「キミと空とネコと」
夕陽と紺碧の刹那

夕陽と紺碧の刹那~雪夜とユウの場合2~

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「うっ…っく…。」

嗚咽を止められないまま駅まで歩いて来たけど、ボクはずぶ濡れで途中のコンビニで傘でも買えばよかったのにそんな事さえ思い浮かばないほど落ち込んでた。

「…っう…こんなずぶ濡れじゃ他の人の迷惑になっちゃう…。」

電車にこのまま乗るのは他の人に迷惑だなって思ってた時にクラクションが鳴って振り向くと、そこには響夜さんの運転する車に乗ったカイくんがいた。

「やっぱりユウだ。どうしたのそんなびしょ濡れで。」

あわてて傘を持って車から出てくるとボクに差し掛けてくれた。

「…うっ…カイくん。ありがと。」

「泣いてるの?何があったの?」

弱ってる時に優しくされると涙って止まらなくなる。

「っ…。」

「車に乗ろ。こんなじゃ風邪ひいちゃうよ。ユウは扁桃腺が腫れやすいから気をつけないと。」

「ひっく…ダメだよ。…っう。こんなに濡れてるのに車のシートが濡れちゃう。傘貸してくれるだけでいい。」

「バカッ!!こんなユウを放っておけると思う?響夜だって放っておけないって言うと思うよ。」

「泣いてるの見られたくない。」

「そんな場合じゃないでしょ。泣いてるの見られるのが嫌なら気分が悪い振りしてればいい。車にタオルあったからそれで顔隠して。ねっ。」

頷くのと響夜さんが車を横につけたのは同時だった。

「ユウどうしたんだ?」

「響夜、ユウ濡れちゃって気分悪いみたい。車で送ってあげて。」

「もちろんだ。」

「でも…シートが濡れちゃう…。」

「オレは平気だけどユウが気になるなら下にビニールシート敷こうか?」

「そうだね。響夜そうして。」

響夜さんは車から出てくると後からビニールシートを取り出してリア席に敷いてくれる。その間にカイくんはバスタオルをボクに掛けてくれた。

「響夜さんも濡れちゃった。ごめんなさい。」

「ああ、これくらい平気だ。それよりユウは大丈夫なのか?顔色悪いな。着くまで横になってろよ。」

「うん。そうだね。横になって。」

「ありがとう。」

ボクは2人の好意に甘えてバスタオルに顔を埋めて黙ってた。涙はまだ出てくるけど、嗚咽は止まっていた。ただ静かに涙だけが流れていた。

やっぱりボクは雪夜さんの事が好き。

車の中で考えた事はそれだけだった。

車はボクのマンションに着くのかと思いきや着いたのはカイくんと響夜さんが暮らしてるマンションだった。

「そんなユウを1人に出来ないから。どうせユウの事だからシャワーでも浴びてご飯も食べずに寝ちゃうでしょ。今日は家に泊まってね。」

「そうだな。海人の言う通りだ。」

「ボクは2人の邪魔をしたくないよ。」

「ボク達の事はいいの。ユウの事が一番でしょ。」

「そうだぞ。オレと海人がこうしていられるのもユウのおかげなんだ。ユウがそんな時に放っておけるか。今日は家に泊まれ。さあ早く部屋に行って風呂沸かさないとな。」

ボクはカイくんに手を引っ張られて部屋に連れて行かれた。ボクに拒否権はないらしい。

部屋につくと響夜さんはすぐにお風呂の用意をし始め、カイくんはボクにずぶ濡れの服を脱ぐように言って着替えを渡してくれた。

「風呂すぐにたまるから熱いシャワー浴びて身体温めた方がいいんじゃないのか?」

「そうだね。そうしようユウ。下着も出しとくから着替え持ってお風呂に入ってきて。」

「うん。ありがとう。」

確かにびしゃびしゃに濡れた服は気持ち悪くて体温を奪って行くのがわかった。身体が身震いする。ボクは濡れた服を脱いで脱衣カゴに入れるとお風呂で熱いシャワーを浴びる。雨で濡れた身体が冷えていたのがわかった。感覚が抹消から戻ってくる。

「あっ。カイくんの香り…。」

浴槽にはボクが作ったカイくん用の入浴剤が入っていてバラの香りが漂う。シャンプーもコンディショナーもカイくん用のバラの香りのもので…。

「響夜さんもこれ使ってるのかな?」と思ったら自然に笑いがもれた。

ボクもそのシャンプーとコンディショナーで髪の毛を洗い、同じ種類のボディソープで身体を洗う。洗い終わる頃にはお湯もいっぱいになっていて、ボクはゆっくりと湯船に浸かりバラの香りに心を癒されていた。

「泣いてても仕方ないんだ。もっと雪夜さんの傍に近寄れるように、ボクの事を意識してもらえるようにしなくちゃ。ボクは雪夜さんの事が好きなんだから。」

ゆっくりとお風呂で温まり、外へ出ると新しい下着が置いてあった。それとさっき貸してくれた着替えに腕を通す。

「カイくんのかな?丁度いい大きさだ。」

お風呂に入って着替えるとサッパリした気分になる。

「お風呂ありがとう。」

「あったまった?」

「うん。あれ?響夜さんは?」

「ユウのスーツクリーニングに持って行った。」

「えっ。そんなのいいのに。悪い事しちゃった。」

「いいのいいの。響夜が持って行くって言ったんだし、早くだしとかないとスーツ痛んじゃうからね。」

「ありがとう。」

「はい。ハーブティにしようかとも思ったんだけど、甘いカフェオレにした。」

「うん。わあおいしい。カイくんは何をやっても上手だな。ボクとは違う…。」

「何でも出来るわけじゃないよ。ユウどうしたの?何があった?雪夜さん?」

ギクッとする。カイくんはするどい。

「だって雪夜さんの病院の近くの駅だし、ユウが泣くのって雪夜さん絡みしかないでしょ。仕事で失敗しても泣く事はないもん。」

「うん。さっきまで雪夜さんのトコにいた。でも雪夜さんはボクの事なんかちっとも意識してるわけじゃなくて、ボクの事はカイくんの友達としか思ってくれてないんだって思っちゃったら悲しくなっちゃって…。でもボクは雪夜さんの事好きだから、もっとボクを意識してもらえるように頑張らないといけないんだ。」

「そうなんだ。でもボクは充分に雪夜さんはユウの事はユウとして見てると思うよ。もうボクの友達なんかじゃなく「ユウ」としてね。それくらいの時間は一緒に過ごしてるもの。それにボクの友達だけなら一緒にお茶したりしないでしょ。挨拶だけでばいばいするんじゃない?」

「そうかな?っ…くしゅんっ…」

「ユウ大丈夫?髪の毛濡れたままだったね。ごめん。ボクが乾かして上げるよ。響夜の髪の毛もボクが乾かしてるんだ。」

そう言ってカイくんはドライヤーで乾かしてくれる。

カイくんと響夜さんも色々なことがあって今の穏やかな時間を紡いでいる。ボクなんかに比べたらすごく辛い事を経験して結ばれた2人だ。カイくんも響夜さんと結ばれてから自分を偽るような事はなくなり自然にカイくんらしさを取り戻している。

「そう言えばカイくん『オレ』じゃなくて『ボク』って自然にどこでも言えるようになってるね。」

「うん。みんなのおかげかな。もう「フリ」する必要ないしね。そしたらいつの間にか『ボク』って言ってたよ。」

「幸せなんだねカイくん。良かった。」

「うん。ボクはすごく幸せだよ。響夜はいつも傍にいてくれるし優しい友達もたくさんいるしね。」

「うん。好きな人と一緒にいられるのは一番幸せだね。」

「おおっ。2人の天使が笑い合う光景はキレイだな。外は雨だけどここは光が溢れてるぞ。」

「響夜ってバカ?」

帰って来た響夜さんとカイくんが2人が微笑み合う事が嬉しいと思う。

「響夜さんクリーニングありがとう。」

「いいよ。それよりユウ顔赤いけど熱出てないか?」

「ん?ドライヤーの熱のせいかと思ってたけど、そう言われればフワフワするような…っくしゅんっ。」

「さっきもくしゃみしてたよね。熱測っとこ。響夜、体温計取って。」

「はいよ。」

「……。」

「37.9度か。これは完全な風邪だね。ユウ寝なくちゃ。」

おでこに冷却材を貼られベッドに横にさせられる。

「今朝ちゃんとシーツ変えてあるから清潔だよ。少し寝て。起きたら軽くご飯食べてお薬飲もうね。」

あのまま家に1人で帰ってたら風邪をこじらしていたかもしれない。2人に出会えてよかったと思った。1人でいたらきっと泣いたままだったと思うから…。

ボクが眠りにつくまでカイくんはボクの頭をなでていてくれた。それが気持ち良くて…。この手が雪夜さんならもっと気持ちいいのかな?なんて思いながらボクは眠りについた。



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