キミが思い出になる前に

キミが思い出になる前に12

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次の日も学校でのクラスのみんなのボクへの態度は変わらなかった。男子は少し気の毒そうに見てる人もいたけど、みんな触らないようにしてるみたいだ。ボクにとってはどうでもいい事だった。中学の頃を思い出せばいいだけ。あの頃もさして人と話してたわけじゃないから。

ボクは自分の机に座ると授業が始まるまで文庫本を読んで過ごした。休み時間も同じ。本の世界に没頭していれば周りの音なんて聞こえない。

良太との思い出ノートも白いまま。もう埋まる事はないのかもしれない。

昼ご飯だって1人で本を読みながら食べれば寂しい事もない。今まで読めなかった分読めばいい。勉強はあまり手につかなかった。もともと成績が下がればイギリスに連れて行かれるからと頑張ってた。今は…。頑張れないボクがいた。落ち込みそうになってコンスタンを一粒飲む。

「今日は帰りに病院に行かなくちゃな。」

空になったシートをゴミ箱に捨てて空を見上げる。うろこ雲が綺麗な秋晴れの空。ボクの心とは真逆の天気だな。

悲しんでようが腐ってようが、時間は経つわけで…。こんな日々にも慣れてくるのだろうと思う。

放課後、病院に行くために駅の近くまで出てきた。制服で病院は目立つから1度家に帰って着替えて来た。

いつもと変わらない質問と答え。いつもと変わらない薬。病院を出たところで良太たちバスケ部員が集まっていた。

「しかし良太も玲奈じゃ大変だな。顔もスタイルもいいけどあの女王だもんなあ。」

「そうか?オレは羨ましいぜ。性格よりあの顔とスタイルだぜ。」

「そうそう。その玲奈様を放っておいてカズサとばっか遊んでたもんな。そら玲奈も切れるわ。」

「うっせーよ。オレと玲奈はそんなんじゃないって。」

「いいって。そんな嘘つかなくても誰もお前に嫉妬しねーよ。玲奈に合うのなんてお前くらいなもんだ。」

「わかってるって。カズサを出しにして玲奈にヤキモチ妬かせようとしてたんだろ。」

「おかげで玲奈ってば良太にメロメロじゃん。」

「だから…。カズサはそんなんじゃないって。」

「まあカズサも綺麗な顔してるからなあ。あれはあれでありか。」

「オレもカズサならいっかと思っちまう。」

「お前らなあ。カズサに失礼だろ。カズサと仲良くしてやれよ。転校してきてまだそんなに経ってないんだぞ。オレは玲奈がうるさいから今はカズサとは遊べないからさ。」

「やっぱ良太は玲奈が大事なんだ。」

「羨ましいなあ。あのスタイルだしHしてんだろ。」

「あほか。そんな事お前らに言うわけないだろ。行くぞっ。」

「へいへい。良太は変なところで硬いんだからよ。」

みんなでショッピングモールの中に消えて行った後もボクはさっきの会話が繰り返して聞こえているようだった。

聞きたかったわけじゃない。聞こえてきたんだ。

良太は玲奈にヤキモチを妬かせたかったから、ボクと仲良くしてたの?転校してきて可哀想だと思ってたって言った高田さんの言葉は本当だったの?高田さんの事が大事なんだ…。だからボクとは話もしてくれないの?

トボトボと家に向かって帰る。何も食べる気がしなくて、寂しくてTVをつけた。面白くもないTVだけど人の声が聞こえてないとどんどん落ち込みそうで怖かった。

ボクは携帯を取り出して良太にメールを打つ。

『ボクは良太に迷惑をかけていましたか?もしそうなら気が付かなくてごめんね。高田さんと付き合ってるんだね。ボク邪魔ばかりしてたね。もうしないから。今までありがとう。』

すごく女々しいかと思ったけど、今まで仲良くしてくれたのは本当だしお礼を言いたかったんだ。

送信してから返信が来なくて…。当たり前かあって思いながら泣きたくなってしまってお風呂に逃げ込んだ。

シャワーを全開にして泣いた。もうこれで終り。本当ならこんなに良太の傍にいられるなんて思わなかったんだから、思い出ノートと写真があるだけ幸せだよって自分に言い聞かせた。思い出を集めるだけのつもりだったのに、一緒に過ごして欲張りになってた。もともと実るはずのない恋。サヨナラするためにここに来たんじゃないか。そう、最初の目的どおりにすればいい。

膨れ上がった恋心を沈めるのにはかなりの労力がいるんだなあって泣きながら思った。

お風呂から出ると処方された睡眠薬を安定剤を飲んで寝る。寝ないとダメになって行くのがわかってたから薬を飲んで布団に潜り込んだ。明日も学校がある。

「あ、晩ごはん食べてない…。ま、いっか。」

眠くなくても薬は睡眠を運んでくる。ボクは携帯の着信のランプにも気が付かずにそのまま眠ってしまった。

次の日も学校に行く。クラスのみんなに無視されてようが休むのは負けた気がして嫌だった。

廊下でクラスの女の子が荷物をたくさん抱えて動けないでいた。

「それ1人で運んでるの?貸して。教室まででいいんだよね。」

「え?いいよ。」

ニコッって笑顔を見せてその子の抱えているプリントの山を無言で持つと教室に運ぶ。だって女の子が重い荷物を持ってるんだよ。知らんフリなんて出来ないよ。意地悪されてるとか関係ない。困ってる人がいたら助けるのが当たり前だもん。

ボクは教卓にプリントを置くと自分の席に座っていつものように本を読む。静かな1日が始まった。もうボクは良太を追いかける事はしない。自然と目に入る良太だけを見る事にしたんだ。

放課後、スーパーで買い物をして財布を取り出そうとして携帯に着信があった事に気が付いた。

「誰だろう?母さんかな?」

携帯を開くと良太からの着信だった。

「え?いつ?」

着信時間は昨日の22時過ぎ。お風呂に入ってた時間だ。留守電が入ってる。

『カズサ。話があるから明日5時に駅前の時計の所に来てくれ。』

え?今何時?

あわてて時計を見るともう5時半を回っていた。あわてて買い物カゴを放り出して駅前に向かう。ダッシュして走ってもボクの足じゃ時間がかかって時計台の前についたのは6時前だった。

「ハァハァ…。居るわけないか。もう6時だもん…。」

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Re: タイトルなし 

鍵コメW様こんばんは☆

中傷って言ってる本人には相手にどんなダメージがあるのかわからないんでしょうね。名前があればまだ心から励ましの意味で言ってくれてると何とか思えるのでしょうけど、名前すら載せてないのはどうなんでしょう?卑怯だと思います。すごいトラウマになってしまったのは事実で『やさしいKissをして』は書くのがためらわれてしまうのです。実は薬を飲んで書いてるほどで…。なのでこの際少し休もうかと思っています。書上げることが出来てからUPしようかと…。『やさしいKissをして』は読んで下さる人がいるのかしらと思うほどで…。凪たちには悪いんですけど…。もう終りなのに…。悔しいです。自分の力のなさなんですけどね。

ちょっと心が落ち込みで薬漬けなので『キミ思』でリハビリしつつ書いていきます。毎日更新が出来ないかもしれませんがよろしくお願いします。

玲奈ってオンナの嫌な面をさらけ出してるでしょ。怖いけど、オンナってこんなもんですよねー。ますますエスカレートしちゃったらどうしましょう(苦笑)でもめっちゃ書き易いんです。あ、でも私はこんなじゃなかったですよ。まわりにいらっしゃいましたのでその方を思い出して参考にしています。イジメもしてないですから(`-д-;)ゞ

鍵コメW様、あたたかいお言葉ありがとうございました。泣きそうに嬉しかったです。ほんとにありがとう☆
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