たとえこの世の終りが来ようとも

たとえこの世の終りがこようとも16

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凌駕は聖蓮を抱き抱え夢中で走っていた。

「聖蓮っ、聖蓮しっかりしろ!!」

聖蓮は答えることもなく、ぐったりと凌駕の腕の中で身じろぎもしない。

凌駕の腕はみるみる赤く染まっていく。聖蓮の血が流れているのだ。

「チクショー。なんでオレの事なんかかばったんだ聖蓮。」

いつの間にか涙で視界がぼやけてくる。

腕に抱いている聖蓮の身体はあまりにも軽く、華奢だった。その聖蓮にかばわれて、その間自分は震えているしかなく、久遠によって助け出されたのだと思うといたたまれない気持ちになる。

「・・・リョ・・・ガ・・・。」

聖蓮は意識を失っても凌駕の事ばかり気にしているのがわかる。今まで聖蓮に酷い事ばかりしてきたのに聖蓮は凌駕を責めようとしなかった。

「あの日何かがあったんだ。」

しかし今はそれを考えている時ではない。一刻も早く聖蓮を連れて帰らねば。

走りすぎたせいで心臓は悲鳴をあげているがそれを無視して走る。森から10分と離れていないのに走っている間は長く長く思えた。

病院に連れて行こうかとも思ったのだが、傷の説明をどうすればいいのかわからない。紫炎は家に連れて帰れと言った。迷いながらも聖蓮の家に行く事を選択する。久遠に乗せてもらえば早くたどり着けるのだが、久遠も深手を負っており聖蓮の上にうずくまっている。久遠からも聖蓮からも苦しそうな息遣いが聞こえる。その息遣いに2人とも生きていると思うのだがその息遣いが少しでも途切れるとどうしようもない不安に襲われ、その度に聖蓮の名前を呼んでいた。何とか聖蓮の家にたどり着くと聖蓮の部屋へ入る。

子供の頃はよく遊びに来た部屋だ。その頃と聖蓮の部屋はあまり変わりはなかった。いや子供の頃よりも何も余計なものがなくなっていた。いつ部屋の主が消えても思い出がないような寂しい部屋。聖蓮の両親が生きていた頃はもっと聖蓮らしい部屋だったように思う。おもちゃやぬいぐるみが置いてあった。そういえばいつからかこの部屋で遊ぶことはなくなった。いつからだろう・・・。そう聖蓮の両親がいなくなってからだ。その頃から聖蓮の部屋に行く事はなくなり、遊ぶ時はいつも凌駕の部屋だった。あの頃から聖蓮は何かを抱えていたように思う。子供だったから深くは考えていなかったけれど、そうあの頃から聖蓮の表情の中に深い悲しみが刻まれていた。オレは何となく気がついていたのに何も聞かなかった。あの頃から聖蓮はひとりぼっちだったのだろうか。異界の者と闘っていたのだろうか・・・。

凌駕はぐっと胸にくるものを押さえ布団を敷くと聖蓮を横にした。

止血をする前に身体の血を拭わないといけないと思い、洗面器にお湯をはる。ボロボロになったシャツははさみで切って脱がせた。身体を動かすと血が出てきそうだったので最小限の動きですませようとした。それでも少し動かすと聖蓮からは「うっ」と小さな声が漏れる。

ようやくシャツを脱がせタオルで血を拭う。血が止まらないところは止血しなければいけないのはわかっているが
身体中にある傷跡から目が離せなくなった。

「聖蓮、この傷跡はどうしたんだ?」

聖蓮が年中長袖を着ていたのはこの傷跡を隠すためだったのだと初めて気がつく。

その間も血が止まらず傷の上からキレイなタオルを押し当てる。

「早く止まれ。」

凌駕は一生懸命祈る。聖蓮の呼吸は相変わらず浅く、苦しそうだ。

聖蓮をもっと楽にさせてやりたくてズボンも脱がせる。足にも無数の傷跡がある。

「聖蓮どうして・・・。」

いつの間にか又涙が流れていた。泣きながら聖蓮の血を拭う。

「・・・リョ・・・ガ・・・だいじょ・・・ぶ・・・?」

聖蓮が意識を取り戻して声を出す。

「ああ。大丈夫だ。何ともない。聖蓮が庇ってくれたから。」

「・・・ごめ・・・ん・・・リョ・・・ガ。」

それだけを言うと聖蓮は再び眠るように目を閉じ意識を失う。

「なんでオマエが謝るんだ。悪いのはオレだろ。オマエは森の中へ行く事を止めさせようとしたのに聞かなかったのはオレじゃないか。」

聖蓮の軽い身体を抱きしめる。無性に聖蓮を抱きしめたいと思った。自分の腕の中にすっぽりと収まってしまう聖蓮の身体を抱きしめる。聖蓮のトクントクンという規則正しい心音が聞こえる。浅かった呼吸も落ち着きを取り戻してきたようだ。しばらくの間しっかりと抱きしめることで聖蓮が生きている事を確認していた。聖蓮の身体を離すと、聖蓮が消えてしまいそうに思えたのだ。聖蓮が居なくなっても自分とは関わりのない事だと思っていたはずなのに聖蓮から離れられない。凌駕は「聖蓮。聖蓮。」といくどとなく聖蓮の名前を繰り返している。聖蓮が縋りつくように凌駕の身体に抱きついてきた。

意識が戻ったのかと顔を見ると聖蓮の目からは涙が頬を伝って流れていた。

「凌駕。ごめんね。凌駕・・・。傷つけてごめん。オレのせいで・・・。」

眠りの中でも凌駕に謝り続ける聖蓮。あの日の事を思い出せない自分がもどかしい。腹が立つ。

どれくらいそうしてたのかわからないが聖蓮の血は止まっていた。もう一度、キレイに傷を拭う。背中も拭かなければとゆっくりと聖蓮に下を向かせる。

聖蓮の背中には大きな傷跡があった。まるで刃物が突き刺さったような跡。

それを見た時凌駕の頭の中で何かがはじけた。ズキンと激しく頭痛がし吐き気をもよおしトイレに駆け込み嘔吐する。

「あの傷は・・・。」

吐くものがなくなっても嘔吐し続け、胃液しかでなくなる。頭はズキズキと痛み心臓がドクドクと大きな音をたてる。

「あの傷はあの日の傷。オレを押さえつけていた聖蓮。オレの顔に滴ったのは聖蓮の血!?」

少しだけ思い出したそれは凌駕にとって大きな衝撃だった。

あの日から1ヶ月学校に来なかった聖蓮。きっと生死を彷徨ったに違いない。何があったのか全てを思い出せない。もっと大事なことをオレは忘れてるんじゃないのか。

ズキズキと痛む頭を押さえ聖蓮の元に帰る。

何とか背中もキレイに拭い取り合えずは消毒してガーゼで保護し包帯を巻く。医学の知識なんてない凌駕に出来るのはこれくらいの事だった。

傷からくる熱なのか聖蓮の顔は紅潮している。

「何か飲ませないといけないよな。」

凌駕は冷蔵庫からスポーツドリンクを出すと聖蓮に飲ませようと口元へペットボトルをあてるがこぼれるだけで聖蓮は飲まない。

「どうすればいい?意識のない聖蓮に飲ませるにはどうすれば・・・。」

思いあぐねたあげくに口移しで飲ませるしかないと判断する。

熱の上がってきた聖蓮は口を半開きにさせて息をしている。

凌駕はスポーツドリンクを自分の口に含むと聖蓮の唇に重ね、少しずつ流し込む。柔らかい聖蓮の唇。なかなか飲み込まずに口の端から流れ出した時、聖蓮がコクリと飲み込むのがわかった。もう一度口に含んで聖蓮の口に流し込む。何度も夢中になって凌駕は口移しで飲ませた。

ハッと我に返り夢中で口移しで飲ませていた事に気がつく。

「これはこうしないと水分を聖蓮が飲めなかったからだ。他の意図はない。」

自分に言い聞かせるように呟く凌駕。

聖蓮が落ち着いたところで聖蓮の唇に触れた事をなかった事にするように久遠も治療する。

最初は抵抗していた久遠だが傷が深いためか途中かは大人しくなる。丁寧に傷を拭い消毒して包帯を巻く。

2人が落ち着いたところで凌駕は服が聖蓮の血で汚れていることに気付いた。

「これどうしようか。聖蓮の服は小さすぎるしな。母さんこれみたら卒倒するかもな。」

聖蓮が気がついた時に1人にしておきたくなかった。それが何故だかはわからない。取り合えず家に戻り着替える事にした。

「聖蓮すぐに帰ってくるからな。」

全てを思い出したわけではないがあの日に自分も関わる何かがあってそのために聖蓮はひとりぼっちになった事、傷だらけの身体は闘ってきた証。おまけにあの背中の傷。

何かが凌駕の中で蠢いている。

あの日に止まってしまった聖蓮と凌駕の歯車が再び動こうとしていた。










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~ Comment ~

 

立て続けのコメですみません;
読んでいるときラジオからセカオワの「眠り姫」が流れてて、なんか今回のストーリーのBGMにピッタリはまってんなーと。突然のリア話でゴメンナサイです(*´Д`)
記憶の歯車が凌駕くんの中で回り始めてたんですね(ワクドキ)
にしても聖蓮くん、深手負ってんのに凌駕くんを気遣うなんて(ノд`)なんて健気なんだっ!

タイトルなし 

音夜様連コメ嬉いっす(。◠‿◠。✿)ぅんぅん
セカオワって『SEKAI NO OWARI』のことですよね。知らなかったので早速YOU TUBEで検索して聞きますたっ!!セカオワの名前もだし『眠り姫』もほんま音夜様の言うようにこの話にぴったりで鳥肌もんですたっ!!
「ボーっと火を吹くドラゴン」って竜王だし(*≧m≦*)ププッ今度の攻撃で竜王に火を吹かせることにします(。-ܫ-。)ムフッ♥
歌の主人公が眠る聖蓮をみる凌駕のような感じでGOODですたーヾ( 〃ω〃)ッ キャーーーッ♪
でも聖蓮はちゃんと目が覚めますからねっ。
この歌すごく好きになりました。教えてくれてd(ŐдŐ๑)☆スペシャルサンクス☆(๑ŐдŐ)bです。
この頃、音楽もあまり聞かなくなりライブにもご無沙汰です。ライブハウスも行ってないなぁ。最後は何時だったか・・・。「GO!GO!7188」(解散してもうたし・・・)とか「GRAPEVINE」とか民生とかで終ってるような気がする・・・。夏ライブも行ってない。RISING SUNとかRUSH BALLとかOTODAMAとか行ってたのに・・・。今は誰も一緒に行く人がいないんだよなぁ。寂しいっス゚。・゚(つω✚ฺ`)。゚・。シクシク

聖蓮の健気愛が凌駕に響くように祈ってやって下さい。でも聖蓮はまだ凌駕の事を好きなのかわかってないので凌駕には酷だったりしてニヤリ_φ(≖ω≖。)♪

音夜様コメ&音楽情報ありがとでした。
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