キミと空とネコと

キミと空とネコと101

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「ほお。嫌がる声、逃げようとする仕草、こうやっていろんな男をたぶらかしてきたんですね。先生とはどうなんです?あなたが先生にねだるんでしょ。」

「やめろー。離せっ!!近寄るな!!」

「何を言っても無駄ですよ。」

小田切の顔が海人に近づいてくる。耳元に小田切の口が近寄り海人に向けて囁く。

「犯されたくてたまらないのでしょう。この淫乱!!」

小さな胸の突起をぎゅっと摘む。

「いやだ。痛い。痛い。離して。」

海人は小田切を睨みつけ足をばたつかせて抵抗する。

「あなたを見ていると何もかもめちゃくちゃにしたくなります。あなたを壊したい欲求が溢れてくるんですよ。さあ2人だけの宴を始めましょうか。」

そういうと嫌がって顔を背けている海人の顎を持ち無理やり上を向かせるとキスをしようと顔を近づける。

「オマエなんかとするもんか!!離せっ!!」

「抵抗しても無駄ですよ。こう見えて私は空手の有段者です。あなたの力なんて赤子のようなもの。観念なさい。あなたは今から私に犯されるのです。もう二度と先生に会えないようにして差し上げますよ。」

海人のズボンと下着を一緒に降ろそうと手をかける。

(響夜ごめん。ごめんね。響夜。オレもう響夜の傍にいられない・・・。)

抵抗する気力を無くした海人に小田切はニンマリと口の端を上げて笑う。そして海人に跨り手を這わそうと近づき海人は身体を硬直させ目をぎゅっと握る。もうお終いだと思った時、海人に跨っていた小田切の重さがなくなり、バンッ!!と激しい音がする。

「てめぇオレの海人に何してんだっ!!!」

恐る恐る目を開けた海人の目に飛び込んできたのは、床に吹っ飛んでいる小田切とはぁはぁと息を切らせ激昂して殺気を孕んだ目で小田切を睨み付けている響夜の姿だった。

響夜がオレを助けに来てくれた。海人の目からは安心したためか涙が滝のように溢れている。

響夜は小田切に一瞥をくれると海人の元へ駆け寄る。

「海人ごめん。ほんとにごめん。怖かったな。よく頑張った。オレはいつも海人を守るって言っていながら海人を守れて無いよな。ほんとにごめん。」

海人を抱きしめ何度も「ごめん」を繰り返す響夜。抱きしめる手は震えていた。

「そんな事ない。響夜はいつもオレを助けてくれた。守ってくれてたよ。ちゃんとわかってるよオレ。」

おずおずと響夜の背中に手を回して抱きついてくる海人。

「海人。元に戻ったのか。ちゃんとオレの事がわかるのか?」

「うん。オレは自分の中に逃げ込んでたんだと思う。
自分を穢されることをされるのが我慢出来なかった。そんなことされたらもう二度と響夜に会う事は出来ないから。」

抱き会う2人の後に小田切がユラユラと立ち上がる。

「先生はこのけだものに騙されているんです。男が男しか愛せないなんて異常です。神の創りたもうた世界を侮辱しているとしか言いようがない。目を覚ましてください。汚らわしいオマエは先生の視界に入ることさえ悪なんです。消えてしまえばいい。」

海人めがけて突進してくる小田切を足で蹴り飛ばし、海人を背にして響夜は小田切に向かう。

「男しか愛せないからってなんだよ。世の中には男と女しかいねぇんだ。男と女が正解で男と男が間違いだとなぜ言える?恋愛をしらないオマエには永遠に溶けない謎だろうぜ。さて、今までの会話はすべて録音している。立派に脅迫だ。オレのいない間の会話も室内の様子もビデオカメラに記録してある。海人一人にする時は念の為に回してたんだよ。こういう事がないとも限らないからな。オマエの性格からこうなる可能性はまでお見通しさ。それと小田切、オマエの過去の事も調べ上げてる。作家を脅迫していたことも作品を書き上げるまで監禁していたことも証言はとれている。ゴーストライターまでしちゃってるとはねぇ。」

響夜は小田切の前に調査表をぶちまける。

「オマエ、暴力団とも繋がりがあるな。それで脅迫していたことも調べ済みだ。この事は社長にも報告してある。オマエの処分は追って知らされるだろう。もうこの業界で仕事はできないと思え。オレの担当になったことがあだとなったな。二度とその面をオレ達の前に見せんなっ!!何なら警察呼ぶか?」

追い詰められた小田切はポケットから小型ナイフを取り出し響夜と海人に向かってくる。

「ちくしょう。オレは出来る編集者なんだっ。こんな事で終りにはしない。アンタはバカだ。恋愛のためなんかに届くところにある名声を捨てている。オレをないがしろにしやがって許さない。お前ら道連れにしてやるっ!!」

海人は動けず目をぎゅっと握る。次に聞こえてきたのは小田切のうめき声だった。

「小田切。てめぇは空手の有段者かなんかしんねぇけど、そんなもん実戦になると関係ねぇ。ケンカとはちげぇんだよ。ケンカ慣れしてるオレに勝てるわけねぇ。」

小田切は九の字に曲がり床でうめき声をあげたまま動かない。

「ああ。それと小田切。オレ作家辞めるから。佐久間のおっさんとは話がついてる。オレは文学の高みなんて目指してねぇ。オマエの夢を勝手に押し付けんな。わかったらさっさとここから出て行け。行かないなら警察を呼ぶぞ。今後オレ達にまとわりつくようならストーカーとして警察に言うからな。海人に二度と近寄るな。近寄ったら・・・。」

響夜は尻持ちをついたままの小田切にゆっくり近づく。その目には怒りの焔が燃え殺気をおびている。小田切は恐怖で尻持ちをついたまま後ろへ逃げようとするが壁に行く手を阻まれる。恐怖で震える小田切に向かって、響夜はさっき小田切が持っていたナイフを小田切の頬を掠めるように振り降ろす。

「うぎゃーーーーーーーっ。」小田切はこの世のとは思えない声で叫び這いつくばりながら玄関から飛び出て行く。

「ん?ちとやりすぎたか?」

「響夜・・・。怖いよ。」

事の成り行きを呆然と見ていた海人だが、響夜の燃え上がるような怒りを間の当たりにして言葉にならない。でも、その怒りは自分のためだったことは十分にわかっている。

「海人。ごめんな。怖がらせちまったな。」

海人に振り向き、泣きそうに眉を下げる響夜。海人の事になると感情の押さえが効かない。そんな自分にあきれてしまう。これで海人を怖がらせていたのでは意味がないじゃないかと自虐的に笑う。

言葉が出て来ない海人。小田切に服を破られ白い肌があらわになっている。

「海人。何もされなかったか?」

海人の身体にタオルケットをかける響夜だったが、海人はビクンと身体を震わせる。

「ごめん。オレが怖いよな。」

いたたまれなくなった響夜はリビングから出て行こうと海人に背を向けた。

「ユウか聖夜に来てもらうから、海人はマンションに帰れ。オレと一緒は嫌だろ。」

そのまま出て行こうとする響夜の背中に海人は抱きついた。

「響夜。行くな。・・・行かないで。お願いだから。響夜の事が怖かったけど、それはオレのためだろ。今まで傍にいてくれたのは響夜だろ。今更オレを一人にするのか?」

響夜の身体をぎゅっと抱く海人の手が震えていた。

「海人。オレが傍にいてもいいのか?オレでいいのか?」

「響夜じゃなきゃ嫌だ。もう響夜じゃないとオレ・・・オレ・・・。」

海人の腕を握り響夜は振りかえると海人の目をじっと見る。

「海人。聞いてくれるか?」

下を向いたまま顔を上げない海人の前に跪いて目を見つめながら告白する。

「オレはほんとに心から海人を愛してる。今までいろんな人を愛して来たと思ってたけどそれは愛とは言えないんだって海人を好きになってわかったんだ。オレは海人を愛している。男だからとか女だからとかじゃなく、海人じゃないとダメなんだ。だからこれからもずっと海人と過ごして行きたい。同じ時間を紡いで行きたいんだ。オレの傍にいてくれないか?」

海人の目からぶわっと涙が零れ落ちる。響夜はその涙を真珠のように美しいと思う。

「・・・っ・・・キョ・・・ヤ・・・うう・・・。」

海人の頬を両手で覆い、指先で涙を拭う。

「海人の気持ちをオレに聞かせてくれないか?」

「オレ・・・。オレが響夜の事を好きでいてもいいの?オレは男だから響夜の重荷になると思って・・・ううっ・・・。何度も・・・諦めようとした・・・っ・・・。でも出来なかった。・・・オレは響夜が好き。愛してる。」

「海人はバカだな。オレが海人の事を好きなんだぞ。重荷になるわけないだろ。オレの方が海人の事を好きすぎて海人に嫌われちゃわないかと心配してるぐらいだ。諦めるなんて言うな。そりゃ、世間的には認められないかもしれないけど海人は世間に認めてもらいたいのか?」

「ううん。響夜がいればそれでいい。他には何もいらない。」

「オレもだ。海人さえ傍にいてくれたら何もいらない。」

やっとお互いの気持ちを伝い合えた。2人の視線が絡まる。

「海人、もうオレからは逃げられないぞ。案外オレって独占欲が強いみたいだ。」

「響夜に独占されるならいいよ。オレを離さないで。響夜の愛でがんじがらめにして欲しい。不安になることのないように。」

「海人。オレの愛は海人に溢れんばかりに注がれる。海人はオレを信じてくれればいい。だけど不安になった時はちゃんと言って欲しい。海人は人のことばかりで自分の事を後回しにするだろ。オレと海人の間ではそれはなしだ。ちゃんと気持ちを伝え合おう。もちろんオレもそうする。」

「わかったよ。響夜。じゃ言ってもいい?」

「何だ?思う事をそのまま言ってみな。」

「響夜が好き。大好き。だからオレを離さないでもっとぎゅって抱きしめて。嘘じゃないって証明して。」

涙は止まったが泣いてたせいで目元が赤く染まり瞳は涙で潤んでいる。少し頬を赤く染め、それでも視線は熱を帯びている海人の顔をじっと見て、そのまま抱きしめていた手に力を込める。

「もっと強く息が出来ないくらいに抱きしめてよ響夜。」

海人の望むように抱きしめる。細い華奢な身体が密着し絡まりあうように抱きあっていた。

「ほんとに響夜はオレを愛してくれる?」

「こんなに海人への気持ちが溢れてるのにまだ信じられないのか?」

「だって響夜がオレを愛してくれるなんて夢みたいだから。ずっとそうなりたいと思ってて無理だって諦めてたからまだ信じられない。」

お互いに見つめあう。もうそこには言葉はいらなかった。

白いレースのカーテンが風で大きく揺れ、夕方の淡い緋色の光が優しく2人を包む。

海人と響夜の距離が縮まり二つのシルエットが一つに重なる。

「オレはこの先海人を愛し、海人を守る。」

「響夜。オレも響夜の事を愛して響夜の事を信じる。」

額をコツンと合わせて微笑む2人。

そうしてお互いを求めるように唇を重ねあう。

唇を重ね、お互いの熱を感じ、お互いの気持ちが唇から伝わっていく。

海人の目からはまた涙がはらはらとこぼれて行く。悲しいからじゃなく、嬉しい涙が。

このまま永久に時間が止まってもいいと思う2人だった。



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いつも読んでくださる皆様ありがとうございます。とうとう101回目となりおりしもいつぞやのドラマのように「プロポーズ」とも言える言葉を交わした2人です。ここまで長かった゚。・゚(つω✚ฺ`)。゚・。シクシク
海人が普通にしゃべっているのに響夜はあんまり驚いていないじゃんって思われた方もいらっしゃるかと思いますが、響夜にとってはしゃべらない海人でも感情を汲み取っていたのでしゃべろうがしゃべらまいが海人は海人だと大きな心でどっしりかまえていたんです。でも態度に出してないだけでめっちゃうれしくてガッツポーズしてたことはナイショです。海人も今まで響夜が親身になってくれていたのをわかっているので、ええーいって甘えちゃってます。時々天邪鬼になりますが・・・。

そうそう。小田切の調査は聖夜が裏を回してます、この人案外頭脳派で敵に回すと怖い相手です。雪夜さんも笑顔の裏には一物もってますのでこの兄弟の中で素直なのは案外響夜なのです。


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~ Comment ~

  ヾ(*´∀`*)ノ キャッキャッ♪やったねっ☆ 

Rinさま、こんにちは~♪♪♪

よっしゃーーーーーっっっっっ!!!
‥思わず叫ぶ私でした(笑)

皮肉なことですけど‥バカも少しは使えたようですね。
後は奈落の底に叩き落として二度と浮上できないように
して下さいね(^v^)←鬼。

やっとふたりの気持が通じ合って‥v-406
よかった‥百万回位よかった‥って言いたいですっ\(^o^)/
想うことをそのまま伝えられるなんて夢のようですよ、
今までの海人くんのことを考えると。

とにかく幸せに浸って下さい‥ふたりとも‥
私も時間が止まってくれたらいいのにね‥
って、思いました。

もう何もしなくていいです。
ただ抱きあってるだけで‥それだけで満足です  
ヾ(*´∀`*)ノ いやぁ‥良かった。

なんもいえねぇ‥北島さんになっちゃいました(笑)
気の効いたコメのひとつもできなくて‥申し訳ありません(@_@;)

Rinさまも辛かったですね‥(/_;)
具合はいかがですか?幸せですか?
私はRinさまのお陰で幸せですv-344

Re:   ヾ(*´∀`*)ノ キャッキャッ♪やったねっ☆ 

ハル様こんばんは☆

喜んでもらえてなによりです。私もすんごいHAPPYな気分ですっ。やっと2人がお互いの気持ちを伝え合うことが出来ました。海人もいろいろあって成長したんですね。自分の気持ちを今伝えなきゃ次に言える事がないかもしれないと今までの経験で学んだのです。響夜の心からの愛が海人をそうさせたこともあるんですけどね。

海人はハルママを心配かけてばかりでしたが、もう大丈夫です。響夜と海人を取り巻く優しい人達の中でこれからは幸せになれそうです。

小田切も役に立ちました。最悪な奴です。最後まで自己中でした。もう編集者に戻る事は出来ません。ホントなら殴り倒してボコボコにしてやろうか(←マジで)とも思ったのですが、海人が見てるし殴る価値もない男なのでナイフで顔を掠めるだけにしておきました(ある意味そのほうが怖いかも(゚m゚*)プッ)

ハル様、抱き合ってるだけでも幸せな雰囲気は伝わってくれたでしょうか?海人的には抱き合ってるだけでもいいのですが(好きじゃないと本人は思ってますから・・・。)響夜はめちゃくちゃ我慢しましたからねぇ。止まらないんじゃ(笑)
それに海人にもほんとに好きな人と結ばれる喜びを知って欲しい。響夜もそれを伝えたいと思っているんですよ。まあそれを書けるかどうか・・・。何分、その描写が苦手なもので・・・。

ハル様が幸せになってくれてよかったです。
私も何とかやっていますが薬は手放せず、ちょいと強い薬になりました。今年は春先が天候がおかしかったりで精神的に不安定になる人が多いのだとDrに言われました。もっと自分を認めて甘くしてあげなさいとも・・・。
陵辱されるシーンを書いてからおかしくなりましたが、今は回復しつつありますので。心配してくださってありがとです。
ハル様のコメは大好きですよ。気がつかせてくれる事もたくさんありますし、愛が溢れてますから。ほんとに感謝です。ありがとうございました━d(*´╹︶╹`*)━
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