たとえこの世の終りが来ようとも
たとえこの世の終りが来ようとも14
最近、凌駕はおもしろくない。
周りに友達が寄ってても、学年で一番の可愛い女の子が凌駕を甘く誘っても、見向きもしない。ウザイと思うだけだ。何時のまにか凌駕の視線は聖蓮に向いている。その目は炎がメラメラと燃え盛るかのように熱い。
暁水と紫炎が連れて帰ったあの日から3日ほどして聖蓮は登校してきた。それはまだいい。いつもならギリギリに1人で登校し、影のようにしていた聖蓮なのに、その日から暁水と紫炎が一緒に登校している。3人で登校する姿は何処にいても目立つ。良かれ悪かれ注目される聖蓮と、転校したてで誰も彼もを惹き付けるワイルドな暁水に、聖蓮とは違う美しさを放つ紫炎が3人でいるのだ。注目されないわけはない。
凌駕は聖蓮が一人でいることで聖蓮には凌駕しかいないのだと勝手に思いこんでいた。それが音もなく崩れ去る。苛立つ気持ち。焦る気持ち。自分の心の中がどす黒くなっていく。何だかわからないがモヤモヤしている。
聖蓮が1人でいることはオレしか話す事が出来る人間がいないのだと安心していた。歪んでるとは思っていたが心の闇の中で喜びでもあったのだ。
表情のなかった聖蓮に暁水といる時、紫炎といる時、3人でいる時にいろんな表情が見える。拗ねたり怒ったり。何より許せないのが聖蓮が笑っている事。穏やかな表情をしている事。暁水と紫炎を信じている様子。暁水や紫炎に甘やかされている様子。頭をくりくりとなでられて照れくさそうにする聖蓮。そう、今までと違う生きている表情。昔、幼い頃遊んでいた時に見せた聖蓮の表情をオレではなく暁水や紫炎に見せていることが凌駕に暗い闇を巣食わせている。
凌駕はどうしてそう思うのかわからない。今まで聖蓮のことに関わらないと放っておいたくせに・・・。
紫炎と暁水は凌駕がすごい目で自分達を見ている事を知っている。聖蓮は気がついていないようだが・・・。
「ねえ暁水。凌駕のあれってジェラシー以外のなにものでもないよね。本人はわかってないみたいだけどさ。」
「だな。今までは聖蓮にかまう奴がいなかったから安心してたんだろ。心のどっかで聖蓮にはオレしかいないってタカくくってたのに横からかっさらわれたってとこか。」
「ま、しばらくは苛立っててもらいましょ。なんでそんな気持ちになるのかわかればいいんだけどね。凌駕もお子様だからね。」
「だな。凌駕が大人にならねー事にはどうしようもない。」
昼休みになると、いつものように聖蓮は旧校舎の屋上に登る。暁水と紫炎が傍にいてくれるおかげで学校も楽しい。嫌な視線も3人でいると気にならない。
風が気持ちいい屋上でお弁当を広げる。もちろんそこには暁水も紫炎もいて、お弁当は聖蓮がみんなの分を作っている。
「おっ、今日は3色そぼろご飯だ。これだけでも十分なのにおかずまでつくったのか聖蓮。」
「うん。自分の為だけのお弁当なんて冷凍食品を詰め込んでただけだけど、暁水や紫炎も食べてくれると思うとなんかすごく楽しくてはりきっちゃうんだ。お爺様に作ってるのとは又違う。」
「聖蓮はお弁当作るために早起きしてるんでしょ。無理したらダメだよ。」
「無理なんかじゃないよ。どうせ早起きして神社の仕事もあるし、今は異界の者の退治もみんなでしてるから楽なんだ。そのお礼もかねてる。それに夕飯は紫炎が殆どしてくれてるじゃないか。」
「ふふっ。ボクも作るのは大好きだからね。それに最近は聖蓮も食欲が出てきてたくさん食べるようになってくれた事が嬉しいんだ。」
「そうだな。聖蓮もやせっぽちだったのが少し肉がついてスタミナも出てきたもんな。いいことだ。」
「うん。前はすぐに息切れしてたのがずいぶん闘う時間が延びたと思う。おいしく食べれてるのがいいのかな?一人じゃないもん。会話のある食事が楽しい。」
「いいことだ。聖蓮もずいぶん明るくなったしな。今まで我慢しすぎてたんだよ。」
穏やかな時間が流れ明るい笑い声が続く。夜になれば異界の者との闘いはあるが、それでも1人じゃないってことは聖蓮を強くさせていっていた。
その日の夕方、紫炎と暁水はスーパーに寄ってから帰ると言うので聖蓮はめずらしく1人で帰っていた。
下駄箱で履き替えて外に出た時に急に凌駕に腕を掴まれ、強引に連れて行かれる。
「ちょっ・・・ちょっと待って。どこに連れて行く気?」
凌駕は何も言わずにずんずんと森の方へ向かっている。
「ちょっと凌駕やめて。みんなに見られたら凌駕が何か言われるよ。」
それでも凌駕は何も言わずにずんずんと森の奥へと進む。
聖蓮は森の中に異界の者の気配を感じていた。それもそうとう強い。禍々しい気配だ。
「凌駕ここはダメだ。お願い。森の奥には入らないで!!」
「うるさいっ。オマエはだまって付いてくればいいんだ。」
何を怒っているのか凌駕は歩みを止めようとしない。
(ダメだ。凌駕に何を言っても聞こうとしない。でもこの気配は絶対にマズイ。オレ1人じゃ無理かもしれない。久遠、暁水と紫炎を呼んできて。お願いっ!!)
久遠は聖蓮の言葉に頷き、走り去っていく。
森の中は薄暗く、いろんな者の気配がしている。
禍々しい雰囲気に息をするのが辛くなる。闇が濃く、空気が重々しい。息が上手く出来ない。
「・・・お・・・おねが・・・い・・・凌駕・・・とま・・・て・・・。」
その時になって聖蓮の様子がおかしい事に凌駕は気がつく。凌駕自身も怒りで雰囲気や気配など感じていなかったのが、歩みを止めた事で何かいつもと違うと感じる。聖蓮は苦しそうに肩で息をしている。凌駕は何故か平気だった。聖蓮の清い空気がこの空気に耐えられないのかもしれない。
ふと、その雰囲気が収まりいつもの空気に入れ替わった。聖蓮は何度も深く深呼吸を繰り返し、落ち着かせている。
「凌駕、どうしてこんなところに連れてきたの?早く戻ろう。ここは何だか良くない空気が漂ってる。今の内に戻ろう。」
聖蓮は凌駕の手を取り戻ろうとするが、凌駕は掴んでいる聖蓮の手を振り払う。
「凌駕!!ここは危ないんだってば。」
「うるさい。聖蓮のくせにオレに指図すんな。」
「ごめん凌駕。気を悪くしたなら謝るからとにかくここを出よう。お願いだから。」
「いちいち言われたくねぇよ。それよりオマエ、橘や秋里と一緒にオマエの家で住んでるって本当なのか?」
「え?暁水と紫炎の事?」
聖蓮が姓ではなく『暁水』『紫炎』と名で呼ぶ事が親密さを表しているようで腹ただしい。
「そうだよ。本当なのかって聞いてんだ。」
「うん。今は一緒に住んでもらってるよ。お爺様はずっと分家に行ってて戻ってきてないんだ。もちろんお爺様には了承してもらってるけど、それが凌駕とどう関係あるの?」
聖蓮にしてみれば凌駕は聖蓮のことなど嫌ってて関わりになりたくないと思っているので、なぜそんなことを言われるのかわからずに正直にありのままを伝えたのだが、凌駕は聖蓮への自分の感情がわからなくなる。
「聖蓮は1人でいればいいんだ。あいつらをオレみたいに巻き込むのか!!」
凌駕の言葉に聖蓮は何も言えなくなる。暁水と聖蓮が仲間だという事は言えない。言えば彼らも周りの人間から蔑視されるかもしれない。彼らはそんなのは平気だと言うだろうが聖蓮はそうなる事が嫌だった。凌駕に何と言えばいいのだろう。
「だまってないで何とか言えよ。」
聖蓮は辛そうな表情のままだ。こんな顔させたいんじゃないのに、気がつけばいつも聖蓮を傷つける言葉しか言ってない。凌駕はどうしてそうなってしまうのか、本当は聖蓮に優しくしたいのだ。ふと頭の中によぎった考えにフリーズしてしまう。
(オレは聖蓮に優しくしたい?どうして?)
お互いにだまったまま聖蓮は地面を凌駕は聖蓮を見ている。
「ほお。うまそうな人間が2人もいるじゃないか。と、どちらも完全な人間ではないな。異界の者の血が混ざっている。まあ良い。これほどのチカラの持ち主を食えることはそうそうないからな。」
当然、暗くなり禍々しい空気がその場に立ち込める。
「さっき手下どもが見つけたのはオマエ達だったようだ。あいつらにも残りを分けてやろうか。ちゃんと報告した褒美にな。」
そういうと聖蓮と凌駕へと間合いを詰めてくる。
「凌駕っ!!逃げてーーーーっ。」


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Re: ぎょえ───(((;'Д' )))───!!!!こここここわいよぉ‥
ハル様こんばんは☆
やっぱファンタジーものは難しいですね。頭の中で二点、三点しております。はたしてBLになるのか(笑)
お子様凌駕は聖蓮は自分だけのものって安心していたところにライバル(凌駕はそう思っている)が登場せいちゃったのであせっていますが、これを機に自分の中の気持ちに気がついて欲しいです。
聖蓮が凌駕に何故なにも言わないのか1人でいるのかお勉強しなさいです。
ハル様忙しいでしょうにコメありがとうございます。身体と心は元気ですか?
私も遊びにいきますね(。◠‿◠。✿)ぅんぅん
やっぱファンタジーものは難しいですね。頭の中で二点、三点しております。はたしてBLになるのか(笑)
お子様凌駕は聖蓮は自分だけのものって安心していたところにライバル(凌駕はそう思っている)が登場せいちゃったのであせっていますが、これを機に自分の中の気持ちに気がついて欲しいです。
聖蓮が凌駕に何故なにも言わないのか1人でいるのかお勉強しなさいです。
ハル様忙しいでしょうにコメありがとうございます。身体と心は元気ですか?
私も遊びにいきますね(。◠‿◠。✿)ぅんぅん
- #234 † Rin †
- URL
- 2012.06/08 22:20
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ぎょえ───(((;'Д' )))───!!!!こここここわいよぉ‥
凌駕‥心穏やかでないですね。
確かに子供っぽいけど、気持は分かります。
だって‥なにも知らされてないから。
分れって方が難しいですよね。
他の誰かが声をかけるのは許さない、
自分以外に笑顔を見せるなんて‥嫌だ。
うーん‥
完全なジェラシー‥ですね。
嫉妬に燃えて夜の森は行っちゃダメですよね。
もののけ姫の森のことを思い出しました^^;
異形の者がたーくさん‥
そんな可愛いものじゃないようですね、
大丈夫かな‥ドキドキします(>_<)
正体がばれたり、深いダメージを負いませんように‥
お祈りしております~(@_@;)
また参りますねm(__)m