たとえこの世の終りが来ようとも

たとえこの世の終りが来ようとも3

 ←たとえこの世の終りが来ようとも2 →たとえこの世の終りが来ようとも4

「・・・っつ。」

振り上げられた拳を寸での所で聖蓮はかわす。

空振りしたせいで異界の者はバランスを崩し膝をつく。

「オレはあなたを苦しめるために来たのではない。元の世界へ帰るのならその世界に導きたいだけなのです。」

「・・・ヨケイナ・・・コト・・・チカラ・・・ガホシイ・・・オマエ・・・モッテルカラ・・・クウ。」

再び聖蓮へと身体の向きを変えて突進してくる。

聖蓮が後ろへ後ずさろうとした時に気の根につまづきバランスを崩して座りこんでしまう。

「やられるっ・・・」

聖蓮がそう思って頭を両腕で抱えるが振動は起こらなかった。

「聖蓮、こいつはオマエの言霊が通じる相手ではない。札で封印してあっちに戻せ。」

頭の中で声が響く。目の前には大きな身体で尻尾が9尾に分かれた白い狐が聖蓮を守っていた。狐の額には聖蓮と同じ紅色の紋が浮かんでいる。

「久遠。わかった。札に念を込める間そのまま防いでてくれ。」

聖蓮は札を取り出し、指で印を切りながら札に念を込める。

「久遠、札を飛ばすよ。」

聖蓮は札に霊力を注ぎ込みながら異界の者に札が張り付くように指で導く。聖蓮の額にも久遠と同じ紋が浮かび、目の色は紅色に、胸の勾玉も紅色に点滅する。

札が異界の者に触れた時には異界の者の身体は砂のように消えてしまっていた。

「ふぅ・・・。久遠ありがとう。」

「聖蓮。オレは何度も言ってる。オマエの言霊が通じない相手の方が多いんだ。相手のことよりもっと自分の命の心配をして欲しいよ。全く、オレの身体もいつまでもつかわからんよ、これじゃ。」

「久遠ごめん。だっていくら異界の者といっても悪い事をしたわけじゃないし、消してしまうのはやっぱり良い気持ちじゃないよ。オレが甘いことはわかってるけど出来ればそのまま帰してあげたいよ。」

「聖蓮はまだあの時のことを悔やんでいるのか?あれはオマエも子供だったし仕方がなかったと思うが。」

「でもそのせいで凌駕に怖い思いをさせてしまった。」

「でも聖蓮は凌駕を守ったじゃないか。自分は大怪我して命も危なかったのに・・・。」

「あれはオレの失敗だよ。凌駕の前でチカラを使うべきではなかった。凌駕が助かったからよかったようなものの、もし命を奪ってたらと思うと怖くて今でも震える。オレは一人で闘わなくちゃいけないんだよ。」

「オレは聖蓮の背中の傷跡を見るたびに悲しくなる。どうして聖蓮だけが闘わなくてはいけないのか?そのチカラのために・・・。そのチカラのせいで聖蓮はいつもひとりぼっちだ。」

「ひとりぼっちなんかじゃないよ。久遠がいつも傍にいてくれるでしょ。」

聖蓮の紅色のしるしが消えると久遠も元の大きさに戻る。

「久遠、ごめん。ちょっと休んでから帰ろう。」

いつもよりも霊力を使ったからか身体がだるくて動けない。

「もっと鍛錬しないと、こんなコトでバテてるようじゃダメだな。もっと修行もしなくちゃ。」

今日もお爺様は分家に出かけていて聖蓮一人なので夕飯の時間も気にすることはない。

「札にもよるけど今日は強めの札を使ったからしんどいや。」

気の根元に足を投げ出して休んでいたが久し振りの学校での緊張した事と、今の闘いで疲労が増して瞼が重くなってくる。

「こんなとこで寝ちゃ・・・ダ・・・メ・・・。」

そうは思っても一度ふさがった瞼は開かず、身体は眠りを求め聖蓮はそこで眠ってしまった。



「あらら。可愛い子がこんなところで眠っているよ。さてどうしたもんかな。おいしそうな紅い唇だ。味見しちゃおうかな?」

「紫炎(シエン)やめとけ。誰かわかって言ってるのか?」

「やだなー暁水(アキミ)。冗談に決まってるじゃないか。篠宮を敵に回すほどボクはおバカさんじゃないよ。」

「どうだか・・・。コイツの顔はオマエ好みだからな。紫炎ならやりそうだ。」

「お互い付き合いが長いと相手が見えちゃってヤダねー。」

「でもこのまんまって訳にはいかねぇな。異界の者がコイツを襲はねぇとは限らないしな。しかしコイツはまだチカラを半分も覚醒させてねぇな。ていうより覚醒させようとしてない。」

「そうだね。さっきの闘いを見ても無意識にチカラを押さえてるね。あの白い狐が守ってるから退治出来たようなもんだね。」

「オレ達はこいつを守らなきゃいかないのか?先が思いやられる。」

「そんなことボクに聞かないでよ。暁水にわからない事がボクにわかるわけないじゃない。ボク達は本家に言われた通りにするだけでしょ。」

「まあな。やりたくなくてもオレ達は言われた通りにするしかない。生まれる前から決められてた事だからな。」

「暁水はこの子が嫌なの?ボクはこの子が気に入ったからいいや。可愛い子で良かったよ。」

「紫炎はお気楽だな。オレはまだコイツの事を全部受け入れたわけじゃない。いくら運命でもオレの命を預けるんだ。それに見合った奴がどうかは自分の目で確かめるさ。」

「じゃ、そろそろこの子起こさないとね。夜の帳(とばり)が降りたら危なすぎるからね。」

「ああ、そうだな。どっちが起こす?」

「暁水に決まってるじゃない。ボクの炎で起こしたらこの子の可愛い顔がやけどしちゃうじゃない。そんな事出来ません。だから暁水が起こしてよ。」

「チッ。わかったよ。じゃ大雨にすっか。」

「はあ?暁水バカ?この子が風邪ひいちゃうでしょうが。ポツポツでいいの。わかったらさっさとやって。」

「オレはオマエの召使じゃねーっつうの。まあいいや。こんなとこで時間食ってる暇ねーしな。」

そういうと暁水は印を切り空に向けて腕を伸ばすとポツポツと雨が振りだす。

「さすがだね。水を扱うのが上手い。」

「あたりめーだ。オレは水の属性だからな。出来なくてどーすんだ。それを言えば紫炎の炎だってそうだろーがよ。」

「まあね。ボクの属性は炎だから。でも不思議だよね。ボク達、水と炎で相性悪いはずなのにね。」

「そうだな。深く考えた事ねーけどそういえばそうだ。でもオレはオマエとオレのコンビは最高だと思ってるぜ。」

「それはボクも同じだよ。小さい頃から一緒だしね。他の奴と組むなんてごめんだな。」

「なのに本家はコイツを守れだと言いやがる。」

「守れるのがボク達しかいなんじゃないの?最強なのがさ。」

「かもな。おっと目を覚ましたようだ。オレ達はずらかろうぜ。」

「そうだね。又会えるしね。聖蓮・・・。」

風がビュッと強く吹いて木の葉が舞い上がるとそこにいた2人の姿はもうなかった。

「あれ?オレ寝ちゃってたんだ。雨が振りだしてる。急いで帰らないと。」

聖蓮は眠っている間に2人がそんな会話をしていたことも知らずに急いで家へと帰っていった。




*:..。♡*゚¨゚゚・*:..。♡*゚¨゚゚・*:..。♡*゚¨゚・*:..。♡*゚¨゚゚・*:..。♡*゚¨゚゚*:..。♡*゚¨゚゚・*:..。♡*゚¨゚゚・*:..。♡*゚
いつも読んで下さってありがとうございます。新しい登場人物が出てきました。詳しくは明日のお話に出てきますが『紫炎(シエン)』と『暁水(アキミ)』です。どんな関係になっていくことやら・・・。引き続き読んで頂けると嬉しいです*(〃∇〃人)*


にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
にほんブログ村
にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
にほんブログ村


関連記事
スポンサーサイト





もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png ご挨拶
もくじ  3kaku_s_L.png 貴方の腕の中で
総もくじ  3kaku_s_L.png キミと空とネコと
もくじ  3kaku_s_L.png S.S
もくじ  3kaku_s_L.png イラスト
もくじ  3kaku_s_L.png 頂きもの☆
もくじ  3kaku_s_L.png 雑記
総もくじ  3kaku_s_L.png 新撰組物語
  • [たとえこの世の終りが来ようとも2]へ
  • [たとえこの世の終りが来ようとも4]へ

~ Comment ~

管理人のみ閲覧できます 

このコメントは管理人のみ閲覧できます

Re: 新しい人たちの登場! 

R様こんばんは☆

今日は分家の守護者が出てきました。守護者なのか仲間なのか・・・。どうなっていくかは私にもわからない゚(*゚Д゚(*゚Д゚(*゚Д゚*)゚Д゚*)゚Д゚*)
暁水は男気があり過ぎるので、柔軟な紫炎はすぐに認めても実際に聖蓮に会わないとダメなんです。楽しみな展開だとのお言葉嬉しいです。楽しんで頂けるように頑張りますねキラリo(`・ω´・+o) ぅぃ

コメありがとうございましたヽ(〃^・^〃)ノ チュッ♪
管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • [たとえこの世の終りが来ようとも2]へ
  • [たとえこの世の終りが来ようとも4]へ