たとえこの世の終りが来ようとも

たとえこの世の終りが来ようとも22

 ←たとえこの世の終りが来ようとも21 →たとえこの世の終りが来ようとも23


「いつかはこの話をする事になると覚悟していたが、実際にそうなってみると覚悟なんて出来てなかったよ。」

父さんが俯きがちに下をみてぼそりと言った。オレは続きを促すように父さんをじっと見つめる。

「母さん、冷たいお茶をくれないか?」

父さんはそう言うとネクタイのノットを緩め、シュルッとネクタイを取る。そして母さんの持ってきた麦茶を一気に飲み干して空のグラスをじっと睨んでいた。

「よしっ。母さん、オレの傍にいてくれないか。」

母さんは父さんの隣に座ると膝の上で握られている父さんの右手の拳をそっと両手で包みこんだ。ハッとしたように父さんが母さんを見る。優しい母さんの瞳に「うん」と頷いた父さんは俯いていた顔を上げオレの目を見て話しだした。

「凌駕、お前の誕生日は何時だ?」

「何言ってんの?2月21日じゃないか。息子の誕生日まで忘れたのか?」

「忘れるわけないだろ。じゃ、聖蓮の誕生日は?」

「聖蓮はオレと同じ。同じ病院で同じ時間に生まれたんだろ。何度も母さんから聞かされたから覚えちまったよ。」

「そうだ。オマエと聖蓮の誕生日は全く同じ日付、同じ時間だ。でもな凌駕。本当は凌駕は4月に生まれる予定だったんだ。」

「でも早産とかあるから不思議じゃねーだろ。まあ時間まで一緒ってのはすごい偶然だけど。」

「凌駕、それが偶然じゃないとしたら?」

「偶然じゃない?」

「母さんと聖蓮のお母さんの『都(みやこ)』さんは同級生でな、とても仲が良かったんだ。彼女には不思議なチカラがあったらしい。父さんも母さんも見た事はないが、篠宮家ではそういうチカラを持った人間が生まれるらしい。聖蓮にもそのチカラがあるんだろう?」

「ああ、確かにそうだな。人に見えないものが見えるらしい。」

「それはオマエにも見えるんじゃないのか?」

「えっ・・・どうして・・・。」

「小さい頃から知っていたよ。聖蓮と遊んでるオマエを見ていて不思議に思うことがたくさんあったからな。あえて言わなかったのはなくてもいいチカラだと思ったからだ。オマエは今日までその事を聞いてはこなかったからな。」

「・・・・・。」

「母さんのお腹にオマエが宿った時、父さんも母さんもすごく喜んだ。都さんもその頃には聖蓮を宿してたから子供達も仲良く出来るわねって喜んでた。学年は違っちゃうのが惜しいわねって何度も言ってたな。」

「ええ、都は男の子と女の子だったら結婚させようねって言ってたわね。」

「聖蓮が生まれる日は雷がなって風が吹き荒れ、土砂降りの雨が降っていた。都さんは難産で陣痛が始まってから1日経っても聖蓮は生まれてこなくて、母体のことを考え帝王切開をするかどうかって時に都さんは自然出産を希望した。自分が死んでも産むんだって。後から聞いた話では篠宮では自然出産しか認めないんだと。おかしな話だと思うが、自力で生まなかったら篠宮の人間と認められないらしい。認められなかったら、自分の子と離れ離れになってしまうと都さんは帝王切開には同意しなかった。」

「聖蓮の父親は何で何も言わなかったんだよ。」

「聖蓮の父親『竜蓮(りゅうれん)』は婿養子だ。篠宮の事に口出しすることは出来ない。チカラもない人間だ。何をいう事が出来る?結婚だって都さんが認めなければ篠宮を出て行くとまで言ったから渋々承知して結婚させてもらえたんだ。篠宮の家の中で彼だけが浮いていたよ。」

「オレ、聖蓮の父親の事あんまり覚えてないな。」

「そうだな。彼はいつからか家から出なくなった。もしかしたら出させてもらえなかったのかもしれないな。」

「聖蓮のお母さんの顔は覚えてるんだけどな。」

「都さんは母さんのところによく遊びに来ていたからね。聖蓮を連れて。」

「で、オレが早産だったことは何か関係してるのか?」

「ああ。天気の事は話したな。その時、父さんと母さんは買い物していたんだ。買い物を終えて車に乗り込もうとした時に雷が母さんに落ちた。母さんは感電死してもおかしくない状態だった。」

その時の事を思い出したのが父さんの拳がぎゅっと握りなおされ、その上を母さんの両手が包んでいた。

「その時に父さんは母さんが助かるように祈った。救急車が来るまで祈ったんだ。母さんの息は細くなっていて、いつ呼吸が止まってもおかしくない状態だった。」

「母さんはその時の事をまるで覚えてないのよ。凌駕。見ていたのは父さんだけなの。」

「母さんの息が小さくなろうとする時にその声は聞こえた。『その親子の命を助けたいか?』ってな」

「もちろん父さんは『助けたい』って即答したよ。するとその声は『では助けてやろう。しかし何年か経って子供が大きくなってオレのチカラを継承できる器となったらその子供はオレが頂く』父さんはそれでもオマエ達を助けたかったから頷いたよ。その声の主は雷の王だと言った。チカラを継承できる人間を何人も探していて、雷を落としていたときに母さんを見つけたらしい。さらに雷の王はこうも言った。『チカラを行使するとオマエの子供の人格は失われるやもしれん。そのチカラに対抗できる意思、身体があれば乗っ取られる事なくその子供にチカラを貸そう。出来なければ乗り移り身体は頂く。そのチカラを間違った事に使っても身体を頂く』と言われた。チカラを分けているだけで雷の王は死なないらしい。分散させないといけないくらいに雷の王のチカラは増大してしまったのだそうだ。」

「母さんは救急車で運ばれすぐに産気づいた。その時となりの分娩室では都さんがまさに聖蓮を生もうとしていた。都さんは聖蓮を産むときに声を聞いたんだそうだ。『その子供は人のために命を捧げなければならない宿命を持って生まれる。しかし1人で闘うのではなく、恵まれた仲間と共に闘うであろう。その中でも一番の強い絆で結ばれているものには他の者にないチカラが携わっているだろう。』ってな。」

凌駕は頭の中で父親の話を整理しようとするが信じられなくて思考が拒否していた。雷の王のチカラ?オレの中の声はそいつだっていうのか?チカラが目覚めれば聖蓮を助ける事が出来る。でもチカラを使うと俺は消えてしまうかもしれない・・・。


「これが父さんと母さんがオマエに秘密にしていたことだ。チカラがあらわれなければ話す事もないと思っていた。聖蓮とオマエは宿命を持って生まれたんだ。」

「ごめん1人で考えたい。」

「ゆっくり考えなさい。父さんも母さんもオマエの出した答えならどんなものでも受け入れる覚悟は出来てるから、オマエはじっくりと自分がどうしたいのか考えればいい。」

凌駕は自分の部屋に戻ると電気も付けずにベッドに横になる。

「オレはどうしたらいい?どうしたいんだ?」









にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
にほんブログ村
にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
にほんブログ村




関連記事
スポンサーサイト





もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png ご挨拶
もくじ  3kaku_s_L.png 貴方の腕の中で
総もくじ  3kaku_s_L.png キミと空とネコと
もくじ  3kaku_s_L.png S.S
もくじ  3kaku_s_L.png イラスト
もくじ  3kaku_s_L.png 頂きもの☆
もくじ  3kaku_s_L.png 雑記
総もくじ  3kaku_s_L.png 新撰組物語
  • [たとえこの世の終りが来ようとも21]へ
  • [たとえこの世の終りが来ようとも23]へ

~ Comment ~

  ヾ(*´∀`*)ノ キャッキャッ♪こういうの好き、好き、好き~! 

Rinさま、こんにちは♪

わーー‥‥
これはまた‥大変だ。

重い十字架を背負って生まれてきましたね、
凌駕くん。

このことはまだ聖蓮くんは知らないのですよね?
巻き込みたくないと言っても‥もう渦の中に
取り込まれてますよね。

好むと好まざるとに関わらず‥
そういう星のもとに生まれた子だったら‥もう仕方ない。
男の子らしく聖蓮と一緒に‥
って、訳にはなかなか行きませんよね。

一緒に手を携えて仲間と戦う姿って好きです。
「X」もそうですけど、
古いところでは聖闘士星矢?
現在進行形ではH×Hとかすごく好きです。
御存知でなかったらスミマセンm(__)m

違う能力を操る仲間が、あるいはパートナーがいて、
危機を潜り抜けて行く‥‥‥
くうぅぅぅぅ‥‥たまりませんね、そう言うの。

凌駕くんも聖蓮も、みんな怪我はしても‥
絶対、死なないで~
一度くらい死んだって生き返るから生き返って!
ドラクエだって‥うちの天使のマキちゃんは数えきれないくらい死にました(^_^;)

スミマセン、訳の分んないことばっかり言ってしまって。
つい興奮してしまいまして‥。

夜中のハイテンションってことでお許しくださいませ。
お邪魔いたしましたm(__)m
また参ります~♪

Re:   ヾ(*´∀`*)ノ キャッキャッ♪こういうの好き、好き、好き~! 

ハル様こんばんは☆

凌駕可哀想かしら・・・。ちょっと設定重すぎですかね。でもこういうのを全部跳ね飛ばせる人じゃないと聖蓮は守れないかなーなんて思ってたりしてます。きっと・・・うん・・・多分、凌駕は大丈夫ですよ。わははは・・・・。

巻き込みたくない聖蓮とは裏腹に物事は進んじゃってますからねーてか進ませたんですけどo(>ω<*)o

凌駕も聖蓮の事はずっと気になってたし暁水と紫炎という人が聖蓮の傍にいるので心配なんですねー。『オレの聖蓮にッ!!』って、まあ本人は気がついてない感情なので困りもんなのですけどね。じれったいの好きなのかも。† Rin †がムフフヽ| *≧♉ฺ≦* |ノ

『X』がわからなくてごめんなさいです。聖闘士星矢は昔見た事があるような・・・。なんかヒョウガかなんかいう人いませんでしたっけ?氷かなんか使ってたような・・・。星矢じゃなくてその人が好きだった気がする。なのにおぼえてないけど・・・。

H×HってHUNTER×HUNTERですよね。私みてないんですよぉ。ごめんなさい。あんまし絵が好きじゃなくて・・・。私の好きな絵はキレイなものなので偏ってます。ハイ・・・。

「死んだら戻れない」と考えているので死んだら終りです。あっ、でも回復系の術とかありますから、そんな簡単には死にません。それに「人間ってそんなに簡単に死なないんだぜ」って井口 達也さんが言ってますから。誰って?そうですよね。えと、品川 ヒロシの原作に登場する人物で映画『ドロップ』では「水嶋ヒロ」さんがやった役の人です。まあ本人は全く違うんですけど・・・。昔はタラシだったようですが、今は・・・いい人ですよ。うん。男気のあるやんちゃな大人って感じかな。彼も『チキン』という小説を書いていて今は月刊チャンピオンで連載しています。アメブロでブログやってはります。ちなみにアメブロでピグも作ってます(笑)

あっ、興味なかったらごめんなさいです。いろんなところで広報活動もしております† Rin †です。でも今はあんまりしてないか・・・。どうも小説は好きなんだけど、絵がね。マンガは男の子ーーーって感じで余り・・・。好きになろうと『クローズ』とか色々買って読んだんですが・・・。小説の方が好きです。自分の中でイメージができちゃってるからかもしれませんね。あっと脱線してしまいました。

ハル様コメありがとうございましたっ(*'ω`*)ゞ
管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • [たとえこの世の終りが来ようとも21]へ
  • [たとえこの世の終りが来ようとも23]へ