キミが思い出になる前に

キミが思い出になる前に6

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中学生だった時のボクと今のボク。外見は違うけど、中身はやっぱりその時のままで…。転校する時に良太がくれた言葉を胸になんとか俯かずに人と話せる様にはなったし、少し自分を主張出来るようにもなった。だけど自信が無くなれば昔の自分に戻る事もしばしばで…。そんな自分が嫌になって精神が不安定になることも多かった。良太の言葉にふさわしい自分になろうと無理してたせいもあるだろう。

今は病院の先生と話すことで自分に無理の無いように少しずつ変わろうと思えるようになった。あの頃は早く変わろうと必死になっていたんだと思う。夜、薬を飲んで眠れるようになってから不思議と心が落ち着き、自分を受け入れながら毎日を過ごせるようになったんだ。眠るって人間にとって大切なことなんだなーって思った。

今は傍に良太がいることで安定してる。そりゃ、好きな人が傍に居る事でドキッとしたり、玲奈にヤキモチを焼いて見たりって事はあるけど、前みたいに不安定になる事はなくなったんだ。だから薬を飲むのも減っているし、毎日が何かと楽しい。ほんとに良太は精神安定薬だと思う。

ぼーーっとそんな事を考えて、うどんを食べる手が止まっていた。

「カズサやっぱりしんどいよな。ぼーーっとしてるし…。ほんとならもう少し食べて欲しいと思うけど、2日殆ど食べてないからやっぱりお粥の方が良かったかな。」

良太が心配そうにボクの顔を覗きこんで目がバチッと合って心臓がドキンと跳ねた。

「あっ。ごめん。なんかぼーーーっとしてた。もう少し食べる。」

「そっか。でも無理すんなよ。」

ボクがぼーーっとしてる間に良太は全部食べ終えていて、ボクが食べるのを頬杖ついて嬉しそうに見ている。

「そ、そんなに見られてたら食べられないよ。」

恥ずかしくなってそう言うと良太はごめんって自分が食べたものをキッチンに持って行く。その姿に少しほっとして残りのうどんを食べた。

「ごちそうさまでした。」

手を合わせて言うと良太が薬と水を持って来てくれる。

「はい。薬ちゃんと飲んで。」

「ありがとう。」

良太はボクがちゃんと薬を飲むのを確認してからボクの食べたものをキッチンへ運んで行く。

「カズサは今日は風呂はダメだぞ。もうそろそろ寝ねくちゃな。」

もっと良太と話してたいけど、そもそも良太はボクの看病のために来てくれているのでそんな事は言えずコクンと頷く。

「カズサ、オレ風呂に入りたいんだけど借りてもいいか?」

「もちろんだよ。使い方わかるかな?」

「大丈夫だろ。適当に使わせてもらうよ。タオルも持ってきてるし。」

「用意万端だね。タオルくらい家の使えばいいのに…。」

「ま、そうだけどさ。明日もカズサの熱が下がらなかったら泊りになるから、そん時に借りるよ。」

え?明日熱が下がらなかったら明日も泊ってくれるの?そう思ったけど口に出来ずにあいまいに笑う。口にしたらどんどん良太に甘えてしまいそうな気がする。

そんなボクには気がつかないのか洗い物を始めた良太をボクはじっと見ていた。

「あ、カズサ。食後のデザートにアイス食う?食べたいって言ってただろ。」

「あ、うん。」

洗い物を終えて冷蔵庫からアイスを出してくる。

「てか、良太どんだけ買ってきてるの?」

出して来てくれたコンビニの袋の中は全種類買って来たんじゃないかと言うほどのアイスが入っていた。

「だって、何味がいいのかとか、アイスクリームがいいのかアイスキャンデーがいいのかわからなかったし、オレも食べたかったからいいんだよ。」

少し拗ねたように言う良太が可愛く見える。

「ふふっ。でも嬉しい。どれにしようかなあ?」

さんざん迷ってボクはシャーベット系のアイスを選んだ。

「オレはこれーーっ!!」

良太はチョコレートとナッツでたっぷりコーティングされたアイスを選ぶ。良太が好みそうななアイスだと思ってて当たったのが内心嬉しかった。今度からあのアイスを冷蔵庫に常駐させておこう。何時良太が来てもいいように。それを見れば良太の事を考えられるし、食べれば良太が食べてた事を思い出すしいい事だらけだと思った。そうだ、思い出ノートに良太の好きなものも書きこんでおこう。うん、いい考えだ。

「カズサまたぼーーーっとして。アイス溶けてんぞ。」

「あ、ほんとだ。」

溶けかけのアイスに苦笑いする。カップのアイスにしといて良かった。溶けてもカップの中だから汚れる事はないもんね。

「じゃ、カズサ。アイスも食べたしお前は横になれ。オレ風呂入って来る。」

「うん。そうする。」

「オレ今日このソファー借りて寝てもいいか?」

ほんとは一緒の部屋で寝たいけど、風邪移してもいけないし無理は言えない。甘えちゃいけない。

「うん。いいけど。布団は寝室にあるから、それ使って。あ、それにこのソファーベッドになるからベッドにして使ってね。」

「そうなんだ。予備の布団があったり…。」

「母さんが来る事があるからその時のために買ってあるんだよ。」

「そっか。じゃ遠慮なく借りる。じゃ、カズサはベッドに行こうな。歩ける?」

「肩貸してくれる?」

「肩でいいのか?さっきみたいに抱っこしてやろうか?」

「いいよっ。肩でいい。」

思い出したら恥ずかしくて顔から火が出そうだ。その後は良太の肩を借りてベッドに横になり、良太はお風呂に入りに行った。

布団に入ったからってすぐに眠れるわけじゃない。大好きな良太と過ごせる時間なんだもの。でも寝ないと治らないし、良太に迷惑がかかる。そう思いながら布団の上をゴロゴロする。自分の家に自分以外の人がいるだけでいつもより温かく、柔らかい雰囲気がする。母さんといるのとは違う雰囲気。

そんな事を考えてたら良太が頭をゴシゴシと拭きながら入ってきた。わぁ、風呂上りの良太だ。それもズボンははいてるものの、上半身は裸で…。

中学生の時も体育の授業で着替える時や水泳の時に見ていたのに、その時とは体つきが全然違う。バスケをしてるためもあるんだろうけど、分厚くなった胸や肩、上腕の筋肉や腹筋、あの頃とは違う大人の身体付きになっている良太に見惚れてしまう。

「カズサどうした?しんどいのか?」

良太の目が自分を見ているのに気が付いて視線が上へと上がる。

「ううん。良太はいいなあって思った。しっかり筋肉ついてて男らしいなあって。ボクは筋肉が付きにくいみたいでダメなんだ。」

「何でそう思うんだ?いいじゃんカズサはカズサで。オレは今のままで十分カズサらしくていいと思う。筋肉がついてればいいってもんじゃないだろ。バランス取れてなくちゃな。」

「んーー。何かあんまりフォローになってないよ。良太。」

「そっか?まあ気にすんな。オレは今のままのカズサが好きだぞ。」

あんまり嬉しくなるような事を言わないで欲しい。良太は友達として好きって言ってくれてるんだってわかってても勘違いしそうになる。切なくてキュンと胸が痛くなる。

「ありがとう。良太。」

「オレがいたら休めないな。カズサ何かあったら遠慮せずに呼べよ。」

「うん。良太はまだ眠くないでしょ。あっちでTV見てても構わないし好きなように使ってね。」

「ああ。ありがとな。オレ本持って来てるからそれ読んでる。」

「うん。じゃおやすみ。」

「ああ。おやすみ。」

そう言うと良太は部屋の電気を落として出て行った。

「良太が好き。」

小さく呟く。一緒にいられるのは嬉しい。でも気持ちが大きくなりすぎて胸が痛い。この気持ちはどこにいくのだろう。


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~ Comment ~

 

拍手コメが24番目。
区切りのいい数でちょっと嬉しい。

カズサ、ノートに書き込みがドーンと増えた一日でした。
しかもセミヌード付き(きゃあ)。

病気になると好きな人がいてくれる、となると、病気になりたくなるんだよねー。
ホントはいけない事なのに。

でも今は幸せなんだから、見守りましょう(←上から目線のおばさん・笑)。
明日は二人で登校かな?

Re: タイトルなし 

ますみ様【✫◕‿◕b⌒❀ばんわぁ❀⌒d◕‿◕✫】

ご訪問ありがとうございます。やっぱ病気シチュはいいです。書いてて萌えます☆

甘えられるのが好きなんだろうなあ。片思いの相手でも、切なさはつのるけど、それよりも今は傍にいてくれる方を選んでしまうカズサです…。後で1人で過ごすと最初はいいけど、そのうち辛くなるのに…。今は良太との思い出を集めるのに一生懸命だけど、手に入らなかったらその思い出に押しつぶされるかも…なんて思いもしてないんだろうなあ。

次回もまだ引っ張ります。だって書きたいものまでたどり着いてないんだも(笑)プレイをさせてみますニヤリ_φ(≖ω≖。)♪かわいいものですけどね。どんなって…あのね…って書いたらダメじゃん!!次回までお楽しみに…お楽しみなのか?不定期更新ものは避けられるんだろうなあ…なんたって前までの話飛んじゃうもんなあ…。「やさしい~~」が終ったら定期更新にする?いやいやこっちが早く終ったりして…(〃^∇^)o彡☆あははははっ

ますみ様コメありがとうございました☆

ドキドキです 

はじめまして!
昨日コメントさせてもらったと思っていたら 最後まで送信されてなかったみたいです…
残念~


カズサと良太のお話し 大好きです!!

最近自分自身の好みに気がついたのですが、健気受が好きみたいです…(私の好みなんてどーでもいい話ですが…)

だから カズサの性格とか 行動にキュンキュンです
(≧ε≦)


お話しの続き 気になって気になって…
せっかく?具合悪くて看病してもらってるから 良太の心をグイッと掴んじゃうようなカズサの言葉なり態度とか 出しちゃったら良いのにぃ~って勝手に想像して 1人ぐるんぐるんしてます…
すみません…p(´⌒`q)


ともかく?
続きを楽しみにしてますね!

こんな夜中に東京のオフィス街で なにしてんだってツッコミが聞こえそうですが、残業続きで荒んだ私には 一時の安らぎが必要なのです!

色々すみません
またコメントさせてくださいねっ
o(`▽´)o

Re: ドキドキです 

あや様゚・+:.。.☆コン(✿ゝω◕)人(ゝω◕✿)バンヮ☆.。.:+・゚

初コメありがとうございます!!めちゃ嬉しいですっ!!送信できなくて又チャレンジして下さったんですね。アリガトウ✾“ヽ(。◕‿◕。)ノ”

良太とカズサのお話を気に入って下さってありがとう。カズサは健気受けですね。はい。私も好きです。健気受け。キュンキュンしていただけたら本望ですわっ!!そこ、そこが大事なんですよっ!!あや様と私のキュンポイントが一緒で嬉しいなあ。

話の続きを楽しみにしてくださってるのですね。不定期更新だからいつかなんて言えないんです(TωT)ウルウル あんまりプレッシャーをかけるとポシャってしまうタイプなので…。でも近いうちに更新しますね。

カズサは最初に諦めが入っているので良太とどうにかなれるとは考えていないんです。でも天然ですからひょっと見せる行動や表情で良太はん?って思う事があるんだと思います。じゃなきゃこんなにカズサに構わないと思うんですよね。良太は良太で男だしって思ってるとこありますから…。そういう意味では幼い2人。玲奈の方がよくわかってます。

あや様仕事場で読んでくれてるの?それも夜中まで残業?お疲れ様です。どうかあや様に少しでも癒しの時間となりますように…。

秋も深まり夜は冷えこみますから身体にはご自愛下さいませね。またのご訪問をお待ちしております。

あや様コメありがとうございました☆

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