たとえこの世の終りが来ようとも

たとえこの世の終りが来ようとも6

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「やっぱりお爺様はまだ帰ってきていない。」

家に戻ってもお爺様の姿はなかった。

聖蓮にとってはたった一人の肉親。たとえ嫌われていたとしても、お爺様は理不尽に聖蓮をいじめるようなことはしない。聖蓮を1人の人間としていろいろと教えてくれる。教え方は厳しいがそれも『篠宮』の本家の頂点にいるのだから仕方のない事。『篠宮』はみんなの見本でなければならない。身内だからといって甘やかされた事はなかったと思う。幼い頃は両親が亡くなってからお婆様が亡くなるまでは優しい祖父だった。一緒に遊んでくれたり、頭をなでてくれたり、膝に乗せてくれた事もあった。

お婆様が亡くなってから変わった。お婆様が亡くなってからと言うよりはあの事件があってからだ。凌駕がオレを憎むようになったあの日から全てが変わったのだと思う。

ふと家電をみると留守番のメッセージが残っている。再生するとお爺様の声が聞こえた。

『まだしばらく帰れない。神社のことを頼む。』

それだけのメッセージ。何度聞きなおしても抑揚のないお爺様の声が繰り返されるだけ。

「お爺様は何をしてるんだろう?」

聞いたところで教えてくれるわけもないのだけれど、聖蓮は気になって仕方がない。

「久遠、当分お爺様は帰って来ないみたい。1人には慣れっこだけど。」

「じゃ、今夜も聖蓮は竜笛を吹いてくれる?」

「久遠は聞きたい?」

「うん。聞きたい。聖蓮の竜笛は好き。お父さんの吹いてた時よりも聖蓮の音色の方が好き。」

「そんな事いうとお父様が怒るよ。じゃ、夜になったらね。」

「うん。楽しみだ。異界の者が出てこなければいいね。」

「そうだね。」

「学校サボっちゃったな。少し勉強してから境内の掃除をしよう。久遠も手伝ってね。」

「ヤダよ。聖蓮はボクの尻尾で掃除させる気だろ。」

「ぎくっ!!何でわかったの?」

「この前これ何かに使えそうとかボクの尻尾を持ちながら言ってたもの。」

「聞こえてた?」

「やっぱりほうきの代わりにしようとしてるっ!!」

「そんなことしないよ。久遠の毛並みはキレイだもの。汚させたりしないよ。ホントに。久遠の尻尾は暖かいね。この手触りも柔らかくて何だか安心するんだ。久遠が大きくなった時に一度枕になって欲しいな。」

「ヤダよ。聖蓮の頭重いもん。尻尾が痛くなっちゃうだろ。」

「そっかぁ。残念。でもこうして触るのは許してね。」

「うん。」






「おっ。今日も竜笛が聞こえるな。」

「うん。でも今日は何だか一段と悲しげに聞こえる。寂しいって泣いてるみたい。」

「ほんとだな。アイツはいつも1人なんだな。アイツは1人でいると覚悟を決めてるのかもしれない。他の誰も巻き込まないために。弱そうに見えるけど、アイツは強いと思う。心がな。」

「あれ?昨日は認めないみたいな事を言ってなかったっけ?」

「あ・・あれはだな、まだアイツに会ってなかったからだ。人間としてアイツの強さを知った今は違う。」

「でも、関わるなって言われたんでしょ?」

「ああ。でもオレはアイツを守る覚悟が出来た。アイツの傍にいないとな。」

「暁水にそこまで言わせるんだね。彼は。ふぅーん、初めてじゃない?そんな人。」

「ああそうだな。今まで会ってきた奴とは全然違う。本家の直属の血を引いてるからなのか。」

「ボクも聖蓮に会いたかったのに。ボクは隣のクラスなんてひどくない?暁水が隣のクラスになればよかったのに。ボクは始めから聖蓮を守ろうと決めてたのにさっ。」

「拗ねんな。明日オレのクラスに来いよ。聖蓮に紹介するから。」

「聖蓮に紹介するって仲良くなってないんでしょ?」

「仲良くなってなくたって紹介は出来るだろ。口を聞かないわけじゃないぞ。聖蓮は。」

「はいはい。わかったよ。明日紹介してね。」

「ああ。だから紫炎こっちに来い。」

「なんで「だからこっちに来い」になるの?」

「紹介してやるんだからその対価をくれってこと。」

「なんだよその対価って。」

「オマエの身体。」

「バカ。」

そう言いながらも紫炎は暁水が自分をいつも求めてくれることが嬉しい。もう何十年も肌を合わせているのに暁水は紫炎を求めてくる。もちろん紫炎も暁水を求める事もあり殆ど毎日のように肌を合わせている。それでも毎日のように感じ、乱れてしまい暁水を求めてしまう。何もかもがぴったりとパズルのピースのようにはまる2人なのだ。今更、他の人を選ぶつもりはない。言わなくてもお互いにわかっている。

異界の者を相手にする事は危険を伴うことで2人は何度も危険な目に会い、大怪我をした事もある。それでも相手の事を思いかばいあい、絆を強めていった。「明日死ぬかもしれない」と思うから身体を求め合う時はこれが最後かもしれないと求め合うのでいつも濃厚な交わりになる。

今日も紫炎の掠れた喘ぎ声が夜の空に響く。甘く切なく・・・。



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いつも読んで下さってありがとうございます。いつも暁水と紫炎の絡みで終っている。まあ、この2人は肌を重ねない日の方が少ないので・・・。大人な2人です。年齢は不詳ですが高校生に交わっても違和感のない2人なのです。聖蓮が可愛くて仕方なくなるお兄ちゃん達なんですよ。また来てくださると嬉しいです。(✿◕‿◕)ノアリヾ(◕‿◕✿)ガト(✿◕‿◕)σウ♪♡


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