キミと空とネコと

キミと空とネコと114

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意識を失った海人を救急病院に連れて行く。

「このバカは何考えてんだ。心配でオレの心臓は止まりそうだったんだぞ!!」

今は呼吸も落ち着いて眠っている海人に文句を言う。

「でも、無事で良かった。」

海人の手を握りながら響夜は呟く。

「海人。オマエは何を考えてる?こんなにオレがオマエの事を愛してるのに何か不安でもあるのか?」

眠っている海人が答える事はないのだが海人が不安を抱えてるのは何となく感じていた。

海人はオレの姿が見えなくなると探し、見つけると安心したような顔をする。まるでオレがいなくなる事を恐れるように・・・。オレが海人の傍を離れることなんてありえないのに。

今日は本当に焦った。3次会まで誘われて遅くなると電話したのに海人は出ない。家に居れば出るはずだ。海人には一人の時はマナーモードを解除するように言ってるし、今日部屋を出る時に解除してるか確認したから鳴ってればわかるはず。それにオレの電話に海人が出ないはずはない。

聖夜達に連絡してみたが海人は来ていないと言う。何だか嫌な予感がした。久し振りに一人だから何かしているのだろうかとも思ったが、もやもやとした不安がつきまとう。

『響夜、オレが助けを求めたらすぐ来てくれるだろ?』

以前海人がオレに言った言葉が頭をよぎる。部屋に帰って海人がいたら笑い話で済むが、もし万が一海人に何かあったならオレが海人を助けないといけない。オレしか海人を助けられない。

オレは3次会の誘いを断るとマンションに向かう。いつもなら酒を飲むのだが何故か今日は飲む気にならず車で来ていたのですぐにマンションに着いた。部屋は真っ暗で武蔵がやたらとニャーニャーと切羽詰ったように鳴く。メシかと思ってメシを用意するが食べようとせず、鳴き続ける。武蔵も海人に何かあったのだと思っているのだろうか?

「武蔵、海人の事はオレに任せろ。海人を探してくる。」

海人の自転車がないからどこかに出かけた事はわかる。どこに行ったのか?海人の行きそうなところを探す。

「ショッピングモールは閉まってるし、海人が一人で行くような所はどこだ?」

気ばかりがせいて焦る。雨まで降ってきやがった。海人が濡れてなければいいのだが・・・。

チクショー。時間ばかりが過ぎていく。海人が携帯を持って行ってない事は部屋に戻ってから鳴らしてみてわかった。

「ほんとに海人は携帯を持つという意識がなさすぎる。昔みたいに公衆電話がそこいらにあるわけじゃないんだから連絡しようと思ってもできねぇだろうが。しかも公衆電話じゃ、こっちから連絡のしようもねぇんだぞ。」

雨が止んでふと公園が目に付く。何で公園に目が止まったのかはわからないがオレは公園の中に入り海人の自転車を見つけた。でも海人はいない。

「こんなところに自転車?海人が雨宿りしてたら自転車はないはず。という事はあのバカ雨に打たれてたのかっ!!」

急いで公園の中を捜す。公園の中にはいない。という事は公園の外。雨に濡れていたのがどれほどの時間かわからないが、海人の事だオレが戻るまでに帰ろうとするはず。自転車が残っているという事は自転車に乗れなかったってことだ。タクシーをつかまえるなら・・・。

「通りだっ!!」

幸いこの公園からの通りは一本しかない。オレは急いでその通りに向けて駆け出す。

「いたっ。海人っ。」

声を掛けようとして傍に近づいた時海人が前のめりに倒れこんできた。

「っ・・・海人。」

何とか腕の中に海人を受け止める。海人の身体が燃えるように熱い。何時からあの公園にいたんだ。

「夢見てるのかな?オレが響夜に助けて欲しいって思ったから。」

赤い顔で苦しそうな息をしながら海人が言った。海人はやっぱりオレに助けを求めてたんだ。オレの海人に対する予感は外れる事がない。

「夢じゃない。心配させるなよ。」

オレは海人を見つけた安堵で溜め息をつく。なのに海人が言った言葉・・・。

「・・・響夜・・・おかえり・・・。ごめ・・・。」

『おかえり』だぞ。おかしいだろ。でもきっと海人はオレの事を部屋で待っているつもりだったからオレをみて言ったんだろう。

その後意識を無くした海人を病院まで連れてきた。車で来てて酒飲んで無くてほんとに良かったと思う。

いつから公園にいたのか海人は高熱の上に脱水まで起こしててさっきやっと落ち着いたところだ。

ほんとに海人は目が離せねぇ。

「・・・っう。・・・イヤだ。一人にしないで・・・。響夜行かないで・・・。」

涙を流して無意識にオレの服を掴む海人は酷く苦しそうでうなされている。

「海人。大丈夫だ。オレは何処にも行かない。」

「・・・んっ・・・キョウヤ?」

「ああ。ここは病院だ。オマエぶっ倒れたんだぞ。何してんだよ。」

「響夜っ。響夜ぁ。」

「バカっ。点滴が外れちまうだろ。オレは何処にも行かないから落ち着け。」

「ううっ。響夜・・・ここはヤダよ。家に帰りたい。帰ろうよ。」

オレに縋り付いてなく海人は何かに怯えているようで、ここが安心出来ないのだと思う。

「わかったから。でもな海人。まだ点滴が終わってないからこれが終るまではダメだ。それに医者がダメだと言ったら帰れない。でもオレはずっと傍に居るから。とりあえず海人は寝ろ。寝れなくても横になれ。」

縋るようにオレを見上げる海人の目は赤く腫れている。きっとずっと泣いてたんだろう。頭をなでていると海人は再び目を閉じる。眠ったのを確認して医者に連れて帰らせて欲しいと言うと海人の状態が安定していたので点滴が終わって目が覚めて落ち着いていたら帰ってもいいと言われる。本来なら入院しておいたほうがいいのだろうが、海人が家に帰りたいと望んでいる。まあ、ダメだと言われたら聖夜か雪夜を呼んで何とか連れて帰る気でいたのだが・・・。

点滴が終わり海人が起きるまで寝顔を眺める。もしこのまま目が覚めなかったら病院にいるつもりだった。

「・・・ん・・・。」

「海人、目が覚めたのか?」

「・・・響夜・・・オレ・・・。」

「『ごめん』ならもう言うな。家に帰ろう。」

「ありがとう響夜。オレを助けてくれて。」

「当たり前だ。オレは海人と約束した。海人が助けを求めた時はオレが助けるってな。」

会計を済ませ、薬をもらうと海人を抱いて病院を出る。海人は恥ずかしがったが歩くこともままならない海人を抱く。海人も歩けない事はわかっているから顔をオレの胸に埋めていた。耳まで真っ赤なのは熱だけのせいじゃないよな。

海人を部屋まで連れて帰ると武蔵が玄関で待っていた。「ニャー」と鳴くと安心したようにメシを食いに行く。こいつ心配でメシを食ってなかったのか。オレも武蔵も海人が大事なんだな。

「海人、大丈夫か?」

「・・・ふっ・・・。少し辛い。けど病院じゃ響夜に抱き付けないから・・・。」

「バカ。何処ででもオマエはオレに抱きつけばいいんだ。何を心配してるのかわからねぇけど、今日の事はまた明日話そう。今日はもう休め。」

「響夜はまだ寝ないの?」

「何だ?一緒に寝たいのか?」

「うん。響夜と一緒に寝たい。一人は淋しい。怖い。」

「海人が甘えるなんてな。いいぜ。素直な海人も可愛い。」

ベッドで海人を抱きしめてやると嬉しそうな顔をして安心したようにすぐに眠りにつく。

さて、明日は海人が何を不安がってるのかちゃんと聞いて、その不安を払拭しないとな。海人の事だから一人でグルグル考えてんだろうけど海人の事ならオレが全部受け止めてやる。

最近はいつも繋がっていたから武蔵は寝室に来る事はなかったが今日は海人の傍にやってくる。

「安心しろ。こんな状態の海人に何もしねぇよ。やっぱ一番のライバルは武蔵だな。」

3人で久し振りに身体をくっつけて眠る。雨が降ったのが嘘のように空は晴れて三日月が浮かんでいた。




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