キミと空とネコと

キミと空とネコと115

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朝になると海人の容態は良くなっていた。熱はあるのだが・・・。

目が覚めてベッドに座る海人の頭にゲンコツをゴツンとくらわす。

「イタッ。何するんだよ響夜っ。」

「は?昨日海人は何をした?ゲンコツ一つで済ませてやったんだぞ。ほんとなら心配させたみんなの分のゲンコツを食らわせるところだ。」

「うっ・・・ごめんなさい・・・。」

「オレがどんだけ心配したと思う?武蔵もだ。又、携帯も持たずに出掛けやがって。海人は『携帯』の意味ちゃんとわかってんのか?」

「仕方ないだろ。忘れちゃったんだから。でも『痴漢撃退スプレー』と『防犯ブザー』は忘れなかった。」

こいつオレが怒ってることわかってんのか?何でちょっと自慢気に言ってんだよ。

「はぁ・・・。海人。これからは『痴漢撃退スプレー』と『防犯ブザー』は忘れてもいいから携帯だけは持って行ってくれ。頼む。」

「・・・はい。」

「海人、熱がまだあるけど他に苦しいところとかないのか?」

「響夜、心配させてごめんなさい。身体はなんともない。少しだるいけど。」

「そっか。ほんとなら身体が元気になってから聞いたほうがいいんだろうけど、海人は身体が弱ると心も弱るからな。早目に解決させといた方がいいとオレは思う。」

「・・・うん・・・」

「で?昨日は何であんな事になったんだ?ゆっくりでいい。今、海人が不安に思ってることを正直にオレに話してみろ。」

俯く海人の頭をなでてやると、不安げな瞳が揺れてオレを見上げる。

「・・・響夜、オレは響夜のお荷物になってる・・・。」

「は?なんだそれ?」

「オレは今、何の仕事もしてなくて毎日響夜に引っ付いて、響夜といられる事が嬉しくて安心できて・・・。響夜はオレの事を愛してれてる。」

海人の睫毛が濡れて光ってる。どう話していいのか言葉を選びながら話す海人。オレは海人の言葉を聞き逃さないように言葉を挟まずに聞く。

「オレには何もない。頭が良い訳でも体力がある訳でも、特殊な能力や特技だってない。今のオレは一人で立ってない。響夜に寄りかかってばっかで・・・。」

ついにポロリと涙の粒がこぼれる。オレは指で頬の涙を拭いながら俯いている顔を上にあげる。

それで?と目で続きを促すと、涙をあふれさせながらオレを見て海人は言葉を繋げる。

「オレはコウキにして来た事を響夜にもしてるんじゃないかって。もちろんコウキと響夜が違うのはわかってる。違ってないのはオレで、同じあやまちを犯すんじゃないかって。響夜がオレの傍から離れる日が来るって思うと怖くなって、同じ考えがグルグル頭の中を回って。響夜の事オレは好きなのに、響夜がオレを嫌いになったらどうしよう。女の人を好きになったらオレは諦めるしかないし、その方が響夜は幸せになれる。オレは響夜に小説家もやめさせちゃったし。だからオレは響夜の傍にいる価値がない。」

ほんとに海人はバカだ。今もグルグルと考えてるのだろう。オレの愛はそんなに信用がないのか?こんだけ海人に愛を伝えてるつもりなのに・・・。海人は自分に自信がなさすぎる。

いつまでも涙の止まらない海人を胸に抱く。

「海人。オレが信じられない?オレがどんだけ海人を好きかわからないのか?」

「・・・ううっ。今は好きでも・・・そのうち・・・。」

「そりゃ先の事はどうなるかわかんねぇよ。オレだって不安だぜ。海人に嫌われたらどうしようって思う。」

「えっ。響夜もオレと同じ事を考えるの?」

「当たり前だ。海人だぜ。オマエは自分に自信がないみたいで自分を卑下するけど、オレが会ってきたいろんな人の中で海人が一番だと思う。だからオレは海人に惹かれたし、男だからなんて理由で諦められなかった。そりゃ、オレは過去に女を抱いた事もあるけど、海人みたいに毎日したいと思うような女も男もいなかった。小説だって海人のためにやめたんじゃない。前から考えてた事でたまたまきっかけになっただけだ。それにオレはブログで小説を書いてるぞ。オレの作品を気にいって読んでくれる人が増えることが今は楽しい。だからオレの事で海人が気にする事はないんだ。」

「でもオレは今自分の足で立ってない。26にもなってプラプラしてる。」

「そんなこと言ったらオレは家の中の事を全部オマエに任せて何もしてないぞ。こうして海人のマンションに半ば同棲してるよなもんだし。」

「でも・・・。」

「海人。オレの胸の音きこえるだろ?海人を抱きしめるだけでオレの心臓は早鐘を打ってる。」

「うん。聞こえる。心臓の音が早い。オレと同じだ。」

「なっ。海人だけがオレを思ってるんじゃない。オレだって海人の事を真剣に思ってる。指輪も贈ったろ?海人ははめてくれてないけど。」

「だって。もったいなくて。付ける自信もなかった。」

「やっぱな。そうじゃないかと思ってはいたんだけど、海人は自分から言って来ないからオレから言ってやればよかったな。」

「違うよ。言えないオレがダメなんだ。響夜の事を信じてるつもりだったのに、これじゃ信じてないって事だよね。自分で結論出してグルグル悩んで・・・。」

「まあ、海人だからな。そうなっちまうのかもしれないけど、これからは深く悩む前にオレに言ってくれ。いくらオレが海人の事を好きでも、何でも海人の気持ちがわかるわけじゃないからな。これからずっと2人で過ごして行くためには必要な事だろ?オレはちゃんと海人に言う。だから海人も少しずつでいいから言えるようになって欲しい。」

「響夜・・・。わかった。オレも響夜とずっと2人で過ごして行きたいから。」

「オレはな、海人が傍に居るだけで海人に支えられてるんだ。海人の存在に。だから自分に自信を持て。海人はちゃんと自分で立ってるから。」

「オレが響夜の支えになれてるなら嬉しい。オレ、もっとしっかりする。響夜に愛し続けてもらえるように。」

「おう。だけど、しっかりしすぎはやめてくれよ。今の海人のままでも十分なんだから。」

「響夜はオレに甘すぎるんだよ。まあそれに甘えちゃうオレもダメなんだけど・・・。」

「海人は何をしてても愛しいからなあ、つい甘やかせちまうんだよな。オレも気をつける。」

2人して顔を見合わせ微笑む。

「仕事のことはさ、急いで無理に探すより、ちゃんと探したほうが良いと思う。続けていける仕事をな。」

「そうだね。こればっかりはすぐに決められないかもしれない。けど、ちゃんと仕事見つけるから。響夜に寄りかかってるみたいなのはイヤなんだ。」

「わかってる。それまでは家事全般を仕事と思ってオレの世話をしてくれ。」

「響夜の世話か。大変な仕事っぽい。」

「どういう意味だ。」

「そういう意味。」

2人で声を出して笑う。海人の自然な笑顔が見られる事が響夜は嬉しい。

「そういえば、海人に書いてもらった今度の本が出来たんだ。ほら『激流』って書いてくれたろ?覚えてるか?」

「覚えてるよ。何となくだけど・・・。」

海人に新作の本を手渡す。

「ほんとだ。オレの字が本になったんだ。響夜の本の表紙なんて嬉しい。」

「評判がいいみたいなんだ。海人のおかげだな。」

「響夜の才能だろ。」

「そういえば、佐久間書房の社長から封筒預かってたんだ。」

「えっ?オレに?何で?」




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いつも読んで下さってありがとうございます。みなさんが読んで下さるおかげでカウンターが3万を超えました。スゴイ事で嬉しい限りです。ほんとにありがとうございます。

さて、このお話もあと2話で終りです。100話を超えるお話で、思いがけず長編となってしまいましたが・・・。最後までお付き合いくださると嬉しいです。



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~ Comment ~

 ヾ(*´∀`*)ノ ♪ラブラブな雰囲気が良いですね‥心がほっこり‥ 

Rinさま、こんばんは(^-^)

カイくんよかったです。
考えてしまうのは仕方ないですね、
自分がお荷物じゃないかって。

寄りかかるのと支え合うのは意味が違いますものね。
昔「愛のアランフェス」ってスケートのマンガがあって、
ペアを組むんだけども女の子の方が
助け合って支え合うのがペアだから‥‥
勘違いしてなにをしても相手が助けてくれる、
だってペアだもの‥って。
あえて上を目指すために彼女に彼が‥
「それはきみが寄りかかって甘ったれて心地がいい生ぬるい関係だ」
みたいなことを言うんですけど
ハッキリ覚えてませんけど(笑)
なぜか思い出してしまいました。変だなぁ‥
勿論その彼と彼女の間には愛はあったのですが。

とにかく甘えて何でも助けてもらうのと
支え合うのは違うというのをカイくんはちゃんと知ってるもの。
大丈夫、並んで歩ける永遠のパートナーですよ(^v^)

封筒?
なんだろう‥題字のギャラかな?
俗な奴ですみませんっっm(__)m

また参りますね、
あ‥ラストスパート‥
無理せず頑張らずにお願いします~

Re:  ヾ(*´∀`*)ノ ♪ラブラブな雰囲気が良いですね‥心がほっこり‥ 

ハル様こんばんは☆

いつも読んで下さってコメ下さってありがとうさんですヽ(〃^・^〃)ノ チュッ♪

海人もなんとか自立しようともがいています。このまま何もせずに響夜の傍にいたのでは「ヒモ」になっちゃうかと・・・。家事のできるヒモ・・・。似合わなすぎぃーーーというわけではないのですが、男には男のプライドがあります。海人だって男の子。響夜にも負けたくないって思ってます。へんに頑固ものの海人です。

封筒の中は・・・。海人の自立のためと幸せになるためのものです。
あくまでこのお話はフィクションですから、こんなことがあるのかは知りません。想像の世界の産物ですのでみなさん突っ込まないでねって感じです。

ではもう終りです。名残惜しいですが・・・。

ハル様コメありがとうございました(●'ω'σ)σணღ*
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