キミが思い出になる前に
キミが思い出になる前に5
病院での診察を終え、薬をもらってタクシーに乗り込み良太の家に行く。良太が荷物を取りに行っている間、ボクはタクシーの後部座席で横になりながら良太の家を見ていた。窓から漏れる明かりが温かそうで、明るい笑い声が聞こえる様だった。
良太は両親と兄と妹の5人家族。とても仲が良いらしい。そんな中で育ってきたんだから良太が優しいのは当たり前なのかもしれない。
「カズサ待たせてごめんな。大丈夫か?母さんが荷造りしててくれた。さ、帰ろう。」
帰ろうって言ってくれたのが嬉しかった。ボクの家に良太と一緒に帰る…こんな事もうないだろうな…。嬉しいけどちょっと悲しくて涙がこぼれたのを良太に気がつかれないように袖で拭った。
「着くまで寝とけよ。オレの肩にもたれてさ。」
「ん。ありがと。」
良太の肩は温かくて気持ちよくて離れたくないなんて思ってしまった。しっかりしろボク。
マンションに着いて良太に肩を貸してもらいながら部屋に着くと玄関で座りこんでしまう。かなり体力が落ちてるのはここ2日食べてないからだろうな。
「カズサ何か食べような。お粥かうどんかどっちがいい?」
「良太が作るの?」
「材料は持って来てる。母さんが持っていけって用意してくれてたんだ。」
「じゃあうどんがいい。」
「それじゃ、出来るまでカズサは寝とこうな。」
玄関で動けないボクをさっと横抱きにして寝室に連れて行く良太に見惚れてた。
「ん?どうしたカズサ。顔赤いな。熱があるから仕方ないか。」
良太が前触れもなくおでことおでこを引っ付ける。
ああ、良太ってほんとに整った顔してる。男の子から男へと移り変わっていく時期なんだ。中学の時とは違う良太の力強さにトクンって心臓がなる。そんなボクの様子には気が付かないで布団におろすとパジャマを渡してくれた。
「1人で着替えられる?楽な格好しといたほうがいい。もし着替えられなかったら呼んで。ごはん作ってくるから。」
パタンとドアを閉めて良太が出ていくと横抱きにされて良太に掴まれていたところを触ってみる。そこだけほのかに温かいような気がして布団の上で自分の身体を抱きしめた。
何とかパジャマに着替えて布団に寝転がった。今なら思い出ノート書ける。忘れないうちに書いておかないと…。
・心配して家まで来てくれた
・アイスとスポーツドリンク買って来てくれた
・シーツ交換してくれた
・寝室まで運んでくれた
・着替えを手伝ってくれた
・タクシーを呼んでくれた
・タクシーが来るまで傍にいてくれた
・タクシーの中で肩を貸してくれた
・頭をなでてくれた
・おんぶしてくれた
・鍵を玄関に置くなって叱ってくれた
・診察中身体を支えてくれた
・ボクの心配をして家に泊まってくれると言ってくれた。
・うどんを作ってくれた
こんなものかな?思いだせるものは書いたつもりだけど…。でも昨日と今日ですごく増えたな。すごく嬉しくて顔がにやけてしまう。ダメだ。こんな事してたら良太に見られてしまう。早くしまわなくっちゃ。
ボクがあわててノートをしまって横になった時にタイミングよく良太が声を掛けてきた。
「カズサ?起きてる?うどん出来たよ。食べれるかな?」
「うん。良太ボク食べるよ。良太がせっかく作ってくれたんだもん。嬉しい。」
「そうか。じゃ一緒に食べようか。ベッドの上じゃ食べれないな。あっち行ける?」
「うん。行くよ。」
「じゃ、ちゃんと上に何か羽織れよ。」
そう言って良太はボクにさっき着ていたカーディガンをかけてくれた。リビングに行く時も横抱きにされたんだけど、ボクの息が良太の首筋にかかっちゃって…。
「カズサ、息が熱いなあ。ご飯食べたら薬飲もうな。これで熱が下がればいいんだけど…。」
「心配症だな。良太は。」
「カズサ、自分の事なんだぞ。」
「はい。ごめんなさい。」
シュンとしてしまったボクの頭を良太がポンポンと叩いてくれる。
「冷めちゃうから食べようか。カズサ座ってられる?」
ボクを座らせてから横とかにクッションをかまして楽な姿勢にしてくれる。母さんみたいだ。とは間違っても言わないけど…。
「ありがと良太。」
「じゃ食べようか。簡単でごめんな。オレ料理とかしないから。母さんに急いでレシピ?ての?書いてもらったんだ。野菜は母さんが前もって切っててくれたからオレは入れて分量通りに調味料を入れただけ。ていうかさあ、カズサのキッチン分量計とか調味料とかちゃんと合ってビックリした。」
「ボク自炊してるから。料理作るのは好きなんだ。でも今は1人だからたいしたものは作って無いけど。」
「じゃあさ、カズサが元気になったらオレにご飯作ってくれよ。」
「いいよ。そんな事でよければ何時でも作るよ。その代わり一緒に食べてね。」
「当たり前じゃん!!1人で食べたっておいしくないだろ。」
会話しながらの食事なんてどれくらいぶりなんだろう。ボクの涙腺は病気で脆くなってるのかな。涙がまた出てきた。
「あはっ。ごめん。誰かと食事するのなんて久し振りで…嬉しくて…。」
「カズサ…。泣くなよ。オレが食べに来てやるから。なっ。」
「無理しなくていいよ。でもありがと。良太の都合のいい時にね。いつもなんて約束したらしんどくなるから、来れる時だけでいいからね。」
「わかった。でも無理なんてしてないからな。カズサといるのオレ案外好きなんだよ。何でだろうな。安心するっつうか、安らぐっつうか。」
ボクと居るのが好きってそれってすごい言葉だ。胸を打ち抜かれてしまうよ。良太は友達の意味で言ってるのはわかってるのに、それでもドキドキがとまらない。うどんがちっとも喉を通らないよ。
「ん?おいしくないかやっぱり…。」
「違うよ。なんだか胸がいっぱいになっちゃって…。こんなボクでも良太が一緒にいるのが好きだなんていってもらえた事が嬉しくて…。」
「こんなボクって何だよ。カズサは優しいし、料理は出来るし、うちの高校の編入試験って難しいのに編入出来たんだから頭だっていいんだろうし、綺麗な顔してるしってこれは関係ないか。とにかくオレだって認めてるんだからこんななんて卑下するような事言うな。わかったか。」
「うん。ありがとう。」
でも『こんなボク』なのはずっと変わらないんだ。今だって中学の時とボクは変わらない…。
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たとえこの世の終りが来ようとも

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