たとえこの世の終りが来ようとも

たとえこの世の終りが来ようとも19

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凌駕は廊下に座りこんでしまっていた。

「オレ・・・今、何見た?・・・」

凌駕が暁水と紫炎が絡み合う姿に目を逸らすことが出来なかった。見てはいけないと思うのに、思考とは反比例して視線が外せなかった。凌駕自身も大きく反応してしまっている。

「・・・くっ・・・。オレ何反応してるんだよ。男同士のSEXだぞ。」

凌駕はそれなりに女の子と関係を持って来た。同じ年の頃の男にすれば多いほうだろう。なにせ困った事は一度もない。自分が動かなくても女の方から抱いてくれと寄ってきたのだから。でも今見たのは何なんだ。紫炎の妖艶な姿と顔、声。暁水のてらてらと汗で光る身体に爪を立ててしがみつく紫炎は今まで抱いてきた女よりも淫靡で美しかった。男同士のSEXは何となく想像出来たが実際に見てあまりのエロさに反応してしまった。

中途半端に膨らんだまま聖蓮の部屋にも戻れず、トイレで熱を吐き出した。凌駕の頭の中ではいつの間にか紫炎が聖蓮に変わって聖蓮の切なげな声と表情にたまらなくなって吐精した。

「オレ何やってんだよ。なんで聖蓮おかずにしちまうかな。」

手についた精液をペーパーで拭き取り流す。ペーパーが流れてしまって水が溜まるまでじっと見ていた。洗面所で石鹸をたくさん使って手をキレイに洗う。

「はぁ・・・。オレ欲求不満か。」

どうしても自慰行為をしてしまったことが納得出来ない。男と女の絡みでならわかる。でも見たのは暁水と紫炎の交わり。

「男同士なんてものを近くで見てしまったからだ。うん。そうだ。」

違うだろと思う自分に知らないフリをして無理やり結論付け、聖蓮の部屋に戻る。

穏やかな寝顔の聖蓮を近くで見る。聖蓮に触れたくて聖蓮の横に寝転ぶ。聖蓮の髪の毛を手で梳く。柔らかで少しウエーブのかかった色素の薄い髪の毛が凌駕の指の間からサラサラと通り抜ける。くすぐったいのか身じろぎする聖蓮が笑っている。長い睫毛が影をつくっている。聖蓮の頬をなでる。少し弾力のある肌。薄く染まった頬。そして聖蓮の唇を指でなぞる。

「さっき、この唇に触れたんだ。オレの唇が。聖蓮の唇は柔らかかった。」

凌駕は自分の唇に指をあてる。

「オレの唇が聖蓮の唇と・・・。」

気がつくと凌駕は聖蓮にキスしていた。重ねるだけのキス。

「・・・っオレ何してんだ。」

今日、何回言ったかわからない言葉。聖蓮は気がついていない様子にホッとする。

「今日のオレはどうかしちまってるな・・・。」

このまま聖蓮の傍にいるとおかしくなってしまいそうだ。聖蓮は落ち着いてるし、暁水と紫炎も戻ってきた。オレがここにいる必要はないだろうと家に戻る事にした。

明日から聖蓮や暁水、紫炎をまともに見る事が出来るかどうか・・・。

家に帰り、自分の部屋のベッドへゴロンと寝転がる。

色々と考えなければいけないが考える事が多すぎて何を考えればいいのかわからなくなる。凌駕の頭の中は飽和状態に陥っていた。

「明日、利香とHしよう。」

凌駕は今日の自慰行為は興味本位だと思った。いやそう思いたい。女とHすればこのモヤモヤも収まるだろうと思った。オレは女が好きなんだ。女の柔らかい丸みを帯びた身体が好きなんだ。今までもそうだっただろ。そう自分に言い聞かせる。

ふと、聖蓮の顔が浮かんできてあわてて聖蓮の顔を頭の隅に追いやる。

その日の夜の夢は異界の者と聖蓮と暁水と紫炎がぐちゃぐちゃに入り混じる変な夢を見た凌駕だった。




次の日、聖蓮も暁水も紫炎も学校を休んだ。きっと昨日の怪我のせいだろう。

「ねぇ。凌駕、今日は利香ん家に来てくれるでしょ。みんな出かけちゃっていないから、利香寂しいのぉ。」

「いいぜ。」

この利香という女は彼女ではない。いわゆるセフレというものだ。利香もオレのことをそう思っている。オレがダメなら違う男としている。お互いにそれをわかっているので後腐れも、面倒なこともない。それなりにHも楽しめた。なのに今日はどうしたことかちっとも気持ち良くない。利香の声さえ鼻につく。

「利香ごめん。今日はやる気になれねー。わりぃけど帰るわ。」

「ひっどーいっ。凌駕のバカ。いいよ他にもいるから。凌駕なんて早く帰っちゃえ。」

「じゃ、ごめんな。利香。」

利香に言われても何とも思わなかった。

「どうしたんだオレは・・・。」

考えても答えは出ない。

「聖蓮の怪我の具合はどうなんだろう。ちょっと寄って見るか。」

自分を庇って怪我した聖蓮が気になるのは当たり前だと理由をつけて聖蓮の家に行く。

インターホンを鳴らすと紫炎が出てきてドキッとする。昨日の姿を思い出して目が合わせられない。

「凌駕いらっしゃい。聖蓮は怪我がよくなくて部屋で寝てる。眠ってはいないから行ってあげて。」

その紫炎の後から暁水がやってきて紫炎を後から抱きしめる。

「もう、暁水ってば。凌駕がビックリしてるでしょ。ダメだって。」

「いいんだよ。オレ達は恋人同士なんだから誰に見られても。」

「ふふっ。ボク達はよくても凌駕が困ってるでしょ。」

「凌駕はもっとスゴイ事見ちゃってるから抱きしめるくらいの事なんとも思わねぇよ。なっ凌駕。」

「何の事?」

凌駕は返事も出来ずに顔が赤くなっていくのを止められなかった。昨日一瞬、暁水と視線が交差したような気がしたのだが暁水は凌駕が見ているのを知っていて事に及んでいたのだと気がつく。

「聖蓮のとこに行くから・・・。」

凌駕は2人の横をすり抜けて聖蓮の部屋に向かう。

聖蓮の部屋の前で一度深呼吸してからノックすると中から聖蓮が「どうぞ」と返事をした。

「よお。怪我の具合どうだ?」

「・・・凌駕。どうしたの?」

「お見舞い。」

「ボクは大丈夫だよ。昨日はあれから紫炎にも怪我の手当てしてもらったし、ボク、怪我治るの早いから。」

凌駕は聖蓮の傍に座る。

「そうか。よかった。顔色もいいし安心した。オレのせいで怪我させちまったから気になってさ。」

「もう言わないで。凌駕のせいじゃないし。ボクが弱いからなんだって。」

オレがいくら言ってもきかないだろうな。聖蓮は案外こうみえて子供の頃から頑固なんだ。

「わかった。もう言わない。」

「うん。」

「ところでさ、橘と秋里って付き合ってるのか?」

「ふふっ。仲がいいでしょあの2人。いつでもひっついてるんだよ。ピンクのオーラ全開で。ボク困っちゃうよ。」

「でもあいつら男同士だぞ。おかしいと思わないのか?」

「おかしいのかな?ボクは男だろうが女だろうが好きになったら関係ないと思うよ。この世の中には男と女しかいないから、どっちかと結ばれる。男と女の方が生産的だし、正しいと言えばそうなのかもしれないけど好きって気持ちはどうしようもないでしょ。それに暁水と紫炎を見ているとほんとにお互いを必要としてるし愛しあってると思うから不自然だとは思わない。ボクの考えがおかしいのかもしれないけど、ボクはそう思う。」

「好きになったらしょうがないか・・・。そうなのかもな。それが男だっただけの話か。」

聖蓮の言葉に妙に納得する凌駕。凌駕とて暁水と紫炎を見て軽蔑するような気持ちは湧かなかった。甘い2人に赤面はしたけどイヤだと言う気持ちにはならなかった。

「凌駕は暁水と紫炎を見てイヤだと思った?」

「いいや。お似合いだと思う。」

「でしょ。ボクもそう思う。あんなにお互いの事を大事に出来て愛し合えるのが羨ましい。」

「聖蓮は好きな奴いるのか?」

「わからないけど多分好きなんだと思う。いるよ。好きな人。」

真っ直ぐに凌駕の目を見て聖蓮が言う。

聖蓮は口に出してわかった。凌駕の事が好きなんだと。自分の周りの誰にも関心はないけど、凌駕は別だ。小さい頃から今までずっと凌駕の事を見てきた。それは凌駕の事が好きだから。凌駕を闘いに巻き込みたくないのも凌駕の事が好きで大切だから。

一方の凌駕は「好きな人がいる」と言った聖蓮の言葉にショックを受けていた。聖蓮に好きな人がいる・・・。18歳の健康な男だ。好きな人がいてもおかしくない。だけど聖蓮に好きな人がいるなんて思いもしてなかった。いつまでも自分を追いかけてくるもんだとばかり思っていた。

「聖蓮、好きな人がいるのか。オレの知ってる奴?好きだって言ったのか?」

「ボクは告白するつもりはないよ。一生片思いだな。」

「何で言わない?」

「昨日の事でわかったでしょ。ボクの役目は異界の者から人間を守る事。好きな人を巻き込みたくないから言わない。」

「それじゃ聖蓮は一生1人でいるのかよ。」

「うん。1人でいる。」

「それでいいのかよ。そんなんで一生1人でいいのかよっ!!」

「いいんだ。1人でいるってあの日から決めてる。」

「あの日・・・。おい。あの日一体何があったんだ。オレは覚えてない事が多すぎる。今までは考えないようにしてきた。思い出そうとしても思い出せないし、別に思い出さなくても生きていけるからいいと思ってたけどそれじゃいけないような気がする。大事な事を忘れてる気がするんだ。」

「凌駕は思い出さなくていいんだ。あれはボクが悪いんだから。ボクが弱かったから・・・。」

「だから教えてくれっ!!」

「思い出さなくていい。ボクは絶対に言わない。」

2人の間に険悪な雰囲気が立ちこめた時に紫炎が飲み物を持ってきた。

「はい。おやつの時間。今日のおやつはスフレチーズケーキを焼いて見ました。4人で食べようね。あっ、久遠を入れて5人だね。」

紫炎は暁水にも声をかけると聖蓮と凌駕が険悪になりそうな空気をかき消すかのようにケーキを取り分ける。

「今日のケーキは自信作だから食べて見て。」

にっこり微笑まれるとイヤとも言えず奇妙な空気の中で久遠をいれた5人は紫炎の作ったケーキとお茶を食べだした。



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いつも読んで下さいましてありがとうございます。
音夜様がセカオワの「眠り姫」がこのお話にピッタリだと教えて下さってから私の中でヘビロテになってます。もし良ければ皆様も聞いてみてください。リンクを貼り付けたのでよろしければそこからどうぞ。
音夜様、教えて下さってありがとうございました。


『SEKAI NO OWARI 眠り姫』


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~ Comment ~

ヽ(≧-≦)うーん‥まだ距離が‥ 

Rinさま、こんにちは!

凌駕くんは‥とっても刺激的なラブシーンを
見てしまいましたねぇ(=^・^=)

ただでさえ色っぽいふたりなのに‥そんなシーンを見たら‥
心の奥に気持を持っていたら‥
それはもう‥聖蓮がダブる~♡
薄々、昔のことも自分を守ってくれようとしたとは‥
気付いているのでしょうか。

でも頑なに彼は話さないだろうし‥
ふたりが仲良しになってくれないと‥
竜王に連れて行かれちゃうのではないですか!?
それが超怖くて‥‥
目下の心配ごとです~(T_T)

喧嘩はしないでほしいですね、心がお互い混じり合えたら‥
うーん‥
少し近づいたと思ったのは気のせいでしょうか。
守ってくれようとしたのに‥凌駕くん‥(>_<)

また参りますね、大丈夫かな‥?ってそっと‥(^_^;)

Re: ヽ(≧-≦)うーん‥まだ距離が‥ 

ハル様こんにちはv(〃☯‿☯〃)v

凌駕は大人の世界を垣間見てしまいました。でもちゃんとお勉強しとかないとね。それにはこのお兄さん達がいい先生になってくれます(*`σェ´*)フムフム凌駕はお子様ですから。それに輪を掛けて聖蓮がおこちゃまなのでニヤリ_φ(≖ω≖。)♪

凌駕も素直になれないので困ったちゃんです。聖蓮は頑固だしね。凌駕から近寄ってあげないといけないのですが凌駕は混乱しています。何かきっかけがあれば思い出しそうなんだけど、そのきっかけが見つからない凌駕です。凌駕の中の聖蓮の位置が変わりつつありますので見守ってやってください。

竜王は・・・。まあ異界の者ですから気まぐれだし、どう動くか?ですが・・・。聖蓮に執着しなければいいのですが・・・。

ハル様ありがとうございましたm(o・ω・o)m
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