キミが思い出になる前に

キミが思い出になる前に2

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それからの毎日は忙しく過ぎていった。中学生の時のように良太はボクがクラスに溶け込めるように気を配ってくれたから、転校して間もなくてもクラスから浮く事もなく受け入れられていた。

携帯のアドレス交換もクラスの殆どの人と出来て遊びに誘ってくれる人も出来たけど、遊びに行く時はいつも良太がいてくれた。「委員長だからな」って良太は言ってたけど、正直言えば良太がいてくれるからボクは他の人とも仲良く出来たんだ。かなり高いハードルでも良太となら飛べるような気がしてた。良太は優しいからボクは良太に甘えっぱなしだったね。


「カズサ、オレ明日部活ないんだ。ずいぶんと遅くなっちゃったけど、前に言ってたショッピングモールに2人で行かないか?」

「え?いいの?良太さえ良ければボク行きたいっ!!」

「そっか。そんなに楽しみにしてたのか。ごめんな。遅くなって。」

「ううん。遅くても良太がちゃんと覚えててくれた事が嬉しい。」

「よしよし。じゃ、明日10時に駅の時計台の前で待ち合わせな。」

「うん。10時に駅の時計台の前だね。了解!!」

「じゃあ明日な。」

「良太も部活頑張ってね。」

ボクは良太と明日2人で買い物出来る事が嬉しくてどの服を着て行こうかすごく迷ったりなんかして、すごく浮かれてたんだ。だから罰が当たった。

次の日、10時前に時計台の前で待ってると良太と玲奈が2人でボクの所へ来た。玲奈とはそこで会っただけじゃない事はすぐにわかった。玲奈がすごく可愛かったから。良太と過ごすためにお洒落してきたんだとわかったから…。

「カズサごめん。玲奈がどうしても付いて来るって聞かなくてさ。」

「だって玲奈もちょうど買い物したいと思ってたから。良太に星野くんと買い物に行くって聞いて付いて来ちゃった。星野くん迷惑だった?玲奈も一緒じゃ嫌?」

女の子はずるいと思う。そんな事言われて嫌だって言えるわけないじゃないか。

「ボクは別にいいよ。」

「よかったぁ。ダメって言われたらどうしようかと思っちゃった。」

そう言って玲奈は良太の腕にしがみついて笑顔を見せた。

ボクの胸にモヤモヤした黒い影が巣食う。

「玲奈そんなに引っ付くな。歩きにくい。それに今日はカズサのためにここに来たんだからな。後から来た玲奈はもっと遠慮しろよ。」

「えええっ。玲奈の買い物にも付き合ってくれるんでしょ良太。」

「カズサの買い物が終ってからだ。まずは本屋に行くぞ。」

「…うん。」

「もう待ってよ良太ってばー。」

良太と玲奈は腕組みしてボクの前を歩いて行く。周りから見たらお似合いの2人だ。

「でも今日はボクと約束してたのに…。」

小さな呟きは前の2人には届かない。ボクは2人の後を付いて本屋に行った。

「カズサは参考書探してるんだったっけ?」

「あ、うん。」

「玲奈マンガが見たい。良太も参考書なんていらないでしょ。お兄ちゃんのがたくさんあるって言ってたもん。」

「まあ、家に兄貴の参考書が山ほどあるからこれ以上はいらないかな。」

「じゃ、玲奈に付き合ってね。星野くんは参考書探して来て終ったら良太の携帯に連絡してね。」

ボクの返事も聞かずに玲奈は良太を引っ張っていく。良太はボクに「ごめんな」って口パクで謝ってたけど…。

こんな2人を見るのなら、今日は来なければよかったと後悔した。胸のモヤモヤは大きくなって気持ち悪くなってきた。これ以上あの2人を見ていたくなんかない。

ボクは本屋から出て外へ飛び出した。

どこをどう歩いたのかなんてわからない。ただあの2人から離れたかった。気が付くとボクは良太と出会った中学校に来ていた。門は閉ざされていたけどグランドの見えるところに行くとなつかしい学校が良く見えた。

ここにいた頃は良太としゃべる事も出来ない臆病者だった。前髪を伸ばして顔がわからないようにしてダサい黒縁の眼鏡をかけた小さい男の子だった。それでも良太は他のみんなと変わらずに優しくしてくれた。

今はボクも長かった前髪と黒縁眼鏡を止めて以前よりは社交的になったと思う。それは良太がくれた言葉があったから。そんな良太が好きで忘れられなくて…。でも高校を卒業したらほんとにサヨナラで…。

わかっている事なのにボクの目からは涙が溢れてきて…。

そんな時に携帯が鳴ってあわてて受話のボタンを押してしまった。出なければ良かった。だってそれは良太だったから。本屋を飛び出してからずいぶんと時間が経っていた。心配してくれたんだろうな。

「もしもしカズサ。今どこにいるんだ?」

泣いてたから涙声になってないか不安だったからすぐに声が出ない。

「カズサ?どうした?」

「星野くんどうしたの?」

良太の電話の向こうで玲奈の声が聞こえた。こうして良太と話してても2人じゃないんだって思うとモヤモヤがさらに大きくなる。

「…ごめん…。何か気分悪くなっちゃって…。悪いけどボク家に帰るね。」

「大丈夫なのか?なんか声変だぞ。気分悪いなら送る。」

「いい。一人で帰れる。高田さんを放ったらかしにしちゃダメだよ。女の子なんだから。」

「何?星野くん帰ったの?じゃ、玲奈と遊ぼうよぉ。」

耳に聞こえる玲奈の甘ったるい声を聞きたくなくてボクは電話を切って電源を落とした。涙が後から後から流れてきて嗚咽が止まらない。こんなに良太の事が好きなんだ。

しばらく涙が止まるまでボクはそこにいた。もう秋口なのにボクは薄着で…。寒くなってやっとそこから腰を上げた。

「喉が痛い。早く帰ってお風呂で温まろう。」

ボクは重い身体を引きずって家に帰ると冷えた身体を熱いシャワーで温める。身体は温まっても心は冷たいままでそれはいくらお湯に浸かっても冷たいままだった。

お風呂から上がって携帯の電源を落としたままだったのに気が付いて電源を入れる。

良太からの着信とメール。それに母さんからも着信があった。

取り合えず母さんにに連絡しないと。今イギリスはサマータイムだから朝か。大丈夫かな?

「もしもし母さん?カズサだけど電話くれた?」

「もうカズサってば電話に出てくれないから心配したじゃない。何?アナタ風邪引いてるでしょ。声が変だもの。だから電話に出れなかったの?」

「そういうわけじゃないよ。風邪といっても熱ないし、軽いから大丈夫だよ。心配しないで。」

「心配しないわけないでしょ。母親なんだから。あーもうだから1人で残して行くのが嫌だったのよ。すぐに帰れないんだもの。」

「母さん帰って来なくていいからね。イギリスに行ってからボクの事を心配しすぎだよ。母さんがちゃんと仕事してるかボクの方が心配になるよ。」

「ちゃんと仕事してるわよ。ああ。ごめんカズサ。母さん仕事に行く時間だわ。」

「母さん、頑張り過ぎないでね。ちゃんとご飯食べてね。」

「わかってるわ。カズサの作ったご飯が食べたいわー。そのうち休暇が取れたらそっちに行くわね。」

「うん。待ってる。じゃあ仕事頑張ってね。」

「ありがとう。カズサは早く寝なさいよ。熱が出たらなかなか引かないんだから。病院にもちゃんと行くのよ。じゃあね。愛してるわカズサ。」

「ボクも母さんが大好きだよ。またね。」

イギリスと日本と分かれてから母さんはマメに連絡をくれる。母さんも寂しいのかな?

良太からメールが来てたんだとメールを開く。

『カズサ今日はほんとにごめんな。大丈夫か?』

『カズサ、やっぱ心配だからメールしてくれ。』

『カズサしんどくて寝てるのか?』

どれもボクを心配してくれるメールだった。ほんとに良太は優しい。


『せっかく今日はさそってくれたのに心配かけてごめん。もう大丈夫だから。ありがとう。』

メールを送信して、喉が酷く痛くなって来ているのを感じる。これは熱が出る前兆だ。いつも熱が出る時は喉が痛くなり、熱が出てしまうと下がるのに時間がかかる。薬が効き難いからなのか昔からそうなのだ。

「あ、ヤバイ感じ。薬飲んで寝なくちゃ。」

空腹感は感じない。今日は何も口にしていなかったのに、良太と玲奈の様子がチラついて食べる気がしないのだ。

ゼリー飲料で薬を流し込むとそのまま布団に入った。今日は思い出ノートを書く気にもならずにそのまま目を閉じる。いつまでも良太と玲奈の姿がチラついて眠れず、布団から出ると処方してもらってる睡眠薬を飲んで布団に横になる。モヤモヤした黒い気持ちをひきずってたけど、薬のおかげでいつの間にか眠りに落ちていた。


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~ Comment ~

 

早くも暗雲。

女の子ってそーゆとこ敏感だし、グサグサしてくるもんね。
ま、良太がずっと上総にくっつているから「怪しい」って思ったのかな?

明日、無理したら大変なんだけど、何かやっちゃいそうだね上総(とっても期待・・?)。


良太が参考書持ってお宅訪問してくれたり?

Re: タイトルなし 

ますみ様こんばんは☆

やっぱり女の子は計算してますからねー。ましてや自分を可愛いと思ってる玲奈なんて自分の思うようになると思ってますから…。良太がカズサに優しくするとその分自分が相手にされないからプライドがゆるせないんでしょうねぇ。

カズサは最初から諦めて思い出を作ろうとしてるけど、良太と過ごす時間は自分の思いを募らせるだけなのに気が付いてないんだよねー。

次の日ですか?そりゃ、萌えですわよ。ええ、私なりの萌えですけど、このシチュははずせないっしょ(。◠‿◠。✿)ぅんぅんお楽しみにしてくだされ☆

ますみ様コメありがとうございました☆
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