キミが思い出になる前に

キミが思い出になる前に10

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そのまま玄関にいってドアスコープを覗くとそこには良太が立っていてカズサはどうしたのかと不思議に思う。

良太は部活が終わったら今日は自分の家に帰るはず。ボクの家に来る約束はしてないはずなのに…。

「カズサッ。カズサ大丈夫か?」

「良太?ちょっと待って。」

ガチャっとドアを開けると良太がカズサを抱きしめる。

「何?良太どうしたの?」

「カズサに電話してるのに通じないから熱がぶりかえしたのかと思って…。」

ハァハァと息を切らす良太。きっと学校から走ってきてくれたんだろうな。

良太は抱きしめて初めてカズサの格好に気が付き、あわててドアを閉めた。

「こらっカズサ。なんて格好してるんだ。病み上がりだってことわかってるのかっ!!」

「ぅわっ。ごめん。お風呂から上がったとこだったんだ。」

「風呂?ちょい待て。オレ一時間近く前に電話したんだ。出なかったって事はその時には風呂に入ってたんだよな。で?出たのが今?1時間も風呂に入ってたのか!!」

「うわあ。ごめんなさい。久し振りだから気持ち良くて…っくしゅんっ。」

「わわわっ!!ダメだカズサ身体が冷えたら本当にぶり返しちまう。早く服着ろ。オレは何か温かいもん入れとくから。」

「うん。」

カズサはあわててパジャマを着てその上にパーカーを羽織るとリビングに戻ると良太が温かいココアを手渡してくれた。

「良太ごめん。心配かけて。」

「本当だ。あんまり心配かけないでくれよな。」

「はい。ごめんなさい。」

「髪の毛乾かしてやるよ。」

「え?いいよ。」

「してやりたいんだ。」

良太はドライヤーを洗面所から持ってくるとカズサの後で乾かしはじめる。

人の指ってどうしてこんなに気持ちがいいんだろう。カズサは乾かしてもらいながら髪の毛を梳く良太の指の感触を気持ちいいと思っていた。ネコがゴロゴロ言う時ってこんな気持ちなんじゃないかななんて思ってた。

「あ?良太家に帰ってないんじゃないの?」

「いや、帰ったぜ。今日は顧問が会議かなんかでいなくなるからって部活早くに終ってさ。」

「そうならよかった。お母さん心配してたんじゃない?」

「いいや。自分の面倒は自分でみろってのが親の方針だからな。男だから甘やかさないんだと。ま、ちゃんと連絡入れてたし。」

「そうなんだ。」

「で、明日は土曜日で休みだしカズサは大丈夫かなって電話かけたら出ないしさ。」

「ごめん。」

「て事で今日も泊るか。ヨロシク。」

「え?」

「だって家に帰るのめんどうだし、カズサの家は居心地いいし、カズサの様子もわかって安心出来るし。ダメか?」

「ダメなんかじゃないよ。むしろ嬉しい。ちょっと寂しかったから。」

「そうか。じゃ決まりな。」

ニカッと笑う良太が眩しくてドキドキするカズサ。

カズサに寂しかったとか嬉しいと言われて内心嬉しい良太。

2人の気持ちは微妙に近くて遠いのだけれど2人で過ごしたい気持ちは同じなので嬉しくて仕方がないのだ。

「カズサ。身体が大丈夫ならDVD借りに行こうぜ。ついでに晩飯も何か買ってこよう。」

「うん。いいのあるかな?良太は何が見たいの?」

髪の毛を乾かしてもらいながら2人で好きな映画の話をする。

良太は最近貸し出しになった洋画の映画が見たいと何作かリストをあげる。どれもスリルにあふれたアクション物でこんな映画が好きなんだって良太の事を一つ知って嬉しい。ノートに書いておかないと…。

一方のカズサが見たいと思ったのは見逃してしまったアニメばかり。バスケもの、妖怪との切なく優しいお話などきりがない。

取り合えず借りに行くためにカズサに着替えさせる良太だけど風邪がぶり返さないようにとカズサに厚着をさせる。

「ほんとならオレが借りに行った方がいいんだろうけど、カズサも見たいもんな。その代わりちゃっちゃと決めてメシ買って帰ってくるぞ。」

「うん。」

店までは5分も歩けば着けるし、スーパーも近くにある。2人で楽しく会話しながらDVDと晩ごはんを買って帰ってくると早速DVDを見る。

1本見て、ご飯を食べて続きを楽しんだ。

「何かこういうのっていいよな。一人暮らしの友達なんかいないから、今までは友達の家族を気にしたり、家族の居ない時に遊びに行ったりで気を使ってたけど、ここは楽だあ。なあ、これからも泊りに来ていいか?」

「いいよ。良太なら大歓迎だよ。いつでも来て。」

「マジで?やりーっ!!」

カズサも良太が家を気に入ってくれて嬉しい。これからもこうして2人だけの特別な時間が持てると思うと幸せで飛んでいってしまいそうな気分だった。

そんな時間を過ごしたからか、それからの2人はますます親しく同じ時間を共有するようになる。良太は週末になると泊りに来たし、それ以外の平日でも電話をしたり、遊びに行ったりして2人にとって心地のいい距離での楽しい時間を過ごしていた。

カズサは時々切なく思う事もあるけど、一緒に居る時は幸せでこのまま一緒に過ごして行けるのだと思っていた。

そんなある日、玲奈が話があるから放課後に残ってと言ってきた。

良太がカズサとの時間を作った事で玲奈と良太が一緒に居る事は少なくなっていたけど、良太は玲奈を彼女じゃないと言ってたし、友達としてしか見てないとも言ってたのであまり気にしていなかった。

放課後、誰も居なくなった教室で玲奈とカズサ2人だけが向き合っていた。

「カズサくん、良太と一緒にいすぎなんじゃない?」

「え?」

「カズサくんといる時間が多くなって良太は玲奈と遊んでくれなくなったじゃないっ!!」

「そんな事をボクに言われても…。良太に言ったら?」

「良太に言えるわけないでしょっ!!そんな事言ったら玲奈が悪く思われるじゃないっ!!カズサくんは男なんだからそこは女の子に言わせるんじゃなくて、あなたが良太に言ってくれるんじゃないの?普通はそうでしょ。気が回らないな。顔はキレイでも気が回らないんじゃダメよ。何?それとも良太と一緒にいたいとか思ってたりして。」

女の子の勘はするどいからビクッてなる。

「そ、そんな事ないよ。ただ一緒に遊んでるだけだよ。」

「じゃあ別にいつもじゃなくてもいいでしょ。良太との時間を玲奈に返してよっ。玲奈と良太は付き合ってるんだからねっ。カズサくんは邪魔なのっ。」

良太は彼女じゃないって言ってた。玲奈は嘘を言ってる?

「良太は彼女じゃないって言ってたよ。」

「ひどいカズサくん。玲奈が嘘ついてるって思ってるの?」

「そ、そう言うわけじゃないけど…。」

「玲奈嘘なんて言ってないもん。玲奈と良太は付き合ってるんだから。みんなだって知ってるもん。カズサくんは後から来たから知らないだけじゃない。ひどいよっ。」

玲奈の迫力に押されて何も言えない。

その時廊下から誰かが教室に向かってくる気配がした。とたんに大きな声で玲奈が泣き出す。

「ひどいよっ。カズサくんひどい。玲奈嘘なんて言ってないもん。カズサくんがそんな事言う人だなんて思わなかったよ。優しい人なんだと思ってたのに…。」

突然大きな声で言い出した玲奈に驚いて何も言えずに固まった。

玲奈の泣き声に教室のドアが開いてクラスの子が何人か入ってきて玲奈の傍に来る。

「玲奈どうしたの?」

「っく…うっ…カズサくんが…玲奈の事を嘘つきだって…。良太が玲奈の事を彼女じゃないって言ってたって…。ぅっ…。」

「ひどいっ!!カズサくんそんな事玲奈に言ったの?」

「一体どういうつもりよっ!!」

「良太と仲がいいからって彼女の玲奈との邪魔してんじゃないわよっ!!」

集団の女の子は怖い。ジリジリと隅に追い詰められて睨み付けられると動けない。ここでちゃんと言えたなら違ってたんだろうけど、ボクは何も言えなかった。ここで何を言ったとしても聞き入れてくれるわけはないと思ったんだ。

「玲奈行こうっ!!こんな人に何を言っても無駄だよ。良太くんに言おうね。」

「そうだよ。良太くんならちゃんとわかってくれるよ。」

「玲奈は良太くんに迷惑かけたくなくてカズサくんに言ったんだよね。なのに玲奈かわいそう。」

「もう玲奈と良太くんの邪魔しないでよねっ!!」

女の子の集団に睨まれて平気なわけがない。昔のボクが出てきて顔は下を向いてしまっていた。拳をぎゅっと握っる事しか出来なかった。

玲奈の肩を抱いて女の子達は教室を出ていく。

ボクは静かになった教室に1人ポツンと残されて動けずにいた。

こんな時はどうすればよかったの?


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~ Comment ~

 

良太、カズサの可愛さにヤられてますね~(笑)ワタシもすっかりヤられてますf(^_^;

玲奈、良太をとられそう(それ以前の気もしますが…汗)になって、カズサを責めて…。大人しい相手だからってキツいわ(;´д`) 女子のコワイとこがシッカリ出てますね(^^;

これでカズサは萎縮しちゃうのかな?良太が救ってくれることを祈ってますm(__)m

Rin様、『やさしい…』との二本立てお疲れ様です!ワタシはお話書けないので、タイプの違うお話が書けるRin様ってスゴいな~って思ってます♪どちらもドキドキしながら続きを楽しみにしてます(^^)d

Re: タイトルなし 

waka様☆*⌒o(◕ ◕o)⌒*☆こんちゃに

いつも読んで下さってありがとうございます。

カズサは女の子に弱いですからね。waka様もカズサにズキュ━━(〃´Å`〃)━━>>ンッですか?私も好きなんです(笑)やっぱ、一途に良太を好きできる姿に萌えです。

玲奈は自分が可愛いと思ってる女王ですからね。自分の魅力を発揮して君臨する事なんて当たり前。男が傅くのが当たり前だと思ってますから、カズサが憎いんですね。何もせずに良太を取って行ったと。カズサさえ居なければ良太はいつも自分の所に居たと思ってますから。女子の怖さ出てましたか?それが書きたかったのでよかったーーー。

最近ダメなんですよ。書けなくて…。『やさしいKissをして』は特に書けなくて。駄文の一言が効いてます。ボディブローのように後からじわじわときてるんです。いつ書けるのか…。しばらく『やさしいKissをして』はお休みになるかも…。書き上げますけどね。必ず。私はちっともスゴクないんですよ。こんなヘタレでごめんなさいなのです。それでもこうして来て下さるwaka様のような方がいるからほそぼそと頑張って居られるんです。

waka様コメありがとうございました☆
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