キミが思い出になる前に11

高田さんに責められた日、良太からは何の連絡もなかった。

自分から良太に連絡する事は出来たけど、今日の事を言い訳するようで出来なかった。何て言えばいいのかわからなかった。

「良太はボクには玲奈と付き合っていないって言ってたけど、本当は付き合っていたのかもしれないな」

ポツリと自分の口から出た言葉に傷つく。

「それだったらそう言ってくれたほうが良かった…。」

良太を責めるような言葉が出てきてそれにも傷ついた。

自分で言った言葉に傷ついてるなんて笑える。

次の日学校に行くと雰囲気が変わっていた。

「おはよう。」

「…。」

ボクのおはように答えてくれる人がいない。

少し落ち込んだけど気にしないようにして自分の机にカバンを置いて腰かける。

「よく平気で学校に来れるわよね。」

「玲奈を傷付けといてさ。」

聞こえるように言われて、昨日の事がクラス中に知れ渡ってるんだと気が付いた。

男子は遠巻きにボクを見ているだけ。高田さんはクラスの女王的存在だから、彼女を敵に回すと女の子達を敵に回すようなものだから怖がってるんだなってわかった。

ハァーって大きな溜め息が出る。だってボクは何もしていない。良太と一緒に過ごすのだって友達としてだ。ボクの気持ちを言ったわけじゃない。友達としているのに何が悪いんだって思ってた。だから、こんな中傷にも子供じみたイジメみたいな事も平気だ。

その時、玲奈と良太が一緒に登校してきた。

「え？何で？」

ボクに浮かんだのはその疑問だった。たまに一緒に登校してくることはあったけど、何も昨日の今日で一緒って…。それに良太の腕には玲奈の腕が巻き付いていた。

良太はボクの方を見て、確かに視線がぶつかったのに視線を逸らした。傷ついたボクの顔を玲奈が勝ち誇ったように見てフンと鼻をならす。

「良太、今日は部活終わったら玲奈の買い物に付き合ってね。」

「ああ。」

ボクは愕然とした。これってどういう事？

クラスの誰がボクを無視したってかまわない。1人になったって良太さえいてくれればそれでいい。だから大丈夫だと思ってた。

でも…。これじゃ…。

ボクは涙が出そうになるのを唇を噛みしめて堪えると空を見上げた。何も考えないようにしたんだ。それはとてつもなく難しくて心が心底疲れたけど、そうしてないとそこから飛び出してしまいそうだったから。そんな事したらボクが良太の事が好きってみんなにばれちゃうような気がしたから…。

その日はどんな授業を受けたのかなんてわからないまま1日が終る。

「良太、部活が終わったらメールしてね。」

「ああ。」

嬉しそうな玲奈が良太を見送る。良太は一瞬ボクを見たけど、そのまま出て行ってしまった。

ズキンと胸が痛んで早く帰ろうとカバンを持った時に玲奈が近づいてきた。

「良太は返してもらうから。良太言ってたよ。カズサくんは転校してきたてで可哀想だから一緒に居てあげたんだって。玲奈の事が好きなんだって。ごめんって謝ってくれた。Hもしたんだよ。だからもう良太に甘えないでね。他にもカズサくんがいいって言う男の子がいるでしょ。良太じゃなくてもね。変な目で良太を見ないで。迷惑なんだから良太も。」

「!!」

言葉が出なかった。可哀想だから良太は傍にいてくれたの？高田さんの事が好きなの？Hもしたんだ…。それにタカダさんはボクが良太の事を好きな事に気が付いてる。良太も？だから迷惑なの？

その場にいられなくて…。

「わかったよ。」

そう言い残して教室を出た。

「良太は玲奈の彼氏なんだからねっ!!」

背中でその言葉を聞く。心からドクドクと血が流れているようだった。

どうやってマンションに返って来たのか、今何をしているのかわからない状態で、気が付くと23時を回っていた。

携帯が鳴る。良太かと思って携帯に飛びついた。

「あ、カズサ？今話してて大丈夫？そっち夜よね。」

「母さん…。」

「カズサ？どうしたの？」

「ん？何でもない。」

「なんでもない声じゃないわよ。」

「そう？今寝てたから…。」

「カズサ…。あのね、1度そっちに戻ろうと思ってるの。といっても4日ほどしかいれないけど。」

「いつ？」

「1週間後かな。」

「うん。母さんに会えるの嬉しい。」

「お土産は何がいい？」

「いらない。母さんが来てくれたらそれでいい。あ、でもそっちのビッグサイズのお菓子買ってこないでよ。」

「ビッグサイズじゃないわよ。ファミリーサイズなんだから。」

「どっちでもいいよ。食べ物はいらない。」

「わかったわ。じゃ1週間後にね。カズサ…。その時に今日の落ち込んでたわけ話してよね。寝れなかったらちゃんとお薬飲むのよ。コンスタンもね。病院もちゃんと通院する事。」

「うん…。」

母さんはそういう事にするどい。離れてから特にボクの心の状態についてわかるようになった気がする。

「病院しばらく行ってないな。明日学校終わったら行こうかな。」

良太からの電話はやっぱりなかった。



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