キミと空とネコと

キミと空とネコと89

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ドライブなんて久し振りだ。

青い空と、髪をなでる風が心地良い。

車の中は響夜とユウがずっとしゃべり、海人は窓から外を眺めながらそれを聞いている。

時折、頷いたり、答えたりする海人の声が混じり、楽しげな雰囲気が伺える。

「なぁ、弁当さぁコンビニとかじゃなくてちょっと贅沢しねぇ?」

「それいいね。どうせだもん普段食べない贅沢なお弁当がいいよね。」

「オレはどっちでもいい。」

「じゃ、贅沢しようぜ。知り合いの割烹がランチの弁当やり始めたんだ。そこうまいからそこの弁当でもいいか?」

「ボクそんなお店しらないから響夜さんに任せる。」

「オレも。」

「よしっ。決定。絶対にうまいから。2人ともビックリするぜ。」

響夜は車を止めると携帯でお店に電話し、弁当を3つ予約する。

「ラッキーだ。弁当残り3個だった。評判が良いらしくてすぐに売り切れるらしい。」

「うわぁ。そんなに評判なんだ。でも割烹のお弁当なんて高いんじゃないの?」

「さぁ?値段知らねぇ。」

「ええっ。値段聞かなかったの響夜さん。何だか怖い気がする。」

「値段なんか気にするなよ。オレが奢るから2人とも気にしなくてもいい。」

「ほんと?響夜さん太っ腹。ご馳走になりますっ。」

「オレは払うよ。響夜さんに奢られる理由ないし・・・。」

「カイくん。ここは素直に奢ってもらおうよ。」

「そうだぞ海人。このドライブはオレから言い出したんだから、オレに払わせてくれ。それにオレは年上だし、オマエは甘えとけばいいんだ。海人に上手いもん食わせたいしなっ。」

響夜に言われると意地をはって払うとも言えなくなる。海人がお金を払ったらユウも払わなくちゃいけなくなる。

「わかった。響夜さんご馳走になります。」

「よしよし。じゃ、先に弁当取りに行くな。」

割烹の弁当は2段になっていて風呂敷で包まれている。弁当の器さえもいかにも高いって感じで・・・。

「・・・響夜さん、ホントにすごい高そうなお弁当なんだけど・・・。」

海人も「うんうん」と言うように頷き、ユウの言葉に賛同する。

「海人とユウが喜んでくれるなら全然高くないさ。飲み物とかはコンビニでいいか?」

「いいよ。」「うん。」

3人でそのままコンビニに入る。

「ビール飲みてぇなぁ。買っちゃおうかな。」

「ダメだよ。響夜さんは運転があるでしょ。」

「ちぇっ。せっかく飲めると思ったのにユウは頭が固いなぁ。」

「法律違反しちゃダメでしょ。誰に聞いても同じ事を言いますっ!!ねっ。カイくん。」

「そうだな。酔っ払いの運転の車には乗りたくない。」

「・・・海人に嫌われたくないから我慢するか。その代わり帰ったら飲むぞっ。」

「どうぞ。どうぞ。帰ってからならダメとは言わないから、今は我慢してくださいねぇ。」

名残惜しそうにビールを直す響夜に2人して笑みをかわす。

お弁当と飲み物とお菓子を買って一路少し離れた山の中の名所に向けて出発する。

1時間ほど走ると窓から桜の花びらが舞い込んで来る。ほのかに花の香りが漂う。

「もうすぐ着くぞ。」

舞い降りた花びらを窓から外に放つと後へ舞って行く。

海人が窓を全開にして眺めると、そこには慎ましい淡いピンクの花びらが満開に咲き乱れている。

「確か公園が合ったはず。ああ、ここだ。」

響夜は公園の駐車場に車を止める。

「さぁ、着いたぞ。2人とも外に出て。」

車から出て大きく伸びをすると、気持ちの良い風と空気、そして淡い桜の香りが鼻をくすぐる。

それぞれに荷物を持ち公園に入ると、ピンクの花びらが舞いを見せる様に風に乗って踊り3人を迎えてくれる。

「わあっ!!」

海人はその美しい景色に目を奪われる。

「すごいキレイだ。こんな桜今まで見た事がないよ!!」

そう言う海人を見た響夜は海人に心を奪われる。

「ああ、すごくキレイだ。」

響夜は海人に向かって言ってるのだが、海人はそんな響夜には気が付かず・・・。

「ホントにどっちもキレイだね。」

両方の気持ちを知っているユウだけが意味深に返すが海人は桜に心奪われ聞いてない様子。

響夜は海人の喜ぶ顔を見て連れてきて良かったと心から思う。きっと、今まで周りに気を使って心に余裕もなく過ごしてきた海人を想像出来るからこそ、自分は海人を喜ばせてやりたいと思うのだ。自分の事より海人を喜ばせたいという響夜の気持ちがユウにも伝わる。ユウは響夜となら海人は幸せになれるのだと確信する。そのためにはコウキと海人を離さないといけないんだと改めて思う。響夜も自分が海人を喜ばせるには自分が海人の傍にいないと出来ない事なのだと実感する。

「さぁ。弁当食べようぜ。」

「ええっ。もう食べるの?」

「オレ運転して腹減ったし、弁当食いながら花を愛でようぜ。」

「それもいいかも。ボクお弁当の中見たいし。」

「どっちなんだよ。ユウは。「もう食べるの」って言ったり「それもいいかも」って言ったり。」

「みんなでお弁当を食べましょう。」

ユウに背中を押されて1本の桜の下にシートを広げて座る。

「響夜さん、よくレジャーシートなんて車につんでましたねぇ」

「ああ。案外これって役に立つからな。いつでもつんでる。」

そんな2人の会話も聞こえてないのか海人は桜を見上げたままだ。

「カイくん、お弁当食べるよ。はい、これカイくんのお弁当。」

ユウに手渡されてやっと桜を見上げるのをやめて弁当を受け取る。

「どんなお弁当なのかな?」

2段になったお弁当の上の段はキレイに型抜きされ彩りよくウニやいくら、海鮮の乗った華やかな散らし寿司。周りには花模様に型抜きされた人参のたき合わせや、蕗や高野豆腐、柚子の器の中には大根と昆布のなますなどが彩りよく飾られ目にもおいしそうで嬉しくなる。
下の段には甘鯛の桜葉包み、鴨のロースに、出し巻き卵、エビや大葉、筍、山菜の天ぷら。天ぷらには岩塩が添えられている。こちらも目で見るだけでも楽しめる。

「すごいね響夜さん。ほんとに贅沢だ。ボクこんなお弁当食べたことないよ。うん、おいしいっ!!」

「だろっ。ここの料理は誰もが上手いって言うんだぜ。お勧めの店だ。ただし、それなりの値段だけどなっ。どうした?海人食べないのか?」

「えっ。食べるよ。すごくキレイだから食べるのもったいないなぁとか思って。オレこんなに食べれないし・・・。」

「じゃ、この弁当の写真を撮っておくか。んで、弁当全部食えなかったらオレが食べるし、海人はおいしく食べれるだけ食べればいい。」

海人が無理をしないように、海人が望むように考えてくれる響夜の言葉に海人は響夜の顔を見たまま視線を外すことが出来ない。心臓がトクンと跳ねる。

「うん。響夜さんありがとう。」

目尻を薄い朱色に染めて俯く海人が愛しくて響夜はその表情をデジカメに収める。海人には気付かれないように、もう何枚も海人を撮っている。

まだ手の付けていない海人の弁当を響夜の持ってきたデジカメや自分達の携帯に映し込む。

その後も響夜のデジカメは海人の表情を収め続ける。もちろん3人一緒の写真も何枚も撮っている。最初は写真を撮られることを嫌がっていた海人も2人にかかると負けてしまい許してしまう。ある意味この2人は最強のタッグだなと海人は思う。

陽も暮れてきて少し肌寒くなってきた。誰が言わずともこの楽しい一日の終りが近づいていることを感じて口数が少なくなる。

最後は3人でシートに寝転び桜を下から愛でることにした。

「そろそろ帰るか。もう夕方になる。」

「楽しいと時間の経つのが早いね。」

「もう少しだけこのままでいたい。」

海人の呟きにもう一度桜を見上げる。

「来年も桜を見に来ような。」

「今度はみんなで来ようね。」

海人は何を思うのか答えない。ただ桜を見ているだけ・・・。その瞳には涙がぷっくりと浮かんでいる。今にも溢れ落ちそうな涙に2人は気が付かずに来年のことを話している。

「来年来れるかなんてわからない。みんなと一緒に居られる確信はないし、コウキが許してくれるかわからない・・・。今日の桜を忘れずにいよう。楽しすぎたから終わってしまう事が寂しいんだな。」

「もう少しこのままでいたい」と言った海人は見えない未来が怖くて仕方がないのだった。




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~ Comment ~

早く心が解放されますように‥ 

Rinさま、こんばんは!

楽しそうで‥お弁当も美味しそう。
どうしてこんなにおいしそうな描写ができるのかと
羨ましい限りです。
そう言う情景を書くのが超ヘタで‥
尊敬いたします!

楽しそうで、美味しそうで‥

でも‥
でも、
でも囚われた心は戻ってきてないし、
いつになったら戻ってくのかとやきもきしています。

心臓が痛くなってきました~
胃もシクシクします~

どうか早く解放されてくれればいいと‥願っているのですが。

洗脳されているのと同じですね、
こうなると相当時間を要してしまいますね。

根気強く周りの人間が、
「大丈夫だよ、もう怖くないよ、自由なんだよ」っって、
ずっと囁いていてあげないと‥帰って来れないですね(/_;)

諸悪の根源が自分のやったことを猛省して
海人くんから自立しないと。
ホントにあ奴は許せません。
土下座しても許してやらないっ!と、
怒っているハルなのです。

明けない夜はない、冬来りなば春遠からじ、
と言う言葉もあるように‥きっと心の春はやってきますよね、
信じて待っていればいいんですよね?

今思っていること→海人くんが元気になったら‥
うちの子みたいにお風呂に入れてあげて洗ってあげたい‥v-344

ではまた参りますm(__)m

Re: 早く心が解放されますように‥ 

ハル様☾(☯‿☯)ノ✿❀こんばんは❀✿

ご訪問&コメありがとですっ☆
ちょい小康状態でおります。描写が・・・(*゚ェ゚*a)゙テレチャゥナー
いえいえ、そんな羨ましがられるような描写が出来ているのでしょうか?
お弁当はネットで調べまくり(笑)まあ、以前割烹に勤めてた人が作ってくれたお弁当などを思い出しつつ書いただけなんです。そのお弁当はおいしかったなぁとか思い出しつつ書いてるからにじみ出たのかしら・・・。花見はもう何年行ってないかなぁ。これも楽しかった花見を思い出しつつです(笑)「 尊敬いたします!」はそのままハル様にお返しいたしますっ!!

私はハル様のような知識がないので、医学の事だけでなく政治や警察のことまで幅広く書けるハル様を「すごいっ!!」ってマジで思ってますから。私ごときが言うのもなんですが、自信を持ってくださいませ。ランキングもいつも上位じゃないですか。それだけ支持してくださる読者の方がいるんですものЧЁ――d(,,Őฺ∀Őฺ,,)b――S!!♪

海人のことでハル様の胃がぁ~~~((유∀유|||)最初に謝っておきます。ごめんなさい。これを書かないことには先に進めないってことで痛いです。この後2回(3回になるかも・・・。)ほどハル様には辛いかと思われますのでスルーして下さい。もう終盤のつもりなのですが、なかなか話が進まない・・・。春はもうすぐ来ますよぉo(>ω<*)o その際には海人をお風呂で洗ってやって下さい。バラの香り持参で行かせますのでっ>

あと『薄桜鬼』私は画像がキレイなのでPSPでしてますがDS版も出てますよっキラリo(`・ω´・+o) ぅぃ
しかしDS5台はすごいですね。
『薄桜鬼』はやっぱり1作目がお勧めです。ああ、左之さん萌え、一君萌え、土方さん萌えです。今の私の中では左之さんが一番です。甘い甘すぎるぅ。声がステキ。ああ、声が聞きたくなったのでゲームしてきます。

ハル様アリガトウ✾“ヽ(。◕‿◕。)ノ”
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