たとえこの世の終りが来ようとも
たとえこの世の終りが来ようとも20
「ねぇ2人ともおいしくない?」
紫炎は黙々とケーキを食べる凌駕と聖蓮の顔を見ながら話しかける。
「おいしいよ。」
「うまい。」
同時に声が重なり聖蓮と凌駕は顔を見合わせるが次の瞬間に聖蓮はテーブルを、凌駕は窓へと視線を移す。
「あれ?さっきまで仲良く抱き合って眠ってたのにもうケンカしてんのか?」
「「だ・・・抱き合ってないっ!!」」
2人で同時に叫ぶ声に暁水がゲラゲラと腹を抱えて笑う。
「くっくっ。ぶはは。オマエらほんとにお似合いだぜ。」
涙が出そうなほど笑う暁水を聖蓮はキッと睨む。
「暁水、いい加減にしないとこの家から追い出すよ。」
聖蓮に睨まれて追い出すとまで言われてしまい何とか笑うのをやめる。
「すまん。聖蓮。もう言わない。」
「そうだ。橘もいい加減な事を言うな。」
「凌駕、俺の事は暁水でいいし・・・。」
「ボクのことも紫炎でいいよ。」
「ああ。出来るだけそう呼ぶようにする。ところで3人とも怪我は大丈夫なのか?」
「ああ、平気。聖蓮がちょっと酷いけど、もう1日もすれば学校にも行けると思う。オレ達はそんなに酷い怪我はしてない。」
「でもあの竜王と闘って怪我もたいした事ないって、たち・・・暁水もあきさ・・・紫炎も強いんだな。」
「オレ達は強いけど竜王の方が強いぜ。昨日はたまたま竜王が闘いに興味をなくして消えてしまったんだ。聖蓮がいなくなったからかもしれない。」
「闘ってる最中に興味をなくすってどういう事だよ。」
「つまりオレ達はいつでも始末できるからって事さ。」
「そんな・・・。オマエ達は聖蓮を守ってるんだろ。オマエ達が竜王にかなわなかったら聖蓮はどうなるんだよ。」
「だよな。だからオレ達も困ってる。聖蓮を守るのが嫌だとか竜王にかなわないからとかそんな事じゃないんだ。たとえ竜王に敵わなくても、オレと紫炎は死ぬまで聖蓮を守る。聖蓮を守るのがオレ達の役目だからな。どうすればいいのか庄之助さんならアドバイスをくれると思うんだ。」
「お爺様どうしたんだろう。もう帰ってきてもいい頃なのに・・・。」
「もし今、竜王が来たら勝てないって事なのか?」
「絶対ってわけじゃないけど、勝てる可能性はかなり低い。」
「聖蓮がパートナーと2人でいるなら今、眠っている聖蓮のチカラも引き出されて4人でなんとか竜王に勝てるかってとこだな。」
「パートナーって何だよ。」
「そうか、凌駕は知らないのか。異界の者と闘う時は必ず2人1組で闘うんだ。」
「でも聖蓮は1人じゃないか。」
「それはボク達もびっくりした。今まで1人で闘ってきたなんて聖蓮しか見た事なかった。」
「ボクには久遠がいるから一人なんかじゃない。」
「そういえば凌駕は竜王が見えたんだよな。久遠も見えてるし。オマエには何か不思議なチカラはないのか?」
「チカラ?そんなもんねぇよ。見えるだけだ。」
「そうだよ、暁水も紫炎も凌駕に変な事言わないで。凌駕はボク達とは違う普通の人間だよ。巻き込んだらダメだ!!」
聖蓮が顔を真っ赤にして怒鳴るように言うので、暁水も紫炎もそれ以上は凌駕に言えなくなってしまう。
「ケーキごちそうさん。オレ家に帰るわ。」
凌駕が立ち上がると外へ出て行く。その後を暁水がついて行く。
「オレ凌駕をそこまで送ってくるわ。」
「オレん家、隣だからその必要はない。」
「そんな事言わないでさ。オレら友達だろ。」
言い合いながら部屋を出て行く2人を見送る。
「じゃ、ボク達はここを片付けて夕飯の用意をしよっか。あ、でも聖蓮の傷に悪いな。聖蓮は大人しく寝てて。」
「紫炎、ボク大丈夫だよ。手伝うよ。」
「聖蓮自分の事『ボク』って言ってる。やっぱり凌駕といると聖蓮の地が出て来るんだね。」
「・・・・・。」
顔を真っ赤にした聖蓮は何も言わずに布団の中に隠れる。
「紫炎のいじわる。」
「ははっ。聖蓮かわいい。そんな風に凌駕にも素直になったら?聖蓮、凌駕の事大好きでしょ?」
「何でわかるの。」
ガバッと布団をめくり顔を出す聖蓮に紫炎は優しく微笑む。
「聖蓮を見ていればわかるよ。聖蓮が凌駕の事をどれだけ大切に思ってるか。凌駕を見ている時の聖蓮の目は凌駕がスキって告白してるみたいだよ。あいにく凌駕は気がついてない見たいだけど。」
「そうなんだ。他の人が見たらわかるほどなんだ・・・。でも紫炎、この事は凌駕には言わないで。暁水もきっとボクの気持ちに気がついているだろうから暁水にも言っておいて。凌駕には言わないでって。」
「聖蓮はそれでいいの?」
「いいんだ。ボクは男だもん。それに異界の者と闘わなくちゃいけない宿命を持っている。凌駕は女のコにモテるんだ。凌駕は普通に女のコを好きになって、将来は結婚して子供と幸せな家庭を作れる。その邪魔にはなりたくない。」
「凌駕の気持ちも聞かないであきらめちゃうの?」
「凌駕はこの前までボクのことを嫌ってたんだ。昨日、助けた事で近くなったと思う。もうこれ以上は望まない。凌駕には普通に幸せになって欲しいんだ。ボクの分まで・・・。だから言わないって決めたんだ。だから紫炎も暁水も余計な事を凌駕に言わないで。お願いだから・・・。」
聖蓮は懇願するように紫炎を見る。目には涙がぷっくりと浮かんでいる。そんな聖蓮を見たら紫炎は何も言えない。暁水だってそうだろう。
「ごめん聖蓮。わかった。ボクは何も言わない。暁水にも言わないように釘をさしておく。」
「うん。お願い。」
「じゃ、聖蓮はもう少し横になって休んで。」
「うん。ありがとう。少し寝るよ。」
紫炎はお盆にお皿やコップをのせ片付けると聖蓮の部屋を出て行った。聖蓮は凌駕の顔を思い浮かべながら目を閉じる。
「凌駕が何を言ってもあの日の事は絶対に話さない。暁水も紫炎にも・・・。もう決めたんだ。たとえそれで凌駕がボクのことをほんとに嫌いになっても言わない。それが凌駕の幸せのためだから。」


にほんブログ村

にほんブログ村
- 関連記事
-
- たとえこの世の終りが来ようとも22
- たとえこの世の終りが来ようとも21
- たとえこの世の終りが来ようとも20
- たとえこの世の終りが来ようとも19
- たとえこの世の終りが来ようとも18
スポンサーサイト
もくじ
未分類

もくじ
✽✽✽目次✽✽✽

もくじ
ご挨拶

もくじ
貴方の腕の中で

もくじ
たとえこの世の終りが来ようとも

もくじ
キミが思い出になる前に

もくじ
月と太陽がすれ違う時

もくじ
S.S

もくじ
イラスト

もくじ
頂きもの☆

もくじ
雑記

もくじ
土曜の雨のジンクス

もくじ
さよならが言えなくて。

~ Trackback ~
卜ラックバックURL
⇒
⇒この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
~ Comment ~