キミと空とネコと

キミと空とネコと93

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空からはいつの間にか大粒の雨が激しく落ちてきていた。

時折稲光がひかり、遠くで雷鳴が鳴っている。

響夜は車の中からマンションのエントランスをじっと見ていた。

「早く帰ってこいよ。海人もうすぐ助けてやるからな。」

あの後も海人は戻ってきていない。

聖夜の調べではコウキは他に部屋を持っているわけではなさそうで、海人がここにいる可能性は高い。

イライラしながら待っていると入り口に男の影が見えた。

「あいつだっ!!」

ユウからの写メで確認する。コウキに間違いない。

すぐに追いかけたい衝動にかられるが、コウキに逃げられたら海人に会えないとしばらく待つ。

マンションの部屋は何故だか電気がつかない。

響夜は聖夜に連絡すると車から降りコウキの部屋に向かう。

コウキがすんなりと部屋に入れるわけはないと思ったが、警察を呼ばれても困るし、なにより海人に乱暴されることを考えると強行突破することは出来ない。

インターホンを鳴らす。1回。2回。

コウキが部屋に戻って10分は経っている。

強行突破しかないのかと思いつつ3回目にインターホンをならした時、憔悴したようなコウキがドアを開けた。

「・・・スギノ・・・キョウヤ・・・」

コウキが呟くが響夜はコウキを押しのけ、海人を探すために部屋に乗り込む。

「海人!!海人どこだ!!いるのか?」

玄関のある一定の距離から物が散乱し破壊されている。

「何だ。これは。」

散乱し破壊されている中心にある部屋のドアが開いていた。

「海人いるのか?」

響夜がその部屋に入ると少し血の匂いがした。

ベッドの横に海人はいた。声を出さない海人。

暗い部屋の中でも海人が普通の状態でない事は電気をつけなくてもわかる。

海人の両手は手錠、首には首輪をつけられ、その首輪はチェーンで繋がれている。

「海人っ!!」

響夜が海人の両手を触るとヌルッとした感触がする。

確かめる事もなく、これが血だということはわかる。血の匂いは海人からだった。

電気をつけて確認するほうがいいのだが、海人の心を思うとそれは残酷な気がして出来ない。

響夜は海人を抱きしめる。一瞬海人の身体が強張るが響夜だとわかるのか弛緩していく。

「海人ごめん。遅くなった。助けにきたぞ。」

海人は何も言わない。

「海人?」

海人からの反応はない。コウキの部屋にいるためか、拘束されているからなのか。

「・・・もうカイはいなくなってしまった。」

部屋に入ってきてうなだれるコウキがぼそりと呟く。

「オマエ、海人に何してるんだよ。早くこの拘束をとけっ!!」

コウキは響夜の声が聞こえていないのか動こうとしない。

響夜はコウキを殴りとばす。

「てめぇ、海人に何をした。早くこれを全部はずせっ!!」

尚も殴るがコウキは反撃してこない。倒れて壁に背をつけたまま起き上がろうともしない。

「オレはカイを愛してた。」

口の端の血を拭うこともせずポツリとコウキが呟く。

「オレはカイと初めて会った時からカイに惹かれてた。」

そう言いながら力が出ないのかノロノロとポケットを探り鍵を取り出して響夜に渡す。響夜はその鍵で海人を拘束している手錠と首輪を外す。トイレに流したのはスペアの方だった。

海人の身体が崩れ、響夜はその身体を抱き止める。

「海人を愛してるならなんで海人と別れた?再会してなんで海人に執着した?」

海人を抱きしめる響夜を見ながらコウキは告白を続ける。

「カイはオレを好きだと言ってくれた。でもカイの好きは家族としての好きなんだといつからかわかってしまった。カイの愛情を確かめようと何度も男とも女とも浮気をした。でもカイは何も言わない。帰ってきてくれればいいと言うだけ。カイは家族愛に恵まれていないのは知ってるだろう。カイはオレにそれを求めていただけなんだ。オレは本当にカイを愛してた。だから恋人じゃなく家族でしかいられない関係が辛くなってカイと別れた。カイは「一番愛してたからオレがいなくなってもういいと思ったんだ」と手首を切ったと言っていたがそうじゃない。家族を失ったからもういいと思ったんだよ。カイは。」

コウキの目からは涙が流れていた。その頃の自分と海人を思い出しているのか。

海人の温もりを抱えながら響夜はコウキの告白をだまって聞く。

「カイと別れてオレは後悔した。はじめはこれでカイを忘れられると思っていた。でも日に日にカイの事しか考えられなくなった。なんで好きなのに別れたんだと後悔してカイのマンションに行った時にはカイは引っ越してて会えなくなった。苦しくて苦しくて。そんな時に偶然あのホテルでカイに出会った。これは運命だと思った。カイとオレは結ばれる運命なのだと。もう二度と離してはいけない。そう思った。だからカイの心に好きな奴が出来たことがわかってオレは焦った。そいつのことは家族としてじゃなく恋愛感情として好きなんだとわかったから。」

コウキは失うのが怖くて海人に執着したのだと自分を嘲るかのような顔をする。

「愛はなくても身体さえ繋げていればカイはオレの元から離れないと思った。カイがそんなことを望んでないのはわかってた。オレはカイが離れていくのが怖かった。お前達がカイの傍にいるのを知ってもうカイが戻って来ないと思った。でもカイの事を諦められなくて毎日カイの行動を尾行してチャンスを待った。そして今日そのチャンスが訪れた。オレはカイを連れ去り、もうここからは出さないと言った。実際そのつもりだった。カイが逃げないように自分で自分を殺めないように拘束した。」

「オレはバカなんだ。カイのことが好きで好きで壊したくなるくらい好きなんだ。」

泣きながら言うコウキの本心は偽りなくその通りなんだろう。でもやり方は間違っている。

「だからってこのやり方は間違っているだろう。オマエは自分の事ばっかりで海人の気持ちをちっとも考えてないじゃないか。自分の気持ちを押し付けて満足だったのか?心のない海人を抱いて嬉しかったか?」

「・・・。オレはこんなカイが欲しかったわけじゃないっ。」

コウキは慟哭する。

「・・・今日は家に帰ったらカイがいるんだと思うと嬉しくて、でも戻ってきたら家はぐちゃぐちゃになっていた。」

確かに寝室も何とかしようと海人が暴れたのだろう。酷くぐちゃぐちゃに乱れていた。

「きっとカイは何とかしようとできる限りの抵抗をしたのだろう。暴れて手錠や首輪を外そうとして手首も首も傷だらけだった。声をかけたけどカイはもう答えてくれなかった。生きてるけど、もうカイは死んでる。瞳は何も映さない。耳にも何も届かない。もうカイはいない。」

コウキは涙をながしながら呆然と海人を見る。

「アンタは海人を愛してると言った。でもそれは愛してるとは言えないだろ。海人はおもちゃじゃない。手に入らないからって駄々をこねてる子供と同じだ。海人を好きならもっと他に方法はあっただろう?」

「・・・他の・・・ほう・・・ほう・・・。」

コウキは考えようとするがわからないようだ。

「まずは海人の気持ちだろ。アンタはそれを考えなかった。愛してるならちゃんと海人に届くように伝えないといけないんじゃないのか?力ずくじゃなくてさ。」

「カイの気持ち?そうだな、オレはカイを自分の傍から離さないことしか考えられなかった。今更だな。」

コウキの告白は終わった。コウキはコウキで海人のことを心から愛していたのだろう。でもそれは間違った愛し方だ。こんな愛し方しか出来なかったコウキには同情はするが許せるわけではない。

「もう一発殴らせろ。これは海人の分だ。」

響夜は海人を静かに横たわせるとコウキを殴る。

「・・ってぇ。」

響夜は拳を振りながらコウキを見る。

「アンタも殴られて痛いだろうけど、海人はもっと痛いんだ。オレは謝らない。」

「いいんだ。カイを連れて行ってくれ。カイはもう戻って来ないかもしれない。オレがこんなこと言うのはおかしいかもしれないけど、カイを幸せにしてやってくれ。オレには出来なかった。カイを・・・カイを頼む。これはオマエにしか頼めない。カイが最初に愛したオマエにしか・・・。」

コウキは横たわる海人の傍にくると髪の毛をなでる。

「カイごめん。オレはほんとにカイの事が好きだった。オレの愛し方が間違っていたのに気付かないで苦しめてごめん。」

そう言ってコウキは海人に頭を下げる。

「もう行ってくれ。オレがバカな真似をしないうちに。」

頭を下げたままのコウキの膝にはポトポトと涙の雫がこぼれていた。

「ああ。オレ達はもう行く。アンタ、次に好きな奴が出来たら今度は間違えるなよ。自分の気持ちを押し付けるんじゃなく相手の気持ちだぞ。」

「・・・ああ。もう間違えない。」

響夜は海人を再び抱き抱えると部屋を出る。部屋の向こうからコウキの慟哭が聞こえた。

「海人。帰ろうな。」

海人が少し微笑んだような気がした。

外に出るといつの間にか雨は止み星が瞬いていた。



*:..。♡*゚¨゚゚・*:..。♡*゚¨゚゚・*:..。♡*゚¨゚・*:..。♡*゚¨゚゚・*:..。♡*゚¨゚゚*:..。♡*゚¨゚゚・*:..。♡*゚¨゚゚・*:..。♡*゚
読んでくださった皆様、ありがとうございます。なんだか余り痛いのはやっぱり書けなくてソフトになっちゃいました。が、海人の心が壊れたのは確かで痛いのかな。長文になってしまいました。でも2回に分けて書くより一気に書いておきたくて。読みづらかったらごめんなさい。最近、長文が多いですよね・・・。

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~ Comment ~

頑張りましたね‥‥ ママ。゚(PД`q*)゚。 泣いちゃったよ~! 

Rinさま、こんばんは。

‥‥お疲れさまでした‥辛かったですね‥。゚(PД`q*)゚。 

私の辛さなんてどうということはないのです。
そのお話しを生み出すものが一番辛いのです。
必要だから書く‥という信念を持って私もヘタクソながら書きます。
Rinさまもそうですものね(^v^)

私の海人くんは(勝手に図々しいこと言っちゃってすみませんっ)偉かったです。
自分を取り戻そうと一生懸命頑張りました。
今は疲れて魂が抜けているかもしれませんが
すぐに戻ってきます。
そしたら‥
最高の‥フランス製の泡のお風呂に入れてあげますからっ

‥‥ヤバい‥涙が出てきてしまいました‥

涙腺が弱っているのでボロボロ涙が出ます。
りかちゃんみたいにポロポロと美しくないのでイヤなのですが‥

酷い目に遭わされたのも勿論、でも彼の〝想い〟にグッときました。
自分を取り戻したい、響夜といたい、響夜、響夜‥って呼んだと思う。
声も枯れるほど呼んで‥ありったけの力で抵抗して‥失いたくないって!

頑張ったよね、体中を撫でて癒してあげたい‥

みんなの力で早く元通りの海人くんに戻ってくれると
私は信じておりますから。
治るまで響夜に抱っこしてもらえばいいんです。
ほら、カンガルーの飼育袋みたいな‥
それ入って生まれ変わる。
今鼻炎で‥泣くと鼻が詰まってしまって(笑)

とりあえず救えたのでまずは‥一段落。

ああ‥泣いちゃったわー
いっぱい泣きましたから人間にして下さいっ
って、訳にはならないですか(笑)

でも私は執念深い人間です。
愛し方を知らなかったというような奴を許す気持ちは塵ほどもありません。
言い訳なんて聞きたくないのです、なにをした!?その事実だけでいい。
だから言いかけは地獄に落ちて言え、バカやろー!
です。
ごめんなさいね,Rin様のキャラを悪く言ってしまって。
でも私は海くんが大事。
これほど傷つけたのだから許されるとは思っていないでしょうけども。

とにかく‥癒してあげることですね。
温もりを与えてあげることです・
大切なのは。

はぁぁぁ‥Rinさまも海くんもよく乗り越えてくれました。
ありがとう‥(/_;)ありがとうございましたm(__)m

気の利いたことも言えず‥ごめんなさい。
また参りますm(__)m

おっ 

間に合ったんですよね? 海人くんの体は大丈夫だったんかな?
けどこれで決着がついたんですよね。響夜くん、決めましたね。
コウキも彼なりに苦しんでたんでしょうけど響夜くんが言ってたように間違ってますよね。力づくはいけません。
て思いつつも、海人くんに首輪してネコに若干萌えてしまいました;すみません(*´Д`)自重
だけどきっとコウキくんの涙は本物だって思うから、彼もこれからですよね。うん、願いたいです。
後は海人くんの心だけやな。響夜くんの事を思い出した海人くんだけど彼なりに理由があっての記憶喪失だったわけだし。
にしても、思い出させたのはコウキくんの言葉ですよね。なんとも皮肉というのか。けどそのおかげで海人くんの記憶が戻ったのですから良しとしないといけないw

Re: 頑張りましたね‥‥ ママ。゚(PД`q*)゚。 泣いちゃったよ~! 

ハル様こんにちはღ❤ღ´ェ`*)

いつもいつも海人を見守ってくださってありがとです。コメもうれしいっv(。・ω・。)ィェィ♪

なんとかコウキとの決着はつけました。これは片付けとかないと響夜と海人の未来はないのでやっかいでした。ハル様は徹底的にコウキを許せなさそ・・・。そこまで憎まれるなんて嬉しいですね。初めて憎まれるキャラを書けて私も成長したのかなぁ?響夜は少し甘かったですかね。でも、海人はコウキを家族と思っていたわけで、海人が初めて心から笑うことを教えてくれた人なので響夜も徹底的には出来ませんでした。響夜も海人には甘いのですねぇ。*
まぁ、まだ完全に響夜と海人が安心というわけではないのですが・・・。ええ、小田切が残っています(΄◉◞౪◟◉‵

海人は休憩中です。頑張りすぎたので響夜に甘えちゃってます*(〃∇〃人)*
無意識の中でしたかったことしちゃってますね(笑)
響夜と海人が結ばれたら、ハル様のお家にお邪魔しちゃいそうです。多分響夜も付いて来るでしょうがいいですか?

ハル様を泣かせちゃったお詫びに海人お手製のスフレチーズケーキとユウが選んだハーブティとバラの香りを持って。そんときは泣かないで笑顔で迎えてやって下さいね。
鼻炎との事。鼻は辛いですよね。考える能力さえ衰えさせますもの。お大事になさってくださいね。

コメほんとにありがとでした。
りかちゃんが泣かないように・・・。海人も笑っていられますように・・・。


Re: おっ 

音夜様こんにちは(*^_^*)

響夜はなんとか間に合ったのかな?海人の身体の傷は治る傷だけど、きっと痛いよねぇ。手首は傷が重なってるから跡は残ります。残った傷はきっと海人の心に刻まれて少し苦いでしょうね。

音夜様にえらく首輪萌え(*´д`*)ハァハァさせてしまったようで・・・。でもあの中でですからねぇ。幸せな中での首輪プレイならよかったんですが、響夜と海人の中ではもう無理でしょうね。残念ながらこのお話の中ではもう出てきません(。-`ω´-)ぅぃ

コウキのおかげで海人の記憶が戻ったのは皮肉ですが、コウキも役に立ってもらわないとね。憎まれキャラだけではあきません。コウキがちゃんと愛せる人と巡り会えるのかはコウキ次第ですからね。海人を苦しめないためにもコウキは更正したと思いたいです。
ではでは音夜様コメありがとでした(*゚∀゚*)
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