の中に入れる。
「おいしいね。久し振りにおいしいものを食べた気がする。温かいね。」
なんとか茶碗一杯の粥を海人は食べきった。
「食べてすぐ寝ると胃にもたれるかな?」
響夜が海人に言った時には海人は再び夢の中で・・・。
幸せそうな顔で眠っている。相変わらず響夜の服は掴んだままで・・・。
「おやすみ。海人。オレが傍にいるからもう怖い事なんてないぞ。オレが海人を守るから。もう二度と海人を傷つけないように頑張るからな。」
それに答えるかのように海人の口元がほころぶ。
「幸せな夢を見て眠れるといいな。海人。」
響夜は優しく海人の髪の毛を指で梳く。
海人のサラサラの髪の毛が響夜の指の間をすり抜ける。
海人の顔に月の光が差す。優しい月の光を浴びる頬を響夜はなでる。
「海人、愛してる。」
小さな声で呟きながら・・・。
言うたびに海人への愛しさだけが溢れてくる。
響夜は髪の毛を梳きながらその頬に口付けを落とす。
そして海人の唇にそっと触れるだけのキスをする。
「海人に誓う。オレは海人を守る。海人だけを愛することを。もう二度と海人を悲しませないと。」
誓いのキス。響夜だけが心に秘めた誓いのキス。
海人がオレの事を覚えていなくてもいい。オレが覚えてるから。
オレの事を思い出さなくてもいいから、海人戻って来い。もう辛い目には遭わせやしない。海人を泣かせやしない。海人に笑っていて欲しいから・・・。
スースーと静かな寝息をたてる海人を見ながら、いつしか響夜も海人の横で目を瞑る。
響夜も今日のために、小田切から主導権を取り戻すために寝る間を惜しんで仕事をしていたのだ。
愛する海人の寝顔に、寝息に、服だけど掴んで離さない海人の手に、嬉しさが込み上げ海人が傍にいるという安堵感から瞼が落ちてくる。そのまま二人は眠りの世界に入り込んでいった。
「ねぇ、ちょっと来てごらん。」
寝室に茶碗を取りに行ったはずの雪夜がユウを寝室に手招きする。
「どうしたの?雪夜さん。」
「いいから、静かにね。」
その先には響夜の腕の中で安心して眠っている海人と、その海人を包みこむかのように抱きしめて眠る響夜、海人の背中に身体を寄せて眠る武蔵がいた。
「何か愛し合ってるって感じじゃない?」
「そうですね。なんか羨ましいかも・・・。」
「海人くんの無意識は響夜を求めてるんだね。響夜は海人くんの気持ちに気が付いてないおバカさんだけど、海人くんを愛する心は誰にも負けてないよ。きっと彼なんかよりもね。」
「うん。カイくんの響夜さんを愛する気持ちも相当ですよ。何で響夜さんはわからないのか不思議なくらいです。」
「でも、2人の事は周りが言うことじゃない。海人くんは響夜に。響夜は海人くんにちゃんと気持ちを伝えないとね。」
「はい。じれったいですけど・・・。」
「かなりじれったいよね。」
2人顔を見合わせて小さく笑うと寝室のドアを閉める。
ベッドの中の2人は雪夜とユウに見られてる事なんて知らずにお互いを求め合うように身体を寄り添わせながら眠る。
優しい月の光を浴びながら・・・。
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✽✽✽目次✽✽✽

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たとえこの世の終りが来ようとも

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キミが思い出になる前に

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月と太陽がすれ違う時

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イラスト

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頂きもの☆

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雑記

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土曜の雨のジンクス

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さよならが言えなくて。

~ Comment ~
Re: タイトルなし
ハル様こんにちは
返コメが遅くなってゴメンなさい。
ちょっと、スランプなのか気持ち的に乱れてて・・・。
響夜が成長したって言ってくれてとても嬉しいです。
私的にはそう思えなくて・・・。なんて下手なんだと思いながら書いてる毎日で・・・。ハル様のお言葉が嬉しいのです。
ハル様は私の指標でもあるので、どうか自分を卑下するような事は考えないで下さいね。私はハル様のお話が大好きなんですから・・・。
それに私の事もお話の中の人物にも労って下さる優しさに、私も海人も響夜も癒されているのですから・・・。
海人と響夜がお互いに必要なんだと思えるまで・・・。
ハル様見守ってやって下さいね。ありがとうございます。
返コメが遅くなってゴメンなさい。
ちょっと、スランプなのか気持ち的に乱れてて・・・。
響夜が成長したって言ってくれてとても嬉しいです。
私的にはそう思えなくて・・・。なんて下手なんだと思いながら書いてる毎日で・・・。ハル様のお言葉が嬉しいのです。
ハル様は私の指標でもあるので、どうか自分を卑下するような事は考えないで下さいね。私はハル様のお話が大好きなんですから・・・。
それに私の事もお話の中の人物にも労って下さる優しさに、私も海人も響夜も癒されているのですから・・・。
海人と響夜がお互いに必要なんだと思えるまで・・・。
ハル様見守ってやって下さいね。ありがとうございます。
- #174 † Rin †
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- 2012.04/22 12:09
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まとめteみた.【キミと空とネコと83】
「ヤメテーーー。もう嫌だっ!!」3人がリビングで話をしていると寝室から海人の叫び声がした。「海人っ!して・・・。」小さな声で繰り返している。頬は涙に塗れ、手はそこから逃れよ
- from まとめwoネタ速suru
- at 2012.04.20 00:46
嬉しいですっ(/_;)
何が嬉しいって‥響夜くんが成長してくれて‥とっても嬉しい‥
何がこの世で一番尊くて大切なのかをしっかり心に受け止めた‥って感じがして。
生きていくうえで様々な障害や、苦しみ悲しみってありますけど、
自分自身よりも大切な存在なんてみんながみんな巡り合えるわけじゃありません。
だから‥巡り合っただけでふたりは幸せなのだと思います。
その幸せを離すことなく‥掴まえていられたらいいですね。
というか、一生ネガとポジのように噛み合って生きていけたらいいですね。
私は今、自分の小説のことで激落ちしてて‥(あまりの下手さに)
私などがなにかを申すのはおこがましい限りだと思っております。
なのでもしKYなことを言っておりましても、
できれば‥聞き流して下さいね~
お邪魔しておきながら失礼なことばかり言って申し訳ございません。
ふたりの幸せを夢見ながら続きをお待ちしております。