たとえこの世の終りが来ようとも

たとえこの世の終りが来ようとも24

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聖蓮は怪我してるのに楠の木の枝の上にいた。

いつもの聖蓮の定位置。

聖蓮の竜笛の音色はいつも悲しげで・・・。

子供の頃はどうだったのかと思うけれど、覚えていない。

オレが傍から離れてから吹きだしたのかもしれない。だから音色が寂しそうなのか?何もかもを1人で背負って他の人と関わる事を拒否して・・・。そうさせたのはオレだ。ずっと一緒にいるって約束したのに今まで忘れてたオレのせいだ。

オレは楠の木の下で聖蓮の竜笛を聞く。

「この竜笛ね『双葉』っていうんだ。父様の形見。」

ポツリと聖蓮が呟く。

「双葉って発芽して最初に出る葉のこと。人間で例えて幼少の頃とか物事の初めとか・・・。双葉葵は賀茂神社のご神紋なんだよ。双葉葵は葉っぱの形がハート型なんだ。」

ポツリポツリと聖蓮が誰に聞かせてるでもなく話しているのをオレは黙って聞いていた。

「ボクがこれをもらった時はまだ小学3年生で、吹けるわけもなくて吹いても音は出なかった。でも1人になってふと吹いてみたら音が出たんだ。吹いてると父様とか母様がそばにいるような気がした。1人じゃないって・・・。だからボクは1人でも頑張ろうって思ったんだ。」

聖蓮が1人になった日。それはあの日。

あの日から1ヶ月聖蓮とは会わなかった。学校で会った聖蓮は小さかったのにさらに痩せて・・・。オレの顔を悲しそうに見てそれから表情がなくなった。いつも1人だった。化け物呼ばわりされても何も言わなかった。怪我をよくするようになった。その頃から1人で異界の者と闘ってたんだよな。怪我で学校を休む事もあったけど、顔色が酷くても聖蓮は学校に来ていた。来ても友達がいるわけじゃないのに・・・。来てすぐ帰るようになったのは最近か。何かを確かめて帰るようになった。毎日じゃないけど・・・。聖蓮は何を確かめていたのだろう。

「聖蓮、話があるんだ。降りてきてくれ。」

「凌駕・・・。わかった。」

ふと空気が揺れてオレの横に聖蓮が立つ。

「聖蓮、身体は大丈夫なのか?」

「うん。寝てたし、オレ治るの早いから。」

聖蓮が『オレ』って言ってる。何か境界線を張られているようだ。きっとオレを聖蓮の傍に来させないつもりなんだろう。

「境内に座って話をしないか?」

「ああ。」

オレ達は黙って境内の石段に座る。

「聖蓮、聞いて欲しい事がある。オレはオマエのパートナーだった事を思い出した。オレの中にあるチカラの事も父さんに聞いてわかった。だから今まで1人で闘わせてごめん。オレが忘れさえしなければ聖蓮は1人になる事はなかった。」

「凌駕。違う。凌駕はオレのパートナーなんかじゃないっ!!」

「嘘言うな。思い出したんだ。子供の頃、オレ達は異界の者と闘ってしょっちゅう怪我してたろ。オマエのばあさんに怪我の手当てしてもらった。オレは格闘で聖蓮は術を使えれば最強のパートナーになれるって話したろ。聖蓮は回復系の術を頑張るって・・・。」

「それは・・・。」

「聖蓮は回復の術は取得してないのか?」

「してる。ほとんどの術は使えるようになった。さすがに連続での術は霊力の限界があるから出来ないけど。」

「じゃあ何で自分には使わない?自分には使えないのか?」

「使えるよ。でも使わない。使いたくないんだ。」

「どうして?」

「オレの存在は近くにいる人を苦しめる。巻き込む厄介者なんだ。オレはいないほうがいいのかもしれない。だから術は使わない。使えないんだ。怖くて・・・。もし闘いで負けて死んだとしてもそれでもいいと思ってた。それでこの孤独と離れられて父様や母様お婆様の所へ行けたらそれでもいいって。お爺様もほんとはオレの事が嫌いなんだと思う。お婆様を死なせてしまったから・・・。」

聖蓮の顔に苦悶と自分の中にしまっていた孤独という闇が言葉に溢れてくる。

「だから術は使わなかったのか?それでも聖蓮は生きてる。」

「凌駕を闘いに巻き込んだのはオレだ。ごめん。凌駕は思い出さなくてもいいんだ。苦しむだけだから。こんな思いをするのはオレだけでたくさんだ。」

聖蓮の黒目がちな瞳が伏せられボトボトと透明な雫が頬を伝って流れてくる。

「もう遅い。オレは思い出し始めた。オレは全部思い出したい。だから聖蓮、あの日の事を教えてくれ。」

「イヤだ。教えない。凌駕が思い出したんなら仕方ないけどオレからは絶対に言わない。」

オレの顔は見ずに顔は伏せたままで言う聖蓮の腕を掴み揺さぶる。

「何でだよっ。聖蓮は何で1人で何もかもを背負い込もうとするんだっ!!」

「凌駕は今まで通りオレを嫌ってれば、憎んでいればいい。もうオレに近寄るなっ。もう話す事なんてない。帰る。」

「まだ話は終っちゃいねぇ。勝手に終ろうとするな。憎んでいればいいってなんだよ。オレは聖蓮の事を憎いなんて思っちゃいねぇ。」

「うそっ!!嘘だ。凌駕はオレの事が憎いはずだ。いいんだ。オレは1人でいいっ。」

無理やりオレの手を振りほどいて立ち去ろうとする聖蓮をいつの間にかオレは抱きしめていた。何で抱きしめたのかはオレにもわからない。

「リョ・・・ウガ・・・」

「聖蓮。」

チカラが抜けた聖蓮の身体をぎゅっと抱きしめる。こんな華奢な身体で異界の者と1人で闘ってきた聖蓮。オレの目からも涙がこぼれた。

「凌駕、泣いてるの?」

「オレは・・・。オレは自分が情ない。聖蓮をこんなにしたオレが許せない。」

「違う。違うよ凌駕。オレがこんななのはオレのせい。凌駕のせいじゃないから自分を責めないで。」

何もかもを自分のせいにして怪我しても自分のために術を使うことなく、闘いで死ねばそれでもいいと諦めてしまっている聖蓮。その硬くなな心が寂しい。

「聖蓮オマエは自分に価値がないとでも思っているのか。生きている価値がないと。そんな寂しい事を言うな。オレはオマエに生きていて欲しい。それだけでも価値があるとは思えないか?他人に生きていて欲しいと思えるってその人間に価値があるって事だろ。暁水や紫炎もそう思っている。だから聖蓮は生き急いだらダメなんだ。」

「凌駕がそう思ってくれている何十倍も何百倍も何千倍もボクは凌駕に生きていて欲しいんだ。だからお願い。ボクには、ボクの傍には来ないで。ねっ。もうこれで終りにしよ。」

涙をポロポロと流しながら言う聖蓮は言ってる言葉と間逆に『離れないで。終りになんかしたくない』って瞳の奥で言っている自分に気が付いていないのか・・・。

「イヤだ。オレは聖蓮と離れない。」

「凌駕のバカっ!!もうボクはあんな凌駕の姿を見たくないんだ!!」

「あんな姿?」

「そうだよっ。凌駕が凌駕でなくなっちゃって闘う姿なんて見たくないッ!!」

「オレがオレでなくなる?」





『チカラを行使するとオマエの子供の人格は失われるやもしれん。そのチカラに対抗できる意思、身体があれば乗っ取られる事なくその子供にチカラを貸そう。出来なければ乗り移り身体は頂く。そのチカラを間違った事に使っても身体を頂く』






父さんに聞いた話を思い出した。雷の王が乗り移ってオレはチカラを行使したのか?何時?あの日か。

「聖蓮それはオレの中にあるチカラなんだ。聞いてくれるか?」


*:..。♡*゚¨゚゚・*:..。♡*゚¨゚゚・*:..。♡*゚¨゚・*:..。♡*゚¨゚゚・*:..。♡*゚¨゚゚*:..。♡*゚¨゚゚・*:..。♡*゚¨゚゚・*:..。♡*゚
いつも読んで下さってありがとうございます。初めての方は初めまして。やっと修復してくるのかって感じの2人ですが・・・。話し合わなくちゃダメですよね。距離があった分。話してお互いに惹かれあってる事にも気が付いてくれたらいいんですけど・・・。

ところでやっとPSPの『ARMEN NOIR』を攻略しました。すべてのスチルも100%。長かったー。タイトルでいくらゲームが進んでもALBUMの下が???のままで・・・。ゼクスのGOOD ENDの20をクリアしなければ現れないという『おまけ』やっと見られました。ゲームして好きなキャラはやっぱクリムソンでしょうか?あの壊れ具合とドSであろうと思われる性格、容姿好きですねぇ。レインも甘くていいんですけどねぇ。エルも好きです。エルはピュアで好きです。私、汚れなので((´∀`*))ヶラヶラ
にしても『おまけ』でやたらとファンディスクがでるような話があったけど出るんやろか?出たら即買いするけど(笑)

明日からは『AMNESIA』に突入ですっ(*^-゚)vィェィ♪









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~ Comment ~

 

お久しぶりです♬
むふふ♡
ファンタジー、堪能させてもらってます^^
実はファンタジーってとっても難しいと思うので、書ける人ってすごいなぁといつも感心してました☆
キャラも設定も芯の部分が揺るいじゃいけないし、物語がとっ散らかっててもいけないので私には書けません><;
戦いの部分もLOVEの部分もきっちり描かれているので、毎日とっても楽しみにしています♬
早く続きが読みたい!!

Re: タイトルなし 

京様こんばは☆

返コメ遅れて・゚・(●´Д`●)・゚・ごめんよおぉ
お久し振りですんごく嬉しかったです♡うんo(◕‿◕o)(o◕‿◕)oうん♡

京様も80,000HIT2周年記念((❤ฺ♋∀♋Pq ゚+。:.゚ォメデ㌧゚.:。+゚ Pq♋Д♋❤ฺ))です♡
記念小説楽しんで読ませてもらっていますよ。展開が楽しみです。

それとお話を堪能して頂いてるようで嬉しいです✿ฺ(pq◕ฺ∀◕ฺ*)キャ♬
うーーん。実際に書いて見ると確かに難しいです((유∀유|||))話に矛盾が出てきて無理やり繕ったりして・・・。いやー、私おバカなんでしくったかもしれない・・・。でもここまで進んじゃったし、無理やりにでもすすんじゃえーーーって開き直って書いてます((´∀`*))ヶラヶラ  京様に感心してもらえるような私じゃないんですよっ。でもアリガトウ✾“ヽ(。◕‿◕。)ノ”

闘いとLOVEの部分・・・。心の微妙さとかもっとうまく書けたらいいんだけど、大雑把かなあ・・・と思いつつ書いてます。

ぜひ又お寄り下さいませ ペコリ(o_ _)o))
京様の作品も続きを楽しみにしていますよぉ(๑→ܫ←)b☆イェィ♪

京様コメありがとうございました☆
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