S.S

願い事叶えてくれる?(後編)

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「勇人、オマエ最近願い事言わないんだな。」

「エッ・・・。ああ。最近はないんだ。願い事・・・。」

オレの願い事は『貴志とずっと一緒にいること』だから、叶わない願い事だとわかると、前みたいに無理な願い事や、つまらない願い事を言って、貴志がオレを疎ましく思ってないかという確認をすることも無意味に思えて言えなくなっていた。



「おーーーーい。勇人ぉーーー!!!」

「高田?」

「何が「高田?」だよ。やっと見つけた。」

貴志との帰り道、クラスメートの高田が追いかけてきた。

「何?」

「何?じゃねーよ。勇人。お前オレに感謝しろっ。ほいっ。前にお前に頼まれた更科教授の講義資料。」

「えっ。わぁーーー。こんなにたくさん?高田、ありがとう。」

ボクは出来るだけ貴志といたくて、来年貴志が受験する大学を受ける。
興味のある専攻は貴志とは違うから、(貴志の成績は飛び抜けてるし目指してるものが違う)一緒の大学を受ける意味はないのかもしれないけど、少しでも接点が欲しくて・・・。
オレは民俗学に興味があって、その分野で第一人者の更科教授がその大学にいる。
高田のお兄さんは偶然にも更科教授を専攻しており、それを聞いて資料を貸して欲しいと高田にお願いしていたのだ。
あまりの嬉しさに幸せいっぱいの笑顔を高田に向け、資料をパラパラとめくる。
高田が息を飲んだようにボクを見、貴志が眉間に皺をよせたことなんてボクは気づきもしなかった。

「勇人・・・。」

高田が熱を持った声でオレを呼ぶ。

「ん?何?」オレが高田の顔を見上げた時、貴志がオレを見ろとばかりにオレの手を掴む。

「んんっ。いたっ。痛いって貴志っ!!」

それを見た高田は急に我に戻ったように

「じゃっ。渡したぞ。勇人。オレに出来る事があれば言えよっ。」

そう言うと手を振って帰って行った。

なんで高田はあんなに顔が赤かったのか、わからないけど・・・。


貴志は無言でオレの手を引き、近くの神社へと連れて行く。

神社の中は人もおらず、いるのはオレたち二人だけだった。

「勇人。オマエ高田に願い事を言ってるのか?」

トーンの低い怒っているような貴志の声。

「えっ?そんなんじゃな・・・。」

「オレが勇人の願い事を叶えるんじゃなかったのか?勇人は願い事を叶えてくれるなら誰でもいいのかっ!!!」

何で、貴志がこんなに怒るのかわからない・・・。

「何でそんなに怒るんだよ?オレが誰に願い事をしようが貴志には関係ないだろっ。オレは貴志の彼女じゃないんだ。貴志のものでも何でもないじゃん。」

言って悲しくなった。そうなれないくやしさに睫毛が揺らめいて涙があふれそうになる。

どうしてオレは男なんだろう。

どうして貴志じゃなきゃダメなんだろう。

俯いたオレを見て貴志はオレの顎をつかんで顔を上げる。

「勇人。なぜ泣く?」

頬を一筋の涙が濡らす。

「離せ・・・。離してくれ・・・貴志・・・。」

気持ちがあふれだしていっぱいいっぱいになる。

貴志の顔を見ていると涙が次々とあふれてきて身体が崩れそうになる。

この胸に抱きとめられたなら・・・。

むなしい願いに身体の力が抜ける。

膝をガクンとつきそうになった時、力強い貴志の腕がオレの身体を抱きとめ、そのままギュッと抱き締められた。

「勇人・・・。オレ勇人が他の男に願い事をするのは嫌だ。あの笑顔はオレだけに向けられるものだ。他の誰にも見せて欲しくない。それに今の泣き顔も・・・。」

貴志はますます力を込めてオレを抱き締める。

「たか・・・し・・・?」

オレは自分のいいように貴志の言った意味を取りそうで、違うと言われればどうしようと貴志の顔を見つめる。

貴志はオレの顔を見て、優しく涙を指で拭う。

「勇人。オレの願い事叶えてくれないか?」

「えっ。貴志の願い事?」

「そう。オレの願い事。たった一つだけの願い事なんだ。」

「オレで出来る事?」

「そう。勇人にしか出来ない事。」

「ん。オレが貴志に出来る事なら何でも叶えるよ。」

「そっか。じゃ、この先ずっとオレと一緒にいてくれ。」

「えっ?」

「もちろん、友人としてじゃなく恋人としてだぞ。」

「えっ。だってこの前・・・。」

「ああ。アン時ははっきりと気持ちがわからなかった。勇人のことは気になるし、勇人の喜ぶ顔が見たくて願い事を叶えてきたけど、なんでそう思うのかわからなかった。高田に勇人が願い事をしたのを知ってわかったんだ。勇人が好きだから気になったし喜ぶ顔が見たかったんだって。」

「貴志・・・。」

「勇人、オレの願い叶えてくれるか?」

「当たり前だ。貴志の願いなら・・・。オレの一番の願いでもあるんだから・・・。」

真っ赤になって言うオレの顔を見つめる優しいまなざし。

クラクラとしそうなまなざしを見て居られず貴志の胸に顔をうずめる。

優しく抱きしめられるカラダ。

「貴志。好き・・・。」

「オレも勇人が好きだ。」

淡い夕焼けの下で二人の唇が重なる。

この先のことなんてどうなるかわからない。

でも、今はこの愛しい人と一緒にいれる事の幸せを噛みしめる。

いつまでも二人でいようと誓い合い一緒に帰る。

明日も、あさっても一緒にいようと思いながら・・・。


                            Fin









いかがでしたか?前後編と言いながら後編が長くなってしまいました。もっと長くなりそうだったのをなんとか抑えました(ワラ
やっぱ、ハピエがいいですね。




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