たとえこの世の終りが来ようとも

たとえこの世の終りが来ようとも5

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次の日の朝も聖蓮は1人で朝のH.Rギリギリの時間に登校する。

相変わらず聖蓮を追う視線は聖蓮にまとわりつく。

今日も1人ポツンと席に着くと空を見上げる。

「今日は早退しちゃおうかな。一応登校してるし、出欠を取ったら適当な時間に帰ろう。お爺様も帰ってらっしゃるかもしれない。」

ぼんやりと雲を目で追いながら考えていると本鈴がなり担任が入って来る。

「おはよう。おっ篠宮今日も来たな。その調子で休まずに学校に来いよ。」

担任に言われ、クラスの視線が一斉に聖蓮に向く。凌駕を除いては・・・。

「今日はこのクラスに新しい仲間が増える。みんな仲良く、親切にするように。わからない事は教えてやってくれ。橘、自己紹介。」

担任の言葉に聖蓮に集まっていた視線が一斉に教室に入ってきた転校生に向けられ、聖蓮はホッと溜め息を漏らす。これでしばらくは聖蓮に目が向く事はないだろう。聖蓮は転校生に興味はない。又空を見上げて流れる雲をぼんやりと目で追う。

「名前は『橘 暁水(タチバナ アキミ)』故あってここに転校してきた。嫌いな事は騒がしい事。だからオレの周りでうるさくしないでくれ。」

こんな時期に転校生なんて何かいわくがあるのかとクラスメート達は興味津々で見ている。
女のコ達は背が高く、端正な顔立ちに男らしさをプラスした転校生に目をウルウルさせキャーキャー言っている。

「で、橘の席だが。」

「先生、オレ背が高いんで前だと後の奴が黒板見えないから一番後ろがいい。」

そういいながら暁水の指差した席は聖蓮の横の席だった。

その席に座っていた生徒は暁水の眼力にそそくさと空いている机に移動したので、暁水は担任が何か言う前にさっさと聖蓮の横の席に座る。

聖蓮は誰が横にこようと関係ないのでずっと空を眺めてた。

「鳥なら空を自由に飛べたのに・・・。」

「おい。」

聖蓮は暁水が自分の方を見て声を掛けてきたとは思わずにポツリと呟く。

「オマエ耳が聞こえないのか?それとも無視してんのか?」

それでも聖蓮は暁水が話しかけているのが自分だとは気がつかない。それもそうだ。高校に入って3年間、聖蓮に声を掛けてきた生徒は片手に余る。その中には凌駕も含まれるから聖蓮が話しかけられる事なんてないに等しいのだから、自分に話しかけているとは思わなくても仕方のない事なのだけれど、暁水はそんな事は知らないので聖蓮の態度にムカついていた。

「おいって。オレはオマエに話し掛けてるんだから返事くらいしろよっ!!」

とうとう暁水は立ち上がり聖蓮の肩をむんずと掴む。

頬杖をついて空を見ていた聖蓮はバランスを崩しやっと暁水へと視線を移す。

「えっ。オレに話し掛けてたの?ごめん。オレに話しかけてくる人なんていないからオレに言ってると思わなかったんだ。ほんとにごめん。」

間近でみた聖蓮のキレイな顔に一瞬暁水の手が硬直する。

風が吹いて聖蓮の長い前髪が後ろへ流れ顔がハッキリとする。ほぉっと暁水は感嘆の声を漏らし肩をつかんでいた手を離す。

「オレは橘 暁水。これからしばらくよろしくな。」

「オレは篠宮 聖蓮。橘くん、最初に言っておくね。オレには関わらないほうがいいよ。オレのことは無視してくれて構わないから。」

聖蓮はニッコリ笑ってそう言うと又視線を空へと向ける。

「ちょっと待てよ。何だよそれ。関わるなって言われて「はい、わかりました」なんて言えると思うか?」

聖蓮はめんどくさそうに暁水を見ると

「この辺り一帯は『篠宮』が大地主なの。オレはそこの孫。『篠宮家』はみんなにとってウザイものなの。だからオレの事もウザイ。オレに関わると橘くんまでウザがられるよ。」

「ほんとだぞ。そいつに関わるとロクなは事ねぇから放っておけよ。」

暁水の隣の凌駕が暁水に向かって言う。

暁水は凌駕の目を見て凌駕が聖蓮を嫌っているあるいは憎しみの感情まで持っているのかと思う。でもその奥には揺れている感情も垣間見える気がする。

担任がH.Rを終え出ていくと、聖蓮は荷物を持って教室を後にする。

凌駕はオレを憎んでる。それを直接肌で感じると一緒の空気を吸うことが辛い。

オレが視界に入る事で凌駕が嫌な気分になるのならオレが視界から消えればいい。そう思って教室を後にしたのだがその後を暁水が追って来る。

「おいっ。待てよ。聖蓮。」

追いかけてきたことにも驚いたが『聖蓮』と名前を呼ばれた事にビックリして足を止めて暁水を見ていた。

「まだ何かあるの?橘くん。」

「暁水でいい。オレも聖蓮って呼ぶから。」

「だからオレがさっき言った事わかってないの?オレに関わらないで。」

「勝手に決めんな。聖蓮と仲良くしちゃいけねーって誰が決めたんだよ。」

「昔からオレは1人なんだ。オレに関わると酷い目に合うかもしれないから関わらないで。」

「昔はそうでもオレはオマエと仲良くしてーって思ったんだ。酷い目?何だよそれ。」

「・・・・。とにかくオレに話掛けないで。関わらないで。じゃ。」

聖蓮はきびすを返すと暁水を置き去りにして行ってしまった。

「何だよ。あいつ。他の奴を巻き込まないように1人でいるのか?ずっと昔からそうやってたのかよっ。」

暁水はぎゅっと強く拳を握る。

「本家は何を考えてるんだ。」

聖蓮の肩を掴んだ時、暁水は驚いた。顔には出さなかったがあまりの華奢な薄い肩に。力を込めればすぐに折れそうな肩だった。紫炎も華奢なほうだけどそれよりも華奢だった。そんな身体で今まで1人で闘ってきたのか。

暁水は昨日の闘いをみて聖蓮を認めないでいる部分も合ったのだが、傍で会った聖蓮の儚さに胸が苦しくなる。もっと早くに本家がオレ達を呼んでいれば聖蓮は1人で闘わずに済んだものを・・・。

聖蓮と話をして胸に空虚な穴が空いたような気分になり、暁水は紫炎に会いたくなって紫炎の元へと走り、授業中にも関わらず紫炎を連れ出し校舎の裏で抱きしめる。

「紫炎・・・紫炎・・・。」

「どうしたの?暁水。」

「オレにはオマエがいる。オマエにはオレがいる。でも聖蓮は1人だ。」

紫炎は暁水の背中をさする。

「どうしたのか教えて?聖蓮はどうだったの?」

暁水は紫炎のカラダを抱きしめながらも自分は紫炎に抱きしめられているのだと思う。さっき開いた空虚な穴は紫炎の温もりで暖かく塞がれていく。

「オレ達は聖蓮を守ってやらなきゃいけない。」

そして暁水は紫炎にさっきの聖蓮の話を静かに話始めた。







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