たとえこの世の終りが来ようとも

たとえこの世の終りが来ようとも23

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「凌駕またたくさん血が出てるよ。いっぱい怪我してる。」

聖蓮が泣きながらハンカチで血を拭き取っている。

「こんな傷平気だ。それより聖蓮も怪我しちゃったな。ごめん。守りきれなくて。」

「ううん。ボクの事守ってくれたから凌駕はこんなに怪我しちゃったんだ。ボこそ弱くてごめんなさい。」

涙が止まらない聖蓮の頭をクリクリとなでてやる。

「オレは聖蓮を守ってやるって約束したんだから。それに聖蓮は弱くなんかないと思う。オレだってあんな相手と闘うのは怖いと思うのに聖蓮は立ち向かっていくだろ。それって強いってことだと思う。だから聖蓮は弱くない。オレがもっと強くならなくちゃいけないんだ。」

「凌駕は強いよ。たくさん武道も習ってるじゃない。ボクも習おうかな。そしたらもっと凌駕に怪我させないで済むかな?」

「聖蓮はそのままでいいんだ。武道をしている聖蓮なんて想像出来ないな。聖蓮はそれ以外の方法で強くなればいいさ。武道はオレがする。聖蓮はそうだなー、札とか使えるだろ。それをもっと見極めるとか、強い結界がはれるようになるとか聖蓮が術式で強くなればオレ達は最強のパートナーになれると思わないか?」

「術式か。」

「そうだよ。オレは術式は出来ないから聖蓮が出来れば心強いよ。回復系の術式とかあればやられても回復できるだろ。」

「そうだね。うん。わかった。ボクお爺様やお婆様に教えてもらう。凌駕が空手とか習いに行ってる時は術の勉強をするねっ。」

「おお。頼んだ。イテテ・・・。やっぱ怪我したら痛いなっ。」

「うん。痛いね。回復系の術はすぐに勉強しなきゃね。」

「そうだぞ。頼んだ聖蓮。」

「じゃ、今日は凌駕の怪我が早くよくなるおまじないしてあげるね。」

「うわっ。聖蓮何すんだよっ。」

「ん?おまじないだよ。怪我してるとこにちゅってしたら早くよくなるんだよ。母様が教えてくれたんだ。ボク母様にしてもらったら痛いのなくなってすぐに治ったから凌駕にもしてあげるね。」

「聖蓮の口が汚れるからもういいって。そ・・それにもう治ったっ!!全然痛くないから。せ、聖蓮のおまじないすげーなっ。はははっ。」

「うんっ!!」

凌駕は聖蓮の肩に掴まり立ち上がる。聖蓮の身体は凌駕よりもちっこくて細い。その身体に触れるたびに聖蓮を守ってやらなくちゃいけないと思う。

「聖蓮はそのままでいいんだからな。オレはそのまんまの聖蓮が好きなんだ。」

「ボクも凌駕の事が大好きだよ。だから凌駕に守られるだけじゃなくてボクも凌駕の事を助けたいんだ。守られてばかりじゃ嫌なんだ。」

「わかってる。オマエがそう言うことはわかってる。守られてばかりが嫌なんだって知ってるよ。だから一緒に闘おうな。」

「うん。凌駕。大好きっ!!」

ふうわりと凌駕に抱きつく聖蓮からは甘い香りがする。闘った後でそんな匂いがするわけはないのに、いつも聖蓮からは甘い香りが漂っているように思う。

「イテッ。聖蓮そんなに抱きついたら怪我してるとこが痛いって。」

「ごめん!!」

あわてて離れる聖蓮の身体を凌駕は優しく抱きしめる。

「・・・っ・・・。」

「抱きしめる時はこうしないと。」

「リョ・・・ガ・・・?」

「ぶっ。何て顔してんだよ。聖蓮。顔真っ赤だぞ。」

「ひどいよ凌駕ってば。ボクをからかったな。」

「聖蓮からかうと面白いからな。」

「もう一緒に帰ってあげない。」

ふくれっつらで先を歩く聖蓮めがけて走って行き追い抜く。

「オレが先に帰っちゃうもんねー。」

オレが聖蓮を追い抜くとあわてた聖蓮が走って追いかけようとして足元の大きな石につまづいてこける。あわてて聖蓮の所に戻ると涙を浮かべた聖蓮がオレの顔を見る。

「うわっ。ひざ擦り剥いちゃったな。おでこも血が出てる。」

「うっ。痛いよぉ。」

「あわてて走るからだ。」

「だって凌駕がいなくなっちゃう。見えなくなっちゃったらボクはひとりぼっちだ。そんなのイヤだもん。」

「バーカ。オレが聖蓮の前から居なくなるわけないだろっ。だから聖蓮はひとりぼっちなんかにならない。」

「ほんと?」

「ほんとだ。オレは聖蓮を守らなくちゃいけないから聖蓮の傍にいる。だから聖蓮はひとりぼっちになんかならない。ほらっ。背中におぶされ。」

「うん。ボク凌駕の背中好き。」

「オレはいつも聖蓮をおぶってるみたいだな。」

「それもあるけど闘ってる時、凌駕はいつもボクの前に立ってボクを庇ってくれるでしょ。その時にいつも凌駕の背中を見てるから。ボクを守ってくれる背中。安心できるよ凌駕の背中は・・・。だから好き。」

「でもオレはまだガキだからな。オレはもっと強くなって聖蓮を守る。もっと身体でかくして強くして守ってやるからな。」

「うん。ボクも強くなるね。凌駕を助けられるくらいに術の勉強する。」

「ああ。最高のパートナーになろうな、お互いに。」

「凌駕好きっ。」

「オレも聖蓮が好きだ。」

帰り道、聖蓮をおぶさりながら何処が好きかお互いに言い合う。それは家に着くまで途切れる事なく続いた。





⋆   ⋆   ⋆




「何だ夢か・・・。」

いつの間にか眠っていたらしい。

父さんの話を聞いたからか、ガキの頃の夢を見た。

オレは聖蓮といつも一緒だった。お互いに「好き」という言葉を何度も言っていた。「好き」と言えば聖蓮が喜ぶのでオレはよく言っていたのだと思う。ガキの頃の好きなんて、「焼肉が好き」とかのレベルなんだろうけど・・・。

そしてそう、オレは小さい頃聖蓮と一緒に闘っていた。同級生とのケンカじゃない。異界の者と闘ってたんだ。夢を見て思い出した。

ガキが相手する異界のものだからそんなに強いものではなかったと思うが、その頃のオレ達には強い相手で、オレと聖蓮はしょっちゅう怪我してた。聖蓮の家に帰っては聖蓮のばあちゃんに手当てしてもらった。ばあちゃんが手当てすると傷はすぐに治ったんだ。今思えばばあちゃんはチカラを持っていて回復系の術を使って手当てしてくれていたのかもしれない。

聖蓮のパートナーはオレだった。でもあの日を境にオレはそんなことも忘れていた。聖蓮はあの後も新しいパートナーを迎えず1人で闘ってきたのだと思うと胸が苦しい。

幼い頃、回復系の術をまず覚えると言った聖蓮。聖蓮の事だから真面目に取得して行ったはず。なのに何で聖蓮の身体は傷だらけなんだ?自分には使えないのか?それとも自分には使わなかった?まさかな・・・。いろんな考えが頭に浮かぶ。

オレはガキの頃は聖蓮のパートナーだった。でも今はどうなんだろう。まだパートナーなんだろうか?でもオレは闘い方も忘れてしまっている。そもそもオレはどんな風に闘ってたんだ?武道を頑張るって言ってたって事は格闘系なのか?・・・なんかまだひっかかる。あの日の事を忘れてるからか?あの日の事を思い出さないと闘えないような気がする。どうしたら思い出すのだろう。やっぱり聖蓮に聞くしかない。聖蓮のパートナーだった事を思い出した事を伝えなければ。そして今まで忘れていた事を謝らないといけないと思う。

ガキの頃パートナーだったとしてそれが今まで続いてたかどうかはわからないけど、オレが忘れてて勝手に聖蓮の事を悪く思ってて1人で闘わせていたことは事実で、それは身体の傷を見れば今、聖蓮が生きている事が不思議なくらいで・・・。

聖蓮に聞きたい事がたくさんあった。どうして回復の術を自分に使わないのかとか、あの日はどうだったのかとか、今でもオレは聖蓮のパートナーなのかとか・・・。

時間をみるともう22時。遅い時間だ。聖蓮の傷の事を考えると明日にした方がいいのだろうと思っていた時、竜笛の音色が聞こえてきた。

「聖蓮まだ起きてるのか。」

オレは身体を起こすと身支度を整え聖蓮が竜笛を吹く時に登っている楠に向かって歩いていった。











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~ Comment ~

可愛らしい‥ふたり‥(^-^) 

Rinさま、こんにちは(^-^)

忘却の彼方でしたか。
一緒に行動して、想いも共にあったのですね。

可愛いですね、子供の頃のやりとり‥
こんなに強い結びつきだったのに‥どうして
忘れてしまったのでしょう、

でも絆は切れない。
一旦強く結ばれた絆は切れないですよね。

目覚めた凌駕は自らを失うことなく
聖蓮を守りつつ共に戦えるのでしょうか。

凌駕は乗っ取られて‥聖蓮が危ういことになりそうで
超怖いです~~(T_T)

嵐の前の静けさ‥聖蓮の竜笛‥聞こえてくるような気がします。

ではまた参りますねm(__)m

Re: 可愛らしい‥ふたり‥(^-^) 

ハル様こんばんは☆

聖蓮と凌駕の子供の頃って可愛いんですよねぇ。聖蓮は純真だし、凌駕はいっぱしに聖蓮を守るナイトだし。「好き」って言いあってるのが微笑ましい・・・。おまじないのちゅは聖蓮には他意はないのですが、そこは少し大人びた凌駕くん意識してしまいましたねー。彼の乾いた笑いがポイントです(笑)

こんな結びつきの強かった2人ですが凌駕は忘れてしまいました。全てはあの日に繋がるのですが、『あの日』と書きすぎて少々荷が重くなって参りました。『あの日』を書けるのか、そのままうやむやにはできないっスよね。

そして凌駕は闘えるのか?聖蓮が固くなに凌駕を巻き込む事を拒否ってるのでまず、そこから責めなければ・・・。凌駕くん頑張るっの巻です。

凌駕も聖蓮への「好き」が子供の頃のような「焼き肉好き」ではない事には薄々感じてるのです。聖蓮の子供の頃から「好き」は「愛してる」の意味だったのですが、幼い聖蓮はそんな事わからないし(性的にも開花されていないチェリーくんなので)凌駕も幼すぎてそんな気持ちだと思ってないものですから・・・。

この2人BLワールドに持って行けるかしら・・・。微妙・・・。

結局なかなか話が進まないいつものパターンに陥りそうで怖いです。でも頑張りますので見守ってやって下さい(ノД<)ノ

ではではハル様コメ本当にありがとうございましたv(〃☯‿☯〃)vあぃ!
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