「キミと空とネコと」
やさしいkissをして

やさしいKissをして5

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「ねぇ隆耶さんはどう思った?」

「うーーん。何とも言えないけど『人見知り』ってのとは違う気がするな。」

「やっぱり?ボクもそう思った。凪くんの顔すごく困ったような、辛そうな顔だったから。」

「ああ。志希に人見知りしてた顔じゃなかったな。視線さえ合わせないように逸らしていた。」

「だけど黎くんは凪くんをじっと見てたね。初対面でないのは明らかだ。」

「ああ。何か凪に言いたそうだけど飲み込んでる感じ。凪との距離を測っているのか凪からのアクションを待ってるのか…。」

「黎くんは芯の強そうな子だけど、凪くんはああ見えてすごく脆いから精神的に…。今日の失敗は黎くんが現れたからだよね。あんな凪くん見た事ない。」

「ああ、凪は仕事はちゃんとする奴だ。バイトでも手を抜くような事はしない。それはオレが一番わかってる。あんな凪はほんの最初の頃に仕事がわからなかったからしてたミスとも違う。心ここにあらずだった。」

「フロアでの黎くんは初めての接客業とは思えないほどの仕事ぶりだったんだ。笑顔も自然に出ていたしね。あのルックスだから興味をもたれたお客様もいたよ。」

「ここは顔の良い奴しか採用しないからな。」

「隆耶さん失礼ですね。ボクは性格第一で採用しています!!」

「ごめん。怒るなよアキくん。わかってる。でも何故か顔のいい奴が集まるんだから不思議だよな。凪も少し線が細いからモデルみたいなのにな。なんであんなにフロア嫌がるかわかんねぇ。一度なんてオレが運んだんだぜ。アキくんがいなかった時。」

「えっ。そんな事があったんですか?」

「ああ。一回きりだったけど、フロアを志希1人では回せない時があって料理冷めちまうし凪に持っていけって言ったら『絶対にフロアには出ません。オレはその条件でここに採用されてますから。お願いします。隆耶さんが行ってください。』って泣きそうな顔するからオレが行ったんだ。」

「凪くんは昔からあんなに人見知りなんでしょうかね?やたらと人を避けますよね。1人だと安心するってよく言ってますしね。ボクと隆耶さんは特別枠みたいですけど。」

「ああ、足の事を知ってるからって言うのもあるだろうけど、凪って案外甘えたいんじゃないのかな。無理してるなってオレ思うもんな。まあ、そんなアイツも可愛いんだけどな。」

「ふふっ。確かに凪クン可愛いですね。無理して一生懸命なところ。もっと甘やかしてあげないといけませんね。ボク達2人で。」

「そうだな。あいつは強がるからな。今度3人でメシでも食うか。」

「いいですね。でも店ではいつもと変わりがないですから、ボクのマンションで飲みますか?仕事終りに余った食材でつまみ作りましょう。ちょうど土曜日が定休日前ですからいいんじゃないですか?でも、隆耶さんは奥さん身重なのに夜大丈夫ですか?」

「ああ、うちは大丈夫だ。土曜日は実家に帰るって言ってたから。オレ1人で寂しかったしいいぜ。」

「隆耶さん寂しいって…。」

「でもいつもにぎやかだから一人って案外堪えるんだよ。オッサンだし。」

「オッサンは関係ないと思いますけど、じゃ、明日凪くんに声を掛けてみましょう。でもくれぐれも他の2人の耳に入らないように気を付けてくださいね。」

「おお。オレが口が堅いのはわかってるだろ。」

「ええ。ボクの恋人の事を黙っててくれてますもんね。」

「言う必要もないしな。人それぞれの愛があっていいと思うから、アキくんがアイツといて幸せならそれでいいんじゃない?」

「ええ。幸せですよ。では凪くんと黎くんの重なる水曜日と土曜日はボク達も気を付けて2人を見て行きましょう。特に凪くんが心配ですから隆耶さん何かあればすぐにボクに教えて下さいね。」

「ああ、わかった。」




アキくんと隆耶さんが事務所でそんな話をしている頃、オレは部屋の中で高校時代の卒業アルバムを出して見ていた。どうしてこんなものを持ってきたのか。実家に置いておけばいいものを…。

ページをめくると前半はクラス写真。オレのクラス。そこには笑顔を作っているオレがいる。でもオレには泣いてるように見える。この写真は足を怪我した後に撮った写真だから…。

中半は部活の写真や、学園祭、遠足、修学旅行などの行事の写真。その中のオレの顔はいろいろな表情をしていた。学園祭でバカやってる写真。遠足、修学旅行で笑っている写真。友達とふざけている写真。

後半は部活の写真だった。最初の頃に映した写真はドロドロになってるのに笑っている自分。サッカーが大好きで大好きでボールをバカみたいに追いかけてた。毎日毎日…。なつかしい思いでページをめくると、怪我をした後退部したオレに部活写真に入れと顧問と仲間が言ってきて「学校が認めない」って言ったオレに校長にサッカー部全員の嘆願書を提出し、顧問が校長に頼み込んで許しを得ていると言われ、サッカー部の中にいるオレは…笑っていなかった。嘘でも笑おうとは思ったんだ。オレの事を気にしてくれている仲間のためにも。でも部活写真は1年から3年まで全員で一緒に映すのが恒例となっていて、その写真にはもちろんアイツもいて…。オレは気がつくとアルバムを閉じて泣いていた。いつの間にか涙が頬を流れていた。

もちろんプロになれる実力があったわけじゃない。けど、好きだったんだサッカー…。子供が出来て男の子だったらオレが教えるんだなんて思ってた。走れなくても教えられるけどそうじゃないんだ。一緒に風を感じてボールを追いかけたかった。子供が中学生になっても、高校生になったら無理かもしれないけど、それでも一緒にバカみたいにボールを追いかけたかった。誰にも言った事はないけど…。もう叶わない願いだけど、忘れてたはずの願いだけど…。胸が痛かった。いつまでも涙が止まらなかった。忘れてた…違う。忘れようと、忘れた事にしていただけなんだ。

こんな時、普通の奴ならどうするのかな?親友とかに話して酒飲んだりして慰めてもらって、酔っ払って心を解き放って諦めて次に進んでいくのかな。受け入れて消化して次へと…。こんな情ないのはオレが1人だから?でも男だ。女々しくてどうする。今までは大丈夫だったんだからこれからも大丈夫なはずだ。ちゃんと強い心を持て。オレは大丈夫。

なのに心が落ちて、ちっとも眠れなかった。オレって情ない奴だ…。



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~ Comment ~

黎くんも凪くんもキレイなんだね 

Rinさま、こんにちは(^v^)

凪くんはやはり怪我した時から人の前に出ることが
苦手になったのでしょうか。

誰かに何か言われる、見られる‥っていうことより、
自分自身の問題でしょうか?
心が病んでいるほどではないですよね、

キミ空を思い出してしまうので‥辛いですが。
心は怪我のことがあって辛い‥それだけですよね。
心は健康な方がいいですものね。

でも黎くんは‥怪我と関係あるのでしょうか?
凪くんの態度がやはり繋がっている気がして。
それ以外何かあるのかな‥‥

あまり考えないで続きを読ませていただきたいと
思います。
‥‥十分考えてますね、スミマセン(>_<)

あ、あの救急車に乗ってたのは黎くんと凪くん‥?
また余計なことを‥失礼しました!
ではまた‥m(__)m

Re: 黎くんも凪くんもキレイなんだね 

ハル様。p‿q) コンバン ヾ。◕‿◕)ノ゙ ワッ❤


凪はすごく気を使う子なんです。足を怪我したことで周りの友達がすごく同情して凪を可哀想扱いして、凪はそれが嫌で「なんでもない」って笑って頑張ってたんです。ってこれは話の中でかくつもりだったのだぁーーーー。書いちまったから仕方ない・・・。
今はそれが辛いのでわざと人と離れているんですね。心の問題です。
もともとは元気っ子でやんちゃな明るい子なんです。今は意固地になってるけど、周りの人達がきっと凪を元気にしてくれるでしょう。

それまでにいろいろあるでしょうが、『キミ空』のように心に深くとか、身体を痛めるつもりはないので凪の心の成長を見てやって下さい。その中で少しでもキュンとしてもらえたらうれしいです☆

ハル様、先読みはお控えくだされ。楽しみに読んでいただけたらいいな。てかわかりすぎなのかな。話の展開が…。うーーーん。少し考え直さなくちゃʅ(。◔‸◔。)ʃいけないかな。

ハル様コメありがとうございました☆
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