「キミと空とネコと」
やさしいkissをして

やさしいKissをして26

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「先輩は憎んでいる相手でも好きになれますか?」

そうオレに聞いて来る黎の目がすごく真剣で怖くなって目を逸らす。

「そんなのわからないってば!!憎んでる人を好きになった事ないから。オレに恋愛の話を聞くな。聞くなら達樹に聞けよ。あいつの方が経験あるから。」

「オレは先輩に聞きたいんです!!」

「だからオレは分からないって!!」

ガチャンとマグカップがテーブルにぶつかって派手な音がしてマグカップが割れたのかと見る。

良かった、マグカップもテーブルも割れていない。

「黎、大丈夫だった。」

その時。黎の顔が思ったよりも近くにあってビックリして後ろへ下がる。その時、ほんのわずかに黎の唇とオレの唇が触れたような気がする。

「/////。」

とっさに自分の唇を手の甲で隠す。違うよな。今のは違うよな。当たってないよな。

1人ドギマギするオレに対して黎は冷静で、マグカップをちゃんとテーブルに戻すとふぅっと一息もらす。

「先輩。バイト1度家に帰ってから行きますよね。」

「…え?…ああ。」

「オレこれから先輩のこと『先輩』って呼んだ方がいいですか?『凪さん』って呼んだ方がいいですか?」

「…え?…えと、どっちでも黎の好きなほうでいい。」

「じゃあ、2人以外の時は先輩で、2人きりの時は凪さんって呼びます。」

「何かややこしくねぇ?面倒くさいからどっちかにしろよ。ていうか、黎と2人きりなんてそうそうならないから『先輩』でいい。高校の時と同じの方がお前も呼びやすいだろ。」

「はあ…。まだまだこれからって事ですね。まだ高校時代と変わらないって事だ。」

「黎。何を訳のわかんねぇ事言ってるんだよ。」

「いいんです。先輩がオレに慣れてくれるように頑張ろうって事です。」

「頑張らなくていい。黎が頑張ると怖い。」

「先輩がまだ、オレの事をどっかで許してないのはわかってますから、先輩がオレの事をどうしても受け入れられない、ダメだっていう時は先輩は我慢しないでちゃんと言って下さい。高校の時みたいに逃げるのは無しですよ。」

「ああ。わかった。逃げたところで黎は追いかけてくるんだろう。ここまで追いかけてきたんだから…。逃げる方がかえって悪い事になりそうだ。」

「そうです。オレをストーカーにしないで下さいね先輩。」

「分かったよ。」

夕方のバイトのためにオレは黎のマンションを後にする。

「はぁ、何だか疲れた。でも話が出来て良かった。あんなに黎と会う事が怖かったのに。逃げてばかりじゃダメなんだ。」

その時、事故の時の場面がフラッシュバックする。

眩暈でクラクラしてその場にしゃがみこみ、冷や汗を流しながら収まるのを待つ。

黎と長い間話してたからかな。傍のガードレールに腰かけてしばらく気分を落ち着かせようともたれる。やっぱり事故の事がオレの中で解決して無いからフラッシュバックなんてするのか…。黎の事を許せてないから?

考えたところで問題が解決する訳ではない。

「バイトに行く用意をしなくちゃ。汗かいちまったしシャワー浴びて行くか。」

頭ん中がぐちゃぐちゃのまま、しばらくガードレールに腰かけて座っていた。眩暈が収まって気分が落ち着いてからひとりごちると家に帰った。そのままカバンをベッドに放り投げて風呂へ向かう。

今日は黎も来る日だけど、前より大丈夫なのは今日2人で話したからか。ふと、オレの唇を掠って行った黎の唇の感触を思い出して顔が赤くなる。

あれって触れたのか?触れなかった?黎は普通だった。オレの勘違いかな。でもそれはそれですんごい勘違いだ。思わずシャワーの温度を高くして熱いお湯で頭の片隅に追いやる。もうすぐバイトなんだから集中しないと!!でも黎はなんであんなに男同士の恋愛とか、憎いと思う相手を好きになれるかとかわかんない話をしだしたんだ?黎、好きな奴がいてオレに相談したかったのか?え?そうなのかもしれない。オレ黎に酷い事しちゃったんじゃないか?でもオレ恋愛相談なんて出来ないから…。そんな経験ないし、経験ならオレより黎や達樹の方があるだろう。
って急がないとバイトに遅れちまう。

何だか今日のオレの頭の中はぐちゃぐちゃで豆腐が煮崩れたみたいだった。

「おはようございます。」

「おはよう凪くん。今日もよろしくね。」

「おはよう凪。ん?どうかしたか?」

そうだ、恋愛相談なら達樹じゃなくてもこの人がいるじゃないか!!

「何だよ凪。オレの顔になんかついてるか?」

「先輩おはようございます。」

「おおおはよう。隆耶さん何でもないです。」

ふと黎の唇を見てしまって動揺してしまった。だから、あれはキスなんかじゃないし…。黎は何とも思ってないし、ていうか本当にあたったかどうかも怪しいし…。

「あれ、黎くんは凪くんの事を『先輩』って呼ぶ事にしたの?前は『凪さん』だったよね?」

「ええ。先輩って呼んでもいいって先輩が言ってくれましたから。何だか高校時代に戻ったみたいです。」

そう言いながら黎がオレを見るのでオレは恥ずかしくなってロッカールームに入り着替える。

「なんで黎の奴あんなに嬉しそうな顔すんだよ。わけわかんねぇよ。」

何で急にこんなに黎を意識しているのかわからないけど、昨日までの黎と今日の黎は明らかに違っててスルッと高校時代の関係に戻りそうな二人の距離に戸惑う。

高校時代、あの事故が起こる前は他の部員や後輩達とよくつるんでいた。黎とオレは同じポジションだからか合宿の時とかペアになる事が多くて食事当番とか買い物とか2人で良く出掛けていた。

「なな黎。サーティワンのアイス食って帰ろうぜ。」

「先輩早く帰らないと。食事作らないといけないでしょう。オレ達が当番なんですから。」

「でもオレはアイスが食いたいんだよおっ!!」

「はいはい。じゃあ先輩1人で食べればいいでしょう。オレここで待ってますから。」

「だってオレだけ食べるのは嫌なんだもん。黎も一緒に買いに行こう。」

「て、先輩あの女の子の中で1人で男がアイス買うのが嫌なだけでしょう?」

「え?何でわかった?」

「わかりますよ。先輩の考えてる事なんてバレバレです。仕方ないなあ。」

「黎お前ってほんっとにいい奴。大好きだあ~~!!」

「ちょっ!!先輩抱きつくのやめてくださいっ!!」

「だって黎の事好きだもん。」

「はいはい。わかりました。早く行きますよ。」

「ああ、待ってくれ~~~!!」

こんなバカな事は日常茶飯事で、オレは後輩の黎に甘えてたような気がする。いつでも黎は何だかんだ言いつつ、オレのいう事を聞いてくれたから。

オレは黎と過ごす時間が好きだった。ライバルとして競い合ったり、バカな事をして笑ったり…。女の子と過ごす時間よりも楽しくて、オレは黎といるか部活の仲間といるかして夕方や休みの時間を過ごしていた。

高校時代って、女のコの事で興味津々で集まればそんな話ばかりだったのに、不思議とオレはその中でギャーギャー言ってるだけで満足していたんだ。そりゃ、かわいい子や胸の大きな子とかみたら「おおーっ」て思ったけどそれだけだった。女の子と付き合ってる奴を羨ましいとも思わなかった。そんなオレでも告られて付き合った事はあったけど、何が楽しいのかわからずじまいで身体の関係は持ったけどだからってのめりこむ事もなく…。オレ男として終ってないか?高校時代を振り返ってドーンと落ち込んだ。

「凪?落ち込んでるのは勝手だがもうそろそろ仕込み始めたいんだけど?」

「はっ。陵耶さんすいません。すぐに行きます。」

「恋の悩みは仕事が終ってから聞いてやるから、仕事に集中しろよ。」

「恋の悩みではないですけど、話聞いてほしいです。」

「じゃあ、仕事が終ってからな。今は仕事、仕事。」

「はい。」

着替えて厨房に入り仕込みを始める。流れるような隆耶さんのリズムを狂わせないようについて行くのはもう慣れたものだった。

「やっぱ凪と一緒だと仕事が早く進むわ。凪、大学出たらオレの下で修行するか?」

「何言ってるんですか?大学でたらリーマンになります。何のために大学で経済を学んでるのかわかんないじゃないですか。」

「だよなあ。でもオレ凪以上に片腕になれる奴いないような気がするわ。」

「そんな事ありません。専門に習ってる人の方が片腕になれますから。」

「ちぇーっ凪冷たい…。」

膨れて拗ねる隆耶さんをかわいいと思いながら仕込みを続ける。その後もその話を繰り返す隆耶さんに苦笑いしながら、店が閉店するまで仕事に明け暮れた。

「お疲れ凪。今日もご苦労さん。」

「隆耶さんもお疲れ様でした。」

「じゃ、着替えて飲みにでも行くか?」

「はい。」

明日は2コマ目からだし、隆耶さんは次の日に残るような飲み方はしないので安心して着いて行った。

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