「キミと空とネコと」
夕陽と紺碧の刹那

夕陽と紺碧の刹那~雪夜とユウの場合3~

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ボクと雪夜さん、少し前まではもっとマメに会ったり携帯で連絡を取り合ったりしてた。でもそれはボクのためじゃない。カイくんと響夜さんのため。2人のために周りの人達が動いて、助け合って情報交換しあった事も手伝って2人は結ばれた。

ボクはカイくんの飼っているネコの『武蔵』のお世話をする役目もあったから雪夜さんとの接点が多かった。武蔵のおしっこが出なくなって、それはもしかしたらネコ缶しか食べさせてなかったのに、ボクがドライフードをあげてたせいかもしれなくて、雪夜さんの前で大泣きした事もあった。

雪夜さんは大人で、ボクの事は子供みたいに思ったのかもしれないけど、ちゃんとアドバイスしてくれて見守ってくれてる感じだった。今もそれは変わらないと思う。

ボクは女の子としか付き合った事なくて、いつも「ユウを守らなくちゃいけない気がするから守ってくれる人がいい」とか「男とは思えなくなった」とか言う理由で振られてばかりで…。

カイくんと響夜さんとの事を知った時に嫌悪感は全くなかった。だって2人とも本当にお互いの事を愛してるんだってわかったから。偽者の愛じゃない。真剣な愛だった。男だからとか女だからとかを通り越して、人間同士としてお互いが必要なんだって思った。

カイくんを通して雪夜さんを知った時、すごくドキドキしたのを覚えている。好きになるぞって予告音みたいな心臓の音だった。雪夜さんは冗談でだろうけど、ボクにデートしようって誘ってくれた事もあったけど、今はそんな事なかったのように紳士的な態度。ボクはからかわれたのかもしれないな。武蔵の事で落ち込んだ時だったから、ボクを元気付けようと言ってくれたのかもしれない。もうだいぶ前の話…。カイくんと響夜さんが結ばれて、ボクは雪夜さんとの接点が少なくなって、会う事が少なくなると好きは膨らんでいく一方なのに好きと言えなくなって…。

違う。それはそういう理由にしておきたいボクの逃げ。ほんとはカイくんを見る優しい雪夜さんの視線を見ていたから。雪夜さんがカイくんを好きなんだと、例え響夜さんと結ばれてもカイくんの事が好きなんだって気がついてしまったから…。響夜さんと幸せそうにしているカイくんを見守っている優しい目をみればわかる。

カイくんはボクのために相談に乗ってくれて、チャンスも作ってくれてるけど雪夜さんの気持ちを知ってるわけじゃないから。それにそんな事カイくんに言えない。そんな事言ったらせっかくやっと響夜さんと結ばれて幸せになったのにカイくんは自分が悪いんじゃないかって、雪夜さんにもボクにも悪い事してるって自分を責めちゃうから。自分だけが響夜さんと幸せになっていいのかとか余計な事を考えちゃうから言えない。

雪夜さんの事を諦められないとか言いながら、こんな事でウジウジしてるボクは情ない。

雪夜さんがカイくんの事を好きだと知らなかったら言えたのかな?そんな事考えても何にもならないのに…。



「ユウ起きてる?」

「…ん…。起きてる。」

「やっぱしんどそうだね。薬飲まなくちゃいけないけど食べれそう?卵粥なんだけど…。」

『卵粥』か。そういえばカイくんが精神的に不安定になって、カイくんのマンションで雪夜さんと響夜さんと卵粥食べたな。あの時は雪夜さんが土鍋にたくさん作ってきてくれて、カイくんは眠ったまま起きなくて響夜さんの服を離そうとしなかったから響夜さんが眠ってるカイくんの横で食べて(後で聞いたらカイくんも起きて響夜さんが食べさせたらしいけど…)ボクはリビングで雪夜さんと2人で食べたんだ。

「卵粥、食べる。」

「わかった。じゃ、ここに持ってくるね。」

「うん。」

ボクはベッドに横になったまま待った。起きると頭がフラフラしたから…。少し食べて薬のんで横になってよう。

しばらくしてガチャってドアの開く音がしたからカイくんが卵粥を持ってきてくれたんだと思った。ベッドサイドにコトッってお盆の置かれた音がして優しくボクの冷却シートを取ったと思ったら少しひんやりした手がボクの額に触れる。冷たくて気持ち良かった。

「やっぱりボクが車で送ればよかったね。ユウくんごめんね。」

良く通る優しいテノールの声がする。目を開けるとボクの髪の毛を優しくなでる雪夜さんがベッドに腰掛けていた。

「え?何で雪夜さん?」

「カイトくんから電話もらったんだ。『雪夜さんの卵粥の作り方教えてください』って。響夜が熱でも出したのかと思ったら、『ユウくんがずぶ濡れで風邪引いたみたいだから作りたいんだ』って聞いて。ボクのところ出てからすごく雨が降ってたもんね。ボクはそんなに降ってるとは思わなくて気がつくのに遅れた。あわてて外に出たけど、もちろんキミはもう居なくて…。ボクの責任だ。ユウくんごめんね。しんどいよね。」

「いいんです。雪夜さんのせいじゃない。ボクが雨に勝手に打たれてただけです。雨宿りするなり、コンビニで傘を買うなり、タクシーに乗るなりすればよかったんだから。だから雪夜さんのせいじゃありません。」

「ユウくんはそう言うだろうなって思った。だからせめてものお詫びにボクが卵粥を作らせてもらった。食べてくれる?」

「ありがとう雪夜さん。頂きます。」

ボクは布団から身体を起こすとベッドの端に座ってサイドボードのお粥を取ろうとした。

「ダメだよ。布団から出たら身体が冷えちゃうだろ。布団の中に入って。」

言われた通りにすると腰のあたりと背中にかませるようにクッションを置いてくれる。

「これでもたれても楽だろう。」

パジャマの上には身体を冷やさないようにと上着を着せられる。

「食べる前に喉を潤しておこうね。熱が出てるから身体の水分も多く摂っておかないと熱も下がらないしね。飲み物を飲むと飲み込みも良くなるからね。カフェインは良くないから麦茶にしたけどスポーツドリンクの方がいいかな?」

「ご飯食べるから麦茶でいいです。」

「そう?冷たいのは良くないから少し温めた。冷たいものが飲みたいだろうけどこれで我慢して。」

「はい。」

マグカップには飲み頃の温かい麦茶が入っていて喉が渇いてたボクはコクコクと喉を潤す。

「お代わり入れてくるから待っててね。」

雪夜さんはそう言うとキッチンに行きすぐに戻ってくる。

「じゃあ、食べようか。」

「はい。頂きます。」

ボクは当然お盆をボクに渡してくれて自分で食べるつもりだったのに、お盆は雪夜さんの所へ行き、お粥をレンゲに掬った雪夜さんはフーフーして冷ましてボクの口元へ持ってくる。

「はい。ユウくんあーーーんして。」

「…うっ…。雪夜さん大丈夫です。ボク自分で食べれますから。」

「何言ってるの?病人は優しくしてもらえるんだから甘えなさい。こんな時じゃないと「あーーん」なんてしてもらえないでしょ。」

いえいえ、大人はそんな事しないと思いますよ。雪夜さん。新婚さんとか恋人同士なら別でしょうけど…。

ええええっ。新婚さん?恋人?

自分で想像して真っ赤になる。ダメだ。熱のせいで妄想が突っ走りそう…。

「ユウくん?大丈夫かい?」

「ハ、ハイ。大丈夫です。」

「はい、じゃあ、あーーん。」

仕方なく口を大きく開けてレンゲの上のお粥を食べる。

「おいしい?」

「はい。おいしいです。」

「じゃあ、もう一口ね。フーフー。はい、あーーん。」

お茶碗一杯分の「あーーーん」は続いてボクは雪夜さんに甘えちゃえって開き直って食べさせてもらった。かなり恥ずかしかったけど、雪夜さんは平気そうだった。

「じゃ、薬飲んで横になろうね。あ、薬は白湯で飲まないとダメだよ。麦茶置いて。」

「はい。」

薬を飲んでおでこに冷却シートを貼られて横になる。

「雪夜さん、ありがとうございました。」

「こっちこそごめんね。ユウくん。ユウくんが眠るまでボクがここに居るからゆっくり休んで。」

「はい。おやすみなさい。」

好きな人がこんな傍にいて眠れるわけないと思ったのにお粥で温まった身体は飲んだ薬の力もあってか程なく心地いい眠気が襲ってくる。

好きな人にこんなにしてもらったんだから幸せだぞって自分に言う。今の時間はボクだけの雪夜さんだ。雪夜さんだってボクの事を見ていてくれる。こんなだったら風邪何回でもひいてもいいななんてバカな事を思って笑えた。そのままボクはスゥーっと眠ってしまった。

「ごめんね。ユウくん。」

優しい視線で髪の毛をなでられているなんて知りもせずにボクは眠りの中で幸せな気分だった。


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