キミが思い出になる前に

キミが思い出になる前に1

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この街を離れたのが中学2年の時。あれから3年が経った。

あの時は又ここに来る事が出来るなんて思っても見なかった。街の風景は少し変わったかな。いろんなお店が出来てる。大きなショッピングモールも駅に出来ていてビックリした。変化の無い3年のような気がしたけど実際には変わってきている。

ボクもあの時とは変わった。170㎝まで身長も伸びた。男としては低いかもしれないけど…。それ以降は伸びて無いのでもう無理なのかな。でもここに居た時は155㎝しかなかったんだから伸びた方だと思う。他の男の子のような体格にはなれなかった。食べても鍛えても筋肉が付きにくくて身体の線は細いままだ。これが今の最大のコンプレックス。眼鏡は止めてコンタクトにした。キミが自分に自信を持てって言ってくれたから顔を上げるようにして来たんだ。相変わらず、自分の意見を主張するのは苦手だけど、少しは言えるようになってきたんだよ。

キミの事はこの3年間一日も忘れた事はない。キミ以上に好きな人も今の所いないので、いまだにボクはキミの事が好き。ごめん。許してね。

この街でキミにもう一度出会うことが出来るだろうか?

この街にボクが居られるのは高校を卒業するまで。母さんはイギリスに海外赴任中。卒業したらイギリスへ進学する事を条件にこの街での1人暮らしを認めてもらった。ボクがキミの事を好きな事を母さんは知っている。キミへの思いに決着をつけなさいって1人で先にイギリスに行った母さん。学業がおろそかになったらイギリスへ強制的に連れて行かれるので、キミと一緒にこの街で過ごすために必死で勉強して来たし、これからもしていくつもり。

決着をつけると言ってもキミに告白するつもりは全くない。キミを困らせるだけだし、嫌われたくないから。キミを探してキミの思い出集めをするためにここに来たんだ。そうキミとほんとにサヨナラするために…。

思い出を集めたら忘れなくなるって?いいんだボクは忘れるつもりはないから。ただこれから好きな人が出来るまでに心の支えが欲しい。そのためにキミとの思い出をいっぱい集めたいと思ったんだ。

そんな思いを知った神様がボクに奇跡を与えてくれた。運命なのかと思った。だって編入した高校でキミに会えたから。それも又クラスメイトとして…。その時はほんとにそう思ったんだ。




「静かにしろ。転校生を紹介する。みんな仲良くするように。ハイ。自己紹介して。」

「星野 上総(ホシノ カズサ)です。よろしくお願いします。」

「何だ?それで終りか?まあ、最初だし仕方ないか。おい委員長。星野の事頼んだぞ。クラスになじめるようにしてやってくれ。」

「はい。わかりました。委員長の『上村 良太(カミムラ リョウタ)』です。宜しくな。で、こっちが…。』

「副委員長の『高田 玲奈(タカダ レナ)』です。星野くんって女の子みたいに綺麗だね。」

「玲奈、それって星野に失礼だぞ。男で綺麗なんて言われて喜ぶ奴いないって。」

「だってぇ。綺麗だと思ったんだもん。良太とは大違い。」

「うるせーよっ。」

「はいはい。いちゃつかないで席につけ。出席取るぞ。」

「先生止めてくださいよ。いちゃついてないですから。」

「ええっ。そんなにキッパリ言わなくてもいいじゃない。」

「はいはい。後でジュース奢ってやるから大人しくしてくれ。」

「まあいっか。いつものね。」

「わかってるよ。フルーツオーレだろ。」

2人の会話にボクは口を開く事も出来なかった。

キミに会えたのは嬉しかったけど、女の子が傍に居る事にショックを隠せない。そりゃ高校2年ともなれば彼女がいるのは不思議な事ではないし良太なら引く手あまただろうけど…。

『高田 玲奈』はとても可愛い女の子だった。男ならすぐに目がいくだろう。長くてクルクルと巻いた髪の毛に大きな目。少し厚い唇は見た目は可愛いのにそこだけが色っぽくてギャップに惹かれる。小さくてかわいいのに胸は大きくてスカートから出ている細い足は白くて…。誰からも愛される魅力がある事を本人もわかっている。

女の子と言うだけで男に愛される条件があるのに、その上可愛くて魅力があるなんて…。

ボクの席はキミの斜め後で。でもキミの隣は玲奈がいて…。ボクは窓際なのを良い事に空ばかりを見ていた。2人で仲良く話してるのを見るのは胸が痛かったんだ。



「星野。学校を案内してやるよ。」

「玲奈も一緒に行く。」

「ダメだよ。男は男にしか案内出来ない場所もあるんだ。玲奈がいたら案内出来ないだろ。」

「えーーーっ。良太のケチ。」

「ケチで結構。ほら玲奈の事呼んでるぞ。星野今の内に行くぞ。玲奈がいると落ち着かない。あ、オレの事は『良太』でいいからな。オレもお前の事『カズサ』って呼ぶから。」

キミはボクに気がついてない?影の薄かったボクの事なんか忘れちゃったのかな。両親が離婚して苗字も変わったし…。でも気がつかれない方がいいかもしれない。ボクはキミとサヨナラするためにここに来たのだから。

それから良太はいろんな所を案内してくれた。3年経っても良太は変わってなかった。もちろん外見は少し変わっていたけど…。大人っぽくなったけど、キラキラしているところと優しいところは変わっていない。クラス委員をするくらいだから頭もいいんだろうな。

「良太はクラブ何してるの?」

「オレ?オレはバスケ。」

「そうなんだ。身長高いもんね。何センチあるの?」

「187㎝だったかな。でももう伸びなさ気なんだよ。」

「それだけあったら十分じゃない?ボクが分けてほしいくらいだよ。」

「ははは。分けてやりたいけど無理だ。」

ポンポンと頭を叩かれてそこだけ温度が急上昇する。

「カズサはクラブに入らないのか?」

「うん。高2だし今からじゃ中途半端だしね。前の学校でも入ってなかったんだ。成績落ちないようにしなくちゃいけないから。」

「真面目なんだな。カズサは…。カズサって名前なんか聞いた事があるような気がする。うーーん…。」

ドキッとした。ボクの事を思い出そうとする良太の思考を止めなくちゃいけないと思った。

「駅のショッピングモールって大きいね。本屋とかも大きいの?」

「ああ。大きいぜ。何?本屋に行きたいの?」

「うん。参考書とか見たいなって思って。」

「じゃあ、今度一緒に行こうぜ。ついでに街も案内してやるよ。」

「え?いいの。ありがとう。」

「部活無いときになるから少し先になるかもしんないけどいいか?」

「うん。いいよ。」

そんな風に転校1日目が終る。

ボクは家に帰るとさっそくノートに良太との思い出を綴る。




・良太が『カズサ』って呼んでくれた。

・頭をポンポンしてくれた。

・本屋に行く約束をした。



これからたくさんの思い出を綴れたらいいなと思う。このノートがいっぱいになれば寂しくても大丈夫だと自分に言い聞かせる。

イギリスに行くまであと2年ある。3年生になったらクラスは離れるかもしれないけど、中学生の時と比べれば、良太としゃべってるのだからずいぶんと頑張ってると思う。

ボクは思い出ノートを閉じてベッドに入る。良太の事を思い浮かべながら目を閉じるのはいつもの事なのだけれど。今日からは想像した良太ではなく、本人を思い出して目を閉じれることが嬉しかった。



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~ Comment ~

始まりましたね♪ 

Rin様
キミが思い出に…始まりましたね♪
思い出を綴ってく。。
まだまだ手探りで読んでいる感じです。
どうなっていくのでしょうo(^-^)o

スピッツの歌で、このお話と同じタイトルのものがありましたよね♪
読んでいるとき、頭の片隅で歌が流れます♪

続き、楽しみにしてます!

 

上総くんの思い出ノート、埋まり始めましたね。

昔の面影、あんまり残ってないのかなあ?
それに片思い相手には彼女が!!

最初からハードル高ッ。
それでなくても上総自身の条件キツイのに。

でも、そばに居て、思い出だけ欲しいなんてじっとしてる事、出来ないと思うよ?

Re: 始まりましたね♪ 

Cally様こんばんは☆

返コメが遅くなりましてゴメンネm(;ω;`m)三(m´;ω;)mゴメンネ

こちらは不定期更新になりますが始まりました。Cally様の言われた通り『SPITS』の『きみが思い出になるまでに』を聞いていて浮かんできたお話です。私は『SPITS』が大好きで癒されたい時に聞いています。昔の方が好きかな☆マサムネの声が好きなのです。

これからどうなるのかほあほあ出来る作品になればなあって思っています。見守ってくだされば嬉しい゚.+:。(〃ω〃)゚.+:。 キャァ♪です☆

Cally様コメ(✿◕‿◕)ノアリヾ(◕‿◕✿)ガト(✿◕‿◕)σウ♪♡ ございました☆

Re: タイトルなし 

ますみ様こんばんは☆

カズサは今は良太の傍にいる事で満足している状態です。もともと良太の傍に入れる事も考えてなかったので傍にいれるって舞い上がっています。昔の面影は良く見るとわかるのですが、何せ背は低かったし、前髪長くして顔隠してたし、眼鏡だったし、何より消極的で影の薄い子でしたから。

玲奈は彼女だとカズサは思っていますが…。

これからカズサはどうなっていくのか。今は満足してるけど、やっぱり好きな人の思い出だけなんて無理ですよね。まだそれに気が付かないカズサです。これからカズサがどう変わるのか、良太はいつ気が付くのか、不定期更新ですがよろしくお願いします。定期更新はきっと自分の首をしめるようなものなので(笑)

ますみ様コメありがとうございました☆
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