キミが思い出になる前に

キミが思い出になる前に~プロローグ~

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ボクは今日この街を離れる。違う学校に転校するんだ。ボクは君の事が大好きだったよ。男だから同性のキミに『好き』だと伝える事は出来ないけど、キミの事が本当に好きだった。

キミは同性のボクから見てもキラキラするほど眩しくて、みんなから愛される人気者だから臆病なボクは同じクラスなのにろくに話す事も出来なかった。ボクときたら男としては小さくて、頭が良いわけでもスポーツが出来るわけでもなくて、人と目を合わすことさえ恥ずかしくて俯いてばかり…。表情を見られないようにとやぼったい眼鏡で隠してる始末。

だからキミは眩しすぎてボクは遠くから見る事しか出来なかった。

ボクが転校してもキミの思い出の中にボクは残らないだろうけど、ボクの中でキミの思い出は残る。殆ど話した事もないから、思い出と言ってもキミの声と表情とくらいだけど…。

あと、次に好きな人が出来るまで、キミを思ってることを許してほしい。誰にもこの気持ちは言わないから…。






「上総(カズサ)学校への挨拶、母さん、一緒に行けなくてごめんね。先生には電話で話しておくけど…。向こうの会社に挨拶に行かなくちゃいけないからこっちを早く出なくちゃいけないの。新幹線の時間わかってるわね。駅で待ち合わせよ。」

「わかってるよ母さん。あっちに着いたら携帯に電話するね。」

ボクの父さんと母さんが離婚した。今まで良く持った方だと思う。お互いに仕事で忙しい毎日。家の事は放りっぱなしの母さんに父さんが愛想をつかしてしまった。そうならないようにとボクは家の事を母さんの代わりにしてたんだけど、父さんは母さんに家に居てほしかったらしい。それは母さんには無理だ。だって母さんは仕事が大好きだから。そんな母さんをボクは嫌いじゃなかった。確かに少し寂しかったけど、大きな仕事をやり遂げた時の母さんの顔を見るのが好きだった。

ボクが男の子しか好きになれない事を悩んでいた時に、ボクの様子が変なのを気付いてくれたのは母さんだ。母さんにそれを相談するのはすごく勇気が入ったけど、母さんは笑うことも、叱る事もなくボクを抱きしめてくれた。『人を愛する気持ちは尊いものだから大切にしなさい。受け入れられることは難しいかもしれないけど愛する事が出来た事を誇りに思いなさい』って言ってくれたんだ。自分は最後まで父さんを愛し抜くことが出来なかったけど…って言った時の母さんの切なそうな顔が忘れられない。父さんには悪いけど、ボクはそんな母さんと一緒にいるって決めた。父さんも以前から言われていた地方への移動を決めてこの場所から離れて行った。だからこの場所にボクのいる所はない。

大人だったらここに残る事も出来たかもしれない。大人じゃなくても大学生くらいなら…。でもボクはまだ14歳。大人の庇護がなければ生活していけない。

キミの事は大好きだけど、サヨナラなんだ。

父さんと母さんの離婚が決まってからたくさん泣いてサヨナラする覚悟は出来てる。キミに伝えるつもりのない恋だから。キミを好きになった事、キミに出会えた事を忘れない。最後にキミの姿を目に焼き付けておこう。



「というわけで転校する事になりました。みなさん仲良くしてくれてありがとうございました。」

最後の挨拶を黒板の前でする。キミと離れるのはやっぱり寂しくて顔を上げる事が出来ないでいた。

「じゃあ、クラス委員の良太が代表として送り出してやれ。」

「はい。これクラスのみんなからの寄せ書き。あっちに行っても頑張れよ。」

思いがけず最後にキミからもらった『頑張れよ』の言葉。

クラスの寄せ書きには影の薄かったボクなのにみんなからたくさんの言葉がぎっしりと書かれていて。きっとキミがいっぱい書くように言ってくれたんだね。このクラスのみんなはキミのおかげで優しくていい人ばっかりだった。ボクをいじめる人は居なかった。

ほんとはキミから離れたくない…。切なさに涙が滲んでくる。

『お前の良い所は人を思いやれる優しい心。荒らされた花壇の花を1人で直してたのをオレは知ってる。でも時には声を大にして我儘を言っても良いと思うぞ。もっと自分に自信を持て。お前なら大丈夫!! 上村 良太』

キミはボクの事をちゃんと見ていてくれたんだね。

切なくて滲んだ涙がうれし涙に変わってこぼれた。

「上村くんありがとう。」

ボクの目からは涙がこぼれてたけど、ちゃんとキミの顔を見て言えた。それだけで十分だ。上村くんは何故か少し驚いた顔してたけどすぐに笑顔になって手を差し出してくれた。

「握手しようぜ。」

その言葉が嬉しくて恥ずかしかったけど手を出すとキミからぎゅって握ってくれた。キミの手はとても温かくてボクの小さな手を包みこんでくれた。すごく良い思い出をありがとう。これでボクは頑張れる。キミと離れても…。

先生とクラスのみんなにもう一度お礼を言ってボクは教室を後にした。涙は止まらなかったけどキミの手の温もりが残ってたから下を向かずに歩けた。

グランドを横切って門に向かう時、クラスのみんなが窓から手を振ってくれたのに気がついたのはキミが大きな声でボクの名前を呼んでくれたから。

「上総っ!!元気でな。いつでも遊びに来いよっ!!」

嬉しくてボクは笑顔で手を振った。遊びに来る事はもうないと思うけど、遊びに来いって言ってくれたキミの言葉が嬉しかったんだ。

ボクが前を向いて歩き出した時、もう涙は止まっていた。キミと過ごせたこの街が好きだった。キミが少しでもボクの事を覚えてくれてたらいいな。

キミの笑顔と言葉をボクの中に閉じ込めておこう。ボクは大丈夫。手の中にはキミがボクにくれた言葉が形になって残ってるから。

自分に自信を持って頑張るよ。

ボクはその日を境にその街から離れた。

♦♫♦・*:..。♦♫♦*゚¨゚゚・*:..。♦♫♦*゚¨゚゚・*:..。♦♫♦*゚¨゚・*:..。♦♫♦*♦♫♦・*:..。♦♫♦*゚¨゚゚・*:..。♦♫♦*゚
読んで下さいましてありがとうございます。今日は『やさしいKissをして』はお休みさせてください。代わりと言ってはなんですが、こちらをUPさせてくださいね。無償に少年物が書きたくなりまして、浮かんだお話です。少年時代から大人に向かっていく姿が書けたらなって思います。純愛が好きなので切なく甘く書きたいのですがどうなりますことやら…。温かく見守って頂けたら幸いです。こちらは不定期更新になりますがよろしくお願いします ペコリ(o_ _)o))


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~ Comment ~

 

あららら・・?

と思いましたが、分かります。
お話って、時々’降って’くるんですよねー。

それに、「書いているのは私なのに!勝手にどっかいかないでー!」
みたいな事をするコもいたり(笑)。


成長記を書きたくなったのは、ひょっとして・・・、kiri様ウイルスに感染??

こちらとしては楽しみが増えるので大歓迎です。


ゆっくり進んでくださいね―。



あ・・、お話。
眼鏡くんは、萌え・があります(うふ)。はずした時なんかのギャップが・・。

主人公くんは健気ですね。でも、イザとなったらどうなるの?



おお、認証が1414・・。いーよいーよ、と言っておりマス。

Re: タイトルなし 

ますみ様☆*⌒o(◕ ◕o)⌒*☆こんちゃ

このお話はずっと前からあったものなのですがそういえばKiri様に感化されたのかも…。中学・高校編とまた読んだからなあ。

こんなお話書きたいって取っ掛かりはよくあるんですけど、書きだすと思ってたものと違う事になるものばかりで…。

『やさしいKissをして』昨日はどうしても書けなくて…。少し怖くなってるのかなあ。まあ、批判が来るのは仕方ないとは思うんだけど、じゃあ読まなきゃいいじゃんって…。それでも書けなくなっちゃうなんてヘタレすぎだとは思うんですが…。

毎日更新してるのを止めるのも負けるような気がして( ⓛฺ m ⓛฺ ) クスッ

『キミ思』をあげちゃいました((´∀`*))ヶラヶラ

『キミ』って響がめちゃ好きなので『キミ空』に続き『キミ思』です(笑)

眼鏡男子は萌え要素ですよねぇ。外した時の潤むような、視線が定まってないようなトコズキュ━━(〃´Å`〃)━━>>ンッです☆

こちらのお話は不定期にさせてください。じゃないとプレッシャーで…((´∀`*))ヶラヶラヘタレですんませんm(*・´ω`・*)m 

認証1414いーよいーよですか(*゚ェ゚*a)゙なんだか嬉しいです☆

ますみ様コメ(✿◕‿◕)ノアリヾ(◕‿◕✿)ガト(✿◕‿◕)σウ♪♡ でした☆
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