「キミと空とネコと」
やさしいkissをして

やさしいKissをして80

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達樹が無事な事を確認して電話を切ると酷く喉が乾いている事に気が付いて、冷蔵庫から水を取り出しキャップを開けると一気に半分近く飲み干す。

達樹の事だから電話を掛けてくるだろうと電源を落とす。今日はもう連絡もしない方がいい。達樹に説明しろと言われても言えないのだから。絶対に不審に思っている。それはわかるのだけれど、それよりも犯人から達樹を守る事で頭が一杯なのだ。

「そう言えばあいつ「返事を待ってる」って言った。何が書いてあるんだ?」

恐る恐る赤い封筒を開けるとまた中から写真が出てくる。

それはここ2日の写真。

凪が電車に乗ってるところ。駅で待ちあわせて達樹と会ってるところ。定食屋での2人の写真から遊園地、凪の実家に入るところ…。達樹の顔はやはりナイフで切り刻まれてる。

「実家まで着けられてたんだ。これじゃどこに行っても見られてるって事じゃないか。」

そして赤い便箋が一枚。

『本当にキミは悪い子だね。言う事を聞かないならお仕置きするよ。でも前の2人みたいな事はしないであげよう。傷ついても治ってしまうからね。そうだなキミの彼には社会的に消えてもらうとか?大手出版社に就職の内定が決まってるんだよね。そこにキミにプレゼントした写真を送るとかどう?もちろん就職は取り消し。大手だから他の会社に就職しようとしても噂が流れてるかもね。まあ、噂がなくてもリークすればいい事だし。就職出来ずに可哀想に。きっとキミを恨むだろうね。そうされたくなかったらもう会わない事。会っても無視して話さない事。きっぱりと別れろって事だよ。そうキミは1人になるんだ。でも安心して。オレがいるからさ。キミはオレの物になるんだ。返事はそうだな3日あげるよ。その間に整理してキミの身体についてる『しるし』が消えた頃にご対面と行こうか。じゃ、3日後にこの番号に電話して。時間は22時。バイト終ってるでしょう。返事がなければ写真送るからね。別れ話の時だけは会ってもいい事にしてあげよう。彼きっと電話やメールじゃ納得しないだろうしね。何よりキミに振られた時の顔が見たいからね。オレっていい奴だろ。』

愕然とした。オレのせいで達樹が就職取り消しになるかもしれない。出版社に勤めたいからってバイトして経験を積んできた事。すごく努力した事も聞いてる。就職が決まって両親も喜んでるって嬉しそうにしてたのも…。それがオレのせいで…。達樹が就職する限り潰していくつもりだ。そして達樹がオレを恨むようになる?そんなの嫌だ。達樹だって人間だ。オレのせいでって思うかもしれない。

答えなんか一つしかないじゃないか。達樹と別れるしか…。達樹を守るためにはそれしかない…。

とめどなく涙が出てきて止まらない。誰にも相談出来ない。相談したら巻き込まれる。こいつは良心とか持ち合わせてない非情な奴だ。怪我させる事も何とも思わないような人間だ。社会的に抹殺する事だって平気でするだろう。

「こんなに好きになったのに…。」

もうあの大きな手に頭をポンポンされる事も抱きしめられる事もないんだ。太陽みたいな笑顔を見る事も、キスする事も…。

「今日、もっと優しくすれば良かった。あれが最後だなんて…。送ってもらったのに達樹の顔も見なかったな…。」

後悔ばかり…。オレってバカだ。

しばらく泣き続けて涙ってこんなに出てもまだ出てくるんだって思った。ゴシッって手の甲で涙を拭く。泣いてばかりはいられない。達樹を守るためにオレがちゃんとしなくちゃいけない。達樹に別れ話をしなくちゃならないんだ。3日後に返事をする時には全てを終えとかないと…。ちょうどバイトも最後の日。みんなを守らないと…。

その日からどうやって達樹に話せばいいのか、納得してもらえるのか考える日が続く。大学には行かなかった。電話も切ったまま。メールで『3日後にちゃんと話すからそれまでは会わない。電話もしない。ごめん。』とだけ伝えた。達樹からの返事はなかったけどオレに会いに来る事はなかった。

バイトは変わらずに出勤する。残り3日だったから。最後くらいちゃんと勤め上げたかったんだ。達樹と会えなくて寂しかったからかもしれない。人の温もりが欲しかったのかも…。

最後の日はいつもより早く出勤した。22時に電話しなくちゃいけない。でもその時間はちょうど店が閉まる時間だ。犯人をこれ以上刺激しないほうがいいと思って22時に返事をする事にした。犯人に電話するのが怖かったのが本当なのかもしれない。

「凪くん今日で終りだね。みんなには言わないままでいいの?」

「はい。勝手ですいません。落ち着いたらみんなに謝ります。」

「何だか凪らしくねーよな。」

「すいません。」

アキさんも陵耶さんも怪しんでるんだと思うけど絶対に言わない。そう決めてる。

「しゃーねーな。仕事終わったら3人で飲みに行くか。」

「そうですね。凪くん今まで頑張ってくれましたもんね。」

「あ、すいません。オレ今日22時に約束があって無理なんです。」

「22時って店締める時間じゃねーか。」

「あ、とりあえずその時間に電話する約束なんです。だから申し訳ないんですが22時に電話かけさせて欲しいんですけど。」

「電話くらいいいけど。」

「最後までちゃんと仕事はやります。勝手で申し訳ありません。」

「やっぱり凪らしくねー。仕事中に電話なんて今までなかったろ。」

「すいません。」

「まあいいや。最後なんだ。気持ち良く仕事しようぜ。」

「はい。頑張ります。」

アキさんと陵耶さんに申し訳ない気持ちでいっぱいだ。

出勤してきた黎と志希と滝くんと会話をするのも今日で最後だ。そう思うとみんなが話すのを見ていた。みんなの笑顔をしっかり覚えておこう。

「凪さん今日はしゃべりませんね。」

「オレは志希みたいにしゃべりじゃないからな。」

「それにしても大人しくないですか?」

「オレだってそんな日もあるよ。」

「そうかなあ。凪さん最近変ですよ。達樹さんも何だか冴えない顔してましたよ。」

「黎、達樹に会ったのか?」

「いつものベンチでお昼に会いました。そういえば凪さん来なかったですね。あ、さては喧嘩?早く仲直りしてください。あんな元気のない達樹さん初めて見ましたよ。何だ喧嘩してたのか。」

オレの様子が変なのは達樹と喧嘩したからだと思ってくれるほうがありがたい。

「さあ開店準備をして下さい。今日も宜しくお願いします。」

アキさんの言葉にそれぞれが「お願いします」と自分の持ち場に散っていく。

最後の厨房。オレはいつも以上に気持ちを込めて仕事に取り組んだ。


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Re: タイトルなし 

鍵コメC様こんばんは☆

『キミ思』でほのぼの・キュンキュン。『やさしいKissをして』ではドキドキ&せつなくなってくださって嬉しいです。全然違うお話ですもんね。『キミ思』はこっちが煮詰まった時に書いてます。『キミ思』でリハビリしてこっちにって感じです。こっちの方が難しいし、精神的にしんどいですね。犯人がいる展開が…。暗いよなあって思いつつ書いてます。

話もすごい展開になっちゃってますよね。大きくなりすぎた感も無きにしも非ずで…。終りたいのに終われない(苦笑)本編の『キミ空』よりも短くしないと。ほんとはもっと短い予定だったのに((유∀유|||))

スピンオフなんだけど、響夜もカイトもちょっとしか出てないし…。でもこの2人が鍵になる予定です。

鍵コメC様、楽しみにしてるのお言葉、すっごい励みになります。両方読んでくれてありがとです。もう少しお付き合い下さいませね☆コメありがとうございました☆

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