「キミと空とネコと」
やさしいkissをして

やさしいKissをして71

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1人でいる時間ってこんなに長かったっけ?こんなに静かだったっけ?

最近1人で過ごす事が多くなって思った事。いつもは誰かが傍にいたし、達樹もうるさいくらいにまとわりついてたからか、1人でいることが寂しいと思う。

「達樹、何してるのかな?」

大学も最近は単位の足りてるものは出ていないから、必然と家で過ごす事が多くなっている。講義に出なくてもテキストを見て勉強はしてるのだけれど、ざわめきのない一人の部屋は静か過ぎる。音楽をかけてみるけど楽しい気分にもなれなくて消してしまっていた。

「凪お前やっぱ最近変だぞ。」

「ほんとに心ここにあらずですね。何かありましたか?」

「べ、別に何もありませんて。やだなあ。就職の事を考えてるだけですから。」

「嘘だ。凪さんは嘘をつくとき絶対に目をそらすクセがあるのわかってる?」

黎に言われてギクッとなるけど、ここで話してしまって黎の傷や聖夜さんの車への当て逃げの原因がオレだって事を知られるのが怖いと思った。知られて嫌われるかもしれないって…。

「あのさ、オレだって人に知られたくない事だってあるんだよ。黎にだってあるだろ。何でもかんでも話せばいいってもんじゃない。」

「凪さん…。オレは唯、凪さんが笑わなくなったから…。」

「はいはい。凪も黎も言い合わないの。まあ実際に凪は笑わなくなってますよ。自分で気がついてます?」

「そうか…。」

「達樹さんと何かあったんですか?」

「え?達樹?何も無い。卒論で忙しそうだけど。」

「大学でも凪さんいつものベンチに来なくなったし、大学にもあまり来てませんよね。」

「そうでもないぞ。就職の事でよく学生課にいるからだろ。」

「そうですか?」

「まあまあ、みんなで凪くんを責めてるみたいに詰問しちゃダメだよ。でも凪くんも誰も受け入れないみたいな態度はどうかな?」

「そうだぞ。昔の凪みたいになってる。」

「そんなつもりはないんですけど。みんなの気分を害してたのなら謝ります。ごめんなさい。」

「害するとか、そんな事じゃない。凪さん、オレ達は凪さんに謝って欲しいんじゃない。」

「ごめん…。」

「だからっ。」

オレがここに居る事で店の雰囲気が悪くなってきたのもこの頃からで…。何も言わないオレに黎が苛立って、それを滝くんがなだめて…。アキさんと陵耶さんは苦笑いして見てるけど、オレが言い出すのを待っている事は目を見ればわかる。アキさんも陵耶さんも大人だから待っているんだ。でもオレにはそれさえ責められている様に感じてしまっているのは、罪悪感からなのか…。自分が居るからみんなに迷惑をかけてしまうのだと…。そんなオレは問い詰められると「ごめん」と謝るしか出来なくて、それが余計にイラつかせているのだとしても…。

「やめましょう。こんな雰囲気では来てくださるお客様に楽しい時間を提供出来ませんよ。気分を入れ替えてお願いします。あと、今日は仕事が終ったら滝くんの歓迎会をします。強制参加なので欠席は認めませんよ。」

「「「了解。」」」

オレ以外のみんなはすぐに返答して仕事につく。オレはその場に固まってしまった。オレが行けばみんなに迷惑がかかる。どうしよう。

「凪くんも参加して下さいね。聖夜が迎えに来ますから。」

「どうしてもですか?オレは…。」

「どうしてもです。それとも何か行けない理由があるのですか?」

「それは…。」

「言えないのなら参加してください。」

アキさんもホールに出てしまい、そこにはオレ1人になる。どうすればいい?聖夜さんの車に乗るのはダメだ。自転車もダメ。聖夜さんの家に止めていたらすぐにわかってしまう。

「凪早く来いっ。仕込み凪の所だけ遅れてんぞっ!!」

「はいっ。すいません。」

厨房では陵耶さんも滝くんもきびきびと動いててオレだけが上手く動けなくてリズムを乱してる。滝くんがそれをさりげなくフォローしてくれてる事がずっと続いていた。

滝くんはもうすっかり仕事にも慣れて、働き出して数週間とは思えないくらいだ。このままだったらオレがいなくても『Calda casa』はまわっていけると思う。

ずっと考えていた。みんなを守るって言ってもオレが出来る事なんてあるのかって。オレさえ近づかなければみんなに危険が及ぶ事はない。ひいてはそれがみんなを守る事になるんじゃないかと。

黎みたいに怪我をするみんなを見たくない。黎も傷は癒えたっていってるけど傷跡は残っていてそれを見るたびに心が痛い。それ以上の事が起こるかもしれないと思うと恐怖で嫌な汗が出てくる。

今日の滝くんの歓迎会で最後にしよう。みんなを守るにはそれがいい。そうすればオレが守らないといけないのは達樹だけになる。その方が達樹も守れると思った。

歓迎会は1度家に帰ってタクシーに乗って行こう。遠回りして後の気配に注意して。そして途中で帰ろう。

オレは唇を噛み締めていた。理不尽だと思うけど、みんなを守るためには仕方ない。みんなが大好きだからオレはみんなから離れる。残りわずかな『Calda casa』で働ける日を大切にしよう。悔いのないように仕事しよう。オレはその日から今まで以上に仕事をする時は感謝を込めてするようになる。

仕事終り、アキさんに一度家に戻ってから行く事を告げ自転車で家に帰る。目立たない闇に溶け込むような服装に着替え、歩いて大通りに出るとタクシーをつかまえて後を気にしながら聖夜さんの家に行き、まわりに誰もいないのを確かめてインターフォンを鳴らす。

アキさんがドアを開けると同時に中に入り込むとアキさんが驚いた顔をしてて…。

「あっ、すいません。寒くて…。」

「ふふっ。凪くんてそんな寒がりだったっけ?」

「寒がりです。」

「志希も来てますよ。みんなもう飲み始めてるから早く行きましょう。」

「はい。遅くなってごめんなさい。」

アキさんに連れられてリビングに行くとみんなそれぞれに飲んでいて黎はすでに酔っているようだった。

「凪さん遅いですよ。何してんですか?ほんとに最近は隠し事してる。絶対にしてる。」

「黎、飲みすぎじゃないのか?もう酔ってる。しかも絡み酒かよ。」

「ごめん凪。黎止められなくて。」

「滝くんのせいじゃないだろ。」

「凪さん黎どうなってんの?凪さんの事ばっかりブツブツ言ってるよ。」

「オレに聞くなよ志希。オレにわかるわけないだろ。」

「凪くんは何飲む?」

「オレはあんまり…。ソフトドリンクがいいです。」

「凪、最初の一杯は飲まないと。乾杯出来ないだろ。」

「何か作ってあげようか?」

滝くんのカクテルを飲むのもこれが最後かもしれない…。

「ここにあるリキュールは限られてるけどある程度のものは作れるよ。聖夜もカクテルに興味を持って買ってくるようになって、時々滝くんにカクテルの作り方を教えてもらったり、作ってもらったりしてるんだよ。」

「そうなんですか。乾杯にショートグラスは合わないかもしれないけど『バラライカ』頼んでもいい?」

「スカイウォッカとデカイバーホワイトキュラソーとレモンジュースありますか?」

滝くんの声にアキさんが用意してくれる。

「バラライカはウォッカの代わりにブランデーにすると『サイドカー』ジンに代えると『ホワイトレディー』ラムにすると『X・Y・Z』テキーラなら『マルガリータ』になるんだ」ある時滝くんが教えてくれた。ちょっと前の事なのにすごく時間が経っているような気がする。

シェイカーに材料を入れてシェイクする滝くん。オレは滝くんがシェイカーを振る姿が好きだから最後にちゃんと見ておきたかったんだ。

背中をピンとはって優雅な手つきでシェイカーを振る滝くんをみんなが見てた。その姿はとても艶やかで、綺麗で…。黎がうっとりと見ているのに少し笑えた。黎も滝くんや志希がいれば大丈夫。もともと友達の多い黎だ。オレがいなくても変わる事はない。滝くんも新しいこの場所でいろんな経験をしていくんだろう。

陵耶さんは二人目の子供も生まれる事だしますます男っぷりが磨かれていくんだろうな。アキさんは聖夜さんと穏やかな愛情を育みながら店を盛り上げて行くんだろうな。

みんな大丈夫。

「はいどうぞ。」

目の前に差し出された少し白い色のカクテル。オレのために滝くんが作ってくれた…。

p_balalaika.gif

「ありがとう。」

「じゃ、みんなグラスを持って乾杯するぞ!!」

陵耶さんの声にみんながグラスを持つ。

「じゃあ、滝くん仲間になってくれてありがとう!!これからも宜しくって事で」

「「「「「「「cincin!!」」」」」」」

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読んでくださってありがとうございます。カクテルの画像入れるの忘れてて後で入れました(;ω;*)ゴ・ゴメンナサイ
『キミが思い出になる前に』明日15時に更新します。よければお立ち寄りくださいませ☆

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