キミと空とネコと

キミと空とネコと85

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明るい陽の光で目が覚めるとオレの腕の中でスースーと小さな寝息を立てて眠る海人がいる。

相変わらずオレの服は握ったままで、オレの温もりを求めるかのようにオレの胸に顔を埋めている海人。

目の下の隅や、細くなった身体は痛いたしいけれど、今日の海人の顔は少し微笑んでいるようで穏やかだ。

どんな姿になったとしても、オレの海人に対する思いは変わらない。

海人をこんな風にしたコウキって奴に腹は立っても、だからって海人を責めるつもりはさらさらない。

愛しくてたまらないんだ。

この気持ちを海人にぶつけてしまったら、海人が壊れてしまうんじゃないかって思ってしまう。だから、ついふざけたように「好きだ」とか「愛してる」って言ってしまう。

海人の寝顔を眺め、サラサラの髪の毛を梳く。

「オレは本当に海人の事が好きだ。愛してる。」

小さく呟く言葉にさえオレの身体は震える。それくらいに海人に惚れてるんだなと思う。壊したくない気持ちと壊してしまいたい気持ちが揺れ動く。

海人が目を覚ました時にオレがいたんじゃきっと海人は混乱すると思い、静かに海人から離れる。ぎゅっとオレの服を握っている手を外すと、その手が何かを掴むように空を彷徨いストンとベッドに落ちる。悲しげな表情をする海人。

「ごめん。海人。今はオレが傍にいすぎる事は海人の混乱を招くだけだから。海人がオレの存在を必要とした時は離れないから、今はごめんな。」

海人の頭を優しくなで寝室から出る。

リビングでは雪夜とユウがコーヒーを飲んでいた。

「カイくんはどうだ?」

「ああ、まだ寝てる。」

「響夜さんもなんか飲みますか?」

「ああ、頼む。」

「じゃ、響夜さんには紅茶入れますね。ミルクは要りますか?」

「ああ。」

ユウがキッチンへ行くと雪夜が響夜に話し掛けてきた。

「カイくんが目を覚ますまで傍にいるのかと思ってたよ。」

「目が覚めた時に知らない人間がいたら海人は混乱するだろ。海人の心を乱したくないんだ。」

「そう。昨日は2人で過ごせてよかったね。」

「ああ。ありがとう。2人にしてくれて。お粥を入れてた茶碗が無くなってたから、部屋には来たんだろ。」

「ああ。取りに行ったら2人とも抱きあって眠ってたから。それを起こすほどボクは無粋じゃないつもりだよ。響夜にとっても、カイくんにとってもいい夜だったと思う。」

「海人にとって良かったのかはわからないけど、オレは幸せだったぜ。」

「はぁ。やっぱり響夜だな・・・。」

あきれたような雪夜の顔に響夜は雪夜が何を言いたいのかわからずにいる。

「ホント、響夜さんて鈍感だよね。カイくんはこんな人のどこがいいんだか・・・。」

紅茶を持ってきたユウの嘆き。

「えっ?オレが鈍感?どういうことだよ。」

「それは自分で考えなよ。響夜は鈍感なんだよ。自分の気持ちがやっとわかったところで、周りの人間の気持ちまで目が行き届かないんだろう。そのうちわかるようになるよ。時間は無限大だから。」

「そうですね。ボク達がどうこう言う事じゃないですね。」

雪夜とユウは2人で顔を見つめ合い、意味深に微笑みあう。

「何だよ。それ。オレだけのけものじゃん。」

響夜が拗ねていたとき、リビングに海人が現れた。

「カイくんおはよっ。」

ユウの声にもちゃんと目が覚めていないのか反応しない海人。

「カイくん。おはよう。」

「海人おはよう。」

雪夜と響夜のあいさつにやっと目を覚ました海人。

「ユウと雪夜さんと・・・響夜さん?だったっけ?えと、おはようございます。どうしてみなさんここにいるんですか?」

昨日のように能面のような表情の海人だが、ぐっすりと寝たことで少し覇気がただよっている。

「ひどいなぁ。カイくん。昨日は車の中で寝ちゃって起きなかったから、響夜さんがベッドまで運んでくれたんだよ。寝てたらカイくんひどくうなされてさ。そんなカイくんをほっとけないじゃないか。雪夜さんも心配して来てくれたのに・・・。」

「そう・・・。ありがとうございました。」

「カイくん何か飲む?甘いカフェオレなんかどう?」

「ここに牛乳なんてないよ。」

「買って来といた。ボク、今日は休みだからカイくんの傍にいるよ。カイくんと過ごすのも久し振りだから。ねっ。カイくんいいでしょ?今日はカイくんもお休みだって麗華さんが言ってたよ。」

「そうなの?オレ休みなのか。じゃ、カフェオレお願い。オレ顔洗ってくる。」

海人が洗面所に向かうと、「オレも顔洗ってくるわ。」と少し間をおいて響夜も洗面所に向かう。



「海人、オレも顔洗いたいんだけど、いいかな?」

響夜の声に身体をビクンとした海人だったが振り返って響夜を見ると響夜は優しい顔で笑っている。その顔がキレイだななんて思うオレはこの人を知ってるような気がする。考えて見るけど思い浮かばずなんだかもどかしい。

「海人?嫌ならいいんだ。」

「ああ、違います。どうぞ使ってください。」

海人はその場に佇んで考える。けど何もわからない。響夜は呆然としている海人からタオルを取るとゴシゴシと顔を拭く。

「あっ。それオレが使った奴なのに。新しいの出します。」

「いいよ。これで。海人の使ったタオルなら構わない。」

この人は何を言ってるんだろう?

「海人は顔洗ったのか?」

頷く海人の背中をリビングへと押す響夜。

「じゃ、戻ろうぜ。」

押されている背中がやけに熱を持っている。オレの熱なのか、響夜さんの熱なのかわからないけど、なんだかくすぐったくて気持ちいいなと顔が笑ってしまう。

リビングでユウの入れてくれたカフェオレを飲みながら3人の会話を聞いていると、なんだか懐かしい気持ちが溢れてくる。

ドクンっと心臓が鳴り、警報音が心に鳴り響く。

「ダメだ。これが心地いいと、こうしていたいなんて思っちゃダメだ。他の人と関わりを深く持っちゃダメだ。オレは一人なんだから。これが心地よいと思ったら求めてしまって、一人になった時に耐えられるはずない。いつまでも傍にいてくれるとは限らないんだから。」

表情を硬くした海人にユウが声をかける。

「カイくん。今日は病院に行こうね。しばらく行ってないでしょ。ボクが一緒に行くから。」

「病院?オレは行かないよ、病院なんて。」

「どうして?薬もないみたいだし、ちゃんと通院しなさいって先生も言ってたでしょ。」

病院に行って何をどう話をするのか。何を話していいのかわからない。何より誰にも話したくない。そう・・・だ。コウキに連絡しないと怒られる。執拗に身体を求められてしまう。そんなの嫌だ。

「病院には行かない。コウキの所に戻らなきゃ。怒られる。連絡しなきゃ。」

海人の表情がなくなり、暗い影を纏う。

3人はお互いの顔を見合わせる。

「カイくん。コウキさんは今日からしばらく出張だって。だからカイくんはここにいていいんだよ。だから病院に行こう。」

「そう。コウキは出張なの・・・。でも病院は行かない。」

「でもカイくん・・・。」

「行かないって言ったら行かないっ!!」



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ごめんなさい。又やっちゃいました。ちょっと0時更新って縛りつけるのはキツイようです。しばらく0時更新にこだわらずに書いてもいいですか?こんな私ですがよろしければまたご訪問下さいませ。よろしくお願いします。

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