「キミと空とネコと」
やさしいkissをして

やさしいKissをして72

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滝くんの歓迎会は楽しく時間が過ぎていく。オレはみんなの事を目に焼き付けておこうと静かにグラスを傾けて見ていた。

滝くんに作ってもらった『バラライカ』はアルコール度はきつめで中甘辛口なんだけどついクッと飲んでしまいそうなほどおいしい。

「凪、グラスが空いてますね。何か作りましょうか?」

「ん。そうだな…。」

一杯だけのつもりだったけど、これで最後は寂しくて…。

「凪くん、偶然なんだけど今日聖夜が桜の花の塩漬けを持って返って来たんだ。」

「桜の塩漬け…。そうですね。いいかもしれません。」

オレはアキさんと滝くんの会話の意味がわからずに薦めてくれるカクテルを待つことにした。

「はい。凪どうぞ。」

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「グラスの底に桜が舞ってる。」

「吉野です。日本を代表するカクテルなんですよ。外国では緑茶のリキュールが手に入りにくいそうでだから余計に日本を代表するカクテルなのかもしれないですね。」

滝くんの説明を聞きながら口にした「吉野」はひんやりとした辛口の中にほっこりと木漏れ日のような甘さが漂う。

「おいしい。」

「ありがとう凪。そう言われると嬉しいな。凪にはボクの知ってるカクテルをもっとのんで欲しいな。凪は素直な感想を言ってくれるから。」

もう滝くんのカクテルを飲む事も作ってる姿も見る事はないんだと思うと申し訳なく思う。

「…。うん、楽しみにしてる。」

「滝くんオレにもカクテル作ってよ。」

黎と志希が滝くんを引っ張っていく。

「黎と志希は滝くんの歓迎会だってわかってるんでしょうかね。」

「あいつらは酒さえのめりゃいいんだろうよ。黎なんて滝くんのシェイカー振ってる姿が見たいんじゃないか?ぽーーーって見てたもんな。」

「陵耶さんも気が付いてましたか?かわいかったですけどね。」

ふっとオレの横に人影が見えたと思ったら聖夜さんが隣に腰かける。

「凪くん久し振りだね。ちっとも家に来てくれなくて寂しかったんだよ。」

「アキさんがいるじゃないですか。」

「アキとキミは別だろ。オレはきれいな物を見てるのが好きなんだ。」

「聖夜さん酔ってます?」

「いや全然。」

「凪、杉野兄弟はそんな事サラッって言えるんだよ。外人並なんだ。」

バーボンのロックを飲みながら陵耶さんが教えてくれる。

聖夜さんと陵耶さんの言い合いを微笑みながらアキさんは楽しそうに見てる。

「ほんとにみんな言い人たちばかりでボクは幸せです。」

「そうですね。オレもみんなの事が大好きです。だから…。」

守らなくちゃいけないって心の中で誓う。

「だから?凪くんだからどうしたの?」

「何でもないです。」

「でも…。」

「あああっ。黎っ。お前飲みすぎだっ!!もう酒はダメだ。志希もっ!!帰れなくなるだろ。」

「いいですよ。陵耶さん。家に泊めますから。」

「ったくっ。そういえば凪も強いカクテルばっか飲んでるのに、今日は酔ってないな。」

「そうですね。今日はどうしたんだろ。強くなったのかなカクテルに。」

わかってる。今日でみんなとこうして騒ぐのは最後だから。ちゃんと覚えておきたいから酔えないんだ。それを悟らせないようにニコッて笑う。

「その笑顔はまさに天使だね。ボクから凪くんへのカクテルを送るね。滝くんお願い。」

滝くんに耳打ちすると頷いた滝くんがオレを見てにっこり笑顔を向ける。

「ボクも凪の事は天使みたいだと思いますよ。」

「ぅわっ。滝くんにも聖夜が乗り移ってるよ。やだねー。」

陵耶さんがクッションをボフボフと叩くのでみんなで笑った。

「やっと凪の笑顔が見れましたね。はいどうぞ。聖夜さんからリクエストです。」

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「アンジュつまり天使と言う名のカクテルです。」

「天使のカクテルって聖夜さん恥ずかしいですよ。オレは全然天使じゃないから。自己的だし…。」

「おやずいぶん自虐的になってない?何かあったの?」

聖夜さんまで突っ込んでくる。ああ、聖夜さんの車の当て逃げの原因はオレなんですって言えれば少しは楽なのに。でもそれはオレが犯人から逃げたいってエゴだし、みんなに甘えようとしてる事なんだ。

「いえ、何も…。まあ就職の事で悩んでますけど。」

「オレの会社に来る?凪くんは優秀だし、性格とかも良く知ってるからオレは来て欲しいくらいだよ。」

「そんな。オレ自分で探しますから。」

「そうだよ。聖夜。凪くんがそういうの嫌いだってわかってて言ってるなら最悪だよ。」

「アキ怒るな。でも凪くんが優秀なのはアキも認めるだろ。会社としてそういう人を雇いたいって気持ちは本当なんだから声もかけるさ。」

「オレのことで喧嘩しないで下さい。」

「こいつらのは喧嘩なんかじゃねーよ。そうやって楽しんでるだけだ。気にするな凪。」

「それならいいんですけど…。」

黎と志希はその間も飲み続けてたのか気が付くと寝てしまっている。

「あーあ。あいつら寝ちまってるよ。ガキみたいな顔しちゃって。」

「かわいいじゃないか。なあアキ。」

「大きすぎる子供ですけどね。誰が寝室まで運んでくれるんですか?」

「ここで寝かしとけばいいだろ。」

「そういうわけにはいきません。風邪ひいたらどうするんですか?」

「じゃ、黎はボクが運びましょう。」

「けっ。仕方ねえ。志希はオレが運ぶか。」

滝くんと陵耶さんが2人を寝室に連れて行く。今言わなくちゃ機会を逃してしまう。

「あのアキさん。オレ『Calda casa』辞めたいんです。」

「いきなりだね。凪くん。」

「前から考えてたんですけど、やっぱり就職の事に専念したいんです。オレ遅いくらいで…。」

「そう。お店としたら凪くんに抜けられるのは痛いけど、来年には辞めなくちゃいけなかったしね。滝くんも厨房で上手く出来ているみたいだし。引きとめた所で辞める意志は変わらないんでしょう?」

ほんとは辞めたくないんだ。ここに居たい。でも…。

「はい。変わりません。」

「じゃ、仕方ないね。いつまで来てくれるの?」

「きりのいい所で締め日まででもいいですか?」

「あと1週間か。わかりました。みんなには…。」

「言わないで下さい。勝手な事はわかってるけど言わないで欲しいんです。」

「ほんとに勝手だね。凪くんらしくない。でも陵耶さんには言うよ。あの人だって凪くんの事をあてにしてるんだからね。」

「はい。」

経営者としてのアキさんは冷たいほどで。急に言ったオレが悪いし勝手なんだから仕方ない。嫌われたとしても、みんなを守るためだからいい。

いっそのことみんなに嫌われたら楽なのかもしれないな。

「じゃ、オレこれで失礼します。」

「凪くん送るよ。もう電車もないし夜は危ないから。」

「いえ、いいです。考えながら帰りたいので。おやすみなさい。」

聖夜さんの申し出を断り外に出ると寒さが身に染みる。

「周りに誰もいないか確認しなくちゃ。」

門から出る時には顔を隠して闇に溶け込むように暗がりに身を寄せて歩く。

「オレ犯罪者みたいだ。何も悪い事してないのに。」

タクシーも捕まるわけはなく、歩いて家まで帰る。もうすぐマンションというところで不意に後に人影が近づいて来た。

「どこにいってたの。こんな遅くに出歩いちゃダメだろう。いい子にしてないと周りの人が傷つくぞ。」

ガクガクと身体が震える。そんなオレを楽しむかのように項を舐め上げシャツの裾から手を入れ身体を撫でまわされた。

「くくくっ。今日はこれくらいにしておくよ。君の恐怖に震えた顔すごくいいよ。オレの事ちゃんと覚えといて。撫でた手の感触もね。」

そいつはそれだけ言うとスッと闇に溶け込んでいなくなった。オレは恐怖で声もでなくてガクガクと震える身体を抱きしめて道に座りこんだ。

犯人が接触してくるなんて考えてなかった。身体を引きずるようにしてマンションに入るとポストを除く。もしかしたら封筒を入れに来て偶然に出会ったのかとも思ったけど封筒はなかった。

犯人に触られた身体が、舐められた項が気持ち悪い。

急いでシャワーを浴びるとタオルでゴシゴシと洗う。いくら洗っても犯人の息や手の感触が思いだされて汚れたままのような気がして真っ赤になるまでこすった。それでも犯人の匂いが染み付いているような気がする。

オレこのままどうなって行くんだろう。

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