たとえこの世の終りが来ようとも

たとえこの世の終りが来ようとも10

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聖蓮はH.Rが始まるうんと前に登校していた。こんな事は初めてだ。しかし聖蓮の顔色は青白く長袖のカッターシャツの腕の下は包帯で巻かれている。聖蓮は年中を通して長袖しか着ない。それは傷跡を隠す為・・・。

いつも異界の者は森の中に出て来ていたのに、昨日は外れとはいえ町の中に出てきたのだ。異界の者は森の中に彷徨ってしまった人間を食べる事はあっても町の中までは出なかった。何かが変わってきている。異界の者も頻繁に出て来るようになってきている。それも雑魚クラスではなく、それなりに力を持ったものが出てくるようになって来たのだ。何かが変わってきているとしか思えない。

聖蓮は昨日は夜通し異界の者を追いかけ闘っていた。町の中に入らせないように必死で闘い、久遠も助けてくれたのだが左手に切り傷を負ったのだ。ほんとなら縫ったほうが早く治るのだが病院に行けるはずもない。いつもはお爺様縫ってくれていた。お爺様はまだ帰って来ない。

家で寝ていたかったが、もしかしたら異界の者はもっと町の中にも出没しているのかもしれない。学校に来ればそんな事があれば噂話になるだろうと、情報収集のために登校してきたのだ。

「ねぇ、凌駕ぁ。今日は家に遊びに来てよ。」

凌駕の周りはいつも人が集まっている。今日は1人の女のコが凌駕に引っ付いて甘えた声を出していた。

「ダメ。今日は空手の日だ。」

「もぉ。利香と空手とじゃ利香に決まってるでしょ。」

女の子は自分の豊かな胸を凌駕の腕に押し付けている。

「利香よりも空手。利香は好きだけど空手とは比べられないな。」

利香は凌駕の取り巻きの一人のようだ。彼女ではないらしい。聖蓮の所まで利香のつけているフローラル系の甘い匂いが漂ってくる。

凌駕はとにかくモテる。隣にいる女は聖蓮が見るたびに違う。まあ聖蓮があまり学校に来ないため、見るたびといっても期間は空いているのだが、長くても1ヶ月ほどしか持たないんじゃないかと思う。

凌駕と利香や取り巻き達の話が聞きたくなくても聞こえる。少し顔を横向けると凌駕の顔が見える。いつもなら暁水が間にいるので会話がダダ漏れすることも凌駕の顔がハッキリ見える事はないのだ。

昨日寝ずに闘ってきた事や凌駕達の会話は聖蓮の神経を疲労させた。

窓から空を見ていた聖蓮の肩に久遠が乗り頬を舐める。

「聖蓮、悲しいの?」

頬を触ると涙で濡れていた。

「大丈夫。聖蓮ボクがいるよ。泣かないで。」

久遠はポロポロとこぼれてくる涙を舐めるが聖蓮の涙は止まらない。

暁水はまだ登校していないので、空の机を挟んで聖蓮と凌駕は背を向けている。

予鈴がなりH.Rのために担任が入って来て、日直が「起立」の号令を掛けみんなが立った時に前のドアから暁水が入ってきた。

「おい橘。堂々と遅刻か?」

担任は苦笑して暁水を見る。クラス中も暁水に視線を注ぐが、聖蓮は極度のストレスを抱えたためか眩暈を覚え冷や汗があふれてくる。

凌駕は暁水が着席していなかったため聖蓮がよく見えた。またいつの間にか聖蓮を目で追っていたのだ。

(あれ。聖蓮顔色が悪い。ヤバイんじゃないのか?)

そう思った時、聖蓮の身体は力を失い後へと倒れこむ。

「危ないっ!!」

凌駕は聖蓮を思わず抱き止めようとしたが、それよりも早く暁水が聖蓮を抱きとめていた。

「聖蓮っ。聖蓮っ。先生オレ聖蓮を保健室に連れて行くから。」

意識のない聖蓮はぐったりと暁水に抱えられている。凌駕は何だか暁水に苛立ちを覚えた。何故こんなに腹が立つのか。オレが助けてやろうとしてやったのに暁水が横から奪い去ったからか・・・。

聖蓮が倒れても誰も助けはしないだろう。担任が連れて行くだけだ。そう。いつもならそうなのだ。前にも聖蓮は倒れた事があったのだが、誰も傍には寄らず、先生が保健室に連れて行ったのだ。なのに今日は暁水が助けている。

暁水は教室に入るなり聖蓮の顔色がすごく青白い事に気がついた。おまけにうっすらと見える左手のカッターシャツの下に巻かれた包帯が昨日闘った事を物語っている。そう思った時に聖蓮の身体が揺れたので、机に飛び乗り聖蓮が倒れる前に抱き止めたのだ。

暁水は先生の言葉を待たず、意識を失った聖蓮を横抱きに抱える。

「聖蓮。泣いてたのか?オマエは何でひとりぼっちなんだ?誰の手も借りずに何年1人で闘ってきた?」

暁水がぎゅっと聖蓮を抱きしめて呟いた言葉が凌駕にも聞こえていた。独り言だったのか、わざと凌駕に聞かせたのかはわからない。

暁水はそのまま教室を出て行こうとして久遠を振り返る。

「白狐、オレを保健室まで案内しろ。」

久遠はパタパタと暁水の前に行き暁水を案内するようかのように先を走る。

凌駕にしか見えないと思っていた久遠が暁水にも見えている。それは凌駕にとって驚き以外のナニモノでもなかった。今まで久遠が見えたのは自分だけだった。他の誰にも久遠は見えていなかった。なのに暁水は平然と久遠に声をかけたのだ。見えて当たり前と言うように・・・。

2人が出て行ってざわめく教室でただ1人凌駕は出て行ったドアを睨んでいた。




一方、久遠に案内されて保健室に行った暁水だが保険医が不在だった為、ベッドに聖蓮を寝かせると紫炎に電話して保健室へ呼ぶ。一瞬今の時間はH.Rで電話は取れないかとも思ったのだが、紫炎はH.R中だろうが暁水の連絡には必ず出るのが当たり前だと思っているようだ。。紫炎が来る間に暁水は聖蓮の汗を拭い、楽にさせてやろうとカッターシャツのボタンを外す。

「聖蓮、この傷・・・・・。」

聖蓮の身体は腕だけじゃなくいろんな所が包帯で巻かれていたが巻かれていない部分の傷跡の多さに言葉を失い聖蓮の傍に立ち尽くしていた。

程なく暁水に連絡をもらった紫炎も保健室にやってくる。聖蓮の傍に暁水の姿を見つけ走り寄るが、暁水の様子がいつもと違う事に気がつく。

「どうしたの暁水?聖蓮は?」

後からベッドを覗くと紫炎もそのまま動けず「あっ。」と声をあげ暁水の腕を掴んだ。

「昨日、オレ達も異界の者と闘ったよな。」

「うん。暁水とボクは2人で闘った。異界の者は何人もいたけど2人だからボク達は勝てた。」

「そうだ。オレ達はパートナーだ。2人で闘うからこそ異界の者が何人いようと勝てると信じている。」

「ん。そうだね。」

「でも聖蓮は1人で闘っている。」

「ボクがいるもん。聖蓮にはボクがいる。」

久遠が聖蓮を守るようにベッドの上に現れる。

「オマエは使い魔だろ。篠宮の。パートナーじゃない。オマエはオマエなりに聖蓮を今まで守ってきたのはよくわかる。聖蓮の為に命を投げ打ってでも守ろうとする事もわかる。でもな、異界の者との闘いにパートナーがいないという事は自分のチカラを100%出せないってことなんだ。聖蓮にはもっとチカラが眠っている。まだ半分くらいしか覚醒させてない。」

「でも、聖蓮のパートナーは・・・・いないから・・・。」

「だから、キミが聖蓮を守ってきたの?頑張ったんだね。」

紫炎の温かい言葉に久遠は涙が出てきた。

「ボク・・・ボクじゃ聖蓮のパートナーみたいになれない事はわかってた。でも聖蓮は1人で闘うことを決めた。誰も巻き込まないように、あの日からひとりぼっちで生きてきた。聖蓮の闘い方は自分を守ろうとしない。死んでも仕方ないと思ってる。きっと。だから死なせないためにボクは傍にいるんだ。」

「聖蓮は優しいからな。でも頑固で気が強い。他人を巻き込まないために1人でいるんだな。」

暁水と紫炎は苦しそうに眠る聖蓮を見つめる。きっと包帯の下にはもっとたくさんの傷跡があるのだろう。

自分の周りの複数の気配を感じたのか聖蓮が目を覚ました。






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読んで下さってありがとうございます。初のファンタジー作も読んで下さる皆様がいてありがたいです。初めて来て下さった方もいて・・・。嬉しい限りです。
何分、書くのは初心者ですので文章が長かったり短かったりしています。読みにくいかとは思いますがお許し下さいませ。又遊びに来てくださったら嬉しいです✿ฺ(pq◕ฺ∀◕ฺ*)キャ♬

今日は京都に遊びに行ってきました。久し振りに「安井金比羅神社」にも行きました。京都に行ったら良く行く神社です。清明神社の次によく行ってるかも・・・。今日はCLAMPの「GATE7」の京都聖地巡礼で残りの3枚のカラーカードをGET☆これで7枚揃いました。まあ、私の手元には「GATE」も1~3巻まで3冊ずつあるのですが・・・。4巻ではこんなのしないでね((유∀유|||))他にもたくさん買い物して大荷物で帰ってきました。巡礼マップにのってるにしんそばで有名な「松葉」でにしんそば食べました(*^-゚)vィェィ♪ お土産は「京ばぁむ」です。これ好き(✪ܫ✪)




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~ Comment ~

わーーーん‥(/_;)聖蓮‥ 

Rinさま、こんにちは(^-^)

やっぱりひとりですべて背負うのはムリ。

聖蓮も凌駕が‥好き‥なのかな?
でも巻き込んでしまって彼の心を傷つけたから
彼を守るためにも傍に寄らないのね。

好きだから、大切だからこそ近付かないってことは‥大きく言えば愛ですね。

でも‥身を滅ぼすというか、自己をコロス‥
みたいなことにならないように
願います。

凌駕の心の動き‥なんとなく‥分かります。
気にならない筈がない。

ふたりが対峙と言うか、対立式は見たくないので
Rinさま、どうかお願いしますね、
ふたりに幸せを‥‥
まだずっと先か‥そうですよね、(^_^;)
気長に待っております。

また参りますm(__)m

Re: わーーーん‥(/_;)聖蓮‥ 

ハル様こんばんは☆

どうも私はけなげ愛が好きで・・・。一人の人しか好きになれない愛が好きです。
聖蓮にとって凌駕は小さい頃はナイトでした。憧れでした。そして大事な友達でした。1人じゃないと思わせてくれた相手です。その人を苦しめたくない。それなら自分が苦しんだほうがいい。彼を守ると決めています。それが凌駕に伝わらなくても・・・。好きなのかどうか聖蓮にはわかりません。好きって気持ちがどんなのかまだ知りません。一人だから必要ないと思っています。自分が傍にいると凌駕が苦しむとそれなら傍にいかないことを選んだ聖蓮なんです。それが幼い頃に優しくしてくれた事の恩なのか愛なのかは・・・。聖蓮自身も気がついてないのでしょう。

聖蓮は待っているのかもしれません。本人は知らない無意識の中で・・・。聖蓮にとって凌駕は大切な人です。もし対立するような事があったら聖蓮は迷わず命を捧げるでしょうね。でもね、ハル様そんなことはしません。ハピエン主義ですもの。このまま見守って下さいませ。

ひねくれ凌駕も素直になれないだけなのです。暁水と紫炎がいますから、お兄ちゃん達がなんとかしてくれるってv(〃☯‿☯〃)vあぃ!

ハル様コメありがとでした☆
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