たとえこの世の終りが来ようとも

たとえこの世の終りが来ようとも13

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紫炎が聖蓮の処置をしている間も暁水は傍にいた。聖蓮の身体の傷は見ていて悲しくなるほどの傷だった。

「聖蓮はキレイな身体だね。」

「ちっともキレイじゃないよ。見てわかるでしょ。酷い傷跡で醜い。」

「そんなことないぞ。聖蓮。これは人を守るために自ら負った傷だろ。それが醜いわけあるか。オレと紫炎は醜いとは思わない。なっ紫炎。」

「そうだよ聖蓮。キミはもっと自信を持たなくちゃ。ボク達分家が守るべき人なんだから。」

「えっ。紫炎と暁水は篠宮の分家なの?」

「そうだ。オレ達は生まれる前から本家を守る事を定められていた。」

「生まれる前から?」

「そうだよ。決まってた。」

「オレはそれを両親から聞かされた時はすごく反発した。」

「そうだね。あの頃の暁水は何にでも突っかかっていってたね。」

当時を思い出した紫炎が苦笑する。

「仕方ねぇだろ。だって見た事もない奴の為に命を投げ打てって言われたんだぞ。落ち着いて受け入れた紫炎のほうがおかしい。」

「そうかもね。ボクは臆病だから嫌だって暁水みたいに言えなかった。だから暁水が嫌だって反発してくれて嬉しかった。」

「でも結局こうして聖蓮の前に来ちまった。」

「どうして今まで来なかったのかって思ってる?」

「だよな。オレ達も聖蓮の事を聞かされたのは転校してくる前だった。聖蓮の事は知らなかったんだ。」

「聖蓮の事を聞いてもパートナーがいるんだと思ったんだけど、ずっと1人で闘ってるって聞いてすぐにここに来たんだよ。」

「だって異界の者とパートナーなしに闘ってるなんて、それも本家の人間がだぞ。何で今まで言わなかったのかってオレも紫炎も思ったんだ。」

「それは今まではオレ1人でも久遠もいるし大丈夫だと思ってたんじゃないかな。でもオレは弱いから・・・。このままじゃ死んでしまうと思われたのかな?」

「聖蓮が弱いわけでも久遠がパートナーじゃないからでもないよ。時期を見てたんじゃないのかな?」

「そうだな。今までは割と雑魚が多かったし、それほど頻回に出てくるわけじゃなかっただろ。オレと紫炎がいても2人でチカラを合わせて闘わなくてもよかったからな。」

「だけどこの頃は異界の者もチカラの強い者が出てくるようになったし、頻回になってきたと思わない?」

「うん。確かに。前は森の中だけだったのに、昨日は町の外れに出てきたんだ。」

「オレ達は森の中だった。そうか町の外れにまで来たのか。」

「だから聖蓮は寝ないで闘ってたの?」

「うん。久遠と2人で町の中に入らないように・・・。でもオレのチカラが弱いから苦戦して久遠も少し怪我したんだ。久遠の傷はオレが手当てして…。久遠は使い魔だから時間が経てばある程度はよくなるけど、オレは生身だから・・・。」

「まあ普通の人間よりはタフだし、怪我の治りも早いけどな。」

「でもこれだけの傷で学校に来てたなんて無茶しすぎだよ聖蓮。」

「でも、もしかしたら町の中まで異界の者が出てたんじゃないかって不安になって・・・。情報を集めるなら学校が良いと思ったんだ。」

「それで寝ずに学校にいったのか?聖蓮オマエは・・・。」

「・・・うん。」

「いい子だね聖蓮。」

怪我の処置の終った紫炎は聖蓮の頭をくりくりとなでてやる。

くすぐったそうにする聖蓮を2人で抱きしめる。

「聖蓮、これからはオレ達がいるんだから無茶するな。」

「そうだよ。ボク達を頼ってくれなくちゃね。」

「ぶーっ。ボクも聖蓮を守るのっ。」

膨れた顔の久遠が割り込んでくる。

「聖蓮、傷痛くない?ごめんね。ボクは聖蓮の使い魔なのに余り役に立てない・・・。」

シュンとした久遠の頭を聖蓮がくりくりとなでる。

「そんなことない。久遠はいつもオレを助けてくれて、久遠だってホントは怪我だらけなのに・・・。そのキレイな白い毛の下に傷がたくさんあることオレ知ってるもん。オレこそ弱くてごめん。」

「聖蓮が弱いんじゃない。アイツが忘れてるから。」

「久遠それは言わない約束でしょ。いいの。オレは1人で闘うって決めたんだから。」

「・・・ッ。でもボクはくやしいよ。」

今度は暁水が聖蓮と久遠の頭をクリクリとなでる。

「オマエ達は仲良しでいいパートナーだと思うぜ。たとえ人と使い魔であってもな。今はそれでいいじゃないか。オレ達も加わったんだ。4人いれば楽勝だろっ。」

「ありがとう暁水。」

「おっ。やっとオレの事を『暁水』って呼んだな。」

「うん。仲間だって言ってくれたから。でも本家とか分家とか関係ないよ。だからオレのために命を投げ打つなんて言わないで欲しい。そんなことオレは望んじゃいないから。」

「わかってるよ。聖蓮。ボク達は仲間だよ。」

「そうだ。4人で力を合わせて闘おうな。」

「でも聖蓮は異界の者を出来るだけあっちの世界に帰したいんだよ。消しちゃわないの。まずは帰そうとお話する。戻りたいって異界の者が言えば戻してあげるんだ聖蓮は。」

「だから余計に傷が出来るんだ。」

「オレたちには戻すチカラはないからな。会ったら即闘いになる。」

「うん。戻すチカラは本家にしかないからね。」

「そうなんだ。オレそんな事も知らない。だって分家の人も暁水と紫炎が初めてだよ。ボクはお爺様しか知らない。」

「そうだろうな。庄之助さんは聖蓮に何も教えていないって言ってた。」

「暁水はお爺様に会った事があるの?」

「ああ。紫炎もな。てか分家の人間は絶対に庄之助さんと会ってる。見極めをするのはあの人だからな。今は篠宮の頂点だしな。」

「分家にもチカラのある者と無い者が生まれるんだよ。チカラのある者は庄之助さんがどうするか決める。ボクと紫炎は聖蓮の守護になったけど、他の人たちはいろんなところで異界の者と闘ってるよ。」

「そうなんだ。オレはここから何処にも行った事ないから。お爺様は分家の人とは時期が来たら会う事になるって言って、それ以上は教えてくれなかった。」

「多分もうちょっとしたら庄之助さんも帰ってくると思う。」

「そうなんだ。暁水と紫炎はオレと同じ年なんだよね。」

「そう思うだろ。でも実はオレ達は聖蓮より年上なんだ。ここに来る前は2人してスーツきて会社に勤めてたんだぜ。昼間はな。」

「ええっ。何歳なの?大人っぽい高校生だとは思ってたけど違和感まるでなかったよ暁水。」

「でしょ。暁水って案外子供っぽいからスーツを学制服にすれば違和感ないの。」

「ひでぇな紫炎。オマエだって違和感ねぇぞ。おまけに聖蓮みたくモテちゃって、どこでも注目の的だろ。」

「よく言う。暁水には参るよ。毎日のように告白されてるのは誰?男からも女からも。」

「ちょ、妬いてるのか紫炎。オレにはオマエだけだってっ!!みんな断ってるしっ!!」

必死な暁水を見て笑えた。紫炎もそんな事はわかってるだろうに・・・。

「ふふっ。わかってるよ暁水。ちゃんとわかってる。ボクにも暁水しかいないから・・・。」

又、2人の世界に入りそうになるのを察知した聖蓮は笑うのをやめて必死でその空気を戻す。

「わかったからオレの前で2人の世界に入らないで。ここはオレの部屋なんだから。」

ピンクに染まりそうだった2人はそうだったなと見つめ合って言っている。続きは家でねなんて事まで・・・。

「オレ仲間になってくれて嬉しいけど、前より寂しくなったらどうしよう・・・。」頭を垂れる聖蓮に久遠がヨシヨシと頭をなでてくれる。

「大丈夫。聖蓮にはボクがいるよ。ヨシヨシ。」

「でも久遠じゃ甘いピンクの空気にはならない。」

「何だ。聖蓮はピンクの空気になりたいのか?」

「そうじゃなくて、2人がそんな時ははみ出し者だなーって思っただけ。」

「仕方ない。今度、聖蓮も混ぜてやろうぜ紫炎。」

「ダメだよ。聖蓮には刺激が強すぎるでしょ。それに男同士のに混ぜてどうすんの?聖蓮は女の子を好きになるかもしれないのに。」

「そうなのか?聖蓮。」

「そうなのかってどういう事?」

「じゃ質問を変えるね。聖蓮は今まで好きになった人はいる?」

「好きになった人?母様とか・・・。」

「紫炎が言うのはそんなんじゃなくて愛した人ってこと。LIKEじゃなくてLOVEになった人。」

LIKEじゃなくてLOVE・・・。ふと凌駕の事が頭に浮かぶがあれは愛じゃない。守ってくれる事が嬉しくて、他には聖蓮の事を相手にしてくれる人が周りにいなかったから縋っていただけ・・・。

「・・・いない・・・かな・・・。」

「じゃ、これからだな。聖蓮は。じゃあ後学のためにも男同士の愛ってもんを知らないと・・・。」

「調子に乗りすぎだよ暁水。まずは女の子との恋愛じゃないか普通は。男同士は今の世の中ではマイノリティなんだから。ボク達はこれでいいけど、それを聖蓮に押し付けたらダメでしょ。」

「女ねぇ。聖蓮が女を抱くなんて想像出来ねぇ。」

「聖蓮が女の人を抱かなくても女の人が聖蓮を抱いてくれるかもしんないでしょ。」

「それって年上の女って事?それも想像出来ねぇ。まあ。聖蓮が抱くよりは想像出来るか。」

「なんかオレの事を勝手に想像しないでくれる?」

ちょっと腹が立って大きな声を出したら眩暈がして身体の力が抜ける。

「危ないっ。」

あわてて暁水が聖蓮の身体を抱き止める。

「ごめん暁水・・・。」

「バカ。今のはオレ達が調子に乗ったのが悪い。聖蓮は怪我してるのに。」

「聖蓮顔が赤いね。熱が出てきたんじゃない?」

そう言えばなんだか身体が熱いような気がする。

「・・・うん。何だか熱い気がする。」

暁水はあわてて紫炎が敷きなおした布団に聖蓮を寝かせる。紫炎は熱を測りおでこに熱を取る吸収シートを貼りつけると水分を摂るようにとスポーツドリンクを持ってくる。

「しばらく寝ろ聖蓮。」

「そうだよ。ボク達が傍にいるから。」

「ボクもいるよ。」

久遠もあわてて出てきて言うので聖蓮は安心して目を閉じる。

「こんなにたくさん話したのは久し振りだから嬉しかったんだ。」

呟いて眠る聖蓮をみて3人は絶対に聖蓮を守ると約束しあう。

その日から暁水と紫炎は聖蓮の家の客間に同居しだした。







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