キミと空とネコと

キミと空とネコと90

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花見から海人のマンションに戻ると響夜の携帯に聖夜から電話が入る。

「ああ。海人とユウと3人で花見に行ってた。病院は行ってない。海人が嫌がったからな。無理して行っても正確な診察は出来ないだろ。ああ。わかった。」

「海人、今日の晩餐はにぎやかになりそうだ。ここに聖夜も雪夜も麗華も彰人も来るらしいぞ。うまい晩飯を持って来るんだと。」

「みんな来るんですか?」

海人は少し憂鬱になる。良い人達なのはわかるけど、たくさんの人の中にいるのが辛い。

少し憂鬱そうな表情をした海人に気付いた響夜が「やめてもいいんだぞ」と言ってくれたが、せっかくの好意とみんながここでの集まりを予定しているのだと思うと断れない。

「飲み物が足りないかもしれないな。」

「大丈夫。ボクのとこにたくさんあるから持ってくるよ。」

ユウが部屋に戻ると響夜と2人になる。

「海人、無理しなくていいんだぞ。」

「大丈夫です。みんなオレの事を考えてくれてるんだし。にぎやかなのは楽しいと思います。」

感情を少し隠したような海人に気付いた響夜だが、海人は頑固なところがあるからこれ以上言っても聞かないだろうとそれ以上は何も言わない。自分が海人の様子に気を付けておけば良い事なのだ。

「海人疲れてないか?風呂にでも入ってリラックスして来いよ。風呂の用意してやる。」

「自分でします。響夜さんこそ運転で疲れてませんか?明日は仕事ですか?」

「オレの仕事は自分でスケジュール立ててするから大丈夫だ。海人の送り迎えしてやるよ。」

「ここから5分ですよ。一人で行けます。響夜さんは自分の家に帰らないんですか?」

「ここにいちゃ迷惑か?海人が仕事の時は自分の家に帰るけど、それ以外は一緒に居たいんだ。だから送り迎えもしたいんだけど、やっぱ迷惑だよな。海人が一人になる時間も欲しいもんな。」

響夜の切なそうな表情と寂しさを含んだ声に海人の心臓が跳ねる。

「・・・迷惑とか・・・じゃないですけど・・・。でも・・・。」

「無理ならいいんだ。海人を我慢させることはしたくないし。」

「響夜さん、どうしてそんなにオレといたがるんですか?」

「海人が心配だからかな。」

「心配・・・ですか・・・。」

響夜は芯からそう思っているのだろう。友人としてオレの何かを心配してくれている。それが嬉しいような悲しいような自分の気持ちがわからない。

「オレが安心出来るまででいいんだけど。」

「それは今のオレは安心出来ないって事ですね。」

「そうだな。ちゃんとメシ食って、しっかり寝て、元気な海人に戻ったら安心出来る。」

「そう・・・。」

一人でいたい気もするけど、響夜といると安心できて心地良いのも事実で、関わらないほうがいいと思う自分と、響夜といたいと思う自分もいて天秤にかけると響夜といたいと思う方が勝って・・・。

「響夜さんが安心出来るまで一緒に居てくれてもオレはかまいません。」

なんて高飛車な言い方だと思うが恥ずかしい気持ちもあって素直に言えない。顔をうっすら赤らめて俯き、小さな声で言う海人。でもそんな海人でさえ可愛いと、愛しいと思う響夜は「一緒に居てくれてもかまわない」と言う海人の言葉が嬉しい。

「ありがとう。海人。」

そっと海人の身体を抱きしめる。海人は一瞬身体を硬くするが優しいハグに心地よさを感じてそのまま響夜に抱かれている。程なく響夜は「風呂の準備をしてくる」と抱きしめていた手を離し、風呂場に行ってしまう。

抱きしめられていた温もりがなくなって海人は何だか寂しい気持ちになる。

オレは人恋しいだけなのかな?響夜さんの温もりでなくてもいい?

響夜の背中を見ながら考えるがわからない。わかる必要なんてないと頭の中の誰かが言う。それを考えようとする海人を否定するかのような冷たい言い方。海人の思考は散漫になりそれ以上考える事が出来なくなる。響夜が風呂の用意が出来たと告げ、その声に促されるように風呂に入るが頭の中は靄がかかったみたいで・・・。いつの間に風呂から出て着替えたのかわからない始末だった。

それからみんなが集まり、ケータリングの料理とユウの持ってきた飲み物やそれぞれが持ってきたアルコールで夕食や会話を楽しむ。今日の花見のデジカメの写真はテレビに接続されみんなで鑑賞する。そんな時間の中で海人は風呂に入ったためか、花見で疲れたためかコックリコックリと頭を揺らし、隣にいる響夜へともたれかかりそうになっては姿勢を戻していたのだが、それにも限界が来たようで響夜にもたれかかって小さな寝息を立て始める。

「海人眠いのか?」

「・・・ん・・・。」

もう海人の意識は夢の中のようで、響夜は海人を寝室に連れていこうと立たせるが夢の中の海人は響夜へとしなだれかかっててくる。

起こすのも可哀想で響夜は海人を横抱きに抱えるとベッドへ寝かせる。

「いい夢を。おやすみ海人。」

頭をなで頬にキスを一つ落とすと海人の口元に微笑みが浮かぶ。目の下の隅も少し薄くなり顔の血色も良くなってきた。赤いしるしももうすぐ消えるだろう。

響夜がリビングに戻ると、さっきまでは楽しそうな雰囲気だったのが一点して緊張したような雰囲気になっている。

聖夜の手の中には海人の携帯があった。

海人は携帯を持っていてもあまり気に止めない。音は消しているしマナーモードの振動で気が付きそうなものだがどこにおいてるのか海人でさえわからないことが有り、必要がないと思ってるのではないかと思うほどだ。それには訳があって、以前は海人もコウキに対してメールや電話を頻繁にしていたのだが、いつからかコウキからメールの返信もあまり来なくなり、電話を掛けても出てくれる事が少なくなってきて海人は自分から連絡することをやめてしまった。連絡の付かないことが辛くて、それならしないほうがマシだと思ったからだ。コウキとの生活の中ではコウキが一番で友人も居なくなくなってたのでコウキ以外に電話をすることは殆ど無く、それ以来携帯を使うことがあまりなくなっていた。コウキに再会してからはコウキに電話をしたり電話がかかってきたりしていたが、今コウキは出張中で山奥の電波の届かないところで研修をしているから電話はかかってこないと思っているので携帯を見る事もないのだ。ここにいる人間にはいつも響夜かユウが連絡しているので海人がすることはない。花見の時もユウが「携帯は?」と聞いて持った海人なのだ。ユウのおかげで花見の写真を撮れたのだけど・・・。

「彼は粘着質な性格なのか、カイくんに執着してるね。このメールの件数を見ればわかるよ。内容を見なくてもね。」

携帯には今日一日で30件近くのコウキからのメールが来ている。

「ボク、昨日もコウキさんからのメールをボクの携帯に転送したんだけど、ボクの携帯はコウキさんのメールで溢れそうです。」

「そのうち海人くんはこのメールに気が付く可能性は大きいよね。今はなんとかユウくんが海人くんが気が付く前に転送してくれてるけど。」

「それか奴が海人を捕まえにくるかだな。」

「カイくんは明日から仕事ですよね。」

「そうね。海人くんに不信感を抱かせないためにも普通の生活をしてもらわないといけないと思うわ。むやみに休ませるのも不信感を抱かせるだけでしょ。バイトだし収入にも関わってくるから海人くんは仕事を休む気はないと思う。」

「海人にはオレが送り迎えすることと、海人が仕事してる以外はオレがここに居てもいいって認めてもらってる。奴が海人に接触しようとしたらオレが海人を守る。」

「すごいな響夜。この2日ほどでカイくんに認めさせるなんて。」

「でも海人はオレの事を思い出したわけじゃないからフクザツな気持ちだけどな。」

「病院に行ってないっていうから心配したけど、送迎と夜は響夜が、仕事中は麗華と彰人がカイくんを守れるな。」

「昼休憩はどうするんですか?」

「海人くんはお昼はマンションに戻ってるんだったんだな。」

「オレがずっといたんじゃ海人は一人になれる時間がそこしかないしなぁ。」

「昼休憩も送迎してたんじゃ、海人くんに怪しまれるし。どうしたら・・・。」

「そのコウキって奴と話し合わないとダメなんじゃねぇの?そいつが海人を諦めないかぎり海人は自由になれないし、いつまでも海人を騙すような相談をしなくちゃいけねぇってことだろ?」

「それも問題ですよね。」

「コウキって奴が海人を諦めたら海人を四六時中見守っておかなくちゃならない状況はなくなるんだから、さっさとカタつけちまおうぜ。」

「そうだな。響夜だけどまだ待てよ。早急すぎて何の策も練らずに会うのはかえってカイくんに害を及ぼすんじゃないか?」

「そうかもしれないわね。海人くんに執着してるのは歴然としているしね。昼休憩は彰人に海人くんに気付かれないように着いて行ってもらうわ。」

「彰人ばっかじゃ、彰人も大変だろ。オレは時間に融通が利くから戻る時はオレが着いてく。」

「響夜大丈夫なの?例の編集者はまだ響夜の担当なんでしょ。」

「オレが主導権握ってるから大丈夫だ。仕事もセーブしてるから問題ない。オレの仕事はパソコンさえあればどこでも出来るしな。」

「とりあえずはこんなところか。」

「何かあればすぐに連絡をしていこう。」

「じゃ、オレがここにいるからみんな安心して帰っていいぞ。」

「それが一番心配だったりするかも・・・。」

ユウの呟きにみんなが同感だと頷く。

「ひっでぇなあ。オレってそんな風に見られてんの?」

「嘘ですよ。この中で一番の適任者だと思ってます。」

「そうだ。カイくんを守るのは響夜の仕事だ。愛しい人を守るんだから。」

「わかってるよ。オレは海人を守る。」

「じゃあ、今日はこれでお開きだ。」

「響夜さんお片付けお願いします。愛しいカイくんの為にキレイにしてあげて下さいね。カイくんはキレイ好きだから。」

「わかってるよ。キレイにするって。」

「響夜が掃除をするなんて・・・。本当に響夜は変わったなぁ。」

「恋すると変わるもんなのね。男でも・・・。」

「うるさい。早く帰れ。海人が起きちまうだろ。」

「じゃあね。おやすみなさい。」

「おやすみ。」

それぞれが帰途につき部屋は静寂に包まれる。

ふぅっと溜め息をついた響夜が腕まくりをしてリビングを片付けだす。

海人は自分のためにそんな話し合いが成されていた事など露ほども知らず、今日は幸せな夢を見ているのか寝返りを打ちながら微笑んでいる。

「・・・響夜さんありがとう。」

小さな寝言は響夜に届くことはないけれど、同じ空気を吸う2人はお互いの体温を感じなくても一緒に居る事が幸せなのだった。






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