キミが思い出になる前に

キミが思い出になる前に4

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ベッドの中で布団にくるまって寝てたけど、夢うつつの中で何度も優しい手がボクの頭をなでたり、額に手をかざしているのを感じていた。布団の中でそれを少しくすぐったいような気持ちで嬉しく思っていたのは確かで…。その時のボクは微笑んでいたのかもしれない。好きな人と2人で過ごせる時間は幸せで、身体は辛かったけど、そんな事より心が満たされていた。昨日感じてた黒いモヤモヤはすっかり無くなっていて単純だなって自分でも思っていた。

「カズサ。カズサ起きれるか?そろそろ病院に行かないと診察が終っちゃうから、しんどいと思うけど起きて。」

「…ん。起きるよ。」

もぞもぞと布団から身体を起こすと良太が心配そうにボクを見ていた。

「大丈夫か?まだ顔が赤いし身体が熱いな。」

「ん。しんどい…。」

つい良太に甘えてしまう。こんな時だけだから…許してね良太。

「タクシーもう来るから上になんか羽織って。汗かいてたら着替えないと…。」

「ん…。」

「適当に服クローゼットから出すよ。」

良太はチェストとクローゼットからTシャツと綿パンとカーディガンを出してくれた。汗を拭いて服に着替える間、良太は隣の部屋に居てくれたけど、着替えるのに手間取った。うまく身体が動かないし痛い。指に力も入らず何度も服を落とした。

「カズサ大丈夫なのか?もうタクシー来てるぞ。」

「…う…ごめ…。」

焦れば焦るほどうまく着替えられなくてズボンをはこうとしてベッドから落ちて大きな音がして良太が飛び込んできた。

「カズサ大丈夫か?」

中途半端に上げられたズボンにうまく着替えられないのに気が付いた良太が着替えさせてくれる。ボクは恥ずかしくて真っ赤になったけど、良太は気にする事もなく着替えさせる。意識しているボクの方がおかしいんだ。

バッグに保険証と財布と携帯、ハンカチ、ティッシュと全部良太が用意してくれた。

「カズサおぶされ。」

「え?悪いしいいよ。支えてくれたらボク歩けるから。」

「無理するな。それにオレがおぶったほうが早い。」

でも…と遠慮するボクを仕方がないなと有無を言わさずにおぶってさっさと歩き出す。

「あ、家の鍵…。」

「どこ?」

「玄関のシューズボックスの上。」

「こんなところに鍵置いてたらダメだ。防犯上よくないだろ。ましてや1人暮らしなんだから。」

「はい…。ごめんなさい。」

「ああ、わりぃ。こんな時に言わなくてもいいよな。カズサごめんな。」

「ううん。心配してくれたんだもん。嬉しいよ。ありがと良太。」

心配して言ってくれた事をノートに書いておかなくちゃ。覚えてられるかな?

タクシーに乗り込み病院までの間良太にもたれかかっていた。身体が支えてられずに良太の方へ傾く身体をその度に戻してたら「もたれとけ」って頭をぐいってもたれさせくれたんだ。

病院での診察室でも丸いイスに座ると身体が支えてられなくて後にこけそうになってボクの後で良太が支えてくれた。良太の手はどこまでも温かくて…。

「うーーーん。熱が高いね。脱水も起こし掛けてる。昨日と今日で何か口にした?」

「ゼリー飲料を…。」

「は?それだけ?ご両親は何してたの?」

「親は関係ありません。1人暮らしなので…。」

「そうか。すまないね。ご両親を責めるような言葉だった。」

「いいえ。」

「今日は点滴しておこう。熱は少し続くかもしれない。解熱剤は出しとくけど。何か他に飲んでる薬ある?」

「睡眠薬とか精神薬を少し…。」

「何を服用してるかわかるかな?」

良太にはあまり見られたくないけど仕方がない。

「ノリトレン、コンスタン、ジェイゾロフト、デパケン、ハルシオン、ロヒブノールか…。いつも飲んでるの?」

「いつもというわけでは…。眠れない時とか落ち込んだ時とか不安定な時に…。」

「胃に負担をかけないように胃薬も出しとくけど…。」

「先生、ボク粉薬のめないんで錠剤にして欲しいんです。ムコスタは効かないのでセルベールにして下さい。」

「キミ色々と薬を飲み過ぎるんじゃないかな?依存しないように気をつけないとダメだよ。」

「はい…。」

その後別の部屋で点滴をしてもらう。そばに良太はいてくれたけど、何か考えてるようで話かけれなかった。

「カズサ…。聞いてもいいか?」

「何?」

「カズサの飲んでる薬って睡眠薬と精神薬って…。」

「引くよね…。良太には知られたくなかったな。」

「引かないよ。だけどどうしてあんな薬を飲んでるのかわからなくて…。」

「…ボクは昔、自分を出すのが苦手で相手の反応を見てすごく精神が不安定になっちゃって眠れない事が続いた事があって…。眠れないとどんどん悪い方へと考える事しか出来なくなって行くから…。始めは内科で薬をもらい出したんだけど、効かなくて心療内科に通院しだしたんだ。もう昔ほど薬は飲んでないけど、時々不安になって眠れない時に飲んでる。向こうでお世話になってた先生にこの街の病院も紹介してもらってて薬がなくなりそうになると通院してる。」

「そうだったのか。カズサそんな事を表に出さないからわからなかった。」

「ボクって弱すぎだよね。ごめんね。良太に迷惑ばかり掛けて。」

「迷惑だなんて思ってない。友達だろ。」

『友達』という言葉にツキンと痛みが走る。

「カズサ、カズサさえよければ治るまでオレが一緒にあの部屋に居てもいいか?」

突然の良太の申し出に嬉しくなったけど申し訳無くてうんと言えない。

「ダメだよ。風邪がうつるかもしれないし、病院に連れてきてもらったからもう大丈夫だよ。」

「だって先生、明日も点滴しに来いって言ってただろ。」

「明日はもっと元気になってるから一人でも来れるよ。」

「ダメだ。オレが安心出来ない。風邪はうつるならもううつってるだろうし、カズサは放っておくと病院に行かないかもしれないし、何より何も食べなさそうだ。水分も足りてないし。という事でオレがカズサの家に行く事は決定しました。反対はなし。な、カズサ。そうしてくれ。」

良太にそこまで言われて断れるはずはない。何より良太と一緒に過ごしたいのはボクの方なんだから…。

「ありがとう。じゃお願いします。」

「よし、じゃ帰り1度オレの家に寄ってくれる?荷物とか着替えとか取りに行かないと。あ、母さんに電話してくるな」

良太は外に出て家に電話しに行った。

良太と一緒に過ごせる。2人だけで…。そう思うと昨日はさんざんだったけど、そのおかげで一緒に過ごせるんだから玲奈に感謝しないといけないなって思った。でも良太を独り占めしてるってすごい怒りそうな気がする。

玲奈はこれからも良太の隣にいられるのだから少しくらい傍にいさせて欲しいと思う。それだけでいいから…。


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Re: 初コメです 

鍵コメA様こんばんは☆

初コメ嬉しいっ☆ルン♬♫♥(๑◕ܫ◕๑)♬♫ルンありがとうございます!!めちゃめちゃ嬉しいです。うんテンションe-29e-29です☆

おまけにキャラを好きになってくれてe-266『キミ空』シリーズを読み返して下さってありがとうe-265

『キミ思』も読み返してもらえる作品になるように頑張りますe-271ちなみに明日も12時に更新します。後は不定期でごめんなさい。出来るだけUP出来るようにしますねe-282

鍵コメA様コメほんとにアリガトウ✾“ヽ(。◕‿◕。)ノ”ゴザイマシタ☆
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