たとえこの世の終りが来ようとも

たとえこの世の終りが来ようとも1

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星が瞬き、空気の澄んでいる夜だった。

静かな夜。

月の光が優しく一人の少年を照らしている。

少年は境内の楠の木の上で月の光に照らされていた。

その姿はこの世のものと思えないほど美しくて儚い・・・。

少し長めの前髪がサラサラと風に揺れる。樹齢200年は超えるのではないかと思われる大きな楠の幹に身体をもたせかけ、少年はおもむろに竜笛を吹き始める。

その流れるような音色は透明で澄んでいるが聞いていると切なく、悲哀を含んでいる。

月の光が雲で隠れた時にふいに笛の音がピタリと止んだ。

境内の砂利を踏む音が聞こえてくる。誰かが少年の方に向かってきているようだった。

「やっぱりな。ここにいると思った。」

歩いて来たのも同じ年くらいの少年で、めんどくさそうに楠の根元に歩いて来てとまると、楠の上にいる少年を睨み付けた。

「ただの隣同士ってだけでオレは先生のパシリじゃねぇんだ。聖蓮いい加減に学校に来い。3者面談の終ってないのはオマエだけだ。担任からの言付けちゃんと伝えたからな。チッ・・・なんでオレがオマエのためにこんな事言いに来なくちゃいけないんだよ。ほんとに迷惑だっつうの。じゃーな。」

「凌駕。ごめん。ありがとう。」

凌駕と呼ばれた少年は何も言わずに立ち去る。オマエと話す事はなにもないと言うように・・・。

凌駕の姿が見えなくなって、少年のまわりは再び静寂に包まれる。

「久遠出ておいで。」

聖蓮と呼ばれた少年が呼ぶと、足の上に小さな白い毛の狐が現れる。その狐は聖蓮に身体を摺り寄せてくる。

「又、凌駕に迷惑をかけちゃったみたい。明日は学校に行かないといけないな。」

聖蓮の友達であり、味方になってくれるのはこの小さな白い狐だけだった。

少年の名は「篠宮 聖蓮(シノミヤ セイレン)」18歳の高校3年生。両親は他界しており祖父と一緒に暮らしている。今日は祖父が分家に行っているので聖蓮は一人だった。

祖父は厳しい人でこんな夜に竜笛なんて吹いていると厳しく叱る。そもそも竜笛を吹くことさえ聖蓮には禁止していた。この竜笛は父親の形見。傍にいる白い狐はもともとは母親に仕えていた狐。名は『久遠(クオン)』と言う。

久遠は誰にでも見えるわけではない。特殊な力を持った者にしか見えない。久遠はいつも聖蓮の傍にいて聖蓮を守っている。

「3者面談か。お爺様は出てくれないだろうな。先生に話をしなくちゃ。」

さっき聖蓮に話しかけてきた少年は『八神 凌駕(ヤガミ リョウガ)』同じ学校に通うクラスメートで隣に住んでいる。いわゆる幼馴染だ。幼い頃はは毎日のように仲良く遊び、一緒に過ごすのが当たり前だったのだが、ある日を境に凌駕は聖蓮から距離を置くようになった。

「さあ、明日は学校に行かないといけないからもう寝るよ。久遠もおいで。」

聖蓮は木から降りると境内の中にある自宅へ戻り自分の部屋へ行き、明日の学校の用意をする。

聖蓮は学校があまり好きではない。必要な単位数を計算して出席している。だからと言って勉強が出来ないわけではなく、家で勉強をしているので成績はいつも上位クラスだ。素行が悪いわけでもない。何より「篠宮家」はこの辺り一帯を司る大地主でもあるので先生達は何も言わない。

祖父は学校に行かせることよりも神社を手伝わせる事が大事なので、学校に行けとは言わない。自分の余命も考えての事だろうが、聖蓮に神社の仕事をすべて覚えさせたいのだ。成績も優秀な聖蓮なので勉強に関しても何も言う必要がない。

聖蓮がもう寝ようかと窓のカーテンを閉めようとした時、窓の外にこの世の物ではない何かが聖蓮を見ていた。

「ああ、美しい月の光に惑わされてこちらに来てしまったのですね。ここはあなたの住む世界ではありません。あなたの世界へ戻ってください。」

「モド・・・レナ・・・イ・・・モド・・・リ・・・タイ」

得体のしれない何かが苦悶の表情で答える。

「そう。戻りたいんですね。ではオレが戻れるようにお手伝い致しましょう。」

聖蓮はそういうと指で印を切り念を込める。聖蓮の瞳が紅く輝き、胸元の紅色の勾玉が輝きだすと、その異界のものは聖蓮の前から姿を消した。

「・・・アリ・・・ガトウ・・・」の言葉を残して・・・。

そう聖蓮は普通の人間には出来ない事が出来る。霊力があり、異界の者が見えるのだった。

「ふぅ。力を使うと疲れるな。」

いつの間にか紅い瞳は元の黒い瞳に戻っている。

彼の胸元には紅色の勾玉が揺れている。これは祖母が聖蓮に死ぬ間際に渡した物で、力を使う時には紅色の瞳と共鳴するように光るのだった。

聖蓮がいつからこの力を持っているのかは本人も覚えていない。

いつからか、この力は普通の人にはないもので、自分は特殊な人間なのだと知った。また、この能力は他の人に気味悪がられるものであるとも・・・。だから聖蓮は人前では使わない。一人の時だけ使う。そのため一人でいる事が必然的に多くなってしまう。凶悪な異界の者では無い限りは元の世界に戻してやりたいと聖蓮は考えている。

祖父もこの力の事は知っている。篠宮家ではこの能力を持った人間が時々生まれるのだ。祖父にはこの力はないが、祖母と母親には同じ力があった。

しかし祖父はこの力を忌み嫌っていて、力を持つ聖蓮に当たる事もあるため聖蓮は家でもおとなしく祖父の言いつけを守り生活している。母親も祖母も死んでしまったのはこの力のせいだから・・・。

心安らげるのは自分の部屋に帰ってきて久遠と話をする時だけなのだった。

もうずっと祖母が亡くなってからその生活なので聖蓮は孤独を孤独とさえ感じられなくなっている。久遠がいるからいいのだ。他の親戚の中で同じような力を持つ者もいるが、分家の者は本家の者と親しくする事を禁じられるし、誰が力を持っているのかは祖父のみが知る事で、聖蓮も誰が力を持っているのか知らない。

祖父は聖蓮を他の者に会わせる事を嫌うので、聖蓮は親戚にどんな人がいるのか、近い年の子供がいるのかさえ知らなかった。

幼い頃は祖父も聖蓮に優しかった。聖蓮は祖父が大好きだった。変わったのは両親が亡くなり、後を追うように祖母が亡くなってからだった。

「久遠おやすみ。明日は学校に行くよ。一人でも大丈夫だ。久遠がいてくれるからね。」

枕元でくるっと身体を丸めて眠る久遠をなでると聖蓮も眠りについた。



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読んで下さってありがとうございます。今日から新連載がスタートしました。今回のお話は少しファンタジーが入ってるかな?アヤカシとか異世界のものとか大好きです。マンガでは『CLAMP』さんのお話が好きです。「隠の王」とかも好きだった。読み返しちゃうもの。「ヨイテ」と「壬晴」が切ない・・・。とにかく、新連載も頑張りますのでよろしかったら遊びに来てください。


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Re: 異世界もの大好きです 

R様早速のコメントありがとうございます。

私も『夏目・・・』好きですよ。でもアニメで知ったのでマンガは読んでないんです。アニメの声優さんの声が印象にあるので原作を読むとイメージが変わっちゃいそうで・・・。

小説では『心霊探偵八雲』とかはまりました。小説本全部ありますもん。マンガも出てて買いましたけど、原作とは違うのでダメですね。まあこれは幽霊関係なのでまたジャンルが違いますが・・・。「ぬらりひょん・・・」も買ってます。てかすんごいオタクに聞こえますね私ってば(笑)

さてこのお話はどう進みますやら・・・。一応、頭の中でのイメージは大好きな『安倍 清明』をイメージした陰陽師系(そんな系あるのか?)で前回作とは異なりますので好き嫌いが出るかも・・・。とにかく楽しんでいただけるように頑張ります。

コメントありがとうございましたo(>ω<*)o

きゃ~~o(*>▽<*)o新連載!!! 

Rinさま、こんにちは!

お休みもせず、新しい連載ですか。
スゴイですね~♪

でもファンタジーとか好きですっv-10
楽しみですっ!

聖蓮くん?彼がもしかして異形の者?
もっと神聖なものなのかな?
霊力を持っているのでしょうね。

私もCLAMP好きですけど「東京BABYLON」は
ハマりました、泣きました(T_T)
でも「X」までしか読んでません。
ちょっと‥ちがうなぁ‥って思いだして‥
すっかりご無沙汰です。

Rinさまは陰陽師‥安倍晴明さんが
好きですものね。

現在の陰陽師みたいな?
どんなお話しになるのか楽しみにしておりますm(__)m
次に行かなくちゃ~

Re: きゃ~~o(*>▽<*)o新連載!!! 

ハル様こんばんは☆

休みもせずに新連載です(笑)
でも、ハル様も休みなく色々と内容の違うお話を書かれてるじゃないですか!!その方がすごいっです(。◠‿◠。✿)ぅんぅん

聖蓮はどうなんでしょう?特別な力を持っているのは確かです。優しい子なんですね。その優しさが闘いの中で彼の身体を傷つける事になってしまうのですが・・・。

このお話はずっと頭の中で浮かんでいて『キミ空』の終盤はこの話で頭の中が溢れそうになってて夢にまで出てきました(笑)
CLAMPの最初の出会いは「XXX HOLIX」「ツバサ」今は「GATE 7」です。これは戦国時代の豊臣、徳川の現在の子孫が出てくるので大好きです。京都で7箇所本屋でこのマンガを購入するとその店ごとに違ったイラストのカードをもらえるので私ってばこないだJRの京都で本屋巡りして4枚GET!!この日曜日は四条河原町の本屋2件行こうかなとか思ってます。すでにそのイラストカードを手にするが為に「GATE 7」の1~3巻を2冊づつ持ってる( ̄m ̄〃)ぷぷっ!

京都はやっぱしいいです。大好き(*'ー'*人*'ー'*川スキスキ♪心が落ち着く。もちろん清明神社にも行ってきました。ご神木にもたれて夢枕 獏の『陰陽師』を読んでました。又行きたいな。
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