「キミと空とネコと」
やさしいkissをして

やさしいKissをして29

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壁に押さえつけられた背中は無理やり体重を掛けて押さえつけられ痛みが走り、一つでにまとめられた手首はコイツがしていたネクタイで縛られていた。

「お前サラリーマンだろっ。会社にこんな事が知れたら解雇されるぞ。」

コイツのスーツは吊るしなんかじゃなく、高そうなブランドのスーツだった。若いのにこんな値のはりそうなスーツを着てるんだから、高収入だろうと思った。という事はそれなりの会社なんだろうと、酔っている頭で何とか反撃して逃げようと脅す。

「会社に知られる事なんてあるわけないだろ。言ったところで証拠もないのにどうすんだよ。お前オレの会社に行ってオレに襲われましたとでも言うつもりか?」

ますます近寄ってきてキスしようとする。おもわず横に顔を背けたけどそいつは空いている方の手でオレの顎をぐっと持って正面を向かせる。嫌だ、こんな男とキスするなんて嫌だ!!

無理に顔を横に向けると又頬を打たれた。

「おとなしく観念しろよ。痛いの嫌だろ。」

こんな暴力に屈するのは絶対に嫌だ。

「わかったよ。痛いから顎つかんでる手離してくれよ。」

そいつの顔を見て無理やり顔を作って観念したように見せかけるとそいつの手が離れた。

「わかればいいんだよ。オレだって暴力は振るいたくないさ。」

絶対嘘だ。コイツは痛みつけて楽しむタイプだと思う。サディスト。目がそう語っている。オレに手をあげた時、コイツは狂喜を孕んだ目をしたのをオレは見逃さなかった。

「縛ってる手首も離してくれよ。こんなのオレ嫌だ。縛られてたら手をアンタの後に回せないよ。お願いだからさあ。」

「たまんねぇな。いいぜ。オレの後にちゃんと手を回せよ。」

そいつはオレの手首を縛っていたネクタイをほどく。オレの足の間に差し込まれたそいつの足はそのままで、身体も押し付けられているので逃げる事は出来ない。オレはそいつの首に手を回し、そいつが嬉しそうな顔をして油断したのを見計らって、サッカーのヘディングをするようにそいつの顎めがけて頭を突き上げる。

ガゴッと音がしてそいつがオレの身体から離れた瞬間にオレはトイレを何とか出た。

「ぐっ!!いてっ!!チクショー!!」

早くここから逃げないとって思うものの足が上手く出ない。くそっ、掴まったら何されるかわからない。

「てめぇ待て。オレをこけにして済むと思うなよ!!」

そいつはあんまりダメージを受けなかったのか、顎が強いのかすぐにトイレから出てきて後から髪の毛を掴んで来た。

殴られるって思った。何をされるかわからなくて恐怖が込み上げる。

「おい。お前オレのかわいい弟子に何してんだ?ああ?その汚ねぇ手を離せっ!!」

凄みのある低い声が響いた。

人がいるとは思わなかったのだろう。そいつの手が緩んで髪の毛から離れ、オレはバランスを崩して前に崩れそうになり誰かに抱きとめられる。

「隆耶さん…。」

「お前、頬が赤くなってるじゃないか。こいつに殴られたのか?」

「頬をはたかれただけです。」

「お客様、事務所まで来て頂きます。貴方のテーブルでの会話をオーナーが耳にされていました。お客様は何をなさろうとされていたのか店側は把握しております。証拠もテープに残してありますので警察に届ける事も可能ですがどうなされますか?」

滝くんがすっとオレとそいつの間に入ってさえぎってくれた。揉め事があった時にとボイスレコーダーが置かれているらしい。個人情報があるため、保存はしてないのだと滝くんは説明してくれた。見えないところで何かが起きないように念のために置かれているのだけれど、役に立つ事が多いのだそうだ。

そいつは黙ったまま滝くんの傍にいたもう一人のスタッフによってどこかに連れて行かれた。

「凪、大丈夫か?」

オレは隆耶さんに抱きとめられたまま動けないでいた。さっき起こった事は何だったんだ?

「凪さん顔色が悪いですね。少し横になられた方がいいかもしれません。スタッフルームでよければソファーがあるのでそこに行きましょう。」

「ああ、そうだな。凪少し横になった方がいい。」

先導する滝くんの後から、オレは隆耶さんに寄りかかるようにして歩いてスタッフルームのソファーに横になった。

「凪大丈夫か?」

「凪さんお水です。飲んでください。」

「ありがとう。」

コップに注がれた冷たい水を一気に飲み干すとバタンと横になった。頭がまわらない。アイツ、オレが男だってわかってて近づいて来た。オレをそんな目で見る奴がいるなんて思わなかった。

「申し訳ありません。凪さん。嫌な思いをさせてしまいました。ここはそういう類の店ではないと前にもあのお客様には注意していたのですが、後手にまわって凪さんを危険な目に合わせてしまいました。」

「凪、オレも迂闊だった。お前がトイレに行った後で、すぐにアイツが入って行ったのに何かがあるなんて思いもしなくて。お前が帰ってくるのが遅いから中で寝てるのかと思って来て見たらこれだ。」

「いいよ。オレは大丈夫だから。少しビックリしただけ。」

「嘘つけ。怖かったんだろ。少し震えてる。」

「…。」

確かに怖かった。オレより上背のあるガッシリした男に力で敵わなかった。隆耶さんや滝くんが来なかったらどうなっていたのかと思うと震えが大きくなった。

「オレ男なのに、男だってわかってて近づいてきたんだ。アイツ。力で敵わなかった。」

滝くんがソファに横になったオレにタオルケットを掛けてくれる。

「凪、だから言ったろ。いろんな人間がいて姓の対象になるのは男と女とは限らないんだ。男だけど男を好む奴もいて、凪は十分にその対象となり得るんだ。」

「これを機会にと言うのは悪いですが、凪さんももっと危険が自分の身に起こるかもしれない事を自覚した方がいいと思いますよ。今回は何もなかったけれど、次回がないとも言えないし、助けてもらえるとは限らない。」

隆耶さんと滝くんの言葉に納得出来ない自分もいて。それはきっと男に力負けした事を認めたくないんだろうと思う。でも実際に襲われたのだから次回が無いとも限らないって言われた事がズシッとオレにのしかかる。

タオルケットに丸まったままのオレの傍に隆耶さんが座って頭をポンポンしてくれる。

「凪、今日は1人じゃない方がいい。でもオレの家は子供と奥さんいるから気を使わせるしなあ。アキくん連絡つくかなあ。今日は聖夜さんとどこかに行くって言ってたから…。」

オレの頭を優しくなでながら陵耶さんがどこかに電話する。

「あ、アキくんごめんな。こんな夜遅くに。まだ外?今日は家に帰る?あ、そうなんだ。いやいい。大丈夫だから。明日又、仕事場で。ああ。おやすみ。」

「アキくん今日は外泊するらしい。凪は達樹くんの家知ってるのか?電話したら来てくれるかな?」

「知らない。達樹には知られたくないから嫌だ。」

「志希に言ったら訳聞くだろうし大事になりそうだしなあ。あ、凪、黎の家は知ってるのか?」

「知ってるけど。」

「じゃあ、黎の家に泊めてもらえ。黎なら断りはしないだろ。」

「え。黎の家にですか?ダメですよ。黎に迷惑だしオレは1人でも大丈夫だから。」

「ダメだ。オレが凪の事が心配なんだよ。頼むから今日は1人にならないでくれ。アイツがもし凪の後をつけたりしたらとか心配なんだ。万が一の事も考えてくれよ。今日みたいな事が起きないとは限らない事を身を持って経験したろ。」

そうだけど、黎の所へ行くのはやっぱりためらいがある。

「家に帰るのをやめたほうがいいって隆耶さんが言うなら今日はどこかのホテルにでも泊まりますから。」

「凪、生活費は仕送りじゃないだろう。ホテルに泊まる余裕あるのか?それにオレが言ってるのはホテルだったらいいって事じゃなくて、他の人間と一緒にいて欲しいって意味なんだ。黎と過去に何かあった事はわかってるけど、黎との溝を埋めるのにいい機会かもしれないぞ。」

隆耶さんはそう言うと、オレの返事も聞かずに黎に電話を掛けた。


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読んで下さってありがとうございます。
隆耶の取った行動は余計なお世話なんじゃないって思われるかもしれませんが、隆耶なりに凪の事を思っての行動なんです。黎と凪の間にある壁を取り除く事で凪が変われるのではないかと思っている陵耶です。アキは今日は聖夜と外泊ですが、今日起こった出来事は陵耶から全て知らされます。アキも陵耶と同じく凪がかわいくて仕方ないので、それを知っている陵耶はアキに伝えます。もちろん凪に断ってからですけど…。
凪は少し自覚出来たようです。ここから凪の気持ちが変わって行きます。よろしければ明日もお付き合いくださいませ。ご訪問ありがとうございました。


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