キミと空とネコと

キミと空とネコと99

 ←キミと空とネコと98 →キミと空とネコと100



海人と暮らし始めて2週間が経つ。

海人は元に戻ることなく、その間に海人は麗華や彰人、アキ、歩に会った。はじめは警戒しているが声を掛けられると思い出したのか響夜から離れて傍に行って話を聞いている。

外出もしてみたが響夜が傍にいる限りは落ち着いている。というより自分と関わる以外の人間には興味がないのか知らんふりだ。

響夜とてずっと海人と一緒にいるわけには行かず、マンションを数時間開けた事があったのだが帰ってみると部屋の中はぐちゃぐちゃで海人は布団に潜り込み泣きながら眠ったのか頬には涙の跡がついていた。響夜の気配に目覚めた海人は響夜に縋りつき大きな目からポロポロと涙を流して響夜の胸に顔を埋め、イヤイヤと頭を振る。海人の身体は震えていた。

「海人ごめんな。一人が怖かったのか?」

そうだというように響夜を見上げる海人。涙は止まることを知らないかのように際限なく溢れている。

「海人・・・。」

響夜は流れて止まらない海人の涙を指で拭う。それでも次々と溢れてくる涙を唇で拭う。

「しょっぱいな。海人の涙、しょっぱい。」

響夜をじっと見る海人と海人をじっと見る響夜。いつしか視線は深く濃くお互いを求めるかのように絡み会う。

海人は響夜を求め、響夜は海人を求めているのが何も言わなくても感じ合える。

自然と2人は口付けを交わしていた。

淫靡な口付けではない。お互いを求め合い、存在を確認するかのような口付け。響夜の温もりが唇から海人に伝わり、海人は響夜の首に両手をまわす。響夜は海人の腰を引き寄せ強く抱きしめる。

その時間は数秒だったのか何分か経っていたのかわからないが海人の涙は止まっていた。

「海人ごめんな。もう一人にはさせないからな。」

海人が花のように微笑む。響夜はこの笑顔を守りたいのだと心から思う。もう何も海人を傷つけさせない。

その日から海人と響夜は対のように行動を共にしていた。響夜が見えなくなると海人は不安げに響夜を探し回る。聖夜に「カルガモの親子みたいだな」と揶揄されたほどだ。

響夜は出来るだけ海人のマンションで仕事をしていたが、どうしても自分のマンションに行かなければならない時は武蔵を連れて海人と一緒にマンションに来ていた。海人は響夜が仕事をしている間は大人しく本を読んでいる。本が好きな海人は待っている時間も苦痛ではないようで、帰ろうと響夜が言うまで本に没頭している始末だ。

今日も響夜のマンションで過ごしていた。

「だからこの書道家の書体ではダメなんですよ。オレの本の表紙なんですよ。表紙で中身がわかるじゃないですか。確かに『激流』と言う感じだけど乱暴なだけじゃないですか。」

響夜は次回出版の本の表紙について納得がいかない。響夜自身も筆で書いて見るのだが思うような字は書けない。どう伝えればわかってもらえるのか。押し問答の繰り返しなのだ。

「その書道家の先生はオレの本を読んでこの書体を書いたんですか?それならオレの本を全く理解してない。激しさの中に寂しさや優しさ、無情な中にも希望を求める書体を書いて欲しいんです。そうこの字みたいに強い中にも芯が通っててッて・・・えええっ・・・すいません、後でかけなおします。」

響夜は電話を切ると海人を見る。海人は響夜の筆を使って『激流』と何枚も書いていた。その字は響夜が理想としていたもので驚きで声が出ない。

「海人。オマエ・・・。」

尚も海人は嬉しそうに筆を走らせている。

「そうか。海人はオレの小説を読んでるもんな。書道の腕はあるし海人ならオレの小説を理解出来る。だからオレの欲しい字体が書けるんだ。」

それから何枚か響夜の本の題目を海人に書かせると見事に響夜の思う字体で書きあげる。

「海人。すげぇよっ!!海人の文字は生きている。オレの小説に命を吹き込んでくれているみたいだ。これからは海人に書いてもらおう。よし早速これをFAXして担当にぎゃふんと言わせてやる。「先生の理想の字体なんてない」なんて言いやがったからな。海人ありがとな。」

海人の頭をポンポンと叩くと嬉しそうに頬を赤らめる海人が愛しくてしょうがない。海人を引き寄せるとちゅっと唇にキスを落とす。

「お礼のキス。」ウインクして海人をみると目尻がほんのり赤くなって一段と愛らしい。

「海人、大人のキスがしたくなった。」

俯いていた海人が響夜を見上げ目を閉じる。

響夜は海人の額に頬にそして唇に触れる。軽く触れては離れそれを繰り返して深く口付けを交わす。

海人の口から「・・・んっ・・・」と小さな吐息がもれる。

これ以上は進んではいけない。響夜は海人の唇から離れ海人をぎゅっと抱きしめる。自分を落ち着かせるため、理性を保つため海人の顔を見てはいけない。見てしまうと押し倒してしまうから。響夜だって辛いのだ。愛してる人が抱きしめられる距離にいて手を出す事が出来ない。一緒にいられるのは幸せだけど、響夜とて大人の男。欲望はある。愛してる人を抱きたい。この腕の中で何も纏わずに触れ合いたい。

ふぅーーっと大きな息を吐いて響夜は海人から離れる。

「さあこれをFAXして買い物して帰ろう。海人は武蔵をバッグに入れて。」

海人のマンションに帰ってくると海人は早速夕飯の支度を始める。響夜が何でもおいしそうに食べるのでそれが嬉しいらしく、外食しようと言っても嫌がるので好きにさせている。料理をする海人は生き生きとしている。響夜と暮らし初めて規則正しく食事を取っているためか海人も体重は増えてはいるがもともとが細いのでこれ以上は太らないようだ。傷も治り、首の傷は消えたが手首の傷は残ってしまった。海人が切った傷とコウキに拘束された時の傷は消える事はない。響夜は時折海人がその傷をじっと見ている事を知っている。

「海人。さっき送ったFAXでOKだってよ。担当がえらく感激してたぜ。誰が書いたんですか?有名な書道家に知り合いがいたんですかだと。海人はやっぱすげぇな。」

海人自身は「?」だが響夜が喜んでいる顔を見ると嬉しいらしくニコニコしている。そういえば最近は海人がこうして穏やかに笑ってることが多くなったなと思う。

海人自身を取り戻しているわけではないけど、このままの方が海人は幸せなんじゃないかと響夜は思う。自分を取り戻したら嫌でもコウキとのことを思い出してしまう。オレとのことも。海人は傷を見られた事に酷く傷ついていたからなぁ。思い出したらオレの事を嫌いになるかもしれない。それは嫌だ。

響夜の心は複雑にせめぎあっていた。

「海人。オマエは今幸せか?自分を取り戻したいか?オレは・・・。」




「拍手&ぽちっ」(。◕‿-) ありがとう ✿励みになっております☸ヾ(。╹ω╹。)ノ☸感謝((ヾ(。・ω・)ノ☆゚

にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
にほんブログ村
にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
にほんブログ村

関連記事
スポンサーサイト





もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png ご挨拶
もくじ  3kaku_s_L.png 貴方の腕の中で
総もくじ  3kaku_s_L.png キミと空とネコと
もくじ  3kaku_s_L.png S.S
もくじ  3kaku_s_L.png イラスト
もくじ  3kaku_s_L.png 頂きもの☆
もくじ  3kaku_s_L.png 雑記
総もくじ  3kaku_s_L.png 新撰組物語
  • [キミと空とネコと98]へ
  • [キミと空とネコと100]へ

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • [キミと空とネコと98]へ
  • [キミと空とネコと100]へ