「キミと空とネコと」
キラキラと蛍の舞う場所で

キラキラと蛍の舞う場所で2

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「海人も武蔵ちゃんもいらっしゃい。待ってたわ。」

「母さんただいま。ボク今日は泊まるから荷物部屋に置いてくる。武蔵にお水あげてくれる?」

「いいわよ。海人、泊まっていってくれるの?お父さんとても喜ぶと思うわ。さっきお父さんに『今日は海人が晩ごはんを食べに来る』ってメールしたら『今日は定時ですぐに帰る』って返事がすぐに来たもの。」

「父さんてば…。」

「荷物置いてくるんでしょ。降りてきたらおやつにしましょ。ケーキを焼いたの。海人、甘い物好きだって言ってたから。」

「ありがとう。母さん。」

ボクは武蔵を母さんに預けて2階の自分の部屋に荷物を置きにいく。

「ほんと、母さんダブルベッドを買っちゃうんだから…。」

ポスンとベッドに腰掛ける。ボクが殆ど帰る事がないのに、部屋には大きな新しいダブルベッドが鎮座している。母さんがここに泊まりにくる時は響夜と一緒になる事が多いだろうから、ボクのシングルベッドじゃ狭いだろうって買ってくれた。父さんは抵抗してたけど、母さんのいう事には逆らえないんだ。いつまでも仲のいい夫婦だと思う。

ボクは響夜の事が好きでずっと一緒に人生を送るって決めたから、母さんと父さんに孫を抱かせてあげる事は出来ない。それを知っても母さんと父さんは『その代わりに息子が1人増えるんだろ』ってボクと響夜の事を認めてくれている。実の両親に認められているなんて奇跡のようなものだと思う。男同士の恋愛なんて普通は許してもらえないのが現実。肉親だからこそ余計に。認めてもらえたのも響夜だからと思う。ボクは幸せ者だ。

「海人、お茶入ったわよ。」

「うん、すぐに降りるよ。」

母さんと向かい会って自然に話せるようになったのは最近の事。母さんもそうなんだと思う。最近の響夜との事や、友達の事を話したり、家の様子や弟と妹の様子を聞く。

「駿と絵梨華も海人に会いたがってたわよ。今度は響夜さんも一緒にみんなで会いたいわ。」

「そうだね。みんなが幸せならほんとに嬉しいと思うよ。」

「こうして海人と話せるようになったのも、家族として過ごせるのも響夜さんのおかげなのね。母さん海人とこんな風に話が出来るようになると思わなかったもの。」

「ボクもそう思うよ。ここに帰ってくる事があるなんて思ってもみなかった。」

「海人は幸せね。こんなに愛してもらえる人と巡り会えて。」

「うん。母さんボクは今とっても幸せだよ。」

母さんの焼いてくれたケーキを一緒に食べながらお互いの話をする事が出来る。こんな普通の事が幸せだと感じる。

夜になると父さんが返って来た。

「お帰り父さん。」

「海人ぉただいま!!」

玄関で出迎えたボクを父さんが抱きしめる。

「ちょっと父さん何だよっ!!」

「だって久し振りに海人に会えたんだぞ。どんなに父さんが嬉しいかわからないのか。」

「嬉しくてもこうも毎回抱きつかれたんじゃ、ボク帰ってくるのが嫌になるかも…。」

「それはダメだ。やっと海人と親子の絆を取り戻したのに、それはダメだ。わかった。父さん我慢する。うん。」

必死になる父さんに愛されている事を再認識させられる。

「嘘だよ。ちゃんと遊びにくるから。父さんに抱きしめられるのも嫌じゃないよ。子供の時にしてもらえなかった分を今してもらってるんだと思うから。」

「海人…。」

「2人ともいつまで玄関で遊んでるの?お父さんもいくら嬉しいからって靴も脱がずに海人に抱きつくのは止めてくださいな。大人気ないですよ。」

「ひどいなあ、母さんは海人とずっと話してたんだろ。父さんは母さんに比べると海人と一緒の時間が少ないんだから大人気ないはないだろう。」

「はいはい。お父さんは着替えてきてくださいな。みんなで晩ごはんを食べましょう。」

「う…母さん…そうだな。着替えてくるよ。」

「母さん、ボク手伝うよ。」

「ありがとう海人。じゃあお茶碗並べてくれる?」

「うん。」

それから3人で食卓を囲む。ボクの横には武蔵のご飯も用意されていて武蔵はむしゃむしゃと先に食べていた。

たわいのない話をしながら家族とする食事は、響夜との食事とは違う幸せをボクにくれる。でも、ここに響夜がいたらもっと幸せなのにと思う。

「今度は響夜さんも一緒に来なさいね。」

「そうだな。響夜くんと酒を飲むのはお父さんも楽しみだからな。」

「うん。響夜に言っておくよ。」

「海人、おばあちゃんが1度響夜さんを連れて遊びにおいでって言ってたわよ。」

「なんだ、海人はまだ響夜くんと行って無かったのか。」

「うん。なかなかタイミングが合わなくて。でも今なら蛍が見れるかな。」

「ああ、そうだな。あの場所は今でもきれいなままだから今年も見れるだろう。」

「そうよ。響夜さんを連れてあの蛍を見せてあげたら?もう蛍なんてそうそう見れる場所も限られてるもの。響夜さんきっと喜ぶと思うわ。」

響夜をばあちゃんのトコに連れて行く。そう前に響夜も行きたがってた。自分の親はこっちで生まれ育ったから田舎がないんだって、だから行ってみたいって言ってた。

「うん、響夜に言ってばあちゃんとこに行くよ。響夜にあの蛍を見せてあげたいし、満天の星空も見せてあげたい。響夜は田舎がないって言ってたからきっと喜んでくれるよね。」

「ああ、あそこはいい所だからな。それにばあさんも喜ぶ。」

「そうね。海人の事は私達以上に心配してたから。」

響夜は喜んでくれるかな。ボクに出来るささやかなお返しだけど響夜に喜んでもらえたら嬉しい。

晩ごはんの片付けを母さんとしながら、響夜とばあちゃん家に行く事を想像した。

お風呂から上がったら携帯がピカピカ光っているのに気が付いた。

「あ、響夜からだ。えっ帰って来たって明日じゃないの?」

響夜が帰って来てると思ったら会いたくて仕方なくなる。今日はこっちに泊まるつもりだったけど、今なら終電に間に合う。

「母さん、母さん響夜が帰って来たからボクやっぱりマンションに帰る。」

「そう響夜さんなら仕方ないわね。お父さん、海人を車で送ってあげて。」

「ああ。こんな夜遅くに海人1人だけなんて危ないからな。晩酌しなくて正解だった。何だかこうなる気がしたんだよ。」

「ありがとう母さん、父さん。」

「響夜さんにヨロシクね。今度は2人でいらっしゃいね。」

「うん、そうするよ母さん。」

「じゃ、海人行くぞ。」

「母さんおやすみなさい。」

「おやすみ海人。」

車の中で父さんは無言だった。

「父さん送ってくれてありがとう。気を付けて帰ってね。」

「海人…。母さんも父さんもお前の味方だ。誰が何を言おうとお前を守る。響夜くんだけでなく、困った事があったら言いなさい。響夜くんとケンカして一緒にいるのが辛い時も家に来てくれたら嬉しい。お前の居場所は響夜くんの所以外にもある事を忘れないでくれ。」

「父さん…。」

「じゃ、身体には気をつけるんだぞ。おやすみ海人。」

「父さんありがとう。おやすみなさい。」

父さんの言葉が身に染みて嬉しかった。ずっと1人だと思ってた。でもそれはボクの勝手な思いこみで、みんなボクの事を愛してくれていた。

「響夜おかえりっ!!」

部屋のドアを開けるとそこに響夜がいて、ボクは思いっきり響夜に抱きついた。

「ただいま海人。海人もおかえり。」

「響夜ただいま。」

見上げた響夜の顔が愛しくて距離をつめてキスをする。

胸がキュッてなって切なく痛い。ボクはこんなに響夜が好きなんだと知らされる。

「海人…。早くお前に逢いたかった。」

「ボクも響夜に逢いたかった。ただ3日離れてただけなのに…。」

お互いに見つめ合いその瞳の奥に熱を持っている事がわかる。

「海人…。」

「響夜…。」

「うにゃ~~~っ!!」

武蔵をリュックの中に入れたままだった。あわてて武蔵をリュックの中から出して謝る。

「ごめん武蔵。ほんっとにごめん。」

ふんっと大きな鼻息をして武蔵はボクと響夜を順番にみて悠々と自分の好きな場所へ移動しくるんと丸くなって寝る。まるで、『もう2人で好きにすれば?』って言ってるみたいだった。

2人でクスッと笑い、一緒にお風呂に入ってベッドに横になる。

何も言わないでも同じ気持ちなのがキスから伝わってきてその後は夢中で響夜と抱き合った。響夜はボクを甘やかしてトロトロに蕩けさせてくれた。何回も…。

「響夜が好き。愛してる。」

「海人…。オレは海人のもんだ。海人はオレのもん。もうお前以外いらない。愛してる。」

その言葉を聞いてボクの意識は途絶えた。心地よいぬくもりの中で眠りにつく。

「海人?寝ちゃったのか。無理させちまったな。ゆっくりおやすみ。」

その後、響夜がキレイにしてくれてもボクは起きる事なくぐっすりと安心して響夜の腕の中で眠っていた。


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