「キミと空とネコと」
夕陽と紺碧の刹那

夕陽と紺碧の刹那~雪夜とユウの場合9~

 ←やさしいKissをして16 →やさしいKissをして17
雪夜さんと海に行ってから1週間が過ぎた。

携帯に雪夜さんからメールや着信が入っていたけど見る気も出る気にもならず…。

片思いって思ってる分には幸せだと思う。だっていろいろと相手と付き合ったら、こうしてとか、ああしてとかいろいろな想像をして幸せな気分になれるから。でもそれは相手の気持ちを知らない事が限定。相手の気持ちが自分にない事を知ればたいていの人は落ち込むと思う。ましてや相手の好きな人が自分の友達なんかだったら落ち込みもひとしおだと思う。

ボクはどうしたらいいんだろう。雪夜さんの事を諦められたら一番いいんだけど、ボクは相当に雪夜さんの事が好きな様で、ちっとも心の中の雪夜さんは消えてくれない。

何もしなくても1日は過ぎて行く。ボクがどう考えようが落ち込もうが時間は待ってくれない。時間が立てば忘れられるのかな?今は辛くても、そのうち雪夜さんより好きな人が出来る?そしたら忘れられる?でもそれって何時?

雪夜さんの事があって、カイくんにも連絡していない。メールの返事は当たり障りなくしてるけど。カイくんは応援してくれているのに知らん顔なんて出来ない。

「水野くん。水野くん!!」

ハッと気が付いて後をみると社長が立っていた。

「水野くんは又、残業かい?そのわりにはパソコンに何も打ってないようだけど?」

「え、ああ。今帰るところです。社長は?」

「オレも帰るところ。アキと待ち合わせしてる。通りかかったら水野くんが見えたから寄って見たんだ。」

「そうなんですか。」

「また、友達の悩み?」

「まあ、そんなところです。ていうか失恋したっぽいです。」

「なんで『失恋したっぽい』なの?」

「『友達の友人の事が好きなんじゃないんですか?』って聞いたら『ああ好きだよ』って言われちゃいましたから…。これって失恋でしょ?」

「それは確かに友人の事が好きって言ったの?その後に何か続けて言うつもりだったのに、水野くんが先読みしちゃったんじゃない?水野くんって話聞かないで、自分で早合点してしまうところがあるからね。」

「『ああ、好きだよ。だって…』って言ってたような気もする…。」

社長に言われて考えるけど、思い出せない。あの時は話をそれ以上聞きたくなくて話を止めたんだ。ボクが…。そんでその後は逃げるように帰ってきてしまった。

もしかして社長の言う通り、ボクの早合点なの?

「で、聞きたいんだけどね。水野くんは…。違うな。水野くんの友達はちゃんと相手に告白したのかい?」

「告白ですか?」

「そう。話を聞いていると自分からは何も言っていように聞こえたから。それとも相手から言って欲しいのかな?」

「……。」

そう言えば、ボクは雪夜さんに自分の気持ちを伝えてない。勝手に雪夜さんの気持ちを考えて思いこんでただけかもしれない。態度でわかってもらおうなんてそんなの超能力者でもあるまいし、ちゃんと自分の口で自分の気持ちを伝えなきゃダメだよね。

「社長。そうですよね。落ち込むのはちゃんと振られてからですよね。告白もしないで、失恋したなんて1人よがりですよね。うん。そうだ、ちゃんと自分の気持ちを自分らしく、自分の言葉で伝えなくちゃ。」

「そうそう。それでこそ水野くんだ。いつものキミらしさが戻ってきたね。」

「はい。ボクらしく頑張ってみます。」

「水野くんなら大丈夫だよ。保証する。」

「ありがとうございます。失恋した時はなぐさめてくれますか?」

「恋が実っても、失恋してもオレとアキでなぐさめてあげるよ。でも実ると思うけどね。」

社長は意味深な事をいって「お疲れ様」とフロアを後にして帰って行った。アキとの約束の時間が来たらしい。

「でもボクらしく告白ってどうしたらいいんだろう。」

ちっとも画面のかわらないパソコンの電源を落として帰路につく。

電車の中でも考えるがいいアイデアが思いつかない。

「ボクらしく…。ボクらしく…。」

ボクの得意なものってなんだ?

料理はダメ、文才もないし、器用に何か作れるわけじゃない…。

『作る?』

そうだ、ボクには仕事があるじゃないか。社長やカイくんに作ったみたいに雪夜さんにも雪夜の香りを作ってプレゼントしよう。それを渡して気持ちを打ち明けよう。

家に帰ると早速パソコンを立ち上げていろいろな花を検索する。

雪夜さんに似合う花って何だろう。

バラではない花だ。雪夜さんはバラじゃない。もっと大きくて存在感のある花。色は白。艶やかな香りがする花。

頭の中で花屋をイメージする。頭の中に思い浮かぶ花達を順番に見て行くと一つの花の所で止まる。

「そうだ。『カサブランカ』雪夜さんのボクのイメージにピッタリの花はカサブランカだ。」

結婚式のブーケにもよく使われる花。

花言葉は「雄大な愛」「威厳」「高貴」雪夜さんにピッタリの言葉だと思う。

カサブランカは原産地が日本でヤマユリとカノコユリ、サクユリを交配させたオリエンタル・ハイブリットなんだ。ちょうど今が咲いている時期。きっといいユリが手に入るはず。

入浴剤やアロマにするにも香りがきつすぎてもダメ、香りが少なすぎてもダメ。カサブランカは特に香りがきついから厭味な香りにならないように配合しなくちゃいけない。そこがバラと違って難しい。

ボクはそれから毎日、仕事から帰るとカサブランカの香りと格闘していた。少しずつ理想に近い香りになって行く。

ボクは雪夜さんを思い浮かべながらカサブランカの匂いに包まれていた。それはまさに雪夜さんに抱きしめられているかのよう。やっぱりこの香りは雪夜さんだなって思うボクはうぬぼれてるのかな?その間にも雪夜さんからの連絡はあったけど、今会うとダメになりそうな気がして出なかった。

雪夜さんが髪の毛を伸ばして願掛けしたように、ボクはこのカサブランカの香りを作り上げる事で願掛けをしている。叶わないかもしれないけれど、自分なりに納得の行くように告白したい。上手く行かなかったとしても、後で後悔しないようにちゃんと振られないとボクは前に進めないって思ったんだ。

「水野くん、最近は早く帰ってるみたいだね。」

「社長。またフロアをウロウロしてるんですか?」

「いいじゃない。こうして会社の中を把握しておくのも社長の仕事だからね。みんなが働きやすいようにするのも社長の仕事なんだよ。で、どうなの?」

「はい。家で香りの調合をしてるんです。さすがに私用目的で会社のものは使えませんから。」

「そうなんだ。で、それは会社に提供してくれるの?」

「ダメです。これは個人用に作ってるんです。」

「で、水野くんはその香りを持って好きな人に告白するの?あ、違った。水野くんのと・も・だ・ち・が告白するんだよね?」

何だか社長にはボクが告白するってバレてるような気がするのは気のせい?

「そ、そうですよ。と、友達のために作ってるんです。」

「寝る間も惜しんで、友達のためにねえ…。」

「何か?悪いですか?」

「いやいや。そのと・も・だ・ちが上手く告白出来て恋が実る事を心から祈ってるよ。」

「ありがとうございます。ちゃんと伝えておきますね。じゃ、時間なのでお先に失礼します。」

「あ、水野くん。告白する友達に伝えといてくれないかな。告白する時は前の日にちゃんと睡眠をとって目の下に『クマ』のない顔で告白するようにって。せっかくのかわいい顔が台無しだからね。ご飯もちゃんと食べてお肌も磨いたほうがいいよ。ってね。じゃ、お疲れ様。」

後でにバイバイと手を振る社長。今の言葉はもしかしなくてもボクに向けてだよな。クマが出来てるのか?

ボクはトイレで鏡を見る。そこには肌のあれた目の下にくっきりとクマのある顔が映っていた。

「うわっ。最悪な顔。これじゃ告白どころじゃないな。」

そう言えばご飯はハンバーガーとか揚げ物びっしりお弁当とかカップラーメンだった事を思い出す。香りを作るのに夢中でご飯に時間をかけている余裕がなかった。

今日は香りの仕上げで完成する。出来上がったらすぐにでも告白しようかと思ってたけど、どうせならちゃんとした顔で告白したい。目の下にクマなんて作ってたら、反対に雪夜さんの事だボクの心配をするだろう。

今日はお弁当だけど、幕の内にしてしじみのお味噌汁とサラダも一緒に購入する。大嫌いな野菜ジュースまで買った。目の下のクマが消えるまでは出来るだけバランスよく食事をしようと心がける。

まるで恋する乙女のようだとは思うが、やっぱりいい顔で告白したい。

そして雪夜さんだけのための『カサブランカ』の香りが完成した。入浴剤とアロマ、シャンプーにコンディショナー、ボディソープまで作った。会社のものもちょっと使ったけど、それは社長にお願いして了承を得ている。

それから3日。ボクの目の下のクマがなくなるまで待った。

でもその時になって気が付いたんだ。ボクはこの2週間というもの、雪夜さんが連絡をくれていたのに無視していた事を…。

2週間も無視し続けていて、今更なんて言って会ってもらえばいいの?それよりも雪夜さんは2週間も無視し続けたボクに会ってくれるのだろうか?

ボクは携帯を片手にボタンも押せずに夕陽の中に佇んでいた。

*:..。♡*゚¨゚゚・*:..。♡*゚¨゚゚・*:..。♡*゚¨゚・*:..。♡*゚¨゚゚・*:..。♡*゚¨゚゚*:..。♡*゚¨゚゚・*:..。♡*゚¨゚゚・*:..。♡*゚¨
読んで頂きましてありがとうございます。拍手くださる皆様、ポチして下さる皆様のおかげで何だかランクが上がったり、訪問してくださる方が増えたりでビックリしています。読んでくださる皆様に本当に感謝です(✿◕‿◕)ノアリヾ(◕‿◕✿)ガト(✿◕‿◕)σウ♪♡

鍵拍手コメを下さったK様いつもありがとうございます。コメにほわほわとした気持ちで嬉しくて…。雪夜は言葉足らずですよね。で、ユウに押し負けてるし…。何とか連絡を取ろうとはしてるんですがユウに無視される始末。それ以上強く出れないのが雪夜なんです。ユウはどんどん行っちゃうタイプなので引いてしまう雪夜とはいいカップルだと思うんですけどね☆K様拍手コメありがとうございました☆

次回で最終話になる予定です。もし長引いてしまったらごめんなさい。先に謝っておきます。(何だか書いてるうちに終われないような気がしてきた…)長文になるようでしたら分けるかもしれません。その時は許して下さいませ。

ランキングに参加しています。よろしければポチッと押してやってくだされば喜びます。いつもありがとうございますo(>ω<*)o

にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
にほんブログ村
にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
にほんブログ村

関連記事
スポンサーサイト





総もくじ 3kaku_s_L.png キミと空とネコと
総もくじ 3kaku_s_L.png 新撰組物語
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png ご挨拶
もくじ  3kaku_s_L.png 貴方の腕の中で
総もくじ  3kaku_s_L.png キミと空とネコと
もくじ  3kaku_s_L.png S.S
もくじ  3kaku_s_L.png イラスト
もくじ  3kaku_s_L.png 頂きもの☆
もくじ  3kaku_s_L.png 雑記
総もくじ  3kaku_s_L.png 新撰組物語
  • [やさしいKissをして16]へ
  • [やさしいKissをして17]へ

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • [やさしいKissをして16]へ
  • [やさしいKissをして17]へ