「キミと空とネコと」
やさしいkissをして

やさしいkissをして3

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「イタッ…。」

部活やめてからこんなに走ってなかった。それも全力疾走に近い速さだ。

あの頃の速さに比べたら、半分もスピードは出てないと思うけど…。

左足がいう事をきかない。引きずるように木の影に身体を預け痛みを逃そうとするけど、心臓はドクドクと破裂しそうになっていて息が整わず、軽いパニックに陥る。

痛い・痛い・痛い・・・

『もう二度とサッカーをする事は無理です。日常生活には支障はないと思いますが、全力疾走で長距離を走ったりしないようにして下さい。足をひきずるような事になりかねません。』


あの日のDrの言葉が脳裏によみがえる。

オレ、足引きずっちゃうのかな?痛みで意識が白くなる時に「凪」って達樹の声がした。


*   *   *

気がつくと病院のベッドの上だった。

「凪?目が覚めた?」

ふと横を見ると、心配そうな顔をした達樹がいた。

「オレ…。」

「ビックリしたよ。凪を追いかけてたら、突然左足を押さえて引きずるように木にもたれて…。オレが傍に行ったら意識失うし…。」

「スイマセン。病院まで付いてきてくれたんですか?」

「うん。取り合えずオレの友達にってさっきの将也に学生課に連絡入れて様子伝えて、実家に電話してもらったらここの病院に搬送してくれって言われて、救急車にオレも乗ってきた。家族の人は後で来るって。」

「そうですか。ご迷惑をお掛けしてすいませんでした。」

「凪、走れないの?走っちゃダメなの?」

オレの顔が固まる。その時の事を思い出すと辛くなるから考えないようにしていた。

オレはサッカーが大好きだった。他の部員みたいに大きな身体じゃない分、走って走って当たり負けする前にフェイントでかわしていた。体の小さいオレがレギュラーになるには走れるだけじゃダメで、フリーキックの技や、コーナーからのパスの正確さとか、他の奴にはないようなところも頑張って…。自分で言うのもおかしいけど、すごく努力していたと思う。それでもレギュラーには中々なれなくて…。

高3になって春の大会でオレはやっとレギュラーの座を射止めた。部活のみんなはオレの努力を知っていたから自分の事のように喜んでくれた。一緒にレギュラーを争っていたのは後輩で、そいつも「先輩よかったッスね。でも次はオレっスから。」なんて言ってくれた。

なのにオレは春の大会に出る事はなかった。

オレが何も言わずにいたからか、言ってはいけなかったのだとわかったのか達樹先輩は「ごめん。」とだけ言った。

「凪、オレが凪を走らせるような事したから、ほんとにごめんな。謝って済む事じゃないけどごめん。」

「別に先輩のせいじゃないです。走ったオレが悪いんです。」

オレはベッドの横の棚にいれてあったカバンからノートを取り出すと達樹先輩に渡した。

「迷惑掛けたお詫びです。でも今回だけです。オレちゃんと授業を受けない人は嫌いなんで。」

「いいの?ごめん。オレのせいだ。やっぱりごめん。」

達樹先輩はノートを手にして一瞬嬉しそうだったけど、すぐに顔を歪ませた。

「もういいですって。走らなきゃいいだけで普通の生活は出来るんですから。それにノートもお詫びだし受け取ってくれないとオレの立場ないですから。」

「凪、ありがとう。これからはオレもちゃんと授業受ける事にするから。」

「はい。そうしてください。」

「じゃ、オレもう行くわ。ノートコピーしたら返すから。あ、凪携帯は?」

「携帯ですか?これですけど何か?」

「貸して。んで、こうしてピピッ。赤外線完了。」

「人の携帯に勝手に登録しないでもらえます?」

「もうしちゃったもん。消去したら登録するまで何回もかけるよ。着拒したら学校で会うたびに言うからね。オレの電話番号。」

『小野田 達樹』って新しい番号が登録されていた。もちろんオレの番号もちゃちゃっと自分の携帯に登録していた。この人本当にウザイしメンドクサイ…。

「もうオレは凪と友達だねぇ。じゃ、お大事にヾ(*'-'*)ヾ(*'-'*)ヾ(*'-'*)バイバイ!! 」

なんだか最後は絵文字のようなチャーミングなウインクをして消えた。

「あっ、ヤベッ。今日のバイトどうしよう。」

ナースコールで看護士を呼んでどんな状態か説明を受けたいと言うとDrが来てくれた。あの日、オレの足を診てくれたDr。

「凪くん、全力疾走で走ったんだって?僕はダメだっていったよね。」

「全力疾走とまではいってないです。」

「でも、長い距離を無茶して走ったからこうなったんだろう?」

「はぁ…。」

「今回は大事に至らなかったからよかったけど、次はそうは行かないかも知れない事忘れたらダメだよ。お家の人が来たら説明するから、それから帰ってもいいよ。」

「ありがとうございました。次のないようにします。」

「そうしてほしいよ。」

Drと看護士にお辞儀すると2人は病室を出て行った。多分、病院にくるのは母さんだからバイト始まりには間に合わないな。遅れるって電話しとかなきゃ。

「もしもし、アキさんですか?凪ですけど、ちょっと走っちゃって病院なんです。入り時間が1時間ほど遅れそうなんですけど大丈夫でしょうか?」

「えっ。凪くん走ったの?ダメじゃないか。バイトの事は気にしないで休んで良いよ。」

「いえ。オレが行きたいんです。迷惑かけないようにしますから。」

「ダメです。オーナーとして凪くんの気持ちは嬉しいけど、明日も凪くんはシフトに入ってるんです。もちろん明後日も。だから今日は休んでちゃんと体調を整えてから来て欲しいんです。今日は予約も少ないので大丈夫ですよ。」

「ありがとうございます。じゃあ、明日からはちゃんと行きますので今日はお言葉に甘えさせて頂きます。」

「うん。お大事にね。」

「はい。ありがとうございました。」

母親が病院に来てDrの説明を受けて退院する。

「あんたバカじゃないの?もう心配させないでよね。」

「ごめん母さん。もうしないから。」

「当たり前よ。今日はアンタのとこに泊まって行くから。これから4時間もかけて帰りたくないわ。」

「だよね。ごめん。」

「もういいわよ。久し振りに母さんがご飯を作ってあげるわ。何がいい?」

「母さんのカレーライス。」

「ダメ。あれは2日がかりで作ってるのよ。イタリアンレストランでバイトしてるんでしょ。じゃあ今日は和食ね。」

結局、自分でメニューを決めてるし…。でも久し振りの母さんの料理だから何を食べてもおいしいんだけどな。

一緒にタクシーで家に帰ると早速オレはベッドに寝かされ(動くなという事らしい)自分は買い物に出掛けて行った。

足は痛み止めのおかげか痛くなる事はない。薬のせいかいつの間にか眠ってしまったけれど…。

母さんに起こされて一緒に夕食を食べた。母さんと2人で食べるのは少し居心地が悪かったけど、母さんのご飯はうまかった。

次の日、母さんは家に帰り、それを見送ってからオレは大学へと向かった。

お気に入りの楠の木の下のベンチで本を読んでると、いきなり手で目隠しされた。

「だーーーれだっ!!」

「達哉先輩。そんなしょうもないことしないで下さい。見てわかるでしょ。オレは本を読んでたんです。」

「わーい。すぐにオレってわかってくれたんだ。やっぱ凪はいい子だ。」

「何か用ですか?」

「キャンパス歩いてたら凪が見えたから昨日借りたノート返しに来た。」

「はい。それはどうも。じゃ。」

「ちょっとそれってどうなの?オレ先輩でしょ。」

「先輩なら先輩らしくしたらどうなんです?」

「友達じゃん。」

「オレは友達とは思ってないですから。放っておいて下さい。」

「オレに敬語は使わなくて良いよ。友達じゃん。」

「あっそ。じゃ達樹先輩オレ授業あるから。バイバイ。」

「そうかあ。残念。凪まったねー。」

いつでもオレと達樹先輩はこんな調子で…。別に一緒に呑みに行く事も遊ぶ事もなかったが、足の事まで絡んでるからか何となくズルズルと続いている大学で唯一の人なのだ。

まあウザイけど人畜無害なようなので適当に付き合ってる。オレがめずらしいのかな?だから構ってくれてるのかもしれない。どうでもいいけど…。

ヤバッ、バイトの時間。でも走らないけど…。あれから走るのが怖くなってしまった。それにアキさんからも遅れそうになっても走るなって怒られたし。ああ、アキさんと隆耶さんはオレの足の事は話してあるんだ。バイト中に何かあった時に心配かけたくないしな。

バイトの時間の10分前に店に到着。間に合った。

急いで服を着替えると厨房に入り、隆耶さんに挨拶する。まだディナーの開店前だからゆったりしている。

「隆耶さんお疲れ様です。今日もよろしくお願いします。」

「おお、凪来たか。アキくんが今日は開店前にミーティングするって。フロアに行こうか。フロアに新人が来るらしいぜ。」

「そうなんだ。でも最近フロア、アキさんと志希できつい時ありますもんね。これから納涼会とかの予約も入りますしね。」

「だな。誰かは絶対にフロアに出ないしな。」

「てか、オレが抜けたら厨房だって大変じゃないですか。」

「まあ、そうなんだけどな。厨房にももう一人欲しいなぁ。」

「ですねー。洗物とかたまりっぱだし、隆耶さん休みとれないッスもんね。」

「うーーん。オレの休みはいいけどよぉ、どうやら二人目が出来ちまったらしくてさぁ。稼がないと。」

「わぁーー。隆耶さんおめでとうございます!!」

「凪、サンキュな。」

たわいのない話をしながらフロアに行くと置くのテーブルにアキさんと志希が見えた。

「あ、隆耶さん、凪くんこっちに来てください。少しミーティングします。新しいスタッフも決まりましたので紹介しますね。」

隆耶さんとオレは奥のテーブルに座っているみんなの元へ行く。

「彼が新しくフロアを担当してもらう『中原 黎(ナカハラ レイ)』くんです。」

「中原 黎です。よろしくお願いします。」

中原…黎…オレは顔を引きつらせ動く事が出来無くなった。


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