「キミと空とネコと」
やさしいkissをして
やさしいKissをして7
ふいに達樹の柑橘系のフレグランスの香りがすごく近くに香って、一瞬唇に唇が優しく触れたような気がして、オレは眠りから目が覚めた。
「おはよう。眠り姫。気分はどうだ?」
「…ん…。」
「おいおい。ねぼけてんのか?わかる?ここ大学だぜ。ちなみに今はもう昼。凪、3時間近く寝てたんだぞ。」
次第に覚醒していくけど、何だかまだ動きたくない気分。
「ん…。大丈夫…。」
オレは十分に目が覚めてなくて、達樹の声だってわかってるはずなのに温もりから離れられずにゴロンと横を向いて達樹のおなかに頭を擦り付けてぎゅって抱きしめていた。
「こらっ凪っ!!それヤバイだろっ。可愛すぎだ。反則。キスしちまうぞ。」
「!!!」
達樹の言葉に一気に目が覚めて達樹を抱きしめている自分にあわてて身体を起こしてベンチから落っこちそうになるところを達樹が抱きとめてくれた。
「バカッ!!急に動いたら落っこちるに決まってんだろ。」
「ごめん。ありがとう。」
お礼を言ってから落ちそうになったのは達樹のせいだと思い言い返す。
「でもな、お前が可愛すぎだの、キスするなんていうからビックリしちまったんだろっ!!」
「いやあ、お前の寝顔って凶器だな。こんなに近くでゆっくり凪の顔見た事無かったから。女も男もお前に惚れるのわかるわ。お前、きれいな顔してんな。」
「オレ男だし、そんな事言われても嬉しくない。」
「性格はきっついけど、だまってれば美少年の部類だからな。」
「うるさいよ。何?」
「髪の毛寝癖ついてる。」
達樹が髪の毛を優しくなでたのでおもわずビクッとしてしまう。
「何だよ。髪の毛触っただけだろ。そんな初心な子みたいな反応するなよ。」
「ふ、普通ビックリするだろっ。急に髪の毛触られたら…。」
「そっか。凪は純情なんだな。すまない。」
「じゅ、純情とか言うなっ。恥ずかしい事、平気で言える奴だな。やっぱりお前は危険だ。」
「おいおい。膝枕3時間近くしてやった友人にそんな事言うのか?」
「…。ごめん。起こしてくれればよかったのに…。」
「あんまり気持ち良さそうに警戒心なく寝てるから起こせなかった。寝てる時の凪は素直だな。オレに抱き付いてきたりして。凪、甘えたいんじゃないのか?」
「は?甘えたいとかないし。寝てる時は素直って寝てる時のオレがどうかなんてオレに分かるわけないだろ。でも抱きついたりしてごめん。ほんとごめん。」
モテ男の達樹にオレが抱き付いてたなんて噂が広まったら達樹に申し訳ない。抱き疲れていた達樹にもゲイ疑惑が付いてしまう。もちろんオレにも付いてくるわけでそこは納得できないが、オレは別に何を言われてもかまわない。でも就職の時に関係するのか?
「そんなにあやまらなくてもいいって。オレ的に役得って思ってるし。」
「役得なわけないだろ。一歩間違えばお前にゲイ疑惑がかかるんだぞ。」
「ああ、オレなら大丈夫。ちゃんと流せるから。凪みたいに堅物な考え方してたらそうなっちまうんだけど、実際気分の悪い凪を介抱してただけでやましい事はないしな。それにオレ、バイだから。」
ケロッと答える達樹の言葉に固まる。
「バイ?バイって…。」
「ああ、バイセクシャル。オレ男でも女でもイケルくちなの。案外多いぜ。この大学。凪だって大学院のプリンスの「伊集院 国重」に告られたんだろ。あいつもバイだぜ。」
「…。男が男を好きになるっておかしいんじゃないのか?オレはそんな経験ないぞ。」
「お前やっぱ頭堅いな。この世には男と女しかいないわけ。生殖保存的に男は女を愛して子孫を残すようになってっけど、好きになったら仕方ないだろ。男が男を好きになる事だってあるよ。それは感情なんだからどうしようもないじゃん。好きになったのがたまたま男だっただけって事だろ。」
「オレには理解不能だ。」
「まっ。男に惚れたらわかるさ。」
「男に惚れる事なんてない。今までも好きな女の子としか付き合った事無い。」
「はいはい。わかりました。でさっ。それは置いといて、もう昼なんだけどオレ腹減った。凪なんか奢って。」
3時間も膝枕をしてくれたのだ。奢らないわけにはいかないけど、達樹と食事するのか…。
「はぁ。わかったよ。膝枕してくれたし何でも奢るよ。ただし高いものはダメだぞ。」
「何だよ。その溜め息。でもいっか。凪と食事出来るなんてそうそうないからな。学食に行こうぜ。」
立ち上がった達樹がオレに手を差し出してくる。
「何?この手?」
「又、フラフラしたら危ないから手を支えてやろうと思ってさ。」
「ムッ。女の子扱いするな。もう大丈夫だっ!!」
オレは達樹の手を借りずに立ち上がると達樹をキッと睨む。
「そう言えば、起きる時もオレに『眠り姫』とか言ってたな。オレは女じゃないからっ!!」
「聞こえてた?凪さぁ、そんな強がってるけどさ、周りから見てたら甘えたいオーラダダ漏れしてるの気が付いてないのか?」
「オレは甘えたくなんかない。そんなオーラダダ漏れしてない。達樹がおかしい。」
「はあ。これだよ。」
「何だよ。学食行かないなら奢らないぞ。」
オレは達樹をおいてスタスタと先を歩く。
「全く、本人だけだっつうの。気が付いてないの。だから余計に男が告ってくんじゃねぇか…。」
オレが止まりもせずに歩いていくのをあわてて達樹が追いかけてくる。
「凪待てよっ。お前まだ顔色悪いんだから一人で行くなって。」
「ひっつくな達樹。暑い!!」
「凪が倒れたら危ないじゃん。それに膝枕した仲だろ。」
「お前に膝枕してもらうんじゃなかった。もう絶対に頼まない。」
「いつでも貸すから気分悪くなったら言ってよ。」
「言わない。」
オレがそっけなく返して、達樹がしゃべるパターンがいつもの事。だけど今日はやたらと達樹がスキンシップしてくるのでウザイのを通り越して超ウザイ。でも膝枕の恩があるから無碍にも出来ず一緒に昼食を食って、達樹が友人から今日の講義のノートを借りてきてくれたのでコピーさしてもらった。もちろん達樹の分もコピーして渡す。
「さっすが凪。オレの分までコピーしてくれたんだ。」
「だってオレのせいで達樹も講義出られなかったから。」
「そういうとこ、すごく気が付くよな。っつうか気を付けてるよな。オレにそんなに気を使わなくていいから。他の人に使ってる分オレにはしなくていい。覚えといて。」
達樹は軽そうだけどオレの事をよく見ているっていうか知っている。今までそんな事言われたことなかった。だからウザイと思いながらも離れないでいるのかな。
「オレはそんなに気を使ってない。まあ、頭の片隅にでも覚えておく。じゃ、オレ昼からの講義があるから。今日は本当にありがとう。助かった。」
「いいって。ああ、今日のお礼に今度、凪のバイトしてるところのディナー食べさせてな。」
「ちょ、学食奢っただろ。」
「3時間の膝枕と講義休んだ対価が学食のランチじゃおかしいだろ。ってことで考えといてな。いつでもいいから。じゃあな凪。身体に気を付けろよ。」
達樹は手を振って去っていく。
「ちょ、達樹。ダメだって。」
オレの言葉は宙に浮いて達樹の元までは届かなかった。
オレはバイト先に知り合いを連れて行く事は絶対にしない。バイト先でのオレを知られたくないし、オレの唯一の安らげる場所がそうでなくなる気がして誰にも教えてないのだ。家族でさえも呼んだ事は無い。
いつでもいいって言ってたから、すぐじゃなくてもいいだろう。それにそれ以外の代替案を考えればいいか。
達樹の膝枕で3時間寝て、昼食を取った事でかなり回復していた。これなら午後の講義もバイトも行けそうだ。今日は木曜日。黎もいないし昨日のミスの分を取り戻さなくちゃな。
オレはうーーんと伸びをして教室に向かった。
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✽✽✽目次✽✽✽

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ご挨拶

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貴方の腕の中で

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たとえこの世の終りが来ようとも

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キミが思い出になる前に

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月と太陽がすれ違う時

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S.S

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イラスト

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頂きもの☆

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雑記

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土曜の雨のジンクス

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さよならが言えなくて。

~ Comment ~
Re: タイトルなし
ハル様こんにちは✿
ハル様は達樹を気に言ってくださいましたか。明るくていい奴です。バイはダメですか?信用出来ない?達樹もどこまで本気なのか見せないですからねぇ
黎は登場したのに中々次に出て来ませんね(滝汗)
私は細かく書き過ぎるのか、みなさんに状況を心の有様を伝えたくて1日の事が2日かかって書いたりなので長編になってしまうんですよねぇ。
黎の事かいちゃうとネタバレになるので書けません。ごめんなさい。でも一つだけ。達樹と黎は知り合いではありません。面識はないです。これから知り合いになって行くと思いますが…。
お話を読んでるとついつい先を考えちゃう事ありますよね。私もあります。つい書いちゃう事も…。だからハル様も気にしないで下さい。ハル様や皆様のコメでヒントをもらう事は多いのでありがたいです。そんな考え方もあるなーって参考にしたり、考えてらっしゃる事をいい意味で裏切ろうと思ったり…。だから嬉しいんですよ。そんだけお話を読み込んで下さっているて事ですもの。ありがとうございます☆
ハル様の期待をいい意味で裏切れるようなお話になるように頑張ります☆
ハル様コメありがとうございましたv(〃☯‿☯〃)vあぃ!
ハル様は達樹を気に言ってくださいましたか。明るくていい奴です。バイはダメですか?信用出来ない?達樹もどこまで本気なのか見せないですからねぇ
黎は登場したのに中々次に出て来ませんね(滝汗)
私は細かく書き過ぎるのか、みなさんに状況を心の有様を伝えたくて1日の事が2日かかって書いたりなので長編になってしまうんですよねぇ。
黎の事かいちゃうとネタバレになるので書けません。ごめんなさい。でも一つだけ。達樹と黎は知り合いではありません。面識はないです。これから知り合いになって行くと思いますが…。
お話を読んでるとついつい先を考えちゃう事ありますよね。私もあります。つい書いちゃう事も…。だからハル様も気にしないで下さい。ハル様や皆様のコメでヒントをもらう事は多いのでありがたいです。そんな考え方もあるなーって参考にしたり、考えてらっしゃる事をいい意味で裏切ろうと思ったり…。だから嬉しいんですよ。そんだけお話を読み込んで下さっているて事ですもの。ありがとうございます☆
ハル様の期待をいい意味で裏切れるようなお話になるように頑張ります☆
ハル様コメありがとうございましたv(〃☯‿☯〃)vあぃ!
- #321 † Rin †
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- 2012.08/15 12:58
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☆掲載作品目次☆
Rのついているものは性描写、Rに☆のついているものは暴力的性描写等を含みますので閲覧の際には十分ご注意下さいませ。
- from 空に浮かぶ月(The Missing Moon)
- at 2012.10.19 20:26
私は達樹くんが好きですね。
黎くんもとっても気になります。
黎くん、どんな子なんだろう‥つらい想いをしてきた子なのかな‥
達樹くんはふたりのことをきっと知っているんだろうな‥
鉢合わせしたら怖いなぁ‥とか。
やはり読ませていただいてるとこの先どうなるんだろう‥
と、思ってしまいますね。
でもあまりコメで言うとお話しの邪魔ものになってしまいますね。
ごめんなさい、前回のコメで色々言い過ぎて。
ついつい‥その謝罪に参りましたm(__)m
スミマセンでした!
邪魔な妄想爆裂いたしまして。
これからは気をつけますね、
お話しの中だけ、それから先は‥‥
お話しの進行とともに妄想したいと思います(^_^;)
でも達樹くんはいいなぁ‥
バイは好みではないのですが達樹くんのような子ならいいかな?
なんて思います。
これからの彼の行動が気になります~
でも‥お口チャック(笑)
ではまたm(__)m