たとえこの世の終りが来ようとも

たとえこの世の終りがこようとも15

 ←たとえこの世の終りが来ようとも14 →たとえこの世の終りがこようとも16

「何してるのっ。早く凌駕逃げてっ!!オレが食い止めてる間にっ。早くっ!!」

今にも相手は襲いかかろうとしている。凌駕は突然の出来事に身体が動かなかった。声さえも出ない。

「ほらほら行くぞ。」

そういうなり相手は聖蓮めがけて間合いを詰め腕を振り下ろす。

「っく・・・!!」

聖蓮の身体は後ろの木の幹に打ち付けられる。

「・・・っ。・・・凌駕・・・はや・・・くっ。」

聖蓮は唇の血を拭うと態勢を整えて印を切る。

大きな竜巻のような風が吹き相手の身体を飲み込む。が、風がやんだとき奴は平然と同じ所に立っていた。

「ほお。こざかしい術を使うな。面白い。」

相手の目が凌駕へと移る。

「ダメだ。凌駕はオレが守る。」

聖蓮は座りこんでいる凌駕の前に立ちふさがる。

(オレはこの光景を知っている。)

凌駕は遠い記憶の中で同じ事があった事を思い出した。

(あれは・・・。)

そう。あの日。あの日の事だ。

凌駕の身体がブルブルと震えだす。

「おや。オマエ達はあの時の子供ではないか。」

異界の者が目を細め面白そうに聖蓮と凌駕を見比べる。

「覚えてないか。あの時はまだほんの子供だったな。あの時は邪魔だてが入り食い損ねたが、それが良かったようだ。あの頃よりチカラが大きくなってますますうまそうだ。オマエ達の名前も知っているぞ。立っているのが聖蓮で座りこんでいるのが凌駕。あの時ばあさんが叫んでたからな。」

舌なめずりをした異界の者が嬉しそうな顔をする。

「やめろっ。昔の事は言うなーーーーっ!!」

聖蓮は凌駕が思い出す事が怖かった。夢中で攻撃をしかける。

印を切り呪文を唱えると聖蓮の手から突風が舞い上がる。聖蓮は異界の者の近くまで掛けよると相手を切りつけるように手を振りがざす。突然の突風に相手は2,3歩後ろへ後退する。

「ふん。これほどの攻撃しか出来んのか。凌駕はなぜ攻撃しない。お前の方が聖蓮よりチカラは上だろう。ああ、オレの名前を言ってなかったな。聞いたところでオマエ達はオレに食われてしまうが、冥土の土産に教えておいてやろう。オレの名は『竜王(リュウオウ)』異界の王だ。散歩にこっちに来て見たらいいものに出くわした。あの時も散歩に出ていたのだが、あのばあさんに術をかけられ、今までこちらに出てくることが出来なかった。まあ、平たく言えば『封印』されたのだろう。今はもうその封印はとけているがな。くくっ。」

凌駕は竜王の言った事の意味が掴めずにいた。

(オレはなぜ攻撃しない?チカラは聖蓮よりある?どういうことだ。幼い頃にコイツに出くわしてる?)

凌駕はパニックになっていた。

(怖い。怖い。怖い。何なんだよこれは。やっぱり聖蓮といるとロクな事がないじゃないか。)

相変わらず足はすくんで動けない。おまけに竜王に見られているから余計に恐怖心が湧く

思い出そうとするが頭がガンガンしてきたのと恐怖とでますますパニックになっている時、竜王が攻撃をしかけてきた。凌駕に向けて放たれた拳があたると思って目を瞑ったが痛みは来ない。おそるおそる目を開けると、竜王の拳を身体で受け止めている聖蓮が前にいた。

「聖蓮っ!!」

「ぐふっ・・・。」

聖蓮の口から鮮血が流れる。

「はや・・・く・・・にげ・・・ぐっ・・・ぶっ・・・。」

膝を折り地面につきながらも何とか立ち上がり、なおも凌駕の前に立つ聖蓮。

そこへ久遠が帰ってくる。

「久遠。暁水達に会えた?先に帰ってきてくれたんだね。久遠、お願い凌駕を森の外へ連れて行って。早くっ!!!」

久遠は頷くと座りこんだままの凌駕を背に乗せて森の外へと走る。

「おいおい。まあいいか。お前を食ってからでも遅くはない。」

「オレを甘くみないで欲しいな。王だかなんだか知らないけど、オレは負けない。」

聖蓮の額に紋章が現れ、胸の勾玉が呼応したように輝くと瞳の色が紅色に輝く。

「それでなくては殺しがいがないというものだ。どれほどのチカラか見せてみろ。退屈しのぎには丁度いい。相手になってやる。」

「凌駕には手を出させない。」

森の中に大きな風が吹き荒れる。





森の外へ連れ出された凌駕はまだ震えていた。何かを思い出しそうだが思い出したくないと頭の中が拒否する。しかし自分をかばい傷だらけで口から血を流していた聖蓮を思い出すと身体がドクンと大きく跳ねる。

あの日、凌駕と聖蓮は森の奥で遊んでいた。いつもは入ってはいけないと言われていたのに、ちょうちょを追っているうちに入り込んでしまったのだ。森の奥には変わった木の実や花が咲いており2人は夢中になって遊んでいた。
そこへ、異界の者が現れたのだ。そう、確かにアイツだった。竜王だ。

(それで・・・。それでどうしたんだ?)

そこまで思い出したがその先がわからない。久遠は凌駕を森の外へ連れ出すとすぐに聖蓮の所へ戻って行った。森の奥からは破壊音が響き木々がざわざわと揺れている。聖蓮は大丈夫なのか?

竜王は圧倒的な強さだった。あのままでは聖蓮が死んでしまう。でもオレに何が出来るというのだ。

凌駕は思い出せない事、竜王の怖さ、聖蓮の身の危険を考えブルブルと震えている。身体の奥で何かがドクンドクンと音を立てている。まるで目覚める前のような感覚。でもそれを目覚めさせてはいけないと凌駕は両手で身体をぎゅっと抱く。

「おいっ!!聖蓮はどこだっ!!早く言えっ!!」

突然襟首を持ち上げられ乱暴に揺すられる。

「・・・っ。・・・奥。・・・森の・・・。」

「相手はどんな奴なの?」

「竜王・・・。」

「何だって!!竜王!?」

「紫炎ヤバイぞ。聖蓮が危ないっ!!」

「急ごう。」

「てめぇ。聖蓮に何かあったらぶっ飛ばすっ!!」

暁水と紫炎は凌駕には目もくれず森の奥へと消えて行った。

(聖蓮が危ない・・・・?聖蓮が死ぬ?)

ドクンドクンと言う音とは別にドクドクと血が逆流しているような感覚を覚える。

しばらくすると全身血だらけで顔面蒼白になった聖蓮を紫炎が抱き抱えてきた。

「・・・聖蓮は・・・生きてるのか?」

「何とか生きてる。凌駕、急いで聖蓮を家に連れて帰って出来るところの処置をして。聖蓮の部屋に薬箱あるから。止血ぐらい出来るでしょ。ボクは暁水を助ける。ボク達が帰るまで聖蓮の事頼んだよ。他に誰もいないんだからね。」

それだけ言うと紫炎は森の奥へ消えた。

凌駕の腕の中では浅い息を繰り返し苦しそうな聖蓮が横たわっている。

「・・・リョ・・・ガ・・・逃げて・・・あぶ・・・ない・・・」

「・・・オレがま・・・もる・・・」

手は空を彷徨い、凌駕を守ろうとしているかのよう。

「聖蓮っ!!」



にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
にほんブログ村
にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
にほんブログ村


関連記事
スポンサーサイト





もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png ご挨拶
もくじ  3kaku_s_L.png 貴方の腕の中で
総もくじ  3kaku_s_L.png キミと空とネコと
もくじ  3kaku_s_L.png S.S
もくじ  3kaku_s_L.png イラスト
もくじ  3kaku_s_L.png 頂きもの☆
もくじ  3kaku_s_L.png 雑記
総もくじ  3kaku_s_L.png 新撰組物語
  • [たとえこの世の終りが来ようとも14]へ
  • [たとえこの世の終りがこようとも16]へ

~ Comment ~

 (*≧艸≦)うぐぐぐぐ‥どどどとうなるの‥ 

Rinさま、こんにちは♪

どうなってしまったか心配で‥‥
そしたら‥そしたらーーー‥
凌駕くんが目覚めちゃったのですかっ!?

こういうの好きなんです‥
自分の力に目覚めて戸惑ったり
怖がったり‥

いったい自分は何なんだ?って、
思い悩んだり‥ドSではないのですが
Xみたいな‥神威が目覚めて行くところとか好きでした。
まったく救われないひと‥血も涙もない星史郎さんも好きですが‥^^;

関係無いお話ししてスミマセン。

凌駕くんがなにか発動してくれると‥ぎゃーー‥とか叫ぶと思います。
そちらまで聞こえるかも~
私は今、心は京都ですから(^-^)

ではまた参りますm(__)m

どうなるのかしら‥ドキドキドキドキ‥

Re:  (*≧艸≦)うぐぐぐぐ‥どどどとうなるの‥ 

ハル様おはようです(。◕‿◕。)♥おはよ~♥(。◕‿◕。)

ハル様に気に入ってもらえたようでうれしいです。
凌駕の目覚めがもうすぐです。でも本人が思い出したいのと思い出したくない気持ちの狭間で揺れています。聖蓮は凌駕に思い出して欲しくない。思い出す事で自分のように苦しむと思うからなんですが・・・。

凌駕がどういう結論をだしていくのか・・・。素直ではない子なので不安です・・・。

X?のお話は知らないので何とも言えませんが・・・。最近は本を読まずにゲーム三昧です。弟のPSPを借りてたのですが、とうとう自分用に買ってしまいました(笑)ゲームのやりすぎで仕事中に頭の中で「ARMEN NOIR」の音楽が流れています(*≧m≦*)ププッ

このゲームのキャラも男前です(笑)特にクリムソンが好きっ!!声がいいわー。って完全にオタクです(笑)
ハル様コメありがとでしたღ❤ღ´ェ`*)
> まったく救われないひと‥血も涙もない星史郎さんも好きですが‥^^;
>
> 関係無いお話ししてスミマセン。
>
> 凌駕くんがなにか発動してくれると‥ぎゃーー‥とか叫ぶと思います。
> そちらまで聞こえるかも~
> 私は今、心は京都ですから(^-^)
>
> ではまた参りますm(__)m
>
> どうなるのかしら‥ドキドキドキドキ‥

ご無沙汰しております 

お久し振りです。なかなか時間が取れずやっと遊びにこれましたw
新連載はファンタジー物ですね。面白くて一気読みですよ。続きがすげー気になるっ!
凌駕くんがキーマンかな?
何か秘めた力を持ってるみたいですね。
そして暁水と紫炎の二人もいいですよね。優しくてカッコイイお兄さんって感じで♪
でなんといってもヒーロー(ヒロイン?w)の聖蓮くんが凄く好感持てます。一人で闘ってる聖蓮くんはカッコイイし凌駕くんの事を守ろうとする姿も優しくて健気です。 巻き込みたく無いって思ってんだろうな。
それは友情というより愛かもしれない…ってw
とはいえ凌駕くんの恐いと思う気持ちも判ります。普通ならやっぱ怖ろしいですしww今後の凌駕くんに期待大!
久遠も聖蓮くんを守ってんですよね。ガンバレー。
続き楽しみにしてます!

Re: ご無沙汰しております 

音夜様。.:*・゚❃・゚:*コン(〃✪ω✪)八(✪ω✪〃)ニチハ・゚:*❃。.:*・゚

読んでくれてありがとです。面白くて一気読み・・・嬉しくて顔がニヤケちゃいます。関西は梅雨入りしたけど、ばんばん飛ばして行きますよぉ(・・・飛ばせるのか?)

どうも私は健気愛が好きで主人公が偏ってます。聖蓮の事をいじめるつもりはないんやけど、気がついたらいじめられてました(笑)まあ、お兄さん達が来てくれたので大丈夫かと・・・。

凌駕はねぇ・・・。葛藤があるんですよねぇ。認めたくないと思う気持ちが強いけど、なんだか暁水や紫炎に苛立つという自分に???になっています。

聖蓮は優しい子なので一人で背負う事を決めたのですが、本心は寂しいんです。だって暁水と紫炎がイチャコラするので、いっぱしの少年ならねぇ・・・。お兄さん達は教えるつもりなのでしょうかねぇ。特に暁水はノリノリなんですが・・・。

音夜様コメありがとでした。また遊びに行きますね(✪ܫ✪)
> それは友情というより愛かもしれない…ってw
> とはいえ凌駕くんの恐いと思う気持ちも判ります。普通ならやっぱ怖ろしいですしww今後の凌駕くんに期待大!
> 久遠も聖蓮くんを守ってんですよね。ガンバレー。
> 続き楽しみにしてます!
管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • [たとえこの世の終りが来ようとも14]へ
  • [たとえこの世の終りがこようとも16]へ