キミが思い出になる前に

キミが思い出になる前に3

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良太と玲奈が引っ付いてボクを見ている。

玲奈は勝ち誇ったかのようにボクを見下ろしこれ見よがしに良太に抱きついている。

「ヤメテ…。どうしてそんな目で見るの?」

「どうして?どうしてって星野くんが聞くの?良太はアナタなんか相手にしないわよ。だって星野くんは男の子でしょ。男の子なのに良太を好きだなんておかしいもの。良太だって嫌だって言ってるわよ。ね。良太。」

良太はボクを一瞥しただけで玲奈を連れて去って行く。

「もうカズサの友達やめる。オレに近づかないで。」

顔も見ずに掛けられた言葉は冷たいものでもう2度と良太の傍に入れない事を知った。胸に去来したものが『絶望』だとわかってボクは声をあげて泣いていた。

こんなつもりでこの街に戻ってきたんじゃない。ボクは良太との思い出が欲しかっただけなんだ。

こんなに大きな声で泣けるのかって位の声で泣いてその声で目が覚めた。

「夢…?夢だったのか…。」

嫌な汗をかいていて、全身が濡れて気持ちが悪い。案の定熱が出ているようだ。

昨日は殆ど飲み物でさえ摂っていない。よろける身体を引きずって冷蔵庫まで行き水を流し込むけど、ムセてしまった。飲み込むのが辛い。喉が腫れているのだろう。

そのままソファーに身体を沈みこませた。

「学校に行けないな。電話しなきゃ…。」

掠れた声しか出ない。それでも無断で休むのは気が引けて風邪で休む事を伝える。

汗をかいて身体が冷えて来ているのに気が付いて軽くシャワーを浴びて着替える。

「湯船で温まった方が良かったかも…。」

汗をかいた気持ち悪さは消えたけど、身体がゾクゾクと寒気を帯びている。温かいものが飲みたかったけど、温める気力もなく、ゼリー飲料を口にして市販の風邪薬を飲むけど、気休めでしかない事はわかってる。でもこの調子じゃ病院に行く事もムリだと判断した。こういう時に1人暮らしはしんどいんだと思う。

母さんにバレたら「やっぱり放っておけない」ってすぐにイギリスに連れて行かれそうだから早く治さないといけない。

重い身体を引きずって布団に潜り込むけど、シーツが湿っているような気がして不快さが増す。

「良太に心配かけちゃうな…。」

そう思いながら寒くて自分の身体を抱くようにして丸まり目を閉じる。目を開けている事さえ億劫になっていたんだ。

いつの間にか眠っていたらしい事に気が付く。4,5時間ほど眠っていたのかな。

眠った事で少し身体が楽になっている。それでも身体の関節が痛くて…。夕方なら病院に行けるかな…。

ふと、枕元に置いていた携帯が着信が合った事を告げている。

携帯を開けると良太からの着信が1時間ごとにあった。きっと授業の合間にかけてくれたんだと思う。やっぱろ心配をかけてしまった事に凹みながらも自分の事を考えてくれた事が嬉しかった。

もう授業は終ったかな。良太は今から部活の時間だと思いをはせた時に携帯が着信を知らせる。

着信の主はやっぱり良太で嬉しくてぎゅっと携帯を握りしめて出るのが遅くなってしまう。

「ああ、やっと出た。カズサ大丈夫なのか?風邪で休むなんてやっぱり昨日ちゃんとカズサを送るべきだったし、様子を見に行けば良かった。」

良太の言葉がじんわりと胸の奥を温めてくれる。

「カズサ?しんどいのか?」

「ううん。大丈夫。ごめんね。今まで寝てたみたいで電話に気が付かなくて。」

「声掠れてる。熱は?」

「ん。朝よりマシだと思うよ。大丈夫だから良太は部活の時間でしょ。」

「部活なんかよりカズサの方が大事だろ。カズサの家どこか教えて。」

良太は優しいから昨日の事を自分のせいだと思ってるんだろうな。

「大丈夫なのに…。」

「いいから。オレがカズサを見て安心したいんだ。」

ただ心配してくれてるだけなのに自惚れそうになる。ダメだよ。良太はボクを心配してるだけなんだから…。

自分に言い聞かせてる。

「カズサ?」

少し間が空いたから心配そうな声にあわてて住所を教える。

「なんか欲しいものあるか?」

「何でもいいからアイス食べたい。後、スポーツドリンクが欲しい。」

「わかった。すぐ行くからカズサは寝とけよ。」

「うん。ありがとう。」

電話を切るとぼーーーっとベッドに座りこんでいた。良太が家に来てくれる。

良太が家に来るんだ。散らかしてないよね。何も変なものないよね。サイドテーブルに出しっぱなしの『思い出ノート』に気が付いて良太との思い出の缶にしまう。危ないところだった。まだ数ページしか埋まってないけど見られたらお終いだ。気が付いてよかった。

ふっと力が抜けて布団に横になる。やっぱり湿気てるのが気になった。気になるとそこばっかりに気が行く。

「やっぱりシーツ換えよう。」

布団から出ると何も食べてない事もあってふらついて座りこんでしまった。軽い眩暈がして布団に突っ伏した。少し揺れてる感覚がマシになった時に玄関のチャイムが鳴る。

良太が来たんだ。玄関の鍵を開けないと…。

立って歩けなくて這うように玄関に行く。外から「カズサ?」と呼ぶ声が聞こえて壁伝いに立ち上がり鍵を開けるとドアが開いてバランスを崩して良太に倒れこんでしまった。

「ごめ…。」

「カズサすごい熱!!」

良太にもたれかかるようにして家の中に入る。良太はボクをソファーに座らせてくれた。

「カズサの家の人は?」

「ボクは1人暮らしだからいない。」

「1人でいたのか。こんなになってるのに。」

良太の顔がクシャリと歪む。

「大丈夫だよ。ボクは熱が出るといつもこうなんだ。」

「ベッドはどこ?」

「あっち」寝室の場所を指差すと良太はボクを抱き抱えて連れて行く。

「ぅわっ。抱き抱えなくても…。」

「カズサは歩けないだろ。それに軽すぎる。ちゃんと食べてるのか?」

「食べてるよ。」

「昨日は?」

「…ゼリー飲料…。」

「今日は?」

「…ゼリー飲料…。」

「それは食べてるとは言わないだろ。」

そして寝室に入ると良太の動きが止まった。

「カズサ?何しようとしてたの?何でシーツが中途半端にめくれてるの?」

「あ、シーツが汗で湿気てて気持ち悪くて換えようと思って…。」

「バカじゃいないのか?そんな身体で出来るわけないだろ。ちょっとおろすよ。」

良太はボクを下に座らせると掛け布団を身体に巻きつける。そして中途半端にめくれたシーツを新しいものと換えてからボクをベッドに運んでくれた。

「病院行かないとダメだな。タクシー呼ぶから一緒に行こう。」

「うん。」

良太が着いて来てくれるなら安心だ。

「タクシーくるまで寝とけよ。オレ、買ってきたもの冷蔵庫に入れてくるわ。」

良太を目で追ってしまう。それに気が付いたのか良太はすぐに戻ってきた。

「心細いよな。ちゃんと傍にいるから大丈夫だ。少し寝ろ。夕方の診療の終り頃に行けばいいだろ。それなら少し眠れる。」

ベッドに腰掛けてボクの頭をポンポンと叩いて安心させてくれる。

熱にうなされている今なら甘えても大丈夫かな。熱のせいだと思ってくれるかな?

「良太。傍にいてね。」

「ああ。」

良太にタクシーが来たと起こされるまでボクはそのまま眠りに落ちた。





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弱っている時って縋ってしまいますよね。
で、頼られるって・・・、嬉しい。

良太が上総のプライベートに入りこんできた!!次は上総がお宅訪問とか?

上総に頼られてオトコマエ度が上がってる?
少しの間、二人の世界だ~~。



Re: タイトルなし 

鍵コメ様(。◕‿◕。)♥おはよ~♥(。◕‿◕。)ございます。

お返事が遅くなってごめんなさい。

『切なくて楽しみにしています』のお言葉とても嬉しかったです。不定期更新ですが、よければ又お寄り下さいませ。あと、ご指摘ありがとうございました。何やってんだかねぇ(笑)ちゃんと消しました( ̄m ̄〃)ぷぷっ!ありがとうございました☆

Re: タイトルなし 

ますみ様:✲:゚・✿ヾ╲(。◕‿◕。)╱✿・゚:✲:おはよぉ~♬♫♬ございます☆

そうそう弱ってる時って誰かに縋り付きたくなるぅ。んで好きな人なら尚更嬉しいよねぇ~~~!!病気のシチュって萌えポイントだと思います。カズサになりきって書いてますもん。良太がこうしてくれたら嬉しいってカズサが思う事を書いてます(゚m゚*)プッ

良太も嬉しいのかな?頼られると…。カズサの事を放っておけないって頑張ってます。それがますますカズサの恋心を高めてしまってるのですが…。

2人だけの時間はカズサにとっての宝物。ちゃんと覚えておいてノートに書かなくちゃって思ってるのですが熱で朦朧としてるのでどこまで覚えてるのかちょっと不安なカズサなのです。

ますみ様コメありがとうございました☆
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